砂浜を四人で駆け回り、練習をこなした現在、僕達一向は…
「が、がんばりすぎた……」
筋肉痛になり、ベットに横になっている花帆ちゃん。
「僕達に付き合って無理するからだよぉ…」
うちわで彼女の事を仰ぎながら言う僕
「朝から遊んで、練習もたっぷりして……もうあたしのHPはゼロです……」
「とりあえず明日もあるんだから、今日はゆっくりと休むんだよ」
花帆ちゃんにそう伝え、彼女の事を寝かしつける。
彼女のことだから、寝ないだろうけど
そして、そんな花帆ちゃんとは違って平気なさやかちゃんとるーちゃんの構図になっていた。
「二人は平気そうだね」
「私は鍛えてますから」
「さやかちゃんはそうだねーるりもずーっと鍛えてたからね。あお君は疲れてない?るりが看病してあげよっか?」
「それはまた今度の機会にって事で…」
るーちゃんからの提案をそう言って躱す。
るーちゃんは物凄い不機嫌な表情をしていた。今夜、一緒に寝るんだからいいじゃん…別に
「そういえば、瑠璃乃さん。音羽君、実はわたしも微力ながらお手伝いしようと思って、詳しく調べてみたんです。怪我が治っているのに、メンタルの問題で以前のように演技ができなくなることは、フィギュアの世界でも往々にして起こることのようです」
さやかちゃんが話してくれた内容は、めぐちゃんの怪我に関する物だった。
怪我自体は治っているのに、ステージには立てないのだ。トラウマかイップスか。
「そうなんだ。えっ、それって治る…んだよね?」
「えぇ、もちろん治ります。ですが、その方法はどうしても人それぞれのようで…」
さやかちゃんはそう説明をしてくれた。
「ひとつ言える事は瑠璃乃さんがやろうとしてる『ライブでやる気を取り戻させる』という方法も、ちゃんと効果があるみたいですよ」
「えーそうなんだ!ありがと!さやかちゃん!」
るーちゃんはそう言って喜ぶが、僕は一つ気になる点があった。
「楽しい事をやって嫌な事を忘れさせる事が出来るって事は、逆もあるんじゃ…」
「はい…その通りでもし瑠璃乃さんのライブが失敗してしまったら、その事で余計にショックを受けるということも、あり得ます」
「ハイリスクハイリターンって訳か…」
「…はい…」
一か八かの賭けになってしまうって事か。めぐちゃんがどこまでショックを受けているかにもよるけど…
「おそらくなんですが、梢先輩がステージから落ちたときも、慈先輩は似た気持ちを思い出したはずです。あの時は大事には至らなかったようですが、瑠璃乃さんは慈先輩にとっても、きっとトクベツな人…でしょうから」
「ルリが、失敗したら…」
「大丈夫だよ」
「え?」
「るーちゃんはこういう時、失敗しないって僕は知ってるから」
「うんっ!どうとうぉーりーだよ、さやかちゃん!ルリは、失敗なんかしないよ」
僕の言葉に続くように、るーちゃんは続けてそう言う。
「そう、ですか」
「めぐちゃんのためだもん!ね、めぐちゃんって見ての通り美人だし、スタイルもいいし、きれーな声してて、笑顔も最高っしょ?」
るーちゃんがそう言うと、さやかちゃんは困惑の表情を浮かべるが、るーちゃんは止まらず続けて言う。
「その上、地頭もよくて、運動神経は抜群。お話だって面白いから、周りにいっつも人が集まってきたし、しかもめぐちゃんってもともとタレントなんだよ!ばりばりテレビとか出てたんだから!」
「そ、そうなんですね」
「るーちゃん…さやかちゃん、勢いにびっくりしちゃってるよ…」
「ごめん…さやかちゃん…めぐちゃんの事になると、るりってこうなっちゃうんだ…」
るーちゃんはそう言い、さやかちゃんに謝りながらも続けて言った。
「めぐちゃんは本当に凄いんだ。だからね、今回だって、めぐちゃんなら、きっと乗り越えられる。ルリはね、そう、信じているんだ」
「…とても強い絆、ですね」
「そりゃ、小学校から一緒だからね!」
るーちゃんはそう言い、話を纏めた。
「よっし、合宿はまだまだ続くんだし、きょうはもう寝ちゃおっか!それともどうする!?定番の枕投げとかしちゃう!?」
合宿テンションなのか、テンションが高いるーちゃんがそこには居た。
「ふふっ、それなら、わたしはなかなかの腕前ですよ」
こっちもこっちで乗り気だった。
「おっ、さやかちゃんいける口!?」
「ええ、お姉ちゃんの後ろをついて回っていた頃などは、よくフィギュアの合宿にも行ったりしていましたから。同年代の子たちと大部屋に泊まった際は、定番行事でした」
「よっし、だったら!花帆ちゃんも、あお君も、ほらほら!」
寝る気で居た僕にまで話が飛んできた。
「えっ…えっ?で、でもあたし…筋肉痛でーー」
「僕だって寝たいんだけ_」
僕がそう言うのと同時に
「えいっ」
「あお君、たりゃー!」
さやかちゃんの投げた枕は花帆ちゃんに、るーちゃんの投げた枕は僕に命中した。
「…花帆さん?」
「…やば、生きてる?」
二人が心配してくる。
僕は何も言わずに起き上がって
「そっちがその気なら乗ってやるー!さやかちゃんもるーちゃんも覚悟!!」
「こうなったら、明日の分の元気も、今ここで使っちゃうんだから!」
花帆ちゃんと僕で二人に反撃する。
その後、枕投げを楽しむ僕達なのであった。
その後、枕投げをして疲れた僕達はぐっすりと夢の中に
「…今の時間は…」
目が覚めると、辺りは真っ暗だった。
スマホを起動して表示された時間は、3時だった。
「…寝るか…」
そう呟き、再び寝ようと思った時だった。
左腕に柔らかい感触がした。
スマホの光で照らすとそこには
「ぬへへ…瑠璃乃ちゃん~待ってよ~」
花帆ちゃんが抱き着いてきていた。
彼女は夢の中にるーちゃんと追いかけっこでもしてるのか。そんな寝言を言っていた。
それにしても…
「それにしても…花帆ちゃん…デカかったのか…」
今、僕の腕に触れている花帆ちゃんの双丘はかなり大きかった。
流石にめぐちゃん程ではないにせよ、次に大きいのではと思った。
「これじゃあ…寝れないじゃん…」
花帆ちゃんが動くたびに、いちいち主張をしてくるので完全に寝れなくなってしまった。
「あお君~浮気はダメだよぉ~」
今度は右腕にも重みを感じた。
こっちにはるーちゃんが抱き着いていた。
「全く…るーちゃんの抱き着き癖は治ってないのか…」
懐かしさを感じてしまった。
そして、花帆ちゃんが寝がえりをうってくれたおかげで左腕が解放された事によって、僕はるーちゃんを抱きしめるようにして目を閉じ、再び意識は暗闇の中に沈んでいった。