反逆の王子は実力至上主義の世界で優しい世界を望む   作:evejanjan

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目撃者

須藤事件から、数日が経った。

 

Dクラスでは、調査が続いていた。

 

しかし。

 

状況は大きく変わっていない。

 

Cクラス側の証言。

 

須藤の主張。

 

監視記録。

 

どれも決定的なものにはならなかった。

 

ルルーシュは資料を見る。

 

情報が足りない以上、まだ判断は下せない。

 

「珍しいね」

 

スザクが言う。

 

「何がだ」

 

「君がここまで慎重なの」

 

ルルーシュは視線を上げる。

 

「情報不足の状態で判断する方が危険なだけだ」

 

スザクは苦笑する。

 

「昔なら、もっと早く動いていた気がする」

 

「……」

 

否定はしなかった。

 

「一つ気になることがある」

 

綾小路が言った。

 

教室で事件について話していた時だった。

 

「Cクラス側の証言」

 

平田が聞く。

 

「何か問題があるの?」

 

「三人とも、内容が同じ」

 

「それは一致しているってことじゃない?」

 

「普通なら」

 

綾小路は答える。

 

「でも、細かい部分まで揃っている」

 

ルルーシュが視線を向ける。

 

「準備していた可能性」

 

「あると思う」

 

短い返答。

 

綾小路はそれ以上続けなかった。

 

必要な情報だけを置く。

 

それ以上は求めない。

 

ルルーシュは思った。

 

この男は、集めた情報をすべて見せるのではなく、必要なものだけを選んで置いていく。

 

放課後。

 

ルルーシュは校内を歩いていた。

 

事件現場。

 

周囲の位置。

 

監視カメラ。

 

人の流れ。

 

何度確認しても、足りないものがある。

 

第三者の視点。

 

「探しているんだね」

 

声がした。

 

振り返る。

 

櫛田だった。

 

「情報を集めている」

 

ルルーシュは答える。

 

「目撃者?」

 

「可能性がある」

 

櫛田は少し考える。

 

「一人、気になる子がいる」

 

「誰だ」

 

「佐倉さん」

 

教室の端。

 

一人で座っている少女。

 

佐倉愛里。

 

普段から目立つことはない。

 

人の輪の外にいることが多い。

 

誰かと話す時も、相手の反応を気にするような様子がある。

 

「事件の日、少し様子が違った気がする」

 

櫛田が言う。

 

「でも、本人にはまだ聞いてない」

 

「なぜ」

 

「無理に聞いたら、きっと困らせるから」

 

ルルーシュは佐倉を見る。

 

情報を得るだけなら簡単だ。

 

問いかければいい。

 

しかし。

 

それで引き出した言葉は。

 

本当に本人の意思なのか。

 

そこが問題だった。

 

翌日。

 

スザクが佐倉へ声をかけた。

 

「佐倉さん」

 

佐倉の肩が小さく揺れる。

 

「……はい」

 

「少し聞きたいことがある」

 

佐倉は不安そうに視線を動かした。

 

「須藤君のこと……ですか?」

 

スザクは頷く。

 

「でも」

 

続ける。

 

「言いたくないなら、言わなくていい」

 

佐倉は少し驚いた表情をした。

 

普通なら。

 

答えを求められると思っていた。

 

責められると思っていた。

 

でも。

 

スザクは待っていた。

 

「どうして……?」

 

小さな声。

 

「知りたい気持ちはある」

 

スザクは答える。

 

「でも、そのために誰かが苦しむなら違うと思うから」

 

佐倉は俯いた。

 

手が震えている。

 

何度も言葉を探している。

 

「……私」

 

佐倉は一度口を開いたが、声にはならなかった。

 

話せば何かが変わる。自分が関わったことで、誰かが傷つくかもしれない。

 

その恐怖が、言葉を押し戻していた。

 

「言わないという選択もある」

 

別の声がした。

 

綾小路だった。

 

佐倉が顔を上げる。

 

「……綾小路君」

 

「無理に話す必要はない」

 

淡々とした声。

 

「でも」

 

続ける。

 

「話さなければ、何も変わらない」

 

佐倉は黙る。

 

「須藤がどうなるか」

 

「Cクラスがどうなるか」

 

「それも含めて、その選択の結果になる」

 

冷たい言葉だった。

 

しかし。

 

責めているわけではない。

 

ただ。

 

選択を戻しているだけだった。

 

佐倉は視線を落とした。

 

怖い。

 

今でも怖い。

 

でも。

 

このまま黙っていたら。

 

きっと後悔する。

 

事件の日、Cクラスの三人に囲まれていた須藤の姿を思い出す。

 

自分はそれを見ていながら、何もできなかった。

 

でも。

 

今なら。

 

できることがある。

 

「……私」

 

佐倉はゆっくり顔を上げた。

 

「話します」

 

声は震えていた。

 

それでも。

 

今度は止まらなかった。

 

「事件の日」

 

佐倉は続ける。

 

「須藤君が呼び出されるところを見ました」

 

「……」

 

「Cクラスの人たちが、先に声をかけていました」

 

佐倉は手を握る。

 

「怖くて……少し離れた場所から見ていました」

 

「でも」

 

一度、息を吸う。

 

「須藤君が突然殴ったようには見えませんでした」

 

その証言は大きかった。

 

それでも、ルルーシュは内容だけでなく、証言した佐倉自身を見ていた。

 

声を震わせ、何度も迷いながら、それでも最後まで自分の言葉で話した。そこにも意味があった。

 

「ありがとう」

 

スザクが言った。

 

佐倉は少し驚く。

 

「でも」

 

スザクは続ける。

 

「これから先は、君が決めていい」

 

「……」

 

「証言するかどうか」

 

佐倉は小さく頷いた。

 

放課後。

 

ルルーシュは資料を整理する。

 

情報は揃い始めた。

 

目撃者。

 

証言。

 

新しい事実。

 

だが。

 

まだ終わりではない。

 

証言は一つ。

 

判断するのは学校側。

 

そして。

 

相手はCクラス。

 

「次は」

 

ルルーシュは呟く。

 

「判断する側を見る」

 

その頃。

 

Cクラス。

 

龍園翔は報告を聞いていた。

 

「目撃者?」

 

石崎が頷く。

 

「Dクラスにいるらしいです」

 

龍園は笑った。

 

「面白い」

 

「ただの落ちこぼれなら」

 

窓の外を見る。

 

「こんな動きはしない」

 

須藤事件は、単なる暴力問題から、この学校で何が正しいと認められるのかを争う戦いへ変わり始めていた。

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