反逆の王子は実力至上主義の世界で優しい世界を望む   作:evejanjan

52 / 53
共犯者か、魔王か

 翌朝になっても、Cクラスの探りは止まらなかった。

 

 露骨に教室を覗き込む生徒はいなくなったが、質問の形だけが変わっている。

 

 試験前に誰と勉強したか。

 

 体育祭で配置を決めたのは誰か。

 

 困った時、最初に相談する相手は誰か。

 

 いずれも、答えたところですぐに不利益が生じる内容ではない。そのため、聞かれた側も最初は深く考えず、雑談の延長として返していた。

 

 だが、同じ種類の質問が複数の生徒へ向けられていると分かれば、偶然では済まない。

 

 平田は昨日集めた内容へ新しい報告を加え、堀北は質問者と場所を分けて記録していた。

 

「昨日より範囲が広がっているわね」

 

「その代わり、教室の周りには来なくなった」

 

 平田が端末を見ながら答える。

 

「目立ったと分かったから、やり方を変えたのかもしれない」

 

「石崎君の動きは、さすがに分かりやすすぎたからね」

 

 スザクが苦笑した。

 

 須藤は近くの席で腕を組み、不満そうに廊下を見ている。

 

「何がしたいか知らねえけど、呼び止められた奴が嫌がってるなら、追い返せばいいだろ」

 

「全員が同じように嫌がっているわけではないわ。雑談だと思って答えた人もいる」

 

「だから面倒なんだろ」

 

「そうね」

 

 堀北は否定しなかった。

 

 相手が明確な脅迫や暴力を使えば、学校へ報告できる。

 

 だが、今行われているのは、日常会話へ紛れ込ませた確認だった。質問を受けた生徒が不安になっても、その一つ一つだけを取り出せば、強く拒絶する理由を説明しにくい。

 

「今日も続くなら、相談先だけは決めた方がいいと思う」

 

 平田が言った。

 

「一人で対応しなくていいと伝えるだけでも違うから」

 

「昼までの報告を見て決めましょう」

 

 堀北はそう答え、教室後方へ目を向けた。

 

 ルルーシュは会話へ加わっていなかった。

 

 端末には、昨日から集まった質問が並んでいる。質問者は違っても、内容を分類すれば意図は見えた。

 

 交友関係。

 

 相談相手。

 

 試験中の役割。

 

 助けを求める順番。

 

 誰が指示を出したかではなく、誰のために動くかを調べている。

 

 龍園が探しているものを考えれば、自然な流れだった。

 

 見えない相手本人を直接探しても、能力を隠している候補は多い。ならば、本人が反応した場所から逆に辿ればいい。

 

 もっとも、龍園がそこまで方針を固めたと断定するには早い。

 

 現時点で確認できるのは、CクラスがDクラスの人間関係を集めているという事実だけだった。

 

「今日はずいぶん静かだな」

 

 低い声が、教室の入口から届いた。

 

 それまで続いていた会話が止まる。

 

 開いた扉の前に、龍園が立っていた。

 

 付き添いはいない。

 

 教室を見回した視線が、須藤でも堀北でもなく、窓際の席へ止まる。

 

「ランペルージ。少し付き合え」

 

 須藤が椅子を引いた。

 

「何の用だよ」

 

「お前は呼んでねえ」

 

「だったら、ここで話せばいいだろ」

 

 龍園は須藤を見たが、挑発するような言葉は返さなかった。

 

「別に構わねえぞ。こいつが、クラス全員の前で話されても困らないならな」

 

 視線が再びルルーシュへ戻る。

 

 何を聞くつもりか、龍園は説明しない。

 

 ルルーシュは端末を閉じた。

 

「場所は」

 

「近くでいい」

 

 立ち上がると、スザクも席から腰を浮かせた。

 

「僕も行く」

 

「必要ない」

 

 ルルーシュが先に止める。

 

「相手は一人だ。話を聞くだけなら、お前が来る理由はない」

 

「話だけで終わる保証は?」

 

「その程度の損得も判断できない相手なら、昨日からこんな回りくどいことはしていない」

 

 スザクはすぐには座らなかった。

 

 龍園が暴力を使わないと信じたわけではない。ただ、Dクラスの教室まで一人で来て、周囲へ存在を見せたうえでルルーシュを連れ出そうとしている。ここで襲えば、自分が最初から疑われるだけだった。

 

「戻らなかったら探しに行く」

 

「好きにしろ」

 

 ルルーシュはそれだけ答え、龍園の横を通り過ぎた。

 

     ◇

 

 龍園が選んだのは、特別な場所ではなかった。

 

 授業前には人通りのある階段の踊り場も、朝のホームルームが近づけば静かになる。完全な密室ではなく、声を張れば上下の階へ届く距離だった。

 

 ルルーシュは踊り場の中央で足を止める。

 

「それで、何を確認したい」

 

「俺が確認しに来たと思ってるのか?」

 

「質問を続けているのはお前たちだ。昨日までは周囲から、今日は本人が来た。それ以外の目的があるなら聞こう」

 

 龍園の口元が僅かに上がる。

 

「最初から自分が調べられる側だと思ってたらしいな」

 

「体育祭で目立つ動きをした。候補へ入らないと考える理由がない」

 

「配置を変えたのはお前か」

 

「堀北が決定し、平田が全体を調整した。私は損失が大きい場所を示しただけだ」

 

「ずいぶん控えめな言い方だ」

 

「事実を分けている」

 

 龍園は手すりへ背を預けた。

 

 体育祭でDクラスの配置が修正された時、表へ出ていたのはルルーシュだった。

 

 選手の疲労を見て、勝てない競技から人を外し、得点を拾える場所へ配置し直す。

 

 一人で全てを決めたわけではない。それでも、誰に何をさせるべきかを最も早く示したのは、目の前の男だった。

 

「木下の件も、お前が止めたのか?」

 

「何を指している」

 

「俺が堀北へ出した要求だ」

 

「要求が撤回されたことは知っている。経緯は知らない」

 

 返答は短い。

 

 龍園は表情を追った。

 

 知らないと答えること自体に価値はない。嘘をつく人間も、何も知らない人間も、同じ言葉を使える。

 

「録音を送った奴は、ずいぶん親切だった。俺の要求だけじゃなく、真鍋の名前までわざわざ添えてきた」

 

 事実ではない。

 

 送られてきた記録に、送信者が真鍋の名前を書き加えた形跡はなかった。

 

 ルルーシュは否定も訂正もしなかった。

 

「それを私へ話す理由は」

 

「興味があるだけだ。お前なら、そんな証拠を手に入れられそうだからな」

 

「可能性と事実を混ぜるな」

 

「同じ端末から、ペーパーシャッフルの要求も届いた」

 

 これも虚偽だった。

 

 二つの介入を同一人物と見る材料は、方法と目的の近さであって、送信経路が一致したわけではない。

 

 ルルーシュの視線は変わらない。

 

「なら、お前の中ではすでに同一人物なのだろう。私へ確認する必要はない」

 

「本当に同じ端末だと思うか?」

 

「判断材料がない。お前の発言しか確認できない以上、事実として扱う理由もない」

 

 龍園は笑った。

 

「疑り深いな」

 

「こちらを試している人間の言葉を、そのまま受け取る方が不自然だ」

 

 ルルーシュは龍園の嘘を見抜いたと断定していない。

 

 ただ、龍園が検証できない情報を意図的に与えていると理解し、その内容へ踏み込まなかった。

 

 録音の中身。

 

 送信経路。

 

 問題変更要求の文面。

 

 知っている者なら、どこかで事実との差へ反応する。訂正しなくても、質問の向きや言葉の選び方に変化が出る可能性はある。

 

 だが、ルルーシュが注意を向けているのは、情報そのものではなかった。

 

 なぜ龍園がそれを話すのか。

 

 何を確かめようとしているのか。

 

 常に相手の目的へ視線を戻している。

 

「お前が送ったんじゃねえのか」

 

「違う」

 

 否定に迷いはなかった。

 

「問題を変えさせたのも?」

 

「私ではない」

 

「じゃあ、誰だ」

 

「分かっているなら、お前より先に確認している」

 

「候補くらいはあるだろ」

 

「答える理由がない」

 

 ここで初めて、ルルーシュは情報を拒んだ。

 

 龍園はその変化を見逃さなかった。

 

 録音や匿名の送信経路には反応しなかったが、Dクラス内部の候補を問われれば口を閉ざした。

 

 それは送信者を守った反応とも取れる。

 

 同時に、自分のクラスに関する未確認情報を、他クラスへ渡さないだけとも取れた。

 

 この一つで結論は出せない。

 

「お前は、Dクラスを守りたいのか?」

 

「質問が曖昧だ」

 

「勝たせたいのか。壊されたくないのか。それとも、自分の好きな形へ作り替えたいのか」

 

「どれか一つを選ぶ必要はない」

 

「欲張りだな」

 

「目的が違えば、使う手段も変わる」

 

「体育祭では配置を変えた。ペーパーシャッフルでは、クラス全体の点を揃えようとした。櫛田を切らずに残したのも、お前の判断か?」

 

 龍園の質問は、匿名の介入から外れ始めていた。

 

 表に出ているルルーシュの行動。

 

 誰へ何をさせ、何を止め、どこまで責任を負うか。

 

 ルルーシュは、その変化を理解した。

 

「堀北が残すと決めた。私は、残した後の被害を止める条件を示しただけだ」

 

「何でも自分で決めるわけじゃねえ」

 

「私が決めるべきでないことまで奪えば、次に同じ状況が起きた時、誰も選べなくなる」

 

「それでも、失敗すればお前が動く」

 

「必要ならな」

 

 短い返答だった。

 

 龍園はしばらく黙ってルルーシュを見た。

 

 録音送信者は、姿を見せなかった。

 

 問題変更を要求した者も、自分の名前を出さず、条件だけを突きつけた。

 

 目の前の男も秘密を持っている。

 

 全てを話す人間ではない。

 

 だが、隠れ方が違った。

 

 ルルーシュは結果だけを置いて消えるのではなく、必要な時には自分の判断を他人の前へ出す。

 

 堀北へ決定を残し、平田へ調整を任せ、スザクへ現場を託す。それぞれへ役割を渡しながら、失敗した時だけ自分を無関係な場所へ置くタイプにも見えない。

 

「お前は隠れるより、人を前へ出す方だ」

 

「必要な人間を、必要な場所へ置くだけだ」

 

 固定された答えのように、ルルーシュは言った。

 

 龍園の笑みが深くなる。

 

 録音送信者ではないと確定したわけではない。

 

 見えない介入者とつながっていない証拠もない。

 

 それでも、同じ存在として一つにまとめる必要は薄くなった。

 

 匿名で結果だけを残す者とは別に、Dクラスの中には、姿を見せたまま人を動かす者がいる。

 

 見えているから安全なのではない。

 

 むしろ、誰をどこへ置いたのかが見えても、その先にある目的と責任の範囲までは読めない。

 

「面白えな」

 

「何がだ」

 

「お前を探してた方が、話は早かったかもしれねえ」

 

「私は最初から隠れていない」

 

「ああ。だから後回しにできる」

 

 龍園は手すりから背を離した。

 

「見えない奴を先に引きずり出す。その後で、お前が何を率いてるのか確かめてやる」

 

「好きにしろ。ただし、Dクラスの生徒へ無制限に手を出せると思うな」

 

「止めるのか?」

 

「必要なら」

 

 同じ答えだった。

 

 龍園はそれ以上問い返さず、階段を下りていった。

 

 足音が遠ざかっても、ルルーシュはすぐには動かなかった。

 

 龍園は録音や問題変更の詳細を教えるために来たのではない。

 

 誰が知っているかを確かめるために、真偽の混ざった情報を置いた。

 

 そして最後には、匿名の介入者ではなく、ルルーシュ本人の行動原理へ質問を変えた。

 

 あちらもまた、候補を一つずつ分けている。

 

     ◇

 

「遅かったね」

 

 教室へ戻る途中、廊下の角にスザクが立っていた。

 

「探しに来るには早すぎる」

 

「話が終わったなら問題ないだろ」

 

「ホームルームは」

 

「まだ始まってない。始まるまでに戻らなければ、先生へ事情を話すつもりだった」

 

「何と説明する」

 

「龍園に呼び出された生徒が戻らない、とそのまま」

 

 ルルーシュは呆れたように目を細めた。

 

 スザクは冗談めかしていたが、龍園との会話が長引けば、本当に探しに来たのだろう。

 

「暴力はなかった?」

 

「ない」

 

「何を聞かれたの」

 

「体育祭の配置。録音。ペーパーシャッフルの問題変更」

 

 スザクの表情から軽さが消える。

 

「答えたの?」

 

「確認できる範囲だけだ。知らないものは知らないと答えた」

 

「龍園は納得した?」

 

「納得するために来たわけではない。反応を見るためだ」

 

 歩きながら、ルルーシュは龍園が混ぜた情報を説明した。

 

 録音へ真鍋の名前が添えられていたという話。

 

 二件が同じ端末から届いたという話。

 

 どちらも、事実として信用できる根拠はない。

 

「嘘だったと思う?」

 

「少なくとも、私へその情報を渡す合理的な理由がない。正しいかどうかより、私が訂正するかを見ていた可能性が高い」

 

「それで、君じゃないと思わせた?」

 

「可能性を下げた程度だ。龍園は、私と見えない介入者を完全には切り離していない」

 

「じゃあ、また来るかもしれない」

 

「すぐには来ない」

 

「どうして」

 

「私が隠れて結果だけを残す人間ではないと判断した。あいつが今探しているのは、表へ出ない相手だ」

 

 階段を上がる生徒の声が近づき、二人は会話を止めた。

 

 すれ違った後、スザクが声を落とす。

 

「その相手を、どうやって見つけるつもりなんだろう」

 

「本人だけを見ても難しい。候補が多すぎる」

 

「だから、周りを調べてる?」

 

「ああ」

 

 昨日から続く質問。

 

 誰と帰るか。

 

 誰へ相談するか。

 

 誰が困った時に助けるか。

 

 それらを集めれば、能力ではなく関係を辿れる。

 

「X本人ではなく、Xが守ろうとする人間を探すつもりかもしれない」

 

 スザクは足を止めた。

 

「その人を危険に置けば、出てくると思ってるのか」

 

「龍園なら試す」

 

「止めないと」

 

「誰を狙うか分かっていない」

 

「分かるまで待つの?」

 

 責める声ではなかった。

 

 だが、スザクが確認しているのは、予測の精度ではない。

 

 被害が起きるまで観察を優先するのか。

 

 ルルーシュは少しだけ間を置いた。

 

「個人を特定できないなら、全員へ同じ手順を用意する」

 

「手順?」

 

「Cクラスから個別に呼び出された場合、平田か堀北へ連絡させる。一人で行かせない。暴力の可能性がある場合は、お前へ連絡を回す」

 

「僕が間に入る」

 

「追い返すことだけを目的にするな。人の多い場所へ移し、必要なら教員へつなげ」

 

「分かってる」

 

「本当に分かっているなら、相手を挑発するな」

 

「それは君にも言えるよ」

 

 ルルーシュは返答しなかった。

 

「それと」

 

 スザクが続ける。

 

「連絡が間に合わなくても、目の前で被害が起きるなら止める。君の指示を待つつもりはない」

 

「最初から待たせるつもりもない」

 

「ならいい」

 

 同意は短かった。

 

 二人の判断が完全に一致したわけではない。

 

 ルルーシュは被害が起きる前に、連絡経路と停止条件を作ろうとする。

 

 スザクは手順がなくても、目の前の危険へ介入する。

 

 その違いを残したまま、今回は同じ方向へ動けた。

 

「綾小路にも伝える?」

 

「全員へ伝える一般手順だけでいい」

 

「君が疑ってることは?」

 

「共有しない」

 

「理由は」

 

「確認できていないからだ。名前を出せば、周囲の反応そのものが龍園へ情報になる」

 

 スザクは綾小路の関与を否定しなかった。

 

 能力を隠していることも、ルルーシュが何らかの可能性を見ていることも知っている。

 

 だが、何を根拠に、どの程度まで疑っているかは聞かされていない。

 

「分かった。ただ、本人が危険に巻き込まれた時まで黙っているかは、その時に決める」

 

「それでいい」

 

 ルルーシュは先へ歩き出した。

 

 許可を与えたのではない。

 

 スザクが自分で判断することを、最初から前提に含めただけだった。

 

     ◇

 

 昼休みには、堀北と平田を交えた短い確認が行われた。

 

 龍園が何を探しているかは断定しない。

 

 綾小路の名前も出さない。

 

 Cクラスからの接触が続いているため、一般的な安全手順を作る。それだけを共有した。

 

「個別に呼び出された場合は、僕か堀北さんへ連絡してもらう」

 

 平田が内容を端末へまとめる。

 

「断りにくい時は、一人で行かず、誰かに付き添ってもらう。暴力や脅しが予想される場合は、枢木君にも知らせる」

 

「知らせる相手を枢木君だけに限定しない方がいいわ」

 

 堀北が補足した。

 

「先生へ相談できる内容なら、最初から先生へ回す。私たちだけで処理する必要はないもの」

 

「そうだね」

 

「一人で追い返そうとしないことも入れて」

 

 スザクが言った。

 

 須藤が不満そうに眉を寄せる。

 

「囲まれてんのに、黙って逃げろってことかよ」

 

「違う。助けを呼ぶことを、逃げたことにしないって意味だよ」

 

「相手が先に手を出してきたら?」

 

「止める。でも、殴り返すことを最初の選択にしない」

 

「面倒くせえな」

 

「停学になる方が面倒でしょ」

 

 池が横から口を挟むと、須藤は舌打ちしながらも反論しなかった。

 

 ルルーシュは、そのやり取りへ口を出さない。

 

 手順をクラスへ伝えるのは平田。

 

 表向きの決定は堀北。

 

 現場で危険を止めるのはスザク。

 

 自分が全員へ直接命令する必要はなかった。

 

 それでも龍園が手順の存在を知れば、ルルーシュが関わったと考えるだろう。

 

 隠すつもりもない。

 

 見えない介入者とは違い、自分は必要な場所へ人を置く。

 

 龍園は、その違いを理解した。

 

     ◇

 

 放課後、Cクラスの教室では、昨日と同じ名簿が机へ広げられていた。

 

「で、どうだったの?」

 

 伊吹が尋ねる。

 

 龍園はルルーシュの名前へ指を置く。

 

「録音を送った奴じゃねえ可能性が高い」

 

「本人が違うって言っただけだろ」

 

 石崎が首を傾げる。

 

「お前は聞かれたら正直に答えるのか?」

 

「内容による」

 

「なら、否定に意味がないことくらい分かるだろ」

 

「じゃあ、何でそう思ったんだよ」

 

「やり方が違う」

 

 龍園は名簿から視線を上げた。

 

「ランペルージは自分だけ隠れて、結果を待つタイプじゃねえ。人を動かす時は、動かした事実ごと見せる」

 

「目立ちたがりってこと?」

 

「逆だ。目立つ必要がある時に、隠れることへ価値を置いてねえ」

 

 体育祭では配置へ口を出した。

 

 ペーパーシャッフルでは、Dクラス全体の得点調整に関わった。

 

 櫛田を残した後は、再び被害を出さない条件を組んだ。

 

 自分一人で全てを処理するのではなく、必要な人間へ役割を渡す。

 

「じゃあ、Xとは無関係?」

 

「そこまでは言ってねえ」

 

 二件の匿名介入に直接関わっていなくても、相手の正体を推測している可能性はある。

 

 同じクラスにいれば、意図せず利害が一致することもある。

 

 互いを知らないまま、別々の理由でDクラスを守っている可能性も残る。

 

「危険じゃないなら、候補から消せばいいじゃん」

 

 石崎の言葉に、龍園は笑った。

 

「誰が危険じゃないと言った」

 

 見えない相手は、正体が分からないから厄介だった。

 

 ルルーシュは見えている。

 

 教室にいて、堀北や平田と話し、スザクへ役割を渡す。

 

 それでも、どこまで先を見て人を動かしているかは分からない。

 

 Xの共犯者か。

 

 あるいは、Xとは別に人を率いる魔王か。

 

 どちらにせよ、見えない相手と一つにまとめるべき存在ではない。

 

 そして今、先に引きずり出すべきなのはルルーシュではなかった。

 

 龍園はルルーシュの名前へ印を残し、名簿の別の位置へ指を移した。

 

 高円寺六助。

 

枢木スザク。

 

綾小路清隆。

 

まだ、力の底を見せていない人間は残っている。

 

「ランペルージは後だ。あいつとは別の線を洗う」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。