世界の終わりに、何の話をしようか   作:獅子唐の遺跡

8 / 14

このクソみたいな社会に
それでも成り立っている世界に
舌打ちと共に感謝を



社会

 

 

遂に社会人だ、期待で胸が膨らむよ。

君の起業、楽しみで仕方ない。私も手伝うんだけどさ。

働くってどんな感じなんだろうね。

———おや、君にしては珍しい。怯えているのかい?

 

社会に出る不安ねぇ、確かに段階を踏んでいきたいのは理解できるが、そこまでか。

 

逆行がもう一度出来るなら解決できるんだけどなぁ

 

ん〜なんでもない、君の悩みに真摯に向き合わないとね。

じゃあ、今日の話は『社会』かな。

 

突然だけど、君は自分が特別だと思っていたことはないかい?

正直に言ってごらん、誰だってそういう(・・・・)時期があるものだし、私は気にしない。

君が何を特別だと思って、何処を特別ではないと考えたのか…詳しいことは分からないけど、君は間違いなく特別だ。

高潔であり、強大であり、知的でもある。始めはそうでなかったとしても、今の君の姿は、私にはそう見えるし、好ましく思えるという点は事実だ。

 

人の社会というのは複雑でね。君のような人間は成功すると手放しで称えられるけれど、他の人はそうでなかったりする。

社会というのは実によく出来た細かなシステムでね。ある「成果物」を作るために必要な要素を冷酷に求めて、人間を選別するんだ。

その「成果物」が指すものは場所や時代によって違うけれど、求められる人間の本質は何処に行っても変わらない。

 

賢く、強く、人を惹き寄せる者。少なくとも、この私を惹きつけてやまない君なら、現実の社会でも引く手数多だ。というか……実際、大企業からいくつもスカウトが来ていただろう? 君はそれを全部蹴ってしまったらしいけれど。

ふふ、怒っているわけじゃないよ。君の将来の選択肢として、幾つか魅力的な道を提示してみただけさ。

 

でも君は、社会から必要だと差し伸べられたその手を、すべて跳ね除けて自らの道を歩むことを選んだ。

茨の、苦難の道さ。 一人で進もうとする者に、既存の社会は決して手を貸さない。そりゃそうさ、自分たちのシステムに協力しない相手は、彼らにとって「敵」でしかないんだからね。

しかも、どれほど個人の能力が秀でていようと、単体では群れという巨大な構造には勝てないのが社会だ。

普通なら、無謀な挑戦の末に転落するのが関の山だろう。

 

だけど……安心するといい。君と同じような志を持つ者は他にもいて、必ず君に手を貸すはずだ。

そうして異端の人間が集まれば、それはやがて既存の社会の中に「小さな新しい社会」を形成する。

一つの世界として産声を上げるんだ。君はその道半ば。もちろん、手伝うと言った私も道半ばさ。

だから、既存の社会のルールや常識に縛られてちゃいけない。怯えることも、不安に感じることも何一つないんだよ。これから君自身が新しい社会を、君にとっての理想の社会を作れるというのに…一体どこに悩む理由があるんだい?

 

どうしても不安だと感じるなら…私に言ってくれ。君に足りないものを、私の全てを賭けて捧げよう。もちろん、私にできる範囲でだけ、だけどね。  大体はできるけど

 

あぁ、それと……厳しい話もしておくべきだと思った。

いいかい、覚えておくといい。他人のために動ける人は、一見すると優しい人だ。

私もそういう人は好ましく思うし、成功してほしいと応援することもある。

 

だけどね、そういう人間は真に前へ進めない。人の夢や欲望は多種多様で、どれもが無駄に壮大で無限だ。他人の事情をいちいち考慮しながら自分の夢を追い求めるなんて、人間には難しすぎる。

神や天使ですら成し得なかったことなんだから、凡人にできる可能性なんて0に等しいのさ。

 

……人口が増え続ける今、子数は君と私で『2』、増えることもあるだろうが、どっちにしろ関係ない。それに対して、他者の夢や事情という母数は増加し続けるから『∞』とも言える。

高校時代、数学で習っただろう?

母数が∞に近づく時———その分数は、一体どんな数として扱うのか。

 

———それでも、君が優しく在れる事を望むし、信じている。君なら覆してくれるってね。

じゃあ、また明日。卒業論文の提出は早めにね。

 

 





しゃ‐かい〔‐クワイ〕【社会】
《英語 society の訳語として「社会」を当てたのは、明治初期の福地桜痴(源一郎)である》
1 人間の共同生活の総称。また、広く、人間の集団としての営みや組織的な営みをいう。「社会に奉仕する」「社会参加」「社会生活」「国際社会」「縦社会」
2 人々が生活している、現実の世の中。世間。「社会に重きをなす」「社会に適応する」「社会に出る」
3 ある共通項によってくくられ、他から区別される人々の集まり。また、仲間意識をもって、みずからを他と区別する人々の集まり。「学者の社会」「海外の日本人社会」「上流社会」
4 共同で生活する同種の動物の集まりを1になぞらえていう語。「ライオンの社会」
5 「社会科」の略。

引用元-コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E7%A4%BE%E4%BC%9A-75542
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。