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中央サーバー室への道は、敵の警戒網が最も密なエリアだった。管理人は、ペリカがスキャンした敵の配置図と、自身の戦闘経験から導き出した直感を頼りに、隠密行動による敵戦力の漸減を指示した。
「アンカーが個体を補充するのは厄介だが、無策で突っ込むよりはマシだ。
巡回ルートから外れた孤立個体、連携の取れていないランドブレイカーの歩哨から、一体ずつ確実に潰していくぞ」
その指示は、大胆不敵な突撃を好むレーヴァテインにとっては不本意なものだったが、彼女は管理人の真剣な表情を見て、黙って頷いた。
今のこの状況では、それが最も合理的な判断であることを、彼女も理解していたのだ。
作戦は、静かに、そして冷徹に実行された。三人は影から影へと音もなく移動し、まるで狩人のように獲物を狙う。
最初に標的となったのは、資材置き場の陰でタバコを吹かしていた二人のランドブレイカーだった。
管理人が背後から無音で接近し、一人の口を塞いでコンバットナイフで喉を掻き切る。
もう一人が異変に気づいて振り返るより早く、ペリカがタクトから放った電撃アーツがその動きを完全に麻痺させた。硬直したところに、管理人の蹴りがめり込み、ランドブレイカーは音もなく崩れ落ちる。
次に、通路を単独で巡回していたアンゲロスを、レーヴァテインが仕留めた。
彼女はアーツの炎を剣に纏わせるのではなく、掌に小さな火球として凝縮させる。
そして、アンゲロスが角を曲がった瞬間、そのコアめがけて火球を正確に撃ち込んだ。
アンゲロスは甲高い悲鳴を上げる間もなく、内部から焼き尽くされて機能停止した。
「…肩慣らしにもならない」
彼女はそう吐き捨て、剣の柄を握り直す。
その瞳には、もっと手応えのある敵を求める渇望が揺らめいていた。
そうして、彼らは一時間以上かけて、サーバー室周辺の敵を十数体、音もなく排除していった。
ペリカの的確な状況分析と電撃アーツによる支援、レーヴァテインの圧倒的な対単体戦闘能力、そして、それらをまとめ上げ、最適な戦術を指示する管理人の指揮。
三人の連携は、まるで長年組んできたチームのように完璧だった。
そして、ついに彼らは中央サーバー室の巨大な隔壁の前にたどり着いた。ここが最終目的地だ。
隔壁の向こう側からは、巨大なアンカーが発する低周波の唸りと、多数のアンゲロス、そしてランドブレイカーたちの活動音が漏れ聞こえてくる。
「これより先に進むには、正面からの戦闘は避けられません。…管理人、最終確認を」
ペリカが、緊張した面持ちで管理人を見つめる。
隔壁の向こうには、この基地の敵戦力の大部分が集結しているはずだ。これを突破し、アンカーを破壊することができるか。
管理人は頷くと、隔壁の脇にあるメンテナンス用の小さな覗き窓から、中の様子を伺った。
広大なサーバー室の中央に、天を突く巨大なアンカーが根を張り、脈動している。
その周囲を、百を超えるアンゲロスが徘徊し、さらに数十人のランドブレイカーたちが、アンカーに何かのケーブルを接続する作業を行っていた。そして、その作業を指揮しているのは、先ほど偵察時に確認した、あの重装備のリーダーだった。
「…やはり、奴らが親玉か。あのリーダーと、設置している装置を破壊するのが最優先だ」
管理人はそう判断し、二人に向き直る。
「俺とレヴィで突入し、リーダーを叩く。ペリカは後方から援護と、敵の増援ルートの遮断を頼む。いいな?」
「承知しました」
「言われなくても!」
ペリカの冷静な返事と、レーヴァテインの好戦的な声が同時に響く。三人はアイコンタクトを交わし、それぞれの武器を構え直した。
管理人が、隔壁を開けるための手動コンソールに手をかける。静寂は、ここまでだ。これから、この旧基地の運命を決める、最後の戦いが始まる。
「――行くぞ!」
管理人の号令と共に、重厚な隔壁が音を立てて開いた。その瞬間、三人は一斉にサーバー室へと雪崩れ込む、奇襲だった。
中のランドブレイカーたちは、まさか背後から敵が現れるとは夢にも思っておらず、完全に虚を突かれた形となった。
「標的を確認!排除します!」
ペリカが叫ぶと同時に、彼女の掲げたタクトから放たれた電撃アーツが、蜘蛛の巣のように広がり、入り口付近にいた数人のランドブレイカーとアンゲロスをまとめて感電させ、動きを止める。
その隙を逃さず、管理人とレーヴァテインが敵陣の奥深くへと切り込んでいった。
「燃え上がれ!切り尽くせ!」
レーヴァテインの剣が、紅蓮の炎を纏って唸りを上げる。炎を纏って突撃し、彼女は炎の渦となりアンゲロスの群れを次々となぎ倒し、焼き尽くしていく。
その様は、まさに戦場の破壊神だった。
管理人は、アサルトライフルを乱射してランドブレイカーたちの注意を引きつけながら、一直線にリーダー格の男へと迫る。
ランドブレイカーたちもすぐに体勢を立て直し、猛烈な反撃を開始した。銃弾が飛び交い、レーザーが空を裂く。爆発の衝撃が、巨大なサーバー室全体を揺るがした。
強襲は成功し、一気に敵の数を減らすことには成功した。だが、敵の数は依然として多い。
ペリカが後方で増援を食い止め、レーヴァテインがアンゲロスの大群を引き受けているが、それも時間の問題だった。
管理人の前にも、リーダーを守ろうとする精鋭のランドブレイカーたちが次々と立ちはだかる。
「くっ…!」
管理人は片手剣で敵の刃を受け止めながら、ライフルで応戦するが、じりじりと後退を余儀なくされる、手が足りない。
(このままでは…ジリ貧だ…)
リーダーの男は、そんな管理人たちの奮闘を嘲笑うかのように、悠然とアンカーの調整を続けている。
「ハッ、ネズミが数匹紛れ込んだところで、何も変わらんわ! このアンカーさえあれば、俺たちはタロIIの王になれるのだ!」
リーダーが高らかに笑った、その時だった。追い詰められた管理人に、とどめを刺そうと巨大なウォーハンマーを振り上げた、その瞬間――。
「――そこまでだよ、おじさん!」
凛とした、しかしどこか楽しげな声が、戦場の喧騒を切り裂いて響き渡った。全員が、声のした方角――天井を見上げる。
サーバー室の天井の通気口が内側から蹴破られ、そこから一人の影が、まるで舞い降りるように飛び出してきたのだ。
その影は、空中で華麗に一回転すると、管理人とリーダーの男の間に、トン、と軽やかに着地した。蒼い色を基調とした戦闘服に身を包み、二本の剣を構えた、快活な笑みを浮かべる少女。チェンだった。
「剣の光、奔夜の如し!――断!」
彼女は着地と同時に、一切の淀みない動きで二本の剣を交差させ、閃光が走る。リーダーの男は、何が起こったのか理解する間もなかっただろう。
彼の巨大なウォーハンマーは、振り下ろされる途中で真っ二つに切断され、彼の体にもまた、一筋の赤い線が走っていた。
彼は信じられないといった表情で自分の体を見下ろし、そして、音もなく崩れ落ちた。
一瞬の静寂。ランドブレイカーたちも、アンゲロスさえも、そのあまりにも鮮やかな一撃に動きを止めていた。
チェンは、そんな周囲の反応など気にも留めず、くるりと振り返ると、呆然と立ち尽くす管理人に向かって、にぱっと花が咲くような笑顔を見せた。
「へへっ、どう? 今の技、決まってた?」
彼女はそう言って、得意げに胸を張る。
その無邪気な問いかけは、死と隣り合わせのこの戦場において、あまりにも場違いで、しかし、だからこそ頼もしく響いた。
突如として現れた頼もしい助っ人。そのあまりにも鮮やかで、あまりにも場違いな登場に、一瞬思考が停止する。目の前の少女――チェンは、リーダー格の男を一撃で屠り、まるで舞台役者のようにポーズを決めると、屈託のない笑顔で称賛を求めてきた。
(チェン!?なんでここに…いやそれよりも…)
管理人は、呆気にとられながらも、無意識のうちに右手の親指をぐっと立てていた。
「ナイス!助かった!」
「えへへぇ…それほどでも…ってそれどころじゃないね!」
管理人のグッドサインに、チェンは照れたように頬を掻いたが、すぐに表情を引き締め、二本の剣を構え直した。
彼女の言う通り、状況はまだ終わっていない。リーダーを失ったランドブレイカーたちは混乱しているが、アンゲロスの群れは依然として健在だ。
むしろ、指揮系統を失ったことで、より凶暴に、無差別に暴れ始めている。
「任せて! あたしがやる!」
チェンはそう叫ぶと、弾丸のような速さでアンゲロスの群れへと突っ込んでいった。その動きは、まるで重力を感じさせない。アーツ能力による「浮遊」が、彼女の身体能力を常人離れしたものへと昇華させているのだ。
彼女は二本の剣で舞うように敵を切り裂き、捌き、時にはアクロバティックな体術で攻撃をいなし、的確にコアだけを破壊していく。
「…面白い! 私がやる!」
チェンの華麗な戦いぶりに触発されたのか、それまで大群を相手にやや消耗気味だったレーヴァテインが、再び闘志を燃え上がらせた。
彼女はチェンと背中合わせになるような位置取りをすると、炎の剣を振るい、チェンが討ち漏らした敵を焼き払い、彼女への攻撃を防ぐ。
対照的な二人の剣士が、まるで完璧な
「援護します! 」
後方では、ペリカが冷静に戦況を分析し、的確な援護射撃とアーツで二人をサポートしていた。
彼女は、サーバーラックの陰から飛び出してくるランドブレイカーの残党を精密射撃で仕留め、チェンとレーヴァテインに群がろうとするアンゲロスを電撃で足止めする。
彼女の存在が、前衛の二人が全力で戦える盤石の土台となっていた。
管理人は、その光景を目の当たりにしながら、自らも残敵の掃討を開始した。チェンの登場によって、戦いの流れは完全にこちらに傾いた。
彼女という予期せぬ戦力は、膠着しかけていた戦況を覆す、まさに「切り札」だった。管理人はライフルで遠距離の敵を牽制しつつ、片手剣で接近してくるアンゲロスを切り伏せる。
戦いは、もはや一方的なものだった。数分後、サーバー室に立っているのは管理人たち四人だけになっていた。床には、機能停止したアンゲロスの残骸と、倒れたランドブレイカーたちが転がっている。
「ふーっ……予想通り! 楽勝、楽勝!」
チェンは剣の血糊を振るい落とすと、鞘に納め、満足げに息をついた。
その額にはうっすらと汗が光っているが、疲れた様子は微塵も感じられない。
「チェン…どうしてあなたがここに? 事前の連絡では、別のエリアを捜索しているはずでは…」
ペリカが、安堵の息をつきながらも、不思議そうにチェンに問いかける。彼女の登場は、ペリカにとっても完全に想定外だったようだ。
「んー? なんかこっちの方がお祭り騒ぎの匂いがしたからさ! あたしのかんって、結構当たるんだよね! それに、ペリカたちが危ない時は、いつでも駆けつけるって約束したでしょ?」
チェンは悪びれもせず、にひひと笑った。その言葉に、ペリカは呆れたように、しかしどこか嬉しそうに小さなため息をつく。
管理人は、そのやり取りを見ながら、静かに中央に鎮座する巨大なアンカーへと視線を向けた。最大の脅威は、まだ残っている。
戦闘の熱が冷めやらぬサーバー室。床に転がる残骸と、壁に残る無数の弾痕が、先程までの激しい戦いを物語っていた。
一同の視線は、部屋の中央で不気味な光を放ち続ける巨大なアンカーへと注がれる。
それは、周囲の空間を歪ませるほどの強大なエネルギーを内包し、今もなお低く唸り続けている。
敵はいなくなったが、本当の脅威はまだ健在だった。
管理人は、破壊されたコンソールに片足を乗せ、腕を組みながら巨大なアンカーを見上げた。
その表面は滑らかな黒い金属のようでありながら、生き物のように脈動し、時折、内部で青白い光が走るのが見える。どう見ても、通常の兵器で破壊できる代物ではなさそうだ。
「さぁて…これどうやって破壊するんだ…?」
「…通常兵器による破壊は困難かと思われます。
アンカーは、自己修復能力と、物理攻撃に対する高い耐性を持っています。下手に攻撃すれば、暴走して周囲の空間ごと侵蝕を拡大させる危険性も…」
管理人の呟きに応じるように、ペリカがデータパッドを操作しながら冷静に分析結果を告げる。
彼女の顔には、これまでにないほどの緊張が浮かんでいた。このアンカーは、それほどまでに規格外の存在なのだ。
「グズグズ言っててもしょうがないだろ。私が根本から焼き切ってやる」
痺れを切らしたレーヴァテインが、再び剣に炎を纏わせ、アンカーに近づこうとする。
しかし、彼女が数歩踏み出した瞬間、アンカーから放たれる不可視のエネルギー波に阻まれ、思わず顔をしかめて後ずさった。
「…チッ、なんだこの不快な感じは…」
「待ってください、危険です! あれは高濃度の侵蝕エネルギーを常時放出しています。
アーツへの干渉も確認されており、直接触れれば精神汚染を引き起こす可能性が…!」
ペリカが悲鳴に近い声で警告する。彼女のデータパッドには、危険を示すアラートが激しく点滅していた。
「うーん…じゃあ、どうするの? このままじゃ、また新しいのが生まれてきちゃうよ?」
チェンが、状況を理解できないといった様子で首を傾げる。彼女の言う通り、放置すればアンカーは再びアンゲロスを産み出し始め、これまでの苦労が水泡に帰すだろう。
全員が行き詰まり、沈黙が場を支配する。その時、管理人はランドブレイカーのリーダーが倒れている場所に目をやった。
彼の傍らには、彼らがアンカーに接続しようとしていた、無数のケーブルと謎の装置が散乱している。
「…ペリカ、あの装置を調べてくれ。奴らはこれを使って、アンカーを制御しようとしていた。
なら、逆にこれを利用して、アンカーを暴走、あるいは自壊させることができるかもしれない」
管理人の言葉に、ペリカははっとした表情を見せ、すぐに装置のもとへ駆け寄った。
彼女はデータパッドをケーブルに接続し、内部構造の解析を始める。専門的な知識を持つ彼女にとって、それは最も得意とする分野だった。
「これは…! なるほど、アンカーのエネルギー循環を外部から強制的に制御するための干渉装置…! ランドブレイカーたちが作ったにしては、かなり高度な技術です。おそらく、どこかから盗み出した技術を応用しているのでしょう。…管理人、あなたの推測通りかもしれません。
この装置を逆用すれば、アンカーのエネルギーコアを過負荷状態に陥らせ、内部から破壊できる可能性があります…! やってみます!」
ペリカの瞳に、エンジニアとしての探求心の光が宿る。彼女は驚異的な集中力でデータパッドを操作し、装置のプログラムを書き換え始めた。しかし、その作業には時間がかかる。
そして、彼女の作業を、アンカーが黙って見ているはずもなかった。
ペリカが装置に干渉を始めた途端、アンカーの脈動が激しくなる。そして、その表面から、複数の触手のようなものが伸び、猛烈な勢いでペリカに襲いかかった。
「ペリカを守れ! 時間を稼ぐぞ!」
管理人は即座に叫び、チェンとレーヴァテインと共にペリカの前に立ちはだかった。最後の戦いが、今、始まろうとしていた。
アンカーの反撃は、これまでのアンゲロスの攻撃とは比較にならないほど苛烈だった。
黒い触手は、まるで意思を持っているかのように、予測不可能な軌道で管理人たちに襲いかかる。
それは鋼鉄のサーバーラックを紙のように貫き、コンクリートの床を容易く抉り取った。
一撃でも食らえば、ただでは済まないだろう。
「散開しろ! 攻撃を一点に集中させるな!」
管理人は叫びながら、襲い来る触手を片手剣で弾き、すかさずアサルトライフルで別の触手を撃ち抜く。
しかし、触手は撃ち抜かれてもすぐに再生し、その勢いは衰えることを知らない。
「燃え尽きろ! 灰燼に帰せ!」
レーヴァテインが炎の剣を大上段に振りかぶり、薙ぎ払うように迫ってきた数本の触手をまとめて焼き切る。灼熱の炎が触手を炭化させるが、それも束の間、アンカー本体から新たな触手が蛇のように生えてくる。切りがない。
「――はっ!やっ!」
チェンは、その驚異的な身軽さを活かし、触手の攻撃を紙一重で躱しながら、懐に飛び込んでは二刀で的確に触手の根元を切り裂いていく。
彼女の剣技は触手の再生速度を上回っているように見えるが、その分、消耗も激しいはずだ。
彼女の額からは、玉のような汗が絶え間なく流れ落ちている。
三人は、後方で必死に作業を続けるペリカを守るため、円を描くような陣形を組んで、四方八方から迫る触手を捌き続ける。爆音と衝撃、飛び散る火花が、絶えずサーバー室を揺るがした。
壁際に追い詰められ、瓦礫に足を取られ、何度となく危険な状況に陥るが、その度に三人は互いを庇い、絶妙な連携で窮地を脱していた。
管理人は、アサルトライフルを撃ち尽くし、予備のマガジンに交換する暇もなく、片手剣一本で触手の猛攻に耐えていた。肩で息をし、全身から汗が噴き出す。
集中力は限界に近く、一瞬でも気を抜けば、あの黒い槍に貫かれるだろう。
(まだか…!ペリカ!)
心の中で叫んだ、その時だった。後方でキーボードを叩き続けていたペリカが、顔を上げた。その表情は疲労困憊だったが、瞳には確かな成功の光が宿っていた。
「もう少し…もう少し踏ん張ってください!自壊シークエンスを起動させます!」
彼女はそう叫ぶと、エンターキーを力強く叩き込んだ。
その瞬間、ペリカが操作していた干渉装置から眩い光が放たれ、ケーブルを通じてアンカー本体へと逆流していく。
グオオオオオオォォォッッ!!!
アンカーが、これまでとは比較にならない、断末魔のような絶叫を上げた。その脈動は不規則に乱れ、表面には無数の亀裂が走り、そこから青白い光が激しく漏れ出す。
管理人たちに襲いかかっていた触手は、まるで操り主を失ったかのように力を失い、だらりと床に垂れ下がった。
「…!解析終了しました!これで終わらせます!」
ペリカが最後のコマンドを叩き込むと、アンカーは内部から膨張するようにその形を崩し始めた。
制御を失った莫大なエネルギーが、暴走を始めているのだ。
「全員伏せろ! 爆発するぞ!」
管理人の警告と同時に、アンカーは閃光と共に大爆発を起こした。凄まじい衝撃波と熱風がサーバー室を吹き荒れる。
管理人は咄嗟に近くにいたチェンの体を庇うように覆いかぶさり、レーヴァテインは剣を地面に突き立てて爆風に耐えた。ペリカは、頑丈なコンソールの影に身を潜めていた。
数秒後、轟音が止み、舞い上がっていた粉塵がゆっくりと晴れていく。そこには、巨大なクレーターだけが残り、あれほど猛威を振るったアンカーの姿は、跡形もなく消え去っていた。静寂が、戦いの終わりを告げていた。
爆心地から吹き荒れた嵐が過ぎ去り、耳を聾するほどの轟音は嘘のように消え去った。
後に残されたのは、絶対的な静寂と、空気中に漂う金属の焼けた匂い、そして舞い続ける粉塵だけだった。
管理人は、咄嗟に庇ったチェンの身体の上に覆いかぶさったまま、数秒間、身じろぎもせずにいた。
全身を打ち付けた衝撃波の余韻が、骨の髄まで痺れさせている。
ゆっくりと身体を起こすと、すぐ下から
「う、うぅ…」
という小さな呻き声が聞こえた。見れば、チェンが目を白黒させながら、頭を押さえている。
管理人は、はっと我に返り、彼女の肩を掴んで身体を揺さぶった。
「…はっ! チェン、大丈夫か!? 怪我は!?」
その必死な声に、チェンは何度か瞬きを繰り返すと、やがて焦点が合ったのか、いつもの快活な笑顔を無理やり作って見せた。
「だ、大丈夫…ちょっと目が回っただけ…。
管理人こそ、あたしを庇ったりして…無茶するんだから…」
彼女はそう言って、管理人の助けを借りながらゆっくりと立ち上がった。服はところどころ破れ、顔には煤が付いているが、幸い大きな怪我はないようだった。
管理人は安堵のため息をつくと、すぐさま周囲に声を張り上げた。
「他のみんなも無事か!?」
粉塵の向こうから、咳き込む音と共に二つの返事が返ってきた。
「…これくらいで死ぬほど、ヤワじゃない」
レーヴァテインが、地面に突き立てていた剣を杖代わりに、ゆっくりと立ち上がる。彼女の赤い髪は乱れ、戦闘服はボロボロだったが、その瞳の光は少しも衰えていなかった。
むしろ、強大な敵を打ち破った満足感からか、不敵な笑みさえ浮かべている。
「…はい、こちらも…問題ありません。アンカーの完全消滅を確認…。作戦は、成功です…管理人」
コンソールの影から、ペリカが煤だらけの顔を覗かせた。彼女はひどく消耗しているようで、壁に手をついてようやく立っている状態だったが、その声には確かな達成感が滲んでいた。
彼女の手にしたデータパッドには、「OBJECTIVE COMPLETE」の文字が緑色に輝いている。
全員の無事を確認し、管理人は全身から力が抜けていくのを感じた。その場にへたり込みそうになるのを、気力だけでなんとか堪える。
見渡せば、あれほど広大だったサーバー室は、爆発によって半壊し、巨大なクレーターが口を開けている。全ての元凶だったアンカーは、跡形もない。
三週間前に失われた旧基地。その心臓部を、彼らはついに奪還したのだ。
静寂の中、チェンがふと呟いた。
「…やったんだ、あたしたち」
その言葉を皮切りに、張り詰めていた緊張の糸が、ぷつりと切れた。レーヴァテインは乱暴に頭を掻き、ペリカは安堵のあまりその場に座り込む。
そしてチェンは、管理人に向かって、今度こそ心からの、太陽のような笑顔を見せた。
この勝利は、決して一人では成しえなかった、四人の力が合わさって初めて掴み取れたものだった。
管理人もまた、彼女たちの顔を順に見回し、静かに、しかし力強く頷き返した。
戦いは終わったのだ。
チェンってアーツによってちょっと浮けるらしいですね(資料より)
ゲーム内の性能は星5ですが、実際に彼女が戦うとなると結構強そうですよね…
本文の長さアンケートです
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このままでちょうどいい!
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あのぉもうちょっと短くできませんかねぇ…
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たまには長くやってもいいのよ。