資格を手放した元先生の繰り返した世界線での願い 作:Thinker1714
なんとかかけましたのでどうぞ
早いもので、この世界に来て今年が終わろうとしていた。
新年が明けるまでの束の間。
組織の拠点である『ノイアンファング』の面々は、それぞれのやり方で年末を過ごしていた。戦闘部隊の連中は思い思いに羽を伸ばし、ブラックマーケットの街もどこか浮き立った空気に包まれている。
そんな喧騒から少し離れた栽培地のベンチで、俺はユメと二人きりで静かな年越しを迎えていた。
「今年はいろいろあったねぇ……アビドスでユウくんに出会って、そこからブラックマーケットの何でも屋を興してアビドスの抱えてる問題を解決へと向かわせてるんだもん。来年はもっと忙しくなりそうだけど、ユウくん、今度は新入生の子と色々やろうね? それとアビドス高校にいい加減に編入しようよ〜」
「編入の件まだ諦めてなかったのか……まぁ、お前の面倒を見るのも仕事の内だからな。目を離していると何しでかすか分かったもんじゃないからな」
「ひぃん……辛辣だよぉ〜」
カップに注がれた温かいお茶の湯気が、冬の冷たい空気に溶けていく。激動だった一年を振り返りながら、私たちは穏やかな新年を迎えたのだった。
――だが、のんびりできたのはそこまでだった。
年が明けて早々、俺たちはカイザーコーポレーションとの間で、文字通りの「実地演習」を行うことになった。先日の件で釘を刺したとはいえ、向こうも大規模な軍事力を持つ大企業だ。一度、その戦力とこちらの実力を見せつけておく必要がある。
演習場に持ち込まれたのは、カイザーが誇る最新鋭の戦車部隊と、空を覆うほどの攻撃ヘリの群れだった。そしてPMCだけでなくカイザーセキュリティまで参加しており、物量では圧倒的な規模になっている。恐怖でねじ伏せようというお馴染みの悪癖が出ている。
対してこちらは知識や戦闘技能の水準が高い上位15名の精鋭集団を用意しており、武器のチューニングや普段あまり出番のないサイドアームや投擲武器などの確認をしていた。その手はよどみなく、出場者全員の精神も安定しているように感じられた。
それを見て面白くなかったのであろうカイザー側の現場指揮官は傲慢な態度を隠さずにいた。そして各陣営が所定の位置や拠点に配置して演習が始まった。
「ふん、所詮は木っ端どもの集まりよ! 全軍、一斉射撃で灰にしてやれ!」
現場指揮官の号令とともに、戦車の一斉砲撃が轟き、ヘリコプターから無数のミサイルが撃ち出される。
しかし、ノイアンファングが用意した戦力は、わずか上位15名の精鋭のみだった。
「――さて、アタシたちには昔にはないモノがある!! それはユウのアニキから教えてもらった技術や経験、柔軟な思考だ!! こっちは15人、向こうは数えるのも億劫な数だ!! その場その場で指揮役を変えつつ戦況の把握をして勝利を掴むぞ!!」
『『『おおおおおおおお!!』』』
先頭に立つ精鋭たちは、後から続く後衛組や戦場を俯瞰して見れる位置を取った指揮役からの指示を受け、飛来する砲弾やミサイルを紙一重でかわす。あるいはユウから教わった神秘の効率的な操作で圧倒的な数の差を感じさせない戦闘能力を発揮し、カイザー側の兵たちや戦車を弾き飛ばしながら、一気に敵陣へと肉薄する。戦車の装甲など、彼女たちの神秘を込めた武装と連携の前には紙細工同然だった。ヘリのローターを正確無比な狙撃で撃ち抜き、次々と地上へと叩き落していく。
「ご覧になって! あそこ、うちの子が戦車の砲身を蹴り砕きましてよ!? ねぇ見まして見まして!」
そんな戦争さながらの激戦の真横で、なぜか観戦席のようになっていた特等席では、どこからか演習の話を聞きつけたのかアケミが大はしゃぎしていた。スケバンたちの勇姿を見にやってきたらしく、青い顔をして震えるカイザーの兵士たちを尻目に、まるでアイドルのライブでも見るかのようなノリで声援を送っている。
結果は、一方的な蹂躙だった。
カイザーの大規模軍事力は、たった15名の精鋭によって1時間もしないうちにスクラップの山に変えられた。
恐怖と絶望に染まったカイザーの指揮官たちが冷や汗を流す中、俺は静かにトドメの提案を告げる。
「――で、だ。余力があるなら俺とも模擬戦しようと思ったが……これじゃ無理そうだし、何よりこれでただのチンピラではないことが分かってくれてると思うから、今度は学生らしく、近いうちにウチが主催する『学園祭』にでも参加して、生徒たちの本当の姿を勉強してくるといい」
演習場でたっぷりと「絶望」を味わわせた数日後。
俺たちは宣言通り、時期外れではあるが盛大な学園祭をノイアンファングの拠点で盛大に開催していた。
ブラックマーケットで仲良くなった店主たちや住民、そして噂を聞きつけて遊びに来たアケミや百鬼夜行から来たワカモ、トリニティの面々まで巻き込み、会場は爆発的な活気に包まれていた。屋台の煙が立ち込め、生徒たちの笑い声が響き渡る。
視察と称して渋々(しかし半ば強制的に)引きずり出されたカイザーの幹部たちは、戦場で見せたはずの「恐ろしい怪物たち」が、屋台で綿菓子を分け合い、たこ焼きや焼きそばなどを作ったり、楽しそうに笑い合っている光景を目の当たりにし、完全に言葉を失っていた。
「……これが、彼らの言う『学園祭』だと……?」
「怪物どもが……楽しそうに……ふざけるな……」
「おやまぁ、怪物だなんて物騒なことを言わないでもらいたいな……彼女たちは部下であり、生徒だ……」
「ッ!?……し、死騎ユウ」
「アンタ方にも家族いるだろ? いなかったら申し訳ないが最初から今の地位にいたわけでもなく最初から今の姿でもあるまい……オヤジの背中とか見てこなかったのか?」
『……………』
カイザー側の幹部やジェネラル、プレジデントは黙っていた……彼らも言われた言葉で自身の青臭かった記憶が呼び起こされた。
家族に誇れる仕事をするんだと思っていた人事部のロボットはいつから自分に都合のいい人物を要職にしたり気に入らない人物を理不尽に切ったりしたんだろうかと考え、セキュリティの社長もライバル企業を蹴落とすためにどれだけ手を汚したのかと思うようになった。
「我々の負けだな……」
『!?』
プレジデントのその言葉を聞き、カイザー側の幹部たちの視線がプレジデントに向く。
プレジデントも過去を思い出していた。父が託された会社――まだ小さい会社であったカイザー電気を大きくしていくという願いが、いつしか歪んでしまったことを自覚した。
「私も組織の長だ、頭は簡単に下げられない。だがこれからは我々もできうる限り真っすぐにやれるよう努力はしよう」
そう聞き、ユウは手を差し伸べる。
「言葉にするだけでもそれなりに覚悟がいるんだ、そこは理解するさ……これからよろしく」
差し伸べられた手をプレジデントが握り返した。
「たいした小僧だ」
力や恐怖だけで世界を支配しようとする彼らの価値観は、この泥臭くも温かい、生徒たちのエネルギーに満ちた日常の前に、音を立てて崩れ去っていく。
――嵐のようなイベントをすべて片付けた後。
ノイアンファングは再び落ち着きを取り戻し、私たちは穏やかな日常へと戻っていった。
荒事を綺麗に片付けたあとは、訪れる入学シーズンを見据えながら、ユメと共に着々と借金の返済を進めていく。ブラックマーケットの復興や組織の基盤固め、そして何気ない日常のひとコマひとコマを大切にしながら、穏やかで充実した日々を過ごすのだった。
そういえば、とユウはふと思い出す。
以前からユメに「今度連れて行くよ」と言いつつ、カイザーとのいざこざや組織のことですっかり忘れていた場所があった。
「なぁユメ、そういえばあそこのラーメン屋、まだ行ってなかったよな」
「あそこのラーメン屋って……あー!!もしかして、柴関ラーメン!?」
「ああ。色々あって行けてなかったが、のんびり美味いものでも食いに行くか」
アビドスの郊外にあるその店を訪れると、原作で見た右目と左目下の刀傷がある柴犬大将が腕を組んで待ち構えていたかのように声を張り上げてきた。
「いらっしゃい! アンタがユメちゃんが言っていた死騎ユウだな?会えるのを楽しみにしていたよ!」
「ユメから聞いていたんですか?」
「おうよ!!アビドスの問題を手伝ってくれてんだろ?それによくユメちゃんがキミn「わー!わー!」むぐっ」
ユメの謎の妨害があれど大将との話し合いをしながらカウンターに並んで座る。ユメが「ここのラーメンはどれも美味しいけど、最初は看板メニューの柴関ラーメンがいいかな?」と言われそれを2人して注文した。大将が手早く作り上げユメが幸せそうに食べ始め、ユウもそれに釣られるようにレンゲを動かし、しみじみと美味さを噛み締める。
力や恐怖とは無縁の、ただ温かくて、守るべき日常がそこにはあった。
すべてが順調に、望んだ形へと収まっていく。
だが、その平穏の裏で、運命の歯車は着実に、しかし静かに次のステップへと進み始めていた。
少し強引にカイザーをなんさせてしまったかもしれない
後忘れてた柴大将との絡みも最後の最後になってしまったから
今の文章量で良いのか読み足りないのかわからないので皆さんの意見を参考にします
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今の4千〜5千字くらいの目処
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5千〜1万字くらいの目処
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1万以上を目処