あの子だけ先生との距離感がおかしい!! 作:炊き込みご飯くん
モブ生徒②「どういう噂?」
モブ生徒①「なんでも、とある生徒にエッチな服を着せて、それを鑑賞して楽しんでるらしいよ?」
通りすがりのエ駄死「ッ!?」
モブ生徒②「嘘っ!?ほんとに!?」
モブ生徒①「真偽の程は定かじゃないけどねぇ。でも、先生も男の子だし、キヴォトスには可愛い女の子がいっぱいいるし、もしかしたら...」
モブ生徒②「キャー!!」
エ駄死「.......」
シャーレへ向かう途中、僕は何度目か分からない視線を背中に感じていた。
耳をすませば、足音が聞こえる。立ち止まると、それはピタリと静かになる。試しに近くの建物の窓ガラスへ目を向けてみれば、少し離れた電柱の陰から黒い翼の先がはみ出していた。
隠れているつもりなのだろうか。
少なくとも、僕に気付かれていないと思っているらしい。
「そこの方」
声を掛けると、翼がびくりと跳ねた。
「な、何よ!」
柱の陰から飛び出してきた少女は、なぜか胸を張っていた。驚いていることを誤魔化そうとしているのかもしれないが、頬がわずかに赤くなっているので、あまり成功していない。
見覚えのある制服。恐らくはトリニティだろうか。
「先ほどから、僕の後をつけていましたよね」
「つけてない!」
「そうですか」
「そ、そうよ! 偶然同じ道を進んでるだけなんだから!」
「では、堂々となさればよろしいのでは? 電柱の影に隠れるようなことをせず」
「そ、それは...」
少女の視線が泳ぎ、僕の持っている紙袋へ落ちた。
今日のために仕上げた衣装が入っている。淡い色合いのワンピースに、細いリボンと控えめなレースを合わせたもので、派手さを抑えながらも輪郭が綺麗に見えるよう調整してある。今朝、鏡の前で最終確認をした時も、我ながら良い出来だと思った。
「そ、その袋!」
少女が指を差した。
「はい?」
「中に何が入ってるのよ!」
「これは、自作の服です。衣装とも言えます」
僕は袋から取り出し、彼女に見えるよう広げて見せた。
「ふ、服?それを持って、どこになんの用なの?」
「新しく作ったものなので、着てる姿を先生に見ていただこうかと」
「先生に!?」
少女の声が周囲へ響いた。
偶然近くを歩いていた何人かの生徒が何事かと振り返ったが、彼女はそれどころではないらしく、僕と衣装を交互に見ている。
「先生に、服を見せるの?」
「はい」
「わざわざシャーレまで行って?」
「いつものことですから」
「いつものこと!?なんで!?」
また声が大きくなった。
僕は少し考えてから、なるほど、と頷いた。どうやら彼女は声量の調整があまり得意ではないらしい。
「何か問題がありましたか」
「問題しかないでしょ! 女子生徒が、そんな体のラインが見えそうな服を着て、先生に見てもらうなんて...ッ」
そこまで言ったところで、少女は自分の言葉に追い詰められたように口を閉じた。
頬の赤みが一気に耳まで広がる。
僕は衣装を袋に仕舞いながら、彼女の誤解を解こうと試みる。
「見せると言っても、感想をいただくだけですが」
「か、感想って何よ!」
「色や形が似合っているか、全体の印象はどうか、改善できる部分がないかなどです」
「ぜ、全体を...先生が...」
「はい」
少女は両手で顔を覆った。
指の隙間からこちらを見ているので、完全に隠すつもりはないようだった。
「な、なんてエッチな...やっぱり、あの噂は本当だったんだ...」
「エッチ?噂?」
「い、今のは忘れて!」
「承知しました」
忘れてほしいと言われたので、それ以上は追及せず、僕は再び歩き出した。
数歩進んだところで、後ろから同じ足音がついてくる。
振り返ると、少女は顔を背けた。
「貴方も、シャーレへご用事が?」
「ま、まぁね。正義実現委員会のエリートとして、先生が変なことをしないか様子を見に行くのよ」
「正義実現委員会?貴方がですか?」
「何よ...信じてないの?」
「いえ、そんなことは」
正義実現委員会。やはりトリニティ総合学園の生徒のようだ。
不思議な方だと思いながら歩いていると、少女は少し距離を空けたままついてきた。
〇〇〇
シャーレへ到着して扉を開けると、先生は机に向かったまま書類の山と格闘していた。机の上には飲みかけのコーヒーと、開封されたまま放置された菓子、それから途中で力尽きたらしいペンが転がっている。
「先生」
「ん...ああ、ユウ。いらっしゃい」
先生が顔を上げ、僕の後ろを見た。
「あれ?コハルも一緒なんだ。意外な組み合わせだね」
「別に一緒じゃないわよ」
僕の背後から否定が飛んできた。
コハルという名前らしい。
「偶然同じタイミングでここに来ただけ」
「そうなの?」
「そう!」
先生は僕へ視線を移した。
僕が頷くと、先生も深く考えずに頷き返す。
「じゃあ、二人とも座って。今ちょうど一区切りついたところだから」
「本当に?」
コハルが机の上を見回した。
書類の山は机の端から端まで続き、一区切りという言葉から想像する状態とは少し違っていた。
先生は視線を逸らした。
「まぁ、うん。一区切りついたところなんだよ」
「全然ついてるようには見えないけど?」
「細かいことは気にしないで」
僕はいつものソファへ腰を下ろし、紙袋から衣装を取り出した。
畳んでいたワンピースを広げると、先生が書類を押しのけながら立ち上がる。
「今回はずいぶん落ち着いた感じだね」
「はい。色を抑えた分、形が綺麗に見えるようにしました」
「この辺りの絞り方、前と変えた?」
「少しだけ。以前より腰の位置が高く見えると思います」
先生が近づき、布地へ顔を寄せた。
「本当だ。着たところも見ていい?」
背後で何かが落ちた。
振り返ると、コハルが鞄を床へ落としたまま固まっている。
「い、今、何て...?」
「着たところも見せてもらおうと思って」
先生が答えると、コハルの顔が一瞬で赤くなった。
「ここで!?」
「奥に着替える場所があるよ」
「そういう問題じゃない!」
「では、どのような問題でしょうか」
僕が尋ねると、コハルは口を開いたまま止まった。
視線が僕と先生の間を忙しく往復し、やがて両手を振り回し始める。
「だ、だって、服を着替えて、それを先生に見せて、先生が近くで確認するんでしょ!?」
「それがどうかしましたか?」
「なっ...」
先生が困ったように頬をかいた。
「別に変なことはしてないよ。衣装を見て感想を伝えてるだけで」
「先生は黙ってて!」
「どうして...」
先生が少し傷ついた顔をしたので、僕は衣装を抱えて奥の部屋へ向かった。
扉を閉める直前、コハルが先生へ詰め寄る声が聞こえた。
「いい、先生? 絶対に入っちゃダメだからね!」
「入らないよ」
「覗くのもダメ!」
「覗かないよ」
「物音を聞くのもダメ!」
「それは難しくない?」
着替えを済ませて戻ると、先生はソファに座り、コハルはその斜め向かいで腕を組んでいた。
僕の姿を見た先生が、素直に目を輝かせる。
「可愛い。すごく似合ってる」
「ありがとうございます」
「今回はかなり上品だね。リボンも小さめで、全体の雰囲気に合ってる」
先生は立ち上がると、僕の周囲をゆっくり回りながら衣装を確認した。
背中側へ回ったところで、肩口に指が触れる。
「ここ、少しずれてない?」
「自力では手が届きにくかったもので...お願いしてもよろしいですか」
「もちろん、じっとしてて」
先生が背後からリボンの位置を直すと、コハルが息を呑んだ。
振り向かなくても分かるほど大きな音だった。
「どうしましたか」
「な、何でもない!」
コハルは顔を背けたが、耳まで真っ赤になっている。
先生がリボンを整え終え、僕の肩を軽く叩いた。
「これでいいと思う」
「ありがとうございます」
「次は髪かな。衣装に合わせるなら、もう少し下でまとめた方がいいかも」
「なるほど、素晴らしい着眼点です」
「試してみようか」
先生が僕の髪へ手を伸ばした瞬間、コハルがソファから立ち上がった。
「触るの!?」
先生の手が宙で止まる。
「えっと、ユウからはちゃんと許可をもらってるけど...」
「はい、先生は自由に僕の身体に触れていただいて結構です」
「そ、そういう問題じゃないでしょ...あれ?私がおかしいの?」
コハルは座り直したものの、今度は膝の上で拳を握り、じっと僕たちを睨んでいた。
先生は首を傾げながらも、僕の髪を一度ほどき、低い位置でまとめ直していく。指先が耳の近くを通るたび、コハルの肩が小さく跳ねた。
「痛くない?」
「大丈夫です」
「少しきつくするね」
「はい」
「き、きつく...」
コハルが小声で繰り返した。
先生には聞こえていなかったらしく、そのまま髪を結んでいる。
僕は鏡越しにコハルを見た。
赤い顔を両手で押さえながら、何かを必死に否定するように首を振っている。
「髪を結んでいるだけ...髪を結んでいるだけなんだから...でも、あんな近くで、後ろから...違う、何を考えてるのよ私は...」
小声ではあったが、部屋が静かなため、こちらまで十分に聞こえていた。
僕は鏡の中の先生へ目を向ける。
先生も今度は聞こえたらしく、何とも言えない顔をしていた。
「完成」
先生が髪から手を離した。
「いかがでしょうか」
僕がその場で一度回ると、スカートの裾が軽く広がった。
先生は満足そうに頷く。
「やっぱりこっちの方が合うね。可愛いよ」
「先生」
コハルが低い声で呼んだ。
「何かな」
「さっきから可愛い可愛いって言いすぎじゃない?」
「そう?」
「そうよ! そんなに何度も言わなくてもいいでしょ!」
「でも、実際に可愛いから」
コハルの顔がさらに赤くなった。
僕は彼女の反応を眺めながら、少し考えた。
先生が衣装へ感想を述べるたびに赤くなり、髪へ触れれば動揺し、僕たちの会話から本来存在しない意味を見つけ出してように思える。最初は何を気にしているのか分からなかったが、ここまで続けば法則も見えてくる。
どうやらコハルは、僕と先生の距離が近くなるほど、何かしらの想像を膨らませるらしい。
「先生」
「うん?」
「横から見た際の印象も確認したいのですが、よろしいですか」
「もちろん」
先生がソファへ戻ったので、僕も隣へ座った。
いつもと同じ程度の距離だったが、コハルの視線は既に僕たちの間へ固定されている。
僕が数センチだけ先生の方へ寄ると、コハルの眉が動いた。
さらに肩が触れるところまで近づけば、目が大きく見開かれる。
なるほど。
非常に分かりやすい。
「ユウ?」
先生が小声で僕を呼んだ。
「何でしょうか」
「今日はずいぶん近いね」
「この方が、横から見た際の形を確認しやすいかと思いまして」
「私が?」
「はい」
先生は僕とコハルを順番に見てから、事情を理解したらしい。
小さく息を吐き、肩をすくめる。
「ほどほどにね」
「何のことでしょうか」
僕は目を逸らし、先生の腕へ自分の腕を添えた。
抱きつくほどではない。ただ、座ったまま自然に身を寄せ、肩同士の隙間をなくしただけだ。
先生は一瞬こちらを見たものの、引き離しはしなかった。僕が男だと知っている以上、この程度の接触を気にする理由もないのだろう。
「こ、この距離で確認する必要があるの...?」
コハルの声が震えた。
「全体の輪郭を見るには、近い方がよいかと思いました」
「近すぎるでしょ!」
「そうでしょうか」
僕は先生の肩へ少しだけ頭を近づけた。
そのまま、コハルへ目を向ける。
彼女は両手で口元を覆い、真っ赤な顔で僕を見ていた。
視線が合った瞬間、その肩が大きく跳ねる。
僕は表情を変えず、ほんのわずかに首を傾けた。
どうされましたか。
口には出さなかったが、彼女には十分伝わったらしい。
「い、今、こっちを見た...」
「ユウが?」
先生が尋ねた。
「見た! 絶対に見た! 先生にくっつきながら、私のことを見てた!」
「コハルさんがこちらを見ていたので」
「絶対そういう意味じゃなかった!」
「では、どのような意味でしょうか」
「そ、それは...」
コハルの視線が泳ぐ。
僕は先生の袖を軽くつまみ、さらに数センチだけ体を寄せた。
先生が横目でこちらを見る。
「えっと、本当にほどほどにね?」
「はい」
返事をしながらコハルへ視線を戻すと、彼女は息を止めたように固まっていた。
その頭の中で何が起きているのか、表情だけで何となく想像できる。
先生へ密着している。
先生は拒まない。
こちらを見ている。
それでも離れない。
おそらく、その辺りの事実が彼女の中で勝手につながり、実際とはまったく異なる結論へ向かっているのだろう。
「見せつけてる...」
コハルが呟いた。
「何をでしょうか」
「とぼけないで!」
「僕は質問しただけですが」
「その余裕そうな顔もやめなさいよ!」
特に表情を作ったつもりはなかったが、彼女には余裕そうに見えるらしい。
僕は一度考え、先生の肩へ頬を寄せるふりをした。
触れる直前で止め、コハルだけに見える角度から静かに目を細める。
「ユウ」
先生の声に、わずかな呆れが混じった。
「はい」
「楽しんでるでしょ」
「少しだけ」
「やっぱり」
先生は苦笑しながらも、僕を押しのけることはしなかった。
そのやり取りが最後の一押しになったらしい。
コハルは顔を真っ赤にしたまま勢いよく立ち上がり、僕たちへ指を突きつけた。
「や、やっぱりそういう関係なんでしょ!」
「え?どういう関係?」
先生が尋ねる。
「い、言わせないで!」
「えっと...分からないから聞いてるんだけど」
「二人でこそこそ会って、服を着替えて、近くで見て、髪を触って、くっついて、それで楽しんでるんでしょ!」
「衣装の確認を楽しんではいますね」
「そういう意味じゃない!」
「別の意味があるのですか」
「あるに決まって...」
言いかけたコハルが、自分の口を両手で塞いだ。
先生は困ったように僕を見る。
僕も彼女が何を言いたいのかは分かっていたが、あえて首を傾げた。
コハルの目に涙が浮かぶほど顔が赤くなる。
「と、とにかく!」
一度大きく息を吸い、彼女は部屋中へ響く声で叫んだ。
「エッチなのはダメ! 死刑!」
静寂が落ちた。
先生は目を瞬かせ、僕は先生の肩から離れて姿勢を正した。
「エッチなことはしていませんが」
「してる!」
「どの行動が該当するのでしょうか」
「ぜ、全部よ!」
「全部と言われましても」
僕は先生の腕に、自身の腕を絡めて見せた。
「こういうのですか?」
「あ、うぅ...ッ」
コハルは頭を抱え、その場で何度も足踏みした。
先生がなだめるように手を上げる。
「落ち着いて、コハル。ユウとは本当に衣装を見ていただけだから」
「本当に?」
「本当だよ」
「じゃあ、何であんなにくっついてたのよ!」
先生の視線が僕へ向く。
僕は少し考えてから答えた。
「コハルさんがどのような反応をされるのか、興味がありまして」
「わ、私をからかってたのぉ!?」
「はい」
コハルの動きが止まった。
「申し訳ありません。想像していた以上に反応が大きかったので、少し楽しくなってしまいました」
「楽しくなってしまいましたじゃない!」
「ご不快でしたか」
「当たり前でしょ!」
「それは失礼しました」
僕が頭を下げると、コハルは勢いを削がれたように口を閉じた。
怒鳴る準備をしていたらしいが、謝られて次の言葉を失ったようだった。
先生が僕の頭へ軽く手を置く。
「ユウも珍しいね。人をからかうなんて」
「僕もそう思います」
「他人事みたいに言わないの」
「ただ、コハルさんの想像力は大変興味深いですね。髪を整えていただいただけで、あれほど多くの意味を見つけられるとは思いませんでした」
「言うなあああっ!」
コハルが両手で耳を塞いだ。
先生は笑いを堪えるように口元を押さえたが、それを見たコハルが即座に睨む。
「先生も笑わないで!」
「ごめんごめん」
「ぜ、絶対反省してない...」
「うーん、でもコハルが一人で勘違いしてたのは事実だし」
「勘違いさせる方が悪いでしょ!」
「最初は普通に衣装を見ていただけですよ」
僕が指摘すると、コハルは再び固まった。
最初に先生が衣装へ触れた時点で、彼女は既に顔を赤くしていた。つまり僕がからかい始める前から、想像は十分に広がっていたことになる。
「そ、それは...」
「何を想像されていたのでしょうか」
「聞くなあああっ!」
コハルの叫びが、再びシャーレ中へ響いた。
しばらくして落ち着きを取り戻した彼女は、ソファの端へ座り、僕たちから可能な限り距離を取っていた。
先生は机へ戻り、僕は鏡を見ながら髪型を確認する。
低い位置でまとめた髪は衣装によく合っており、リボンの角度も申し分ない。
「やはり、こちらの方が可愛いですね」
「今回の衣装ならその髪型が正解だと思う」
先生が頷く。
コハルがこちらを警戒するように見た。
「もう変なことしないでしょうね」
「変なこととは?」
「そうやって聞き返すの禁止!」
「承知しました」
僕は鏡越しに彼女を見る。
目が合うと、コハルはびくりとした後、僕と先生の距離を確認した。
今度は十分に離れている。
それでも何かを疑っているらしく、じっとこちらを見つめていた。
「コハルさん」
「何よ」
「先ほどは申し訳ありませんでした」
「...ふん、分かればいいのよ」
「次からは、もう少し分かりにくくします」
「反省してないじゃない!」
立ち上がったコハルが再び叫び、先生はとうとう堪えきれずに笑い出した。
僕も少しだけ口元を緩める。
どうやら可愛い衣装の研究以外にも、世の中には興味深いものがあるらしい。
ただし、コハルを観察する時は距離に気を付けた方がよいだろう。
近づきすぎると、また死刑を宣告されてしまう。
「...」
ただ今回は、少々からかい過ぎてしまったかもしれない。
誤解を解いておいた方が、これ以上心配を掛けずに済むだろう。
「コハルさん」
「な、何よ」
「少しこちらへ」
「え?」
僕はコハルへ近づき、小さく手招きをする。
彼女は警戒しながらも、おそるおそる顔を寄せてきた。
「……?」
僕は小さな声で、耳打ちする。
「僕は男なので、先生とは、貴方が考えているような関係性ではありませんよ」
数秒、沈黙が流れた。
「…………え?」
コハルの目がゆっくりと見開かれる。
「お、と……?」
その小さな呟きと同時に、何かを理解したように瞳が揺れた。
「え……?」
頬が赤く染まり直す。
「えぇ……?」
さっきまでとは少し違う種類の動揺だった。
視線が僕から先生へ移り、また僕へ戻る。
何やら頭の中で勢いよく考えが組み立てられているらしい。
予想だにしてなかった反応だった。
「ま、まさか……」
次の瞬間。
つー...と、
コハルの鼻から、一筋の赤いものが流れた。
「……あ」
そのまま力が抜けるように後ろへ倒れる。
「コハル!?」
先生が慌てて立ち上がり、倒れかけたコハルを抱き留めた。
「ちょ、ちょっとユウ!? コハルになんて言ったの!?」
僕は目を瞬かせる。
「えー……」
腕の中で真っ赤な顔のまま気絶しているコハルを見てから、小さく首を傾げた。
「これは、想定外でしたね」
コハルって何となくBLを受け入れる素質がありそうだなと思って書いたが、シンプルにコハルの解像度が足りてないような気がしてならない。
曇らせについて
-
肯定派
-
否定派