9番ピッチャー そこのおまえ   作:Potoooooooo

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敗戦処理から先発へ

 前半戦最後の試合を終えた時点で、神奈川BWはリーグ最下位に沈んでいた。開幕前、球団フロントが掲げていた投手陣再建は絵に描いた餅となった。

 

 チーム防御率は四点台後半で、各種指標でも12球団中12位。先発投手が五回を投げきれない試合も珍しくなく、前半戦で一番マシな成績を残したと言えるのはドラ1大卒ルーキーの西郷だった。しかしその彼も6月の終わりに故障離脱してしまい、「ええの獲ったわ!」と喜ぶファンを絶望に落とした。

 

 開幕投手を任されたエースの若狭は防御率5点代と、春先から調子が戻らず、早々と二軍に落とされたが、前述の西郷の故障で呼び戻さざるをえなくなっている。

 

 リリーフ陣も深刻だ。たまに先発が試合を作ったと思ったらリリーフが試合を壊すことなど、ファンには見飽きた光景だった。唯一安定していると言えなくもないのは、ベテランの域に差し掛かっているクローザーだが、彼も防御率は3点代で、3者凡退なんて見たこともない、劇場型の抑えだ。これではファンの心臓が持たない。

 

 全体的にグロテスクな成績が並ぶ投手陣の中にあって、真英だけはそこそこ見栄えのいい成績に収まっていた。28試合に登板し、防御率は2.81。といってもこれはそのすべてが、大勢が決した負け試合での登板だ。勝ちも負けも、ホールドすらついていない。早々に降板した先発の後を受けて、試合を進める敗戦処理の役目である。前半戦だけでその登板数を稼いでいるという事実自体が、先発爆発炎上試合の多さを物語っている。

 

 他にも光明はある。一向に戻ってこない外国人助っ人投手に見切りをつけ、フロントは新たにグリーンウェルというピッチャーを米国のマイナーリーグから呼び寄せた。最速160キロを誇る剛腕先発である。さらに故障離脱中のベテラン先発が後半戦でようやく戻ってくるという報道もあり、後半戦の巻き返しに期待を寄せたいところだった。

 

 さて、真英の働きを見た首脳陣は、ある決断をした。

 

「おまえ、先発な」

「えっ」

 

 オールスターブレイク中、監督室に呼ばれた真英は、後半戦最初のカード、その第三戦に先発するよう告げられた。

 

 当の本人は二軍落ちを告げられるのだとばかり思っていた。新外国人のグリーンウェルが一軍へ合流し、故障していたベテラン先発も復帰に向けて調整を進めている。投手が増える以上、誰かが枠を空けなければならない。

 

 しかし首脳陣の考えは違った。真英は打者を圧倒する投手ではない。安打を重ねられることもあれば、追い込んでから粘られることも多い。それでも、走者を出したあとに四球を重ね、自分から試合を壊すことはほとんどなかった。打たれて失点しても、そこで踏みとどまり、次の打者には普段どおりストライクを投げられる。

 

 先発が早々に崩れた試合では、三回や四回からマウンドへ上がり、そのまま終盤まで投げた。五イニングを任されたことも一度ではない。球数が増えても急に制球を乱さず、ほかの中継ぎをつぎ込まずに試合を終わらせてきた。

 

 それだけでも、先発として試す理由にはなったが、さらに首脳陣が評価したのは、夏場に入っても真英の状態がほとんど落ちていないことだった。暑くなっても食事量は変わらず、登板後も普段どおり食べていた。夜は早く寝て、翌朝には朝食を取って球場へ来る。特別なことをしているわけではないが、その生活を崩さず続けているため、体重も開幕時とほとんど変わっていない。

 

 肩や肘にも目立った異常はなく、長く投げた翌日でも回復は早かった。夏に入って状態を落とす投手が多いなか、真英の球は春先と変わらず、むしろ一軍の打者に慣れたぶんだけ、投球内容は安定してきている。

 

 監督やコーチたちは、もはや真英を慎重に扱うべき高卒新人とは見ていなかった。前半戦を一軍で投げ抜き、夏場に入っても状態を落とさない彼を、すでに一軍の負荷と責任を背負わせられるプロの投手として扱っていいと判断したのだ。

 

 もちろん、先発転向が決まったからといって、ローテーション入りが約束されたわけではない。グリーンウェルとベテランが予定どおり戦列に合流すれば、空いている枠は多くない。今回の登板も、ひとまず一試合だけだった。

 

 そこで結果を残せなければ、また敗戦処理に戻る。あるいは、二軍で先発調整をさせる可能性もあるだろう。

 

「いいな」

「はいっ」

 

 監督の念押しに、真英は短く返事をした。

 

 驚きはしたが、先発を任されたこと自体に浮かれてはいなかった。高校時代には当然だった役割でも、プロでは意味が違う。試合がほとんど決まってから出てくる投手と違い、相手は一回から真英を打つための準備をしてくる。

 

「投げ方を変える必要はない。おまえらしくいけ」

 

 投手コーチの言葉がスッと胸の内に入った。

 

 走者を出しても慌てず、余計な四球を与えず、一人ずつ打ち取っていく。できるだけ長くマウンドに残る。

 

 前半戦に敗戦処理として繰り返してきた投球が、今度は試合の最初から求められることになった。

 

 ▼

 

 後半戦最初のカード、その第三戦。真英はプロ入り後初めて、一回の表からマウンドに立った。

 

 敗戦処理として何度も上がってきた場所のはずなのに、景色はこれまでとまるで違って見えた。客席にはまだ多くの観客が残り、スコアボードには両チームの先発投手として自分の名前が表示されている。何点も奪われ、諦めと野次が入り交じった空気の中へ出ていくのではない。誰もが試合の始まりを待つ中で、最初の一球を投じる役目だった。

 

(緊張してるな)

 

 それが自分でも分かり、真英は大きく深呼吸した。彼は初めて、『雰囲気に飲まれる』という経験をしていた。

 

 プレイボールがかかり、真英はいつものようにセットポジションに構えた。脚を上げ、初球を投じる。そのストレートは、捕手が構えた位置よりもわずかに高く浮いた。

 

「あっ」

 

 快音が響き、ボールがバックスクリーンに吸い込まれていく。初回先頭打者初球ホームラン。真英はあっけなく1点を失った。だが、それで緊張がほぐれた。

 

 落ち着きを取り戻した真英は、続く三人を打ち取り、初回を最小失点で切り抜けた。

 

 テンポよく投げ込む真英を、相手打線はなかなか打ち崩せなかった。ヒットは打たれるが四球はなかなか出さないので、自滅してチャンスを拡大させるようなことはしない。

 

 その調子でランナーを出しつつも、抑えていったが、四回に2本の長打を浴びて一点を失った。その裏に味方が一点を返して、1対2。

 

 敗戦処理で登板していた頃には、ほとんど経験しなかった点差だった。自分が抑えれば、まだ追いつける。失点がそのまま敗戦へつながる重さを感じながらも、真英は目の前の打者へ投げ続けた。

 

 五回には先頭打者の二塁打と犠打で一死三塁とされ、内野ゴロの間に3点目を失った。五回を終えた時点で、球数は80球を超えていた。

 

 ベンチへ戻って水分を取り、捕手と短く言葉を交わす。足に疲労はなく、呼吸も落ち着いていた。監督や投手コーチが様子を見ていたが、交代を告げられることはなかった。

 

 六回も真英がマウンドへ上がった。

 

 先頭打者をカットボールで詰まらせて三塁ゴロに打ち取る。続く打者には安打を許したものの、次の打者が放った打球は二塁手の正面へ転がった。二塁、一塁とボールが渡り、併殺が完成する。

 

 六回の裏に打順が回るため、真英のところには代打が送られた。

 

 六回、被安打8、3失点。百球に届かない球数で18個のアウトを取った。初先発としては、十分に試合を作ったと言える内容だった。

 

 なお、神奈川BWは2対4で敗れ、真英はプロ初黒星を喫した。

 


 

そこのおまえ「ハァハァ、6回3失点で抑えたぞ…」

 

[名無しの代走]

なおブルーウェーブズは敗れた

 

[名無しの代走]

なおブ

 

[名無しの代走]

▼ブブーッ(監督の評価が下がった)

▼ブブーッ(コーチの評価が下がった)

 

[名無しの代走]

QSはようやっとる

 

[名無しの代走]

野手「あたえられねーわ」

 

[名無しの代走]

高卒新人にプロの洗礼を浴びせる神奈川打線さん

 

[名無しの代走]

マジでいいのとったな

 

[名無しの代走]

二年目には消えてそう

 

[名無しの代走]

6回3失点の炎上

 

[名無しの代走]

よくあんなストレートで抑えてるな

 

[名無しの代走]

>よくあんなストレートで抑えてるな

抑えてない

カットとチェンジアップがいいだけ

 

[名無しの代走]

>カットとチェンジアップがいいだけ

十分定期

 

[名無しの代走]

四球出さないだけで神

 

[名無しの代走]

西郷今シーズンアウトだって

 

[名無しの代走]

7人もとっておいて7位が一番活躍してるのはどういうことなん?

 

[名無しの代走]

高卒ドラ7新人に頼らなきゃいけないチーム事情に涙が出ますよ…

 

[名無しの代走]

一球だけ投げて帰ったグリーンウェルの話する?

 

[名無しの代走]

やつの話はするな

ワシは今メチャクチャ機嫌が悪いんや

 

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