シアトルの敗退後も、ポストシーズンは続いた。
ワイルドカード・シリーズでシアトルを破ったニューヨークは、ディビジョンシリーズで中地区王者に敗れた。そこからさらにリーグ優勝決定シリーズを経て、ワールドシリーズへ進んだのはロサンゼルスとクリーブランドだった。
真英はシアトルへ戻り、荷物の整理を終えたあとは、しばらく試合のない生活を送ることになった。自分のシーズンはすでに終わっていたが、テレビをつければ、まだ野球をやっていた。
十月の終わりに始まったワールドシリーズは、第七戦までもつれ込んだ。両チームが継投を重ね、一点を争う展開が終盤まで続いたが、八回にロサンゼルスが勝ち越した。最後はクローザーが二死一、二塁のピンチをしのぎ、最終打者を内野ゴロに打ち取った。
マウンドへ捕手が駆け寄り、ベンチから選手たちが飛び出していく。歓喜の輪が広がる様子を、真英はシアトルに借りた自宅のテレビで見ていた。隣には小春がいて、息の詰まる熱戦を一緒に見届けていた。
「すごかったねえ」
「……」
小春が声をかけても、真英はテレビを食い入るように見つめ、黙ったままだった。シアトルが敗退したとき、自分の一年は終わったと思っていた。しかし、世界一の球団が決まり、テレビ中継が終了して初めて、メジャーリーグの長いシーズンそのものが終わったのだと実感した。
自分もあの場に立ちたい。真英の横顔を見つめる小春には、彼の内にある静かな闘志が伝わってきた。
シーズンが終われば、選手たちは来年へ向けて動き始める。真英もまた、新しい契約を結ばなければならなかった。だから、少なくとも契約先が決まるまでは、日本へ戻らないと決めていた。ワールドシリーズ終了から数日後、真英は契約に定められていた権利を行使し、正式にフリーエージェントとなった。
今オフの移籍市場最大の目玉は、ナショナル・リーグで昨年に引き続き、二年連続でサイ・ヤング賞に輝いた右腕、ライアン・リンカムだった。今季が所属球団との契約最終年だったため、シーズン途中に同リーグの球団へトレードされていた。シーズン成績は、防御率・奪三振数が共にリーグトップで、投球回も190回を超えている。
そんな現役最高峰の投手が、全盛期のままFA市場へ出てくる――。各球団の関心が、彼へ集中するのは当然だった。ストーブリーグの話題は、彼に関する新情報で持ち切りであった。
例年、大物投手の契約先が決まるまで、ほかの先発投手の市場も動きにくい。獲得を狙う球団は彼のために予算を残しておかなければならず、交渉から脱落した球団が別の候補へ切り替えることで、ようやく市場全体が動き始めるからだ。
リンカムの陰に隠れていたが、真英も先発投手としては今オフ2番手という立ち位置だった。年間の最優秀新人選手賞を受賞したほか、特に現代では異常すぎるほどの投球イニングを稼ぎながらも防御率3点台に抑えたことが評価されている。真英自身は、新人扱いがなんだか不思議だったが、柏田もメジャー1年目に受賞していると聞けば、「そういうものなんだ」と納得していた。
ともかく、真英に需要があるとはいえ、大物FAと重なったことで、小春も長期戦を覚悟していた。ところが予想に反して、市場最大の目玉を巡る争奪戦が決着する前から、真英のもとには複数の球団から正式なオファーが届き始めた。
まず最初に具体的な条件を示したのは、シアトルだった。提示されたのは、8年総額1億4400万ドル。年平均にすれば1800万ドルとなる長期契約だった。
メジャーでの実績が1年しかない真英に対する条件としては、契約期間が突出していた。小春も複数年契約は予想していたが、長くても4年か5年程度と見込んでおり、8年という数字までは想定していなかった。
シアトルが評価していたのは、結果だけではない。トレード後の2か月間、球団は真英が登板へ向けてどのように身体を整え、長いイニングを投げたあとにどれほど早く回復するのかを間近で確認していた。さらにはレギュラーシーズンを終えても投球内容を大きく落とさず、ワイルドカード・シリーズで9回を投げ切ったことが、長期契約を提示する根拠となっていた。つまり、彼らは真英が結果を出す過程を評価したのだ。
とはいえ、長い保証には球団側の計算もあった。年平均1800万ドルは、現在の真英に対する評価として決して低くはなかったが、この先も同じ成績を残し続ければ、数年後には市場価格を大きく下回る可能性がある。シアトルは将来的な故障や衰えのリスクを負う代わりに、真英の全盛期を比較的抑えた年俸で確保しようとしていた。
小春はすぐには返答せず、ほかの球団との交渉を続けた。数日後、今度はロサンゼルスから3年総額7500万ドルのオファーが届いた。年平均は2500万ドルとなり、シアトルの提示を700万ドル上回っていた。
ロサンゼルスは、メジャーで1年しか投げていない真英に長期契約を保証することには慎重だったが、今後予想される3年間の働きについては高く評価していた。契約を満了しても真英はまだ30代前半であり、成績を維持できれば、もう1度FA市場へ出て大型契約を狙うこともできる。順調に投げ続けることを前提とすれば、生涯で得られる金額が最も大きくなる可能性を持った条件だった。
続いて、ブロンクスのほうのニューヨークが、5年総額1億1000万ドルを提示した。年平均は2200万ドルで、契約期間も金額も、シアトルとロサンゼルスの中間に位置していた。
ニューヨークはワイルドカード・シリーズで真英と対戦し、敗れればシーズンが終わる試合で9回を投げ切る姿を直接見ていた。現在の主力選手が全盛期を迎えている今後数年間を、ローテーションの中心として支えられる投手と評価しており、その期間を5年と見積もっていた。
3球団の条件を並べると、それぞれの考え方は明確だった。ロサンゼルスは、真英が最も高い能力を発揮すると見込んだ3年間に大きな金額を支払おうとしていた。ニューヨークは、先発投手としての全盛期を5年間と見ていた。シアトルだけが、その先も真英がローテーションに残り続けることを前提にしていた。
1年あたりの金額だけなら、ロサンゼルスが最も高い。5年間の保証と高い年平均額を両立しているのはニューヨークであり、総額と契約期間ではシアトルが上回っていた。
そして重要なのは、3チームともポストシーズンを狙えるチームということだ。彼らは勝つために、本気で真英を必要としていた。それは、長く下位球団で投げ続けてきた真英にとって、契約の数字以上に大きな意味を持っていた。ワールドシリーズを見届けた夜に強くした、あの舞台に立ちたいという思いを、どの球団で追いかけるのか。今の真英には、それを自分で選ぶ権利があった。
小春が整理した条件を前に、真英は悩んでいたが、それは勝利とは別のことだった。
――8年契約……。
テーブルの向かいでは、小春が何度も届く連絡に目を通し、球団ごとに異なる契約条項を確認していた。ワールドシリーズが終わってからというもの、彼女は代理人として真英のために動き続けている。食事をしている最中にも連絡が入り、寝る前まで資料を読んでいる日も珍しくなかった。
これまでの真英は、目の前の登板に備えることばかり考えてきた。小春もまた、真英の野球人生を支えるために、自分の時間を使ってきた。けれど、これから先もずっと、二人の生活が野球の予定に追い立てられるだけでいいのか。
真英は、シアトルの8年という数字に惹かれていた。それは、投手として長く評価されたからだけではなかった。小春と結婚してからここまでの道のりは、振り返ってみればひどく慌ただしいものになった。海外で挑戦したいという自分の希望に小春を付き合わせ、カンザスシティへ渡ったと思えば、半年も経たないうちにシアトルへ移った。そしてシーズンが終わった今も、小春は代理人として各球団との交渉に追われている。
ロサンゼルスの3年契約を選べば、契約が終わる頃には、また同じ交渉を迎えることになる。ニューヨークの5年契約は十分に長かったが、シアトルが提示した8年は、それ以上の意味を持っていた。少なくともその間は、次の所属先を心配する必要がない。同じ街に腰を据え、来季のことだけでなく、その先の暮らしまで考えることができる。
「ねえ、小春ちゃん」
「なに、まさくん」
その瞬間、二人は選手と代理人から、夫婦の顔になった。
「俺さ、もっと小春ちゃんとの時間が欲しいなって思った」
「え、なに、突然。恥ずかしい……」
「だから、シアトルにしようと思う」
「ええと……いいの? ワールドシリーズなら、ロサンゼルスのほうが……」
「うん。それでも」
確かに、ロサンゼルスやニューヨークのほうが、球団の規模、実績から見ても、ワールドシリーズ制覇に近いのかもしれない。しかしだからといって、シアトルにチャンスが無いわけではない。
「それに、挑戦する方がワクワクするし」
「まさくんらしいねえ」
小春はロサンゼルスとニューヨークの条件をもとに、シアトルとの交渉を続けた。求めたのは、早期に契約を破棄して再びFA市場へ出られるオプトアウトではない。真英の意思に反して所属先を変えられない保証だった。
シアトルも、8年契約を提示した時点で、真英を短期間で手放すつもりはなかった。最終的には保証総額を1億5200万ドルまで引き上げ、全球団を対象とするトレード拒否条項を契約に加えた。年平均額は1900万ドルとなり、投球回や個人賞に応じた出来高も別に設けられた。
年平均額では、ロサンゼルスとニューヨークの提示に及ばない。それでも保証総額は3球団の中で最も大きく、真英が望んだ8年間の居場所も守られていた。
1年前、真英が手にしたのは、開幕ロースター入りすら約束されていない1年のマイナー契約だった。
その1年後、真英は8年総額1億5200万ドルで、自分を最も長く必要としたシアトルに残ることを決めた。
底ノ尾、シアトルと8年総額1億5200万ドルで契約合意
[名無しの代走]
シアトルは、今季途中にカンザスシティから加入し、シーズン終了後にFAとなっていた底ノ尾真英投手と、8年総額1億5200万ドルで契約合意したと発表した。年平均額は1900万ドル。投球回や個人賞に応じた出来高のほか、底ノ尾の同意なしに他球団へ移籍させることのできない全球団対象のトレード拒否条項も含まれている。
[名無しの代走]
柏田「!(シュババババババッ」
[名無しの代走]
まじか
[名無しの代走]
やっす
[名無しの代走]
さっそく柏田シュバってて草
[名無しの代走]
そんなシアトル気に入ったんか?
[名無しの代走]
>そんなシアトル気に入ったんか?
↓こんなこと言ってたしありえる
>(シアトルの印象を聞かれ)「海鮮が美味しいって聞きました」
[名無しの代走]
そこのおまえ「誠意は金額ではなく年数」
[名無しの代走]
寿司の出前「シアトルは海鮮が美味しいから好きです」
[名無しの代走]
>寿司の出前「シアトルは海鮮が美味しいから好きです」
もう(原型)ないじゃん
[名無しの代走]
さっそくニューヨークの番記者にSNSでディスられてて草なんだ
[名無しの代走]
これか
>「彼は老後の安泰のために8年分の年金を選んだ」
[名無しの代走]
シアトルを老人ホーム扱いとはたまげたなぁ
[名無しの代走]
リンカムが無理だからそこのおまえに来たくせに・・・
[名無しの代走]
リンカムの要求ゲロ高いらしいからな
怒りの撤退や
[名無しの代走]
>リンカムが無理だからそこのおまえに来たくせに・・・
なおそいつもクイーンズのほうに獲られた模様
[名無しの代走]
ファッ!?マ?!
[名無しの代走]
マジや
さっきヒァウィゴー!きたで
[名無しの代走]
SNS大荒れやろうなぁ・・・
[名無しの代走]
なおロサンゼルスはしれっとグラスラー獲ってる模様
[名無しの代走]
>なおロサンゼルスはしれっとグラスラー獲ってる模様
リンカム行かなかったの意外や
全力投球やと思ってたのに
[名無しの代走]
わからんがあそこの判断はだいたい当たるからな
[名無しの代走]
大仁田と山諸と佐々とそこのおまえの日本人カルテットは見れないか…
[名無しの代走]
>大仁田と山諸と佐々とそこのおまえの日本人カルテットは見れないか…
前三人だけで十分邪悪すぎる
[名無しの代走]
LAは10連覇する予定やからな
[名無しの代走]
これは熱い
カラバヨ 21先発 9勝5敗 2.87 128.2回 151奪三振
ローマック 25先発 8勝4敗 3.28 132.1回 184奪三振
ソコノオマエ 34先発 14勝9敗 3.40 248.2回 172奪三振
プリチャード 30先発 9勝10敗 4.21 163.0回 132奪三振
マコネル 24先発 7勝5敗 4.48 139.2回 121奪三振
[名無しの代走]
カラバヨ間に合うんか
[名無しの代走]
>ソコノオマエ 34先発 14勝9敗 3.40 248.2回 172奪三振
こう見ると異常だなコイツ…
[名無しの代走]
ローマックとかいうロマンしかない選手
[名無しの代走]
Vやねん!シアトル!