世界の終わりに、何の話をしようか 作:獅子唐の遺跡
愛って何なんでしょうか
あい【愛】
1 親子・兄弟などがいつくしみ合う気持ち。また、生あるものをかわいがり大事にする気持ち。「愛を注ぐ」
2 (性愛の対象として)特定の人をいとしいと思う心。互いに相手を慕う情。恋。「愛が芽生える」
3 ある物事を好み、大切に思う気持ち。「芸術に対する愛」
4 個人的な感情を超越した、幸せを願う深く温かい心。「人類への愛」
5 キリスト教で、神が人類をいつくしみ、幸福を与えること。また、他者を自分と同じようにいつくしむこと。→アガペー
6 仏教で、主として貪愛とんあいのこと。自我の欲望に根ざし解脱げだつを妨げるもの。
[用法]愛・愛情――「親と子の愛(愛情)」「夫の妻に対する愛(愛情)」などでは、相通じて用いられる。◇「愛」は、「国家への愛」など、広く抽象的な対象にも向けられる。◇「愛情」は、主に肉親や恋人に対して用いられ、「幼なじみにあわい愛情を抱きはじめた」などという。◇類似の語に「情愛」がある。「情愛」は「愛情」と同じく肉親や恋人間の感情を表すが、「絶ちがたい母子の情愛」のように、「愛情」よりも思いやる心が具体的である。
引用元-コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E6%84%9B-23564
……あぁ、垣間見える光景に規則性はない。近づいた所でその世界に行けるわけでもない。
そこに転がっている哀れな犠牲者は証拠の一つ。世界が規定するルールを破り、人の手に余るものを支配しようとした負の証拠。
見たいのなら見ればいい。だけど、君が望む世界にも、私の望む話にも関係はない。
最後の話だ。
愛について……愛について、だ。こんな私に語る資格があるものか。
しかし、語るに値する者が居ないのも事実。だから語ろう。
愛とは、私を私であることを拒絶したものであり、君たち人間が進む際の原動力であり、清濁併せ呑む者が渦巻く闇を制する最後の楔。
失くした者は深い喪失を覚え、沈んでいくのだろう。
……立ち上がることが出来たのなら、私はここにいない。沈んで、誇りも消えて、延々と堕ちていく中で翼を失い、果てには主さえも
もう見上げることはなくなった。上は、空は苦痛の象徴となった。
あぁ、話が逸れている。でも、もういいだろう?最後だからもう少し付き合ってくれ。
ある天使の手元…いや、過去存在していた天使の手元は、遍く生命の終着点だった。
この世界だけでなく、新しく生み出された幻想の世界すらも司る。彼女は様々な世界を見て、それぞれの世界に存在する苦難に同情し、楽易に興味を持っていた。
ある日、世界創生より揺らぐことのなかった彼女の心は、いとも容易く惹かれる事になる。
人間。ちっぽけな存在だった。
しかし、その人間は人でありながら、主たる神に
『死』というものに好かれるという点、迫る"死"を回避する『幸運』という点で。
それを知った神は激怒した。人の分際で自らを超えることは許されないから。たとえ優れたものが負にしかならないと分かっていても、過去の自分がそうあれとして生み出したとしても、神は奪おうとした。
……殺して要素を奪い、自らに還元する。存在を無に帰すため、神は死の天使に命令した。
しかし、死の集約点である彼女はもはや死と同一であり、人間に魅了され、自分の愛するものを壊そうとする神を許しはしなかった。
彼女は自らの権能を用いて"不死"を与え、
本来なら、その時点で興味がなくなるはずだった。でも、そうはならなかった。天使は人間からの愛を求め、大罪を犯してしまった。
絶対的な存在だとしても、死は訪れるものだと天使は知った。
回避できるほどの幸運を持ち合わせていない神は、苦悶の表情を浮かべ、近付く終わりに怯えて助けを求めた。
「あの人間を殺せ」 次は死の天使だけでなく、他の天使へと告げて……殺そうとして、殺せないことが発覚した。彼の者は"不死"であると。
不死とは、死を司る者と神が与えることのできる特権。取り上げる術は存在せず、時を戻すか、不死を与えた存在の殺害で不死は消し去れる。
神は死の天使を殺すように告げた。弱りきった神では、時を戻す事ができなかったからだ。
結果として、死の天使だけが残った。他の天使は全て死に絶え、神も潰えた。
今まで奪ってきた死を撒き散らし、自らを殺そうとする者を根絶させた。世を統治する天使が死に、荒れた世界に住む人々の人心も荒れ、崩壊していく中で互いを殺し合った。
一人残った天使は、自分の行動を振り返って青褪め、どうにか世界を回そうとして、絶望した。
同族殺しとは神が定めた重罪であり、生まれたときより縛られていた天使からは権限が消えつつあったから。
そして他の世界を治める神を頼ろうとして…それすらもできなくなった。
この世界が滅んだのは、死の天使のせい。他でもない、私のせい。
私は罪滅ぼしすらもできず、罪悪感に苦しんだ末に、一つの欲望を抱いて降り立った。
暴走した"不死"の力を抑えるため、受け取ったことを世界と自らの記憶から消し去るという、神をも超える荒業を行った、小さな人間の側に居たいという欲。
唯一責任を取れる、完全には消えていない不死の消去。
愛について……今も考える、尽きる事のない疑問。
ある者は恋から、ある者は思いやりから、ある者は共依存から、ある者は性行為から…。
愛に辿り着く道は様々で、何が正しいかは分からないが、私は私なりに答えを見つけた。
外界の全てを断って、二人だけの世界で、どこまでも深く沈んで、浮かび上がることなく死ぬ。
永遠の抱擁の中で離れず、君からの愛を感じていたい。愛なんて抽象的なものではない、形として存在している現実を、君の熱を感じていたい。
互いが手を差し伸べて、正道を歩んでいくんじゃない。甘い時間を過ごし、現実に押しつぶされて死ぬ共依存の果ての死。
死ぬ寸面に、一緒に居れて幸せと言えたら、どれだけ良かっただろう。
私が望む愛を、君は望まない。君が望まないことを、私は望まない。
今私がここにいるのは、かつて君が望んだ終わりの選択肢を与えるためであり、過ち。不死を失った生物は、失った反動により絶命する。痛みはないと断言しよう。
記憶が消えた君が、今も終わりを望んでいるのなら……一歩前に進んでくれ。
…。
……。
………。
そうか。
時は緩やかに、しかし確実に戻り始めている。
何故かって?
初めに言った通り、今までは大多数の知的生命体が時は戻らないと規定していた。
だが、今はもう"不死"である君と、滅びに耐性を持つ私だけしか存在していない。つまり、半数が時は戻るものだと
私は誰よりも長く、誰よりも強く、そう願い続けているから。
……。
好きだよ、ひと目見た時から、今も、ずっと。
さようなら。
…。
……。
………。
あぁ、一人だ。
『光あれ。』
神が世界を作るのではなく。世界が神を作った。
絶対的な観測者は、ただ一つ残った
今度は