資格を手放した元先生の繰り返した世界線での願い 作:Thinker1714
いつの間にかUA1000行きそうなんですが……しかもまだ本編行ってないオリジナルの過去なのに……
お気に入りしてくださった皆様ありがとうございます。
執筆頑張っていきますので温かく見守っていただけると幸いです。
本日中にはもう1話出すかもしれません
スケバンやヘルメット団たちを受け入れてから、あっという間に三ヶ月ほどの月日が流れていた。
「よし、全員揃っているな。今日の担当分けを発表する。一班と二班は西地区の定期清掃と荷物の運搬補助。三班は拠点周辺の巡回警備だ。くれぐれも住民に威圧感を与えるんじゃないぞ」
『『『はいっ! アニキ!』』』
朝、事務所の前にズラリと並んだのは、整然と隊列を組む総勢五十人近くの少女たちだ。
腕には俺がお手製で配った『何でも屋・作業員』の腕章を巻き、その表情にかつて街を荒らしていた頃の陰りはない。
(……いや、なんでこんな大所帯になってるんだ?それに、そろそろ名前も決めないとな……)
胃のあたりに生じたジリジリとした痛みを覚えながら、俺は心の中で深く溜め息をついた。
最初は数人のスケバンやヘルメット団に銃の手入れやマナーを教えただけだったのだ。しかも撃てればいいという状態だからか精度などが落ちていて資金繰りが大変なのはわかるのだが、そこは廃材と増殖させたナノマシンを混ぜ込んで強化したパーツなどでフルメンテしてやった。だが、「あそこに行けば飯が食えて、真っ当な生き方を教えてくれる」という噂が口コミで広がり、気づけばドロップアウトした生徒たちの『駆け込み寺』のような状態になってしまっていた。
給与としてポケットマネーから作業日給を出しているため、彼女たちの生活費支援にもなっているのだが……流石にこの人数を収容するには、今の事務所はあまりにも狭すぎた。それに、いつかは俺のかわりに危険性の低い依頼も受けられるようにしないとな……。今までのような地域清掃や家屋の修繕、警備巡回だけでなく、他の自治区にも支部のようなものを設置して、そこから地域に根ざせるようにもしていきたい。きちんとした給与を出したいしな……。
「そろそろ、本気で大きな拠点を探さないとダメか……」
「ねぇねぇユウ! 今日は何のお手伝いをすればいい〜?」
悩む俺の背後から、呑気で明るい声が響く。振り返ると、そこには作業用の麦わら帽子をかぶったユメの姿があった。
「……ユメ。何度も言っているが、ここはブラックマーケットだ。アビドスの生徒会長が毎日のように泊まり込んでいい場所じゃない」
「えへへ〜、もうすっかり慣れちゃった! それに、ユウの淹れるお茶美味しいし!」
あれほど警戒していたはずなのに、一度拠点を突き止められてからはこの有様だ。挙句の果てにはそのまま泊まっていくことも増えていた。
だが、彼女がここへ通うのには大きな理由があった。アビドスの復興、そして深刻な砂嵐対策のためだ。
アビドス自治区を何度も訪れているうちに、ポロっと借金問題や地域の砂漠化に対する問題点を話し合う流れになり、こちらで本格的に対策を練ることになっていた。アビドス全域をいきなり緑化するのは環境的にも無謀だったため、俺は体内のナノマシンを使った高感度スキャンで地下水脈の微弱な反応をピンポイントで捉え、メモをしておいた。
(大オアシスが干上がっていた事を考えるとおかしいな……もしかしたらビナーが通った?泳いだ?影響で地盤がズレてオアシスの湧き水の湧き地が潰れただけかもしれんな)
試しに学園の周囲の廃墟などを取り壊して温室を作り、そこで廃材やコンクリートを組んだ専用の
ブラックマーケットの業者たちと真摯に取引を重ねて得た信頼とコネを使い、高規格なクロマツの苗木を調達する。しかし、普通の苗木から育てていては何十年とかかり、現状のアビドスの危機には間に合わない。そこで俺は、体内のナノマシンを抽出し作り上げた活性化液を投与し、細胞レベルの環境適応と代謝を強制加速させることで、本来なら途方もない時間がかかる成長期間をわずか数週間にまで圧縮してやった。これで砂嵐がどこまで抑えられるか分からないが、ないよりかはマシだろう。さらに、過酷な環境に強いカモミールなどのハーブや砂漠の野草も同じ手法で大量に安定栽培し、部下となった少女たちにアルバイト代を出して運ばせ、ユメと共に植林や栽培を進めていった。
そうして育てたハーブを活かした「アビドス特製ハーブティー」や、栽培地の片隅でひっそりと始めた砂漠の特異な花々を蜜源とする「アビドス特製・砂漠の濃厚ハチミツ」の生産など、砂漠の過酷さを逆手に取った特産品づくり計画も、ユメの明るい性格のもとで着々と動き出していた。
そんな賑やかすぎる日常の合間を縫い、俺はキヴォトス各地へ足を運び、情報収集も継続していた。
……まあ、成果は様々だが。
百鬼夜行や山海經の自治区では、熱気あふれる祭りや美味しそうな屋台の誘惑に負け、調査という名の完全な観光と食べ歩きで終了。(思考加速で射的の弾道を計算し、景品を総浚いしてしまったのは少し反省している。イルカのぬいぐるみだけはもらっておいてユメにプレゼントした。喜んでくれたが一緒にいきたかったとごねられて困ったが……)
極寒の地・レッドウィンターでは、ナノマシンでカスタマイズした寒冷地仕様のホバースキーを駆り、爆走しながら雪原を流し見しただけで即撤退。いつクーデターが起きてもおかしくない異様な空気に、長居は無用と判断したからだ。
ワイルドハント芸術学院は独自の厳しい立ち入り制限に阻まれて断念し、そして一番のやらかしはヴァルキューレ警察学校だった。
街で暴れていた悪質な大人のチンピラを捕まえ、「警察に突き出せば治安も良くなるだろう」と親切心で駐在所に連れて行ったのだが——対応した警察生徒たちは大混乱。『えっ、大人の犯罪者……!? 収監施設って生徒用しかないんですけど!?どうすればいいんですか!?』と泣きつかれ、(あ、これ俺がやらかしたパターンか……?)と気まずくなってソッとその大人と共にその場を後にしたのだった。
なお、トリニティ総合学園ではいつも通りフードを深々と被り、政治的動静を探る傍らで『古聖堂を通らずにアリウスへ繋がる地下通路』を水面下で捜索し続けている。ナノマシンの広域スキャンを最小限に抑えつつ、放棄された旧校舎や地下水路の構造を地道に解析しているが、こちらはまだ時間がかかりそうだ。
——さて。外での活動はともかく、まずは目の前の「狭すぎる拠点」の問題だ。
俺は、ブラックマーケットで手抜き工事や詐欺まがいの販売を行っていたグレーな建築業者のもとを訪れていた。
「ひぃっ……! な、なんだよ『何でも屋』の……! う、うちのシマに殴り込みか……!?」
「勘違いするな。物件の相談に来ただけだ」
怯える業者に対し、俺はナノマシンで再精錬した超高強度の建築用合金スチールと、思考加速による精密な構造計算書をドンとテーブルに叩きつけた(慣れない建築関係の勉強をしたせいで頭痛いが……)。
「あんたの手抜き工事は構造計算上、あと半年で崩落する。……だが、俺の精錬した高強度建材と耐久工具を、割安かつ優先的に卸してやってもいい。その代わり、せっかく腕がいいのに……詐欺まがいの営業をやめて真っ当な建築屋になれ。この街の建物を一緒に直すぞ」
「こ……これは!? こ、こんな宝物みたいな資材を……!? わ、分かった! アンタの言う通りにする! 今日から真っ当に働くよッ! アンタに敵対してもロクなことにならないよ!!」
圧倒的な技術力と素材の提示に、業者は涙目になり両手を挙げながら改心を誓った。
こうして俺たちは広々とした廃倉庫を改修した新拠点を手に入れた。地上二階建ての構造で、部下たちの宿舎も別棟に完備。さらには近接格闘訓練場や射撃場、自習用の図書室付きの学習スペースまで設け、地下には以前なら外に野ざらしにしていた物資保管所もしっかりと作り上げた。さらには改心した業者の手によって周辺の建物が一気に補強・リフォームされたことで、俺たちの拠点一帯はブラックマーケットとは思えないほど美しく頑丈な街区へと生まれ変わったのだった。
治安が劇的に向上し、巡回警備も行き届いたその街区は、いつしか『安全なエリア』として噂されるようになっていた。
……だが、その「安全」という噂が、思わぬ珍客を呼び寄せることになる。
「ここが噂の『安全なブラックマーケット』ですか……ふふ、少しスリルがあって楽しいですね」
トリニティの制服を着た、まだ高校に上がる前と思われる小さな少女——後のトリニティ要人、桐藤ナギサだった。彼女を見かけたとき思わず唖然としてしまった。
やんちゃ盛りな年頃ゆえか、探検気分で一人で潜入してきてしまったらしい。
当然、そんな格好の獲物を裏社会の連中が見逃すはずもなかった。彼女の正体がトリニティの要人だと気づいた悪質組織が、「何でも屋に目をつけられるリスク」を理解しつつも、金に目がくらんで彼女を誘拐するという挙に出たのだ。
——まあ、結果から言えば。
報告を聞いた俺が駆けつけたときには、すでに組織の連中がナギサを取り囲み、冷や汗を流しながら言い訳を並べている最中だった。
――が、俺は面倒な問答を一切無視した。
背負ったハードケースから展開したのは、転生前の世界においてやり込んでいたゲームの最新作——地球防衛軍6に登場する、あの『FGZハンドガトリング』に酷似した超硬度合金製の大型重火器だ。見た目の好みだけで選んだその重火器の電子駆動音が、不気味に響き渡る。
「なっ!? 待てっ!? おいっ!? ソレはウソだろ——!?」
数秒の砲身回転の予備動作ののち、吐き出された無数の弾丸と薬莢が、まるで壊れたジャックポットのように乱雑かつ圧倒的な物量で吹き荒れる。銃撃戦などという上品なものではない、圧倒的な制圧射撃の嵐が、アジトのコンクリート壁ごと悪質組織の拠点を文字通り粉砕した。
「ひ、ひえぇぇぇっ!? たすけ、助けてくれぇぇっ!」
「自業自得だ。人のシマで余計な真似をするからだ」
砂煙の舞う瓦礫の中心で、目の前で起きたあまりに理不尽で圧倒的な破壊の光景に、ナギサは目を丸くしたまま、ただ硬直していた。
「怪我はないか、嬢ちゃん」
「ヒッ!!……あ……あの、貴方は……?」
「こんな危険な場所に一人で来るんじゃない。……ほら、手を出せ。トリニティの境界線まで送ってやる」
フードで顔を隠したまま、怯えるナギサを送り届ける。少し離れた場所まで送っていくと、ピンク髪の少女が「ナギちゃーん! 無事でよかったよぉ!!」と慌てた様子で駆け寄ってきた。あの子が聖園ミカだろう。
去り際、ナギサとミカは名残惜しそうに何度もこちらを振り返っていた(ミカに至っては「ナギちゃんを助けてくれてありがとー!!」と両手をブンブン振っていたが)。これに懲りて、二度とブラックマーケットには近づかないでほしいものだ。
なお、拠点制圧とは言え流石はキヴォトスの住民……あれだけの弾丸を浴びてなお気絶程度に収まっているのは流石としか言えない。まぁ、盛大なトラウマにはなっているだろうが……。
余談だが、救出するにあたって撃ち漏らしや逃亡を防ぐため周辺には部下を配置していたのだが、ハンドガトリングを両手に持って悪党どもを蹂躙する光景を目撃した彼女たちは、「……自分たち、日頃の近接格闘訓練でアニキにシメられて本当に良かった……あんなの絶対食らいたくない」と、青い顔で他のメンバーにこぼし合っていたという。
「今日も絶好調にハーブとハチミツが育ってるね、ユウ!」
「ああ。だがユメ、水やりの配分を勝手に変えるなと言っただろう。灌漑システムのロジックが狂う」
新しく手に入れた広大な新拠点の片隅。専用の栽培地で土いじりをするユメを宥めながら、俺は作業を進める。
周りでは、部下のスケバンたちが「アニキ〜! こっちの防風林の補強終わりやした!」「新しい特産品(ハーブティーと砂漠の濃厚ハチミツ)、ブラックマーケットの商店街ですごい高値で売れてるってよ!」と元気な声を上げている。
(……俺はただ、この先の出来事に対処するためだけの活動拠点が欲しかっただけなんだがな。それに現状はアビドスの問題がメインだが、今後出てくるであろうゲマトリアやデカグラマトンの預言者、百鬼夜行の花鳥風月部、雷帝の動向に気をつけなければな……)
青空を見上げ、俺は本日何度目になるか分からない溜め息をついた。
だが、その溜め息はどこか柔らかく、アビドスの乾いた風に心地よく溶けていったのだった。
Tips 今回出てきた地球防衛軍6の武器であるFGZハンドガトリングとは4砲身ガトリングが基部から3連装で付いてる見た目ロマン溢れる武器です。分かりづらければコードギアス亡国のアキトのアフラ・マズダのガトリングを両手に持って思い浮かべてもらえればわかりやすいかと。
なお通常時アサルトライフルも扱う(見た目はStarfieldのMGP リスティックライフル)
プロローグの過去編はこのまま丁寧に作るかそれともさっさと原作に入るべきか
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丁寧に作ってもいいよ
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