反逆の王子は実力至上主義の世界で優しい世界を望む   作:evejanjan

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勝つための勉強

「やり方を変えるぞ」

 

ルルーシュの言葉に、図書室の空気が止まった。

 

堀北が目を細める。

 

「具体的には?」

 

「全員へ同じ教え方をするのをやめる」

 

ルルーシュは机に並ぶ問題集を見た。

 

須藤は一問に時間をかけすぎる。

 

池は説明が長くなると集中を失う。

 

山内は分からない問題から逃げ、話題を逸らす。

 

能力だけの問題ではない。

 

三人とも、自分に合わない方法を続けさせられていた。

 

「まず、目標を変える」

 

「目標?」

 

池が顔を上げる。

 

「高得点は必要ない。赤点を回避すればいい」

 

堀北が口を挟む。

 

「最初から低い目標を与えるの?」

 

「全範囲を理解させようとして、何も身につかないよりはましだ」

 

「でも――」

 

「残りは二週間だ。理想を追う時間はない」

 

堀北は納得していないようだったが、それ以上は言わなかった。

 

ルルーシュは問題集を須藤の前へ置く。

 

「お前は十分ごとに区切る」

 

「十分?」

 

「長く座らせても集中しない。次の十問で六問正解しろ」

 

「六問くらい余裕だ」

 

「今の正答率なら難しい」

 

須藤の眉が動く。

 

「言ったな?」

 

「事実だ」

 

「できたらどうすんだよ」

 

「休憩だ」

 

「できなかったら?」

 

「もう十問だ」

 

須藤は舌打ちし、問題集を引き寄せた。

 

「やってやるよ」

 

隣では、スザクが同じ範囲のページを開く。

 

須藤が横目で見る。

 

「何でお前までやるんだ」

 

「付き合うだけだ」

 

「教える気か?」

 

「聞かれたら答える」

 

須藤は何も言わず、問題へ戻った。

 

池には、重要語句と公式だけを抜き出した紙を渡す。

 

「これ全部?」

 

「今はこれだけだ」

 

「もっと出たらどうすんだよ」

 

「出る可能性の低い範囲へ使う時間はない」

 

「結構きっぱり言うな……」

 

「取れる問題を確実に取れ」

 

池は不満そうに紙を見た。

 

だが、量が少ないと分かると、先ほどより真剣に読み始めた。

 

山内には、池と同じ範囲の小テストを渡す。

 

「何で池と一緒なんだよ」

 

「比較できるからだ」

 

「俺の方が上に決まってるだろ」

 

「なら証明しろ」

 

山内はすぐに鉛筆を取った。

 

「池には負けねえからな」

 

「こっちの台詞だよ」

 

二人が張り合い始める。

 

声が大きくなる前に、平田が間へ入った。

 

「競争するのはいいけど、周りの邪魔にならないようにしよう」

 

櫛田も笑顔で答案を回収する。

 

「終わったら私が採点するね」

 

自然に役割が分かれていった。

 

堀北は問題の内容を説明する。

 

櫛田は場の空気を保つ。

 

平田は衝突を止める。

 

スザクは須藤の隣に残る。

 

ルルーシュは進み方を調整する。

 

綾小路は少し離れた席で、必要な時だけ短く補足した。

 

「その公式、ここでも使える」

 

池が詰まった問題を、綾小路が指す。

 

「あ、本当だ」

 

「形が似ているから、まとめて覚えるといい」

 

それだけ言って、綾小路は自分の問題集へ戻った。

 

前に出るつもりはないらしい。

 

一時間後。

 

須藤が答案を机へ置いた。

 

「六問」

 

ルルーシュが確認する。

 

正解は六問。

 

「休憩だ」

 

「当たり前だろ」

 

須藤はそう言ったが、口元にはわずかな満足があった。

 

「十分だけだ」

 

「細けえな」

 

立ち上がった須藤に、スザクも続く。

 

廊下へ出ると、須藤が肩を回した。

 

「お前、ずっと座ってられんのかよ」

 

「慣れているから」

 

「勉強までできんのか」

 

「今は君の勉強だろ」

 

「ごまかしたな」

 

須藤は壁へ背を預けた。

 

「俺、こういうの本当に向いてねえんだよ」

 

「知ってる」

 

「そこは否定しろよ」

 

スザクは少し考える。

 

「でも、できないわけじゃない」

 

須藤が横を見る。

 

「六問取れただろ」

 

「たまたまだ」

 

「次も取れば、たまたまじゃなくなる」

 

須藤は返事をしなかった。

 

休憩が終わる前に、自分から図書室へ戻った。

 

その日の勉強会が終わる頃には、三人とも疲れ切っていた。

 

それでも、途中で抜ける者はいなかった。

 

「これ、毎日やるの?」

 

池が机へ突っ伏す。

 

「試験までだ」

 

ルルーシュが答える。

 

「無理だって」

 

「なら退学しろ」

 

池は勢いよく顔を上げた。

 

「やるよ!」

 

「なら問題ない」

 

櫛田が苦笑する。

 

「ランペルージ君、もう少し言い方があると思うけど」

 

「意味が伝われば十分だ」

 

机の上には、新しく用意した問題集と暗記用のカードが並んでいた。

 

購入には、先日の賭けで得たポイントを使っている。

 

「これ、ランペルージが買ったのか?」

 

山内が尋ねる。

 

「必要経費だ」

 

「返した方がいい?」

 

「赤点を回避してから考えろ」

 

堀北が暗記カードを手に取る。

 

「報酬や競争で動かすだけでは、根本的な解決にならないわ」

 

「今は根本を直す段階ではない」

 

「一人で勉強できない人間を残す意味があるの?」

 

ルルーシュは堀北を見る。

 

「最初から一人で動ける人間に、君の指導は必要ない」

 

堀北の表情が硬くなる。

 

「詭弁ね」

 

「結果が出なければ、そう判断すればいい」

 

それ以上、二人は続けなかった。

 

翌日から、勉強会は少しずつ形を変えた。

 

堀北は説明を短く区切るようになった。

 

須藤は十分ごとに問題を解き、正解数を気にするようになった。

 

池は暗記カードを持ち歩き、山内は小テストの点数だけは池に負けまいとした。

 

劇的な変化ではない。

 

それでも、進んでいる。

 

試験まで残り一週間となった日。

 

櫛田が図書室へ駆け込んできた。

 

「みんな、これ見て」

 

手には、数枚のプリントがある。

 

その後ろには綾小路がいた。

 

堀北が受け取る。

 

「何なの?」

 

「去年の中間試験の問題。綾小路君が、先輩から譲ってもらえるように話をつけてくれたの」

 

池と山内が立ち上がる。

 

「過去問?」

 

「これ使えば余裕じゃん!」

 

「そうとは限らないわ」

 

堀北が釘を刺す。

 

「今年も同じ問題が出る保証はない」

 

ルルーシュは過去問を受け取り、これまでに行われた小テストと並べた。

 

問題の配置。

 

出題形式。

 

数値だけを変えた類題。

 

今年の小テストと、前年の中間試験には、同系統の問題がいくつも含まれている。

 

「教師は、一定の問題群を繰り返し使っているらしいな」

 

櫛田が身を乗り出す。

 

「じゃあ、今年の中間試験も似た問題が出ると思う?」

 

「可能性は高い」

 

ルルーシュは過去問へ視線を落とした。

 

「少なくとも、全範囲へ均等に時間を使うよりは合理的だ」

 

堀北も過去問を確認する。

 

「使うの?」

 

「計画を変える」

 

ルルーシュは問題を分類していく。

 

必ず取る問題。

 

時間があれば取る問題。

 

後回しにする問題。

 

解答する順番。

 

見直しへ残す時間。

 

三人の現在の正答率から、必要な範囲を絞っていく。

 

須藤が紙を覗く。

 

「これだけでいいのか?」

 

「これを落とさなければ、赤点圏からは引き上げられる」

 

池が不安そうに言う。

 

「本当に大丈夫?」

 

「保証はしない」

 

「そこはしてくれよ」

 

「保証が欲しいなら、自分で点を取れ」

 

ルルーシュは過去問を三人へ配った。

 

「本番と同じ時間で解け」

 

「今から?」

 

「時間がない」

 

不満の声は上がった。

 

それでも、三人は鉛筆を取った。

 

全員が問題へ向かった後。

 

綾小路がルルーシュの近くへ来る。

 

「随分、すぐに使い方を決めたな」

 

「使える資料を眺める趣味はない」

 

ルルーシュは過去問から視線を上げない。

 

「先輩との交渉までしたのか」

 

「櫛田にも手伝ってもらった」

 

「そうか」

 

それ以上は聞かなかった。

 

綾小路がどこまで動いたのか。

 

なぜ自分ではなく櫛田を表に立たせたのか。

 

今は確かめる必要がない。

 

結果へ使えるなら、それでいい。

 

ルルーシュは須藤たちの答案を見る。

 

以前より、手が止まる回数は減っている。

 

まだ十分ではない。

 

だが、届かない距離でもなかった。

 

過去問の一部へ線を引く。

 

「少なくとも、勝負にはなる」

 

その言葉に、誰も顔を上げなかった。

 

ただ、三人の鉛筆だけが止まらずに動き続けていた。

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