9番ピッチャー そこのおまえ   作:Potoooooooo

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収束

 地元新聞の紙面には、マウンド上の真英の写真とともに、カンザスシティが日本から思わぬ先発投手を見つけたという記事が掲載された。しかし、一試合好投しただけで評価が固まったわけではない。地元記者の論調も、真英を評価しながらも、『この先どうなるか見てみよう』と結んでいた。

 

「クリーブランド側に十分なデータがなかっただけだ」

 

 地元メディアのご意見番が、ポッドキャストでそう断じた。事実、メジャー球団のスカウティングによって攻略された投手は数知れない。わずかな癖や配球の偏りから攻略法を見つけ出し、次の対戦では容赦なくそこを狙ってくる。

 

「彼が日本でなんて呼ばれていたか知ってるか? 『そこのおまえ(ヘイ、ユー!)』だってさ。まったく、笑える名前だよ!」

 

 そうした声は、真英にも漏れ聞こえていた。別に腹は立たなかった。一試合を抑えただけで、メジャーに通用すると証明できたとも思っていない。むしろ、これから何試合も投げる中で、自分への評価がどう変わっていくのか、少し楽しみにしているところさえあった。

 

「まあともかく、俺としては4点台前半でローテーションを回ってくれれば大満足。4点台後半でも及第点だ。とにかく丈夫なのが取り柄なんだろう? 俺だってバカじゃない。高望みはしないさ!」

 

 日本にいた時もそうだ。プロ入りした時の彼はまだ、何者でもなかった。ただ壊滅した投手陣の穴埋めとして期待されただけの若者だった。何をすべきかは分かっている。言葉はいらない。目の前の打者を抑え、できるだけ長くマウンドに残ることで、自分が何者なのかを証明するのだ。

 

 次の登板では六回三失点負け投手。その次は七回二失点で勝ち負けつかずだったが、チームは最終盤に安打を集中して試合に勝利した。大崩れはしなかったが、初登板ほどきれいに抑えられた試合ばかりでもない。

 

 登板を重ねるにつれて、相手球団が持つ真英のデータも増えていった。しかし真英には、球種によってフォームが変わるような分かりやすい癖はない。日本時代同様、相手チームのスコアラーが映像を調べても、投球前に球種を見破る手がかりはほとんど見つからなかった。

 

 しかし5月初旬の登板で、真英は6回を投げて6失点と、メジャーで初めての炎上を喫した。

 明確に攻略されたわけではない。真英は以前より三振を取れるようになったとはいえ、依然としてインプレー率の高い投手だ。いくらバックの守備が優秀でも、すべての打球をアウトにできるわけではなかった。

 初回、二死から長打を許してピンチを背負うと、続く打者を追い込み、カットボールで仕留めにかかった。打者は完全に差し込まれながらも、どうにかバットへ当ててきた。力のない打球が、右翼手と二塁手の間へ落ちる。二死だったため、走者は打った瞬間にスタートを切っていた。外野からボールが返ってきたときには、すでにホームを踏んでいた。

 

 続く回でも、内野安打と二塁打でツーアウト二塁三塁のピンチを背負った。ベンチは申告敬遠を選択し、塁上が全て埋まった。無理に三振を狙う必要はない。ゴロを打たせ、フォースプレイを狙えば良いというのがベンチとバッテリーの考えだった。しかし、真英が投じた2球目、ストライクからボール球になる低めのチェンジアップを掬われ、スタンドに放り込まれてしまった。

 

 失投では無かった。打者の方が上手(うわて)だったのだ。

 

 その後は立ち直ったが、6回に無死から長打と進塁打でランナーを三塁まで進められると、犠牲フライで一点を失った。それでも何とか、6回を投げきり、7回以降はベンチで試合を見守った。しかし味方の反撃もなく、そのまま試合は敗戦。真英に黒星がついた。結果としては良くなかった。だからといって、投球を根本から変える必要はないというのが、投手コーチの意見だった。

 

「今日は相手がよかった。ホームランを打たれた場面は、打者を褒めるしかないだろう。ただ、改善できるところがないとは限らない。改めてピッチングを見直そう」

 

 それ以降も、登板を終えるたびに投手コーチやピッチングコーディネーター、ペラザを交えて映像を見返した。打者の反応や配球の偏りを確かめ、次の登板では少しだけ組み立てを変える。そうした修正を重ねながら、真英は着実にメジャーリーグへ適応していった。

 

 その後、5月の終わりにはコロラドの地でメジャー初完投を記録した。投球内容としては、不安定な立ち上がりを攻められて序盤にソロホームランを2本食らったものの、それ以降は追加点を与えなかった。相手打線が早いカウントから積極的に振ってきたこともあり、球数の消費を抑えて、アウトを積み重ねた。

 

 味方打線は中盤に逆転した。下位打線が粘って四球からチャンスを作ると、上位打線が集中打を浴びせて一挙5点を奪い、相手投手をノックアウトした。その後もカンザスシティ打線は、代わった相手リリーフからダメ押し点を重ね、9回表終了時点で7点のリードを奪っていた。

 

 8回まで投げた真英の球数は、100球を少し超えたところだった。本来なら交代ラインに達していたが、大量の援護点を貰ったこともあり、ブルペンでは誰も準備していない。そして監督は、真英の球威が落ちていないことも承知していた。中継ぎを休ませる意味もあり、ロブは真英に9回のマウンドを託した。

 

 迎えた先頭打者は、内角高めのカットボールで見逃し三振に仕留めた。身体の近くへ向かってきた球が、最後に軌道を変えてストライクゾーンをかすめたのだ。

 

「冗談だろ!」

 

 打者は振り返り、球審へ抗議した。しかし、コロラドにはもうABSチャレンジが残されていなかった。

 

 相手打線は序盤から、特に左打者が苦しんでいた。身体へ向かってくるように見える真英の球――いわゆるフロントドアのカットボールをボール球と判断し、二度チャレンジを要求したものの、どちらもストライクの判定は覆らなかった。

 

 その反応を見たペラザは、同じボールを有効に使い続けた。ストレートを見せたあとにカットボールを投げることもあれば、反対にカットボールを意識させてからストレートを通すこともあった。球種は違っても、打者にはいずれも身体の近くへ迫ってくる球に見えた。

 

 九回の先頭打者も、同じようにボールだと判断したのだろう。判定を確認する手段が残されていないこともあって、なおも球審へ食い下がった。やがて球審が退場を宣告すると、球場は大きなどよめきに包まれた。真英はその様子をマウンドの上から黙って見つめ、ペラザからの返球を受け取ると、次の打者へ向き直った。

 

 続く打者には安打を許したものの、最後はショートゴロを打たせ、6・4・3のダブルプレーを完成させて、試合を締めくくった。

 

 9回2失点、113球の完投勝利だった。

 

 5月を越え、6月に入っても、真英はローテーションを守った。この頃には登板間隔が日本より短いことにも慣れ、試合の翌日から次の登板までの調整方法も固まってきた。

 

 そして6月中旬、カンザスシティは西海岸への遠征に出た。その最初の相手が、シアトルだった。三連戦の初戦、真英に登板予定はなかった。試合前の練習が始まると、翌日に先発を控えた真英も外野で身体を動かし、軽いキャッチボールを行った。そこで、懐かしい顔と出会った。

 

「もぉ~堪忍してやソコたん」

「相変わらずだね、ムネは」

 

 シアトルのユニフォームを着た柏田が、変わらぬノリで話しかけてくる。彼は真英より一足早く海を渡り、すでにシアトルの正遊撃手として定着している。日本にいた頃とはユニフォームも周囲の言葉も違っていたが、遠目にも分かる軽やかな足取りや、真英を見つけたときの反応は変わっていなかった。

 

 二人は渡米後も連絡を取り合っていたが、こうして直接メジャーの舞台で会うのは初めてだった。柏田の場合、シアトルとのメジャー契約を得て渡米し、一年目からショートのレギュラーの座を不動のものにすると、その活躍を評価されて最優秀新人選手賞(ルーキ・オブ・ザ・イヤー)を受賞していた。

 

「小春ちゃんもこっち来とるんやろ? 相変わらずソコたんの尻叩いとるん?」

「代理人だからね。俺より今後のことを考えてるよ。ムネは? 結婚とか」

「まー、そのうちカナァ」

 

 柏田は現在、プエルトリコ出身のモデルと付き合っているらしい。本人がどこまで結婚を考えているのかは分からない。ちなみに、真英は名前を聞いてもピンと来なかった。

 

 近況を報告しあった二人は、やがてそれぞれのベンチへ戻った。

 

 6月中旬の時点で、両チームの置かれた状況は大きく異なっていた。

 

 カンザスシティは30勝38敗。開幕から大きく崩れたわけではないものの、勝率五割を割ったまま浮上のきっかけをつかめず、ア・リーグ中地区四位に沈んでいた。ワイルドカードからポストシーズン進出の可能性もまだ手の届かない距離ではなかったが、これ以上負けが込めば、今季の方針を見直さざるを得ない位置でもあった。

 

 一方のシアトルは、開幕から好調を維持し、地区首位を走っていた。安定した投手陣に加え、勢いのある打線が勝利を支えている。柏田も正遊撃手として攻守にチームを支え、打率.329本塁打10本36打点と、リーグの首位打者争いに加わるほどの成績を残していた。

 

 その初戦で、カンザスシティは勢いの差を見せつけられた。先発投手が初回から連打を浴び、三回までに六点を失った。代わったリリーフ陣もシアトル打線を止められず、終わってみれば二桁得点を許しての大敗だった。2番ショートで先発出場した柏田も三安打を放った。

 

 翌日に登板を控えていた真英は、ベンチからその試合を見ていた。甘い球を逃さず、追い込まれてからも簡単には打席を終わらせない。長打を狙える打者が並んでいるだけでなく、走者を進める打撃もあり、走塁も積極的。打率三割を超える柏田でさえ、打線の中で一人だけ突出しているわけではない。前後にも警戒すべき打者が並んでいた。

 

 ――ところが翌日の第二戦、前夜まで勢いに乗っていたシアトル打線は、先発した真英の前で嘘のように沈黙した。

 

 真英は初回からストライクを先行させ、積極的に振ってくる打者には早いカウントから打たせて取った。走者を出しても四球で傷口を広げず、後続を内野ゴロや浅い外野フライに打ち取っていく。

 

 首位打者争いをしていた柏田も例外ではなかった。最初の打席では、内角から入ってくるカットボールに手が出ず三振。次の打席ではチェンジアップを引っかけ、二塁手の正面へ転がした。六回には二死三塁で三度目の打席が回ってきたが、最後はカットボールに空振り三振を喫した。メジャーの舞台でも、その相性の悪さは変わらなかった。

 

 九回に迎えた最後の打席でも、柏田の打球は詰まったショートゴロに終わった。真英がこの試合で許した安打は、散発の四本だけだった。四球は一つもなく、シアトル打線に三塁を踏ませたのも一度きりだった。

 

 九回、被安打4、無四球、無失点。西地区首位のシアトルを相手に、真英はメジャー初完封を記録したのだった。

 

 しかし真英の評価が上がっていく一方で、チームの成績は上向かなかった。

 

 6月を終えても、カンザスシティは勝率五割へ戻れないままだった。先発投手が試合を作っても打線が援護できず、わずかなリードを救援陣が守れない。投打がかみ合わない試合が続き、シアトル遠征の頃にはまだ手の届く位置にあったワイルドカード争いからも、次第に引き離されていった。

 

 7月に入っても、その流れは変わらなかった。真英は中四日のローテーションを守り、登板するたびに七回前後まで投げた。リードを許したまま降板し、その後に味方が追いついて黒星が消えたこともあれば、反対に、勝ち投手の権利を持ってマウンドを降りても、救援陣が追いつかれることがあった。七回、八回まで投げながら勝敗のつかない試合も珍しくなく、真英の安定した投球が、そのままチームの勝利へ結びつくとは限らなかった。

 

 カンザスシティは7月にも負け越し、借金が20まで膨らんでいた。もはや、ポストシーズン進出は現実的な目標ではなくなりつつあった。

 


  

【悲報】そこのおまえさん、いつもの成績に収束する

 

[名無しの代走]

防御率3.28

7勝7敗

153回2/3

 

[名無しの代走]

>防御率3.28

おお!

>7勝7敗

ん…?

>153回2/3

おかしなことやっとる

 

[名無しの代走]

シーズン終了後と言われても納得できる成績

 

[名無しの代走]

なんだいつものそこのおまえか

 

[名無しの代走]

なんで成績変わんないんだこいつ

 

[名無しの代走]

普通は悪くなるんだが

 

[名無しの代走]

>普通は悪くなるんだが

つまり逆説的にブルーウェーブズがおまえの成績を悪化させていたということに

 

[名無しの代走]

>つまり逆説的にブルーウェーブズがおまえの成績を悪化させていたということに

やめろください

 

[名無しの代走]

LA「これわしのじゃないか?」

 

[名無しの代走]

>LA「これわしのじゃないか?」

かえってくだち・・・

 

[名無しの代走]

いっしょや!投げても!

 

[名無しの代走]

(*^◯^*) 神奈川にもこんな選手がいたんだ!

 

[名無しの代走]

ようやっとる

 

[名無しの代走]

一方その頃ブルーウェーブズは…

 

[名無しの代走]

>一方その頃ブルーウェーブズは…

細田が15本!

 

[名無しの代走]

>一方その頃ブルーウェーブズは…

宇田野の選球眼最高!

 

[名無しの代走]

いい選手が揃っているんですね

それで成績なんですが

 

[名無しの代走]

>それで成績なんですが

ッスゥー・・・

 

[名無しの代走]

>それで成績なんですが

ちょっとここ消えてますね

 

[名無しの代走]

>一方その頃ブルーウェーブズは…

その話は悲しくなるからやめようや

 

[名無しの代走]

カンザスもたいがい打てねえな

 

[名無しの代走]

>カンザスもたいがい打てねえな

サンタナは外れだしペラザは去年が上振れだったのがね

 

[名無しの代走]

ペラザに関しては捕手で中軸打てるだけでもすげーのよ

 

[名無しの代走]

再建中やしこんなもんやろ

サンタナはポイーで

 

[名無しの代走]

サンタナはDFAやろな

そんでウッドDHにしてファーストにAAAあたりから上げてあとは育成や

 

[名無しの代走]

(中軸以外が)打てないし(中継ぎが)打たれる

 

[名無しの代走]

>(中軸以外が)打てないし(中継ぎが)打たれる

100万回見たねこれ

 

[名無しの代走]

こんなんみんな欲しいだろ

 

[名無しの代走]

>こんなんみんな欲しいだろ

今年のTDLは前年サイヤングとかいう目玉がおるからなあ

ガチの優勝候補はまずそっち狙うやろ

 

[名無しの代走]

トレードされるの?

 

[名無しの代走]

>トレードされるの?

おそらく

6月頃に契約延長報道出たけど音沙汰ないしな

 

[名無しの代走]

1年契約ってもカンザスに6年保有権あるんちゃうんか?

 

[名無しの代走]

>1年契約ってもカンザスに6年保有権あるんちゃうんか?

特別条項入れてれば別やで

 

[名無しの代走]

そこのおまえが市場価値2番手とか誰も予想しなかったやろな

 

[名無しの代走]

ワイのウッドは?

脱出できんのか?

 

[名無しの代走]

>ワイのウッドは?

一塁専

フリースインガー

ついでにおっさん

カンザスシティ来たのも他が埋まってて需要なかったからやし契約も残ってるしまあないかな

 

[名無しの代走]

とりあえず今より打てるチーム行ってくれればいいや

 

[名無しの代走]

なんでカットとチェンジだけで抑えられるんや…

 

[名無しの代走]

>なんでカットとチェンジだけで抑えられるんや…

カットボール  使用率39.6% 被打率.158 xBA.164 空振り率27.4%

チェンジアップ 使用率28.1% 被打率.221 xBA.230 空振り率23.2%

 

[名無しの代走]

>xBA.164

日本語で教えてクレメンス

 

[名無しの代走]

>>xBA.164

>日本語で教えてクレメンス

打球の質まで見ても打ててない球

 

[名無しの代走]

>なんでカットとチェンジだけで抑えられるんや…

フォーシーム「ワイもおるぞ」

平均87マイルで2450回転IVB19インチとかいうキモい球や

 

[名無しの代走]

そこのおまえのストレートはHOP-UPしてるからな

 

[名無しの代走]

>そこのおまえのストレートはHOP-UPしてるからな

違う

 

[名無しの代走]

マグヌス理論きたな…

 

[名無しの代走]

>>そこのおまえのストレートはHOP-UPしてるからな

>違う

柏田「物理学者が間違っていると思う」

 

 

 

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