資格を手放した元先生の繰り返した世界線での願い 作:Thinker1714
内容をみてみまして自分自身も展開が唐突だったかな?と心配になりましたので、近いうちに新しくアンケート取ろうと思います。
翌朝。雷帝の警告が脳裏の片隅で冷たく疼く中、俺は最小限の特製装備を携え、アビドスへと足を運んでいた。
目的は二つ。一つはモモトークで助けを求められたホシノのケアと、彼女の精神状態の確認。もう一つは、ネフティスとの取引を終えてアビドスへ戻ってくる途中のユメが、この後遭難することを防ぐための確認だ。
荒涼としたアビドスの校舎の一角。見つけたホシノは、いつものような様子を保とうとしているが、どこか張りつめた糸のような危うさを纏っていた。
「……ホシノ。ちょっといいか」
俺が声をかけると、ホシノはこちらを確認し、その目を鋭く冷ややかなものにしてこちらに向けた。
「何だ…… アナタですか、おおかたユメ先輩から話を聞いて私に説教しに来たんですか?」
その声音のトーンが、いつもより明らかにトゲを含んでいる。昨日のユメとの言い合いの尾を引いているレベルではない。もっと内側から――得体の知れない泥のような感情が、彼女の心を侵食しているような違和感があった。
「説教じゃない。ただ、昨日ユメと喧嘩をしたそうじゃないか。何か一人で抱え込んでいるなら……」
「――うるさいなぁ!」
ガタッとホシノが荒々しく椅子を蹴飛ばした。その瞳に浮かんでいるのは、年相応の頑なさなどではない。狂気すれすれの焦燥と、こちらに対する異常な怒りの感情だった。
「アンタが……アンタがこんなことをしたから……アビドスにまだ希望があるとユメ先輩に示したから……!! 実質2人だけの学校で借金を半額以下まで減らせたのはアンタがいたからだよ……だからこそユメ先輩は変に希望を……叶いもしない夢を見てしまったんだ!! アンタみたいな外様が、余計なことをしたからだッ……!」
怒号を浴びせながらも、ホシノの表情は酷く歪み、まるで自分の声に怯えているかのような矛盾を孕んでいた。その過剰なまでの拒絶反応に、俺の脳裏に冷たい電撃が走る。
(……なんだこれ。この異常なまでの支離滅裂な言動と、感情の昂ぶりは……?)
自らの意思や文脈を無視して、内側から強制的にねじ曲げられているような違和感。まるで、他者の悪意ある思考が直接脳内に流れ込んでいるかのような、不自然すぎる精神の変質。
(まさか……『地下生活者』の精神干渉か……っ!?)
原作の知識が頭をよぎる。アビドス3章にてホシノを狂気に追い込み、アビドスに混乱を導いたゲマトリアを追放された異端者。もしあいつが、すでにこの時期からホシノの心を踏みにじるように蝕んでいたとしたら――。
「ホシノ、待て、お前――」
「――もういい! 来るな、あっちへ行けよ……! お前さえいなければ……っ!」
ホシノは半狂乱の叫び声を上げると、その場から走り去ってしまった。後には、ただ冷たい砂の風だけが残される。
「クソ……!」
言葉を失い立ち尽くす俺の胸中に、言い知れない悪寒が這い上がる。ホシノがこれほどまでにやられているなら、今日これからネフティスの取引に向かい、そして帰路につくはずのユメの方も、すでに手遅れになりかけているのではないか。最悪の状況が脳裏を駆け巡る。
「――っ!」
俺はすぐさま通信端末を取り出し、ユメに連絡を入れようとしたが、すでに回線は繋がらない。おそらくネフティス支社周辺の電波は、意図的に遮断かジャミングを受けている。
のんびりと待っている場合ではない。ユメが単身で、おそらく地下生活者の罠に嵌められる前に、俺が直接回収に向かうしかない。
だが、ここからアビドスの中心街、そしてネフティス支社周辺までは距離がある。歩いては間に合わない。おまけに、昨日の雷帝の警告が頭をよぎる。――『アビドスとネフティスの会合に私も同席する』。それはつまり雷帝が俺のどう動くのかを観察するための何かがあると見ていいだろう。
通常の移動手段や車両を使えば、雷帝の諜報網に即座に捕捉されるし、何より時間がかかりすぎる。地上を走る時間は一秒たりとも残されていない。
「……なら、想定の遥か上を行くか……空を行こう」
俺は即座に全身のナノマシン生成炉を最大出力へと引き上げるため、マテリアル変化によって肉体をタンパク質ベースの有機物から超高硬度の無機物へと瞬時に書き換える。
目指すのは、超高高度を音速の壁を超えて強行突破するための機動武装――幾重にも重なる複合装甲、背部に並ぶ多数のミサイルポッド兼高推力バインダー、そして圧倒的な火力を備えた高機動飛行アーマー。かつて転生前に見ていた世界で圧倒的な存在感を放った○ン○ムの機体をベースに、全身の構造データを脳内で再構築し、我が身のナノマシンを一気に全解放する。
カチリ、と全身から溢れたナノマシンが体を覆い、骨格から外装へと形を変えていく。俺自身の肉体そのものがその機体の構造へと変異・直結し、体内のエネルギー炉と反重力制御装置によって重力の縛りを強引に無効化する。生体と機械が完全に融合した圧倒的な巨躯へと、我が身がその姿を変えていく。
そうしている間にも全身が精悍なカラーリングの複合装甲へと変化し、背部には巨大なスラスターユニットと幾何学的なバインダーの群れが展開していく。
「雷帝が俺の行動を監視していようと何だろうと、知ったことか……!」
地上での足掻きを捨てた俺は、重力と常識を置き去りにするような圧倒的な爆音と共に、アビドスの蒼穹へとその身を躍らせた。
上空へと飛び立った俺を待ち受けていたのは、予想通りゲヘナの無人偵察ドローンや、各所の監視網だった。
地上ではゲヘナの生徒たちが岩陰に身を隠しながらカメラでこちらの動向を追い、空では離れた高度をキープする無人ドローンが静かに追従している。さらに、その監視カメラやドローンの群れに混じるように、不気味なほど黒い『ゲマトリア』製のものや、真逆の純白に橙色の、おそらくデカグラマトン製と思われる異質な観測機影すら混ざっているのが視界の端に捉えられた。
――だが、どの機体も迎撃のミサイルを撃ってくるわけでもなければ、電磁妨害を仕掛けてくるわけでもない。ただ赤く明滅するレンズの群れは、雲の海を音速で切り裂く俺の姿を、どこか冷ややかな興味で見送るように追従しているだけだった。
(……やはりな、雷帝はただの観賞用としてこれを放置している。邪魔をする気はないってわけだ。だが、ゲマトリアやデカグラマトンまで嗅ぎつけていたか……)
――時を同じくして、遠く離れた場所や秘匿された空間にて。
この異常事態は、世界の裏と表に君臨する者たちにとって、極上の特等席で繰り広げられる「映画」のようだった。
ゲヘナの生徒会室。
巨大なスクリーンの向こうで、音速のアーマーと化した巨大な機体(その中身そのものが俺の肉体であるという異形)を駆り、ナノマシンを散布する主人公の姿を、雷帝はワイングラス(学生のため中身はジュース)を傾けながら面白そうに眺めていた。
「ほう……私の忠告を無視して、一目散にあの砂漠へ飛ぶか。相変わらず派手でいい……取引を終えて早々に戻ってきた甲斐もある」
「っ……! なんだこれ、彼は……一体、何をしているんだ……っ!?」
その背後では、直前に拘束・連行されてきたマコトとヒナが、スクリーンに映る主人公の姿を見つけて息を呑んでいた。マコトは冷や汗を流し、ヒナはよく知るはずの相手が突如として異形の兵器と化して飛んでいる信じられない光景に、「ユウ……?」と名前を零したまま、ショックでその場から動けなくなっている。
「静かに観賞したまえ、我が愚かな生徒たちよ。これからこの砂漠で、運命の歯車がどう狂うか、特等席で見せてやろう……それにしても素晴らしいな……自身の身体そのものをあの機体構造へと変化させるとは……ますます欲しくなってきたな……我が偉大なるゲヘナのためにな……」
一方、光の届かない地下の秘匿空間――ゲマトリアの卓を囲む者たちもまた、歪んだ電子音を響かせていた。
「クックック、興味深いですね。死騎ユウさん、貴方のその変化する身体……実に面白い」
「光耀のオシリスの破滅という事象に、彼の者のノイズが混ざる。だが、それもまた一つの観測に値するデータか……」
「そういうこったぁ!!」
さらに、遠く離れた神聖なる空間――デカグラマトンの中枢においても、無機質な機械音声が淡々と告げていた。
「――証明者にして異物。彼が何を護り、何に抗うのか。その結末を、我らもまた記録しよう。記録したデータは鋼鉄大陸へ送信し、アイン、ソフ、オウルたちにも共有しておこう」
それぞれの思惑が交錯する中、世界の最高峰たちが画面越しに見守るその中心で――。
周囲の視線を無視し、俺は飛行形態へと変形させた巨体から、膨大な量の微細なナノマシンの群れを雨のようにアビドスの砂漠へと一斉に散布していた。
だが――アビドスの砂漠はあまりにも広大だった。
数十分、いや一時間を超える捜索の末も、広大な砂漠に広がる砂嵐や地磁気の乱れがナノマシンの網を激しく撹乱し、的確なユメの居場所をなかなか絞り込めずにいた。焦燥感が脳裏を焼き焦がす。燃料ではなく自身のエネルギー消費とはいえ、長時間の超高音速機動と広範囲スキャンの負荷は確実に体力を削っていく。
(クソ……どこだ……っ!)
焦る気持ちを抑え込み、さらに散布密度を上げて砂漠の低空を舐めるように旋回し続けた、その時だった。
――瞬間、脳内のメインディスプレイに、微弱ながらも確かな生体反応が弾けた。
座標を捉えた俺は、背部のスラスターを思考操作でフルスロットルにし、機体を凄まじいGと共に急降下させる。音速の衝撃波が地表を揺らし、砂煙を巻き上げながら、俺は目指す場所へと肉薄した。
だが、視界に飛び込んできた光景に、俺の背筋が凍り付く。
――日が沈み始めた砂漠の彼方から、すべてを飲み込まんとする異常な規模の巨大な砂嵐が、凄まじい勢いで迫り来ていた。
そしてその嵐の縁、コンパスも方角も見失ったかのように、小さな影がぽつんと立ち尽くしているのが見える。
ネフティスとの取引を終え、たった一人でこの荒野に取り残されてしまった少女――ユメだ。
頭上でうねる砂の壁は、すでに人間の足では絶対に逃げ切れない速度と質量を持って彼女へと襲いかかろうとしている。
「間に合え……っ!!」
思考よりも早く、俺の肉体そのものである機体は最高出力で限界を超えた加速を叩き出した。
轟音を置き去りにし、大気を引き裂く爆風を纏いながら、砂嵐がユメを呑み込むそのコンマ数秒前――俺は飛行形態から人型へと一瞬で変形し、その巨大な腕と装甲で彼女の小さな背中へと覆いかぶさるように飛び込んだ。
突然の衝撃と、目の前を覆う冷たい金属の装甲に、ユメが小さく息を呑む。
「え……っ……?」
吹き荒れる狂気的な砂嵐が、俺たちの装甲を猛烈な勢いで叩きつけ、視界を完全に奪っていく。だが、俺はその下で震えるユメの体を自らの巨体とマテリアル変化したナノマシンでしっかりと抱え込み、絶対の盾を築き上げた。
「……大丈夫だ、ユメ」
「ユウ……?」
風の轟音に掻き消されないよう、俺はしっかりとそう告げる。
最悪のシナリオの只中、まずは一番守りたかった命を、こうして腕の中にしっかりと確保することに成功したのだった――だが。
――轟音を置き去りにし、大気の限界を突破した超高圧の放電が空間を切り裂いた。
吹き荒れる砂嵐の摩擦熱と、上空で異常に捻じ曲がった電磁雲が耐え難い臨界点を迎え、大地そのものを焼き焦がすほどの特異点的な落雷が、俺たちの目と鼻の先に容赦なく叩きつけられる。
「きゃああっ……!?」
あまりの強烈な閃光と鼓膜を打つ凄まじい衝撃波に、腕の中のユメが小さく悲鳴を上げ、俺の胸元へとさらに強くしがみついた。
俺は自らの肉体であるナノマシンの装甲で爆風と飛来物を完全にシャットアウトしながら、視線を前方の猛烈な雷光へと向けた。
――光のカーテンが収束し、砂塵が吹き払われたその中心。
激しい赤き稲妻の奔流を引き裂くようにして、砂漠の彼方から異形の存在が圧倒的な静寂と共に浮遊しながら姿を現す。
それは神話の具現か、あるいは超常の建造物か。
幾何学的で巨大な仮面のような頭部を中核とし、その周囲には宙に浮く巨大な両腕と、神々しくも禍々しい光輪や装飾が配されている。全身から赤白い強烈な雷光と圧倒的な質量を纏った、古代の神罰そのものの姿――『セトの憤怒』。
原作とは異なる禍々しい色合いを帯びつつも、頭上には天を衝くような天上の神々を思わせる神聖不可侵の威圧感が漂い、その冷徹な眼差しが、逃げ場のない荒野に立つ俺たちを捉えていた。
(……っ! なるほど、よりによってセトの憤怒が直接お出ましとはな……しかも原作にないタイプか……!)
モニター越しにこの光景を見ているであろう雷帝やゲマトリア、そしてデカグラマトンどもが、それぞれの特等席で目を輝かせている姿が目に浮かぶ。
だが、怯えている暇はない。俺の腕の中には、今まさに守るべきユメがいる。
原に響くような重い音とともに、自己学習と自己増殖を繰り返すナノマシンの群れが全身の構造を戦闘用に再定義し、もう一つの転生特典が限界突破の出力を告げる。機体各所のスラスター口やバインダーから青白い光が溢れ出た。
Tips 主人公の強さについて生身(追加装備じゃない状態)の強さは第8話に書いていたとおりですが流石に追加装備(今のところゼー・ズール装備やアリュゼウス装備)があれば、流石にそっちが強いです。なお、見た目だけの中身が別物なのであしからず。
推力比ではアリュゼウスよりペーネロペーが高いですが、アリュゼウスを採用した理由は…………ロマンがあるからです!!
今の文章量で良いのか読み足りないのかわからないので皆さんの意見を参考にします
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今の4千〜5千字くらいの目処
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5千〜1万字くらいの目処
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1万以上を目処