反逆の王子は実力至上主義の世界で優しい世界を望む 作:evejanjan
二人一組のペアが決まってから、教室には二つの時間が流れるようになった。
授業が終われば、それぞれのペアが机を寄せる。
退学を避けるための勉強。
Cクラスへ解かせる問題の作成。
どちらも止めることはできない。
片方だけに時間を使えば、もう片方で負ける。
「池君、そこはさっきと同じ形だよ」
櫛田が問題集の一行を指した。
「数字が変わっただけだから、先に式を作ってみよう」
「式ってどれ!?」
「まず、聞かれているものに線を引いて」
「線なら引ける!」
「うん。そこから始めようか」
池の返事に、近くの生徒が笑う。
櫛田も一緒に笑った。
そのまま池の手を止めず、答えへ近づけていく。
平田は山内の隣で、英単語の確認をしている。
須藤は堀北から渡された用紙を睨み、同じ単語を何度も書いていた。
教室の後方では、スザクが解く順番を説明している。
「難しい問題から逃げるんじゃない。今解ける問題を先に取るんだ」
「でも、最後まで戻れなかったら?」
「それでも、分からない一問に時間を使って、取れる三問を残すよりいい」
ペアごとの学習は続いている。
その間、黒板の右側では別の作業が進められていた。
国語。
数学。
英語。
理科。
社会。
そのほかの科目も含め、担当者が作成した問題案が科目ごとに集められている。
同じ内容が重なっていないか。
授業範囲から外れていないか。
解答が一つに定まるか。
難易度に偏りがないか。
平田が進行を確認し、堀北が採用する問題を選ぶ。
ルルーシュは受け取った問題案へ番号を付け、変更された箇所を記録していた。
「今の数学は三版目?」
櫛田が尋ねた。
「ああ」
「二版目は、もう使わないんだよね?」
「現時点ではな」
「じゃあ、古い方は消しておいた方がいい?」
「残す」
「間違えて使う人がいるかもしれないよ?」
「使われた時に、どの段階のものか分からなくなる方が問題だ」
ルルーシュは二版目の先頭へ、不採用と日時を付け加えた。
「仮の問題は削除しない。閲覧できる場所だけを分ける」
「なるほど。どこが変わったか分かるようにするんだね」
櫛田は素直に頷いた。
「最終的に提出する時は、全部まとめて一つの封筒に入れるの?」
「学校の指定に従う」
「提出する先生って、茶柱先生だけ?」
「資料には担任または指定された担当教師とあるわ」
堀北が答えた。
「まだ何か確認したいことがあるの?」
「ううん。提出の時に迷ったら困ると思って」
「正式な提出は私が行う。櫛田さんが迷う必要はないわ」
「それは分かってるよ。ただ、堀北さんに何かあった時のことも考えておいた方がいいかなって」
「代替の手順は学校へ確認する」
「分かった。必要なら私も手伝うね」
櫛田はそう言って、池の席へ戻っていく。
声も表情も、普段と変わらない。
提出方法を確認すること自体も、不自然ではなかった。
クラスのために動く生徒なら、期限や手続きを知ろうとする。
しかし、櫛田が尋ねたのは一度ではない。
封筒の形式。
提出可能な時刻。
担任が職員室にいない場合の提出先。
正式版が完成する前に、一部だけを提出できるか。
問題案の作成より、完成したものを誰が受け取り、どの経路で学校へ渡すのかを細かく確認している。
ルルーシュは端末上の記録へ、新しい項目を加えた。
確認者。
確認した内容。
時刻。
まだ結論は書かない。
事実だけを残す。
◇
放課後。
教室から生徒が減っていく中、堀北は机の上の問題案を閉じた。
「綾小路君」
「何だ」
「少し付き合って」
理由は言わなかった。
綾小路も聞かなかった。
堀北は次に、池へ勉強を教えていた櫛田を見る。
「櫛田さんも来てくれる?」
「私も?」
「ええ。二人に話があるの」
櫛田は一瞬だけ綾小路へ視線を向けた。
すぐに笑顔へ戻る。
「分かった。池君、続きは明日でもいい?」
「もちろん! 俺、一人でもちゃんとやっとくから!」
「答えを写すだけじゃ駄目だよ」
「分かってるって!」
三人は教室を出た。
堀北が向かったのは、普段使われていない特別棟の教室だった。
扉を開け、中に誰もいないことを確認する。
廊下にも人影はない。
綾小路が最後に入り、扉を閉めた。
「それで、話って何かな」
櫛田は教室にいた時と同じ声で尋ねた。
堀北は正面からその顔を見る。
「このまま曖昧にしておくつもりはないわ」
「何のこと?」
「あなたが私を退学させようとしていることよ」
櫛田の笑顔は消えなかった。
「急にどうしたの、堀北さん」
「体育祭の参加表は、Dクラスの内部からCクラスへ渡った」
「それは聞いたよ。でも、誰がしたのかは分かってないんだよね?」
「ええ。直接証明できるものはない」
「だったら、どうして私に言うの?」
「私を狙う理由があるから」
堀北は机へ手を置いた。
「中学時代のことを、私が知っている」
櫛田の目から、笑みだけが少し薄くなる。
「船の上でも、あなたは私の動きを気にしていた。体育祭では、私の出場競技を含む参加表が龍園君に利用された。そして今は、問題の提出方法を必要以上に確認している」
「全部、堀北さんの想像だよ」
「そうね」
堀北は否定しなかった。
「参加表を渡した瞬間は見ていない。龍園君とのやり取りも知らない。だから、今ここであなたを犯人だと断定するつもりはないわ」
「じゃあ、何がしたいの?」
「終わらせたいの」
堀北の声は変わらなかった。
「あなたが私を排除しようとし、私はそれを警戒する。その状態を続ければ、またクラス全体が巻き込まれる」
「私は何もしてないよ」
「なら、私の提案を断る理由もないはずよ」
櫛田はしばらく答えなかった。
教室の外から、遠くで扉の閉まる音がした。
それが聞こえなくなると、櫛田の口元から笑みが消えた。
「相変わらず、嫌な言い方するね」
声も変わっていた。
柔らかさがなくなり、言葉の端に苛立ちが滲む。
「私が断ったら、やったって認めたことにするつもり?」
「認めたとは思わないわ。ただ、これからも続ける意思があると判断する」
「同じじゃん」
「違う。過去の証明と、今後の判断は別よ」
櫛田は短く息を吐いた。
「綾小路君もいる前で、よくそんな話できるね」
「彼にも知られて困ることがあるのでしょう?」
「こいつが勝手に見ただけ」
「そうかもしれないわね」
堀北は綾小路へ助けを求めなかった。
自分の言葉で続ける。
「本試験の得点で勝負しましょう」
櫛田の眉が僅かに動いた。
「私より高い得点を取れば、私は自主退学する」
「……本気で言ってる?」
「ええ」
「私が負けたら?」
「今後、私を退学させるための妨害を止めること」
櫛田はすぐに返事をしなかった。
堀北の表情を読むように見つめている。
「それだけ?」
「あなたへ過去を話せとも、クラスへ本性を明かせとも言わない。私への妨害を止める。それだけよ」
「ずいぶん自信があるんだね」
「負けるつもりで勝負を持ちかける人はいないでしょう」
「自分が負けた時、ちゃんと辞められる?」
「約束は守るわ」
「口だけかもしれない」
「必要なら、今ここで条件を確認してもいい」
「担任へ提出する退学届まで、先に用意するつもりはないけれど」
「そこまでして、私を止めたいんだ」
「あなた一人のためではないわ」
堀北は即座に答えた。
「体育祭で、Dクラス全体が百クラスポイントを失った。あなたが関わったと断定できなくても、同じ危険を見過ごすつもりはない」
「じゃあ、私を追い出せば?」
「証拠もなく?」
「作ればいいじゃん。堀北さんなら、それくらい考えそうだけど」
「あなたと同じことをするつもりはない」
櫛田の目が細くなる。
それから、綾小路へ顔を向けた。
「でも、それじゃ足りない」
「何がだ」
「綾小路君もだよ」
初めて、櫛田の敵意が綾小路へ明確な形を取った。
「私のことを知ってるのは、堀北さんだけじゃない。綾小路君も、あの時のことを誰かに話せる」
「話していない」
「今はね」
「今後も話さないと言えば、信じるのか」
「信じないよ」
櫛田は迷わず答えた。
「私が勝ったら、二人とも辞めて」
「彼を巻き込む権利は、あなたにも私にもないわ」
堀北が言った。
「勝負を持ちかけたのは私よ。綾小路君の退学まで条件にはできない」
「だったら受けない」
櫛田は堀北へ向き直る。
「堀北さんだけがいなくなっても、綾小路君が残るなら意味ないから」
話はそこで止まった。
堀北は綾小路を見る。
答えを求めている。
だが、自分の提案へ従えとは言わない。
「俺も条件に入っていい」
綾小路が言った。
「綾小路君」
「櫛田が負けた場合、俺への妨害も止める。それで釣り合う」
「あなたが受ける必要はないわ」
「受けなければ、勝負自体が成立しない」
「だからといって――」
「俺の退学を決めるのは俺だ」
堀北の言葉が止まる。
綾小路は櫛田を見る。
「俺も受ける。お前が勝てば、堀北と一緒に自主退学する」
「後から知らないって言わない?」
「言わない」
「二人とも、記録に残して」
櫛田は端末を机へ置き、録音を開始した。
「構わないわ」
三人は条件を一つずつ確認した。
櫛田が堀北より高い得点を取った場合、堀北と綾小路は自主退学する。
堀北が櫛田を上回った場合、櫛田は堀北と綾小路を退学させるための直接的な妨害を止める。
三人が同じ内容を口にし、約束を成立させた。
櫛田は録音を止め、端末を手に取った。
その表情へ、再び笑みが戻った。
「これで、やっと終わらせられるね」
「ええ」
「堀北さん、自分が絶対に勝つと思ってるでしょ」
「あなたも同じでしょう」
「うん」
櫛田は否定しなかった。
その返答だけで、単なる学力への自信ではないことが分かる。
堀北も気づいている。
だが、問い詰めなかった。
「話は終わりよ」
堀北が鞄を持つ。
「先に戻るわ」
教室を出る直前、綾小路へ一度だけ視線を向けた。
勝手に巻き込んだわけではない。
それでも、自分が始めた勝負によって、綾小路の退学まで条件へ加わった。
何も感じていないわけではない。
だが、今ここで謝れば、本人の選択まで否定することになる。
堀北は何も言わず、扉を閉めた。
◇
櫛田も先に教室を出た。
残ったのは綾小路一人だった。
自分が退学対象へ含まれていることを、櫛田の口から初めて明確に聞いた。
以前から警戒されている可能性は考えていた。
あの場面を見た。
脅しも受けた。
それでも、櫛田の目的は堀北の排除だと見ていた。
自分は秘密を守る限り、優先順位の低い障害にすぎない。
その見方は修正する必要がある。
櫛田は、自分を残すつもりがない。
そして、勝負を受けた時の反応には迷いがなかった。
堀北と正面から得点を競えば、通常なら櫛田が有利とは言えない。
櫛田自身も、それを理解しているはずだった。
それでも勝てると考えている。
理由は限られる。
DクラスがCクラスへ渡す問題。
CクラスがDクラスへ渡す問題。
体育祭で使われた情報経路。
龍園翔。
櫛田がCクラスの問題と解答を事前に得られるなら、学力差は意味を失う。
同時に、Dクラスの問題を龍園へ渡せば、クラス全体を敗北させることもできる。
堀北との個人的な勝負だけではない。
退学条件を回避できたとしても、Dクラスが攻撃と防衛の両方で負ければ、また百クラスポイントを失う。
龍園へ接触する方法はある。
だが、今すぐ動く理由はない。
櫛田がどの経路で動くか。
堀北が何を準備しているか。
龍園が櫛田との取引をどの程度重く見ているか。
確認するべきものが残っている。
それでも、選択肢だけは作っておく必要がある。
櫛田を守る利益と、切り捨てる利益。
龍園がどちらを選ぶかは、条件の置き方で変わる。
まだ接触しない。
ただし、必要になればすぐに動ける。
◇
翌日。
問題作成は、最初の選別段階を終えていた。
各科目の候補は絞られ、作成者へ修正が返されている。
誰がどの問題を作ったかは記録されているが、全科目をまとめた正式版へ触れられる者は少ない。
「国語の四問目、答えが二通りに読めると思う」
櫛田が用紙を持って堀北へ近づいた。
「どこ?」
「この選択肢。授業で扱った説明なら二番だけど、文章だけなら四番も間違いとは言い切れないよ」
堀北は問題文を読み直す。
「確かにそうね。作成者へ戻すわ」
「私が伝えてこようか?」
「その必要はない。平田君を通す」
「分かった」
櫛田は抵抗せず、用紙を渡した。
指摘自体は正しい。
クラスのために働いている。
昨日交わした勝負と、今の行動は矛盾しない。
櫛田にとっても、Dクラスの全員が退学することを望んでいるわけではない。
排除したい相手がいて、そのためならクラスの損失を受け入れられる。
それだけだった。
「堀北」
ルルーシュが呼んだ。
「少しいいか」
二人は教室の後方へ移動した。
平田は問題案を集め、スザクは別の生徒へ教えている。
櫛田は池の席へ戻っていた。
「櫛田が先に問題を提出する可能性を考えているか」
堀北の表情は変わらなかった。
「考えているわ」
「対策は」
「済ませている」
「内容を確認しても?」
「必要ないでしょう」
返答は早かった。
「あなたが確認したいのは、私が何もしていない可能性ではなく、自分の案へ置き換える必要があるかどうかよ」
ルルーシュは否定しなかった。
「対策が成立しているなら、上書きする理由はない」
「成立しているわ」
「櫛田の行動は、お前個人だけで処理できる範囲ではない」
「分かっている」
「Dクラスの問題が流れれば、全員のクラスポイントと退学危険へ影響する」
「だから、クラス全体の提出対策は私が行う」
「個人的な問題は別にあるのか」
堀北は僅かに黙った。
「あなたへ説明する必要はないわ」
「今はな」
「今後もよ。クラス全体へ影響しない限りは」
「影響すると判断した場合は介入する」
「ええ。その時は止めない」
堀北は視線を逸らさなかった。
何かを隠している。
だが、提出対策をしているという返答に迷いはない。
本人の判断を奪い、自分の策へ置き換える必要はなかった。
「一つだけ確認する」
「何?」
「正式な提出者は、お前一人か」
「ええ。私一人よ」
「ならいい」
ルルーシュはそれ以上を聞かなかった。
堀北も、昨日の勝負を話さなかった。
◇
放課後、ルルーシュは空き教室で記録を整理していた。
問題案の版。
閲覧者。
印刷された時刻。
誰がどの封筒へ触れたか。
担当教師の所在を確認した者。
Cクラスと接触できた時間。
体育祭で利用されたのは、学校へ提出された内容を反映した最終版だった。
仮の参加表ではない。
作成途中の予測でもない。
最終版へ正当な理由で触れられた者。
Cクラスの生徒と接触しても不自然ではない者。
堀北個人が不利益を受けることに、明確な利点を持つ者。
候補は狭まっている。
櫛田桔梗。
まだ、通信そのものは見ていない。
参加表を龍園へ渡した証拠もない。
だが、疑う理由は増え続けている。
扉が開いた。
「ここにいたんだ」
スザクが入ってくる。
「平田君から、記録を整理してるって聞いた」
「何か用か」
「君が一人で処理しようとしてないか、確認しに来た」
「処理する段階ではない」
「じゃあ、何を確認してる?」
ルルーシュは端末を閉じなかった。
ただし、全てを見せることもしない。
「櫛田が、内部の情報を外へ流している可能性がある」
スザクの表情が変わった。
「体育祭の参加表?」
「最有力候補だ。確定ではない」
「堀北さんは知ってるの?」
「疑っている。自分で対策もしている」
「何をするつもりかは?」
「聞いていない」
「聞かなくていいの?」
「提出への対策は済んでいると答えた。本人の判断を上書きする理由はない」
スザクは机の前で止まった。
「尊重することと、被害が出るまで何もしないことは違うよ」
「何もしていないように見えるか」
ルルーシュは記録を示した。
問題の内容ではなく、版と時刻だけが並んでいる。
「正式版へ触れられる者は限定した。提出者も堀北に絞られる。櫛田が別の問題を持ち出した場合は記録が残る」
「止めるのはいつ?」
「回復できない被害が出る前だ」
「それを判断するのは君?」
「堀北が対策を持っている。お前にも今、危険性を話した。私一人で決めるつもりはない」
スザクは記録へ目を落とす。
「櫛田さんが本当に関わっていたら、どうする?」
「行動と被害による」
「信じるか、追い出すかじゃなく?」
「その二つだけで決める必要があるのか」
スザクは答えなかった。
櫛田がしてきたことの全容は知らない。
過去も、堀北との間に何があるのかも知らない。
今聞いたのは、内部情報を外へ流している可能性だけだ。
「分かった」
スザクは言った。
「堀北さんの判断を奪わないことには反対しない。でも、判断を待つ間に被害が出ないようにして」
「そのための記録だ」
「記録するだけじゃ、止まらないよ」
「回復できない被害が出る前に止める」
ルルーシュは記録へ新しい線を引いた。
確認する行動。
止める条件。
その二つを、曖昧にはできない。
「櫛田へは何も言うな」
「証拠がないから?」
「それもある。こちらが何を知っているかを教えれば、行動を変える」
「分かった。でも、止める時は僕にも言って」
「必要ならな」
「必要かどうかを、一人で決めないでほしい」
ルルーシュは一度だけスザクを見る。
「分かった」
短い返答だった。
だが、拒絶ではなかった。
◇
同じ時間。
櫛田は自室の机へ、二種類の資料を並べていた。
クラスで配られた問題案。
学校が示した提出手続き。
正式版は、まだ完成していない。
科目ごとに修正が続き、堀北の確認も終わっていない。
完成後では遅い。
最終版へ触れられる人数は絞られている。
堀北が提出者を自分一人に限定しようとしていることも分かっていた。
正面から奪うことはできない。
なら、完成する前に別のものを完成品として出せばいい。
学校が受け取った後で、堀北が何を言っても遅い形にする。
問題と解答を龍園へ渡す。
代わりに、Cクラスが作った問題と答えを受け取る。
それがあれば、堀北に負けることはない。
綾小路も一緒に消せる。
櫛田は端末を開く。
龍園との連絡画面には、まだ新しい文章はない。
自分から送る内容を入力する。
正式な提出期限より前に動くこと。
渡す問題を準備できること。
見返りとして必要なもの。
送信する直前で、一度指を止めた。
堀北は何かを警戒している。
ルルーシュも、問題の版と閲覧者を記録している。
それでも、二人が正式問題を完成させてからでは間に合わない。
櫛田は文章を送信した。
返事はすぐには来ない。
必要なのは、許可ではなかった。
先に動き、先に学校へ持ち込む。
堀北が正式問題を完成させる前に。
櫛田は、使われなくなった問題案を一つずつ開き始めた。