9番ピッチャー そこのおまえ   作:Potoooooooo

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三年目

 二年目のオフ、真英は幼なじみの小春と婚約した。小春が大学を卒業するまでは学業を優先し、結婚はそのあとにしようと二人で決めた。

 

 そして真英は婚約を機に寮を出て、一人暮らしを始めることにした。一人暮らしとはいっても、時折小春が泊まりに来る、半同棲のような生活だった。

 

 三年目も真英は、ローテーションピッチャーとして期待されていた。それどころか、キャンプイン早々に監督から呼び出されて、こう告げられた。

 

「おまえ、開幕投手だから」

「はい。……えっ?」

 

 反射的に返事をしてから、遅れて言葉の意味が頭に入ってきた。

 

 前年に開幕投手を務めた若狭は、故障が発覚して二軍スタート。長年ローテーションを支えてきたベテランの安藤も、昨季限りで現役を引退している。ほかの候補は、同期のドラフト1位である西郷だろうか。彼は大怪我で昨季を全休したが、今年はキャンプインからいい状態が続いている。しかし、実績としては真英のほうが上だ。

 

 どうやら真英は、押し出されるような形で開幕投手になってしまったらしい。といっても、準備は変わらない。真英はいつも通り、マイペースに調整を進めた。

 

 ただ、この年のキャンプでは、ひとつだけ例年と違うことがあった。テレビ番組の取材を受けることになったのである。

 

 やってきたのは、テレビ中継の解説でよく顔を見るプロ野球OBと、野球好きで売っている女性アイドルだった。注目の若手を紹介する企画らしく、二人は練習を終えた真英をグラウンド脇で待ち構えていた。

 

「底ノ尾投手といえば、ランナーがいなくてもずっとセットポジションですよね」

 

 OBが真英の投球フォームを真似るように、胸の前で両手を合わせた。

 

「これ、いつからなんですか?」

「小学生の頃からです」

「えーっ! そんな昔から?」

 

 女性アイドルが驚いた声を上げる。

 

「どうしてセットにしたんですか?」

「バックネット裏で応援している両親を見るのが、なんか恥ずかしくて」

 

 ワインドアップあるいはノーワインドでも、構えたときは体の正面がバックネットのほうを向いている。小学生当時の真英は、バックネット裏で応援している両親をどうしても意識してしまい、恥ずかしくなった。それなら、最初から横を向いて投げよう――そう考えて、セットポジションから投げるようになった。

 

「理由、そこなんですか?」

「はい」

「もっとこう、走者が出てもフォームを変えないためとか、深い理由があるのかと思っていました」

「そういう利点は、あとから知りました」

 

 真英が正直に答えると、二人だけでなく、カメラの後ろにいたスタッフからも笑いが起こった。

 

「なるほど~。底ノ尾選手って、投球動作に入ってからも、しばらく一塁のほうを見ていますよね? それも同じ理由なんですか?」

 

 女性アイドルが少しマニアックな真英のクセを持ち出した。確かに、真英は脚を上げてからボールを放す直前まで、一塁方向を見ている。

 

「あ~、そうですね。ハイ」

 

 真英はテキトーに肯定したが、実際の理由は少し違った。横を向いた先にも、いつも見慣れた顔があったからだ。

 

 小学生の頃、小春は真英の両親と並んで、バックネット裏から試合を見ていた。ところが真英がセットポジションで投げるようになると、いつの間にか一塁側へ応援する場所を移していたのである。

 

 両親を意識したくなくて横を向いたはずなのに、今度はそこにいる小春を見るようになった。それを繰り返しているうちに、投球動作へ入ってもしばらく一塁側へ視線を残す癖がついた。

 

 打者と直前まで目を合わせないためでもなければ、走者を牽制するためでもない。ただ小春を見ていただけだという、なんとも締まらない理由だった。

 

 そのことは、なんとなく口にしなかった。多分、これからも言うことはないだろう。

 

 

 ▼

 

 

 三年目、今年のブルーウェーブズは好調なスタートを切った。開幕戦、真英が8回3失点とすると、打線も奮起。『ウッドの残留が最大の補強』とまで言われた前年の主砲ウッドのサヨナラ満塁ホームランで初戦を飾り、その勢いのままに開幕三連戦をスイープした。

 

 ヒーローインタビューのお立ち台で、ウッドが絶叫した。

 

「アイ・ラブ・オマエサーン!」

 

 真英はベンチで噴き出した。チームメイトが面白がって教えた真英のあだ名だった。スタンドも盛り上がり、今年のブルーウェーブズは一味違うぞ、という良い雰囲気があった。

 

 なお、真英は勝敗つかずだったが、ファンからは『そこのおまえに負けがつかなかった』とズレた喜ばれ方をした。

 

 4月に入ってからも、チームは好調を続けた。今季の打線はウッドを中心に得点を重ね、近年の貧打が嘘のようだった。若手の成長と躍動、FAや戦力外で獲得したベテラン勢の奮起が重なり、勝負どころのチャンスを物にして、僅差で試合を制していく。

 

 そして投手陣ではなんといっても、真英のドラフト同期である西郷の復活が大きかった。一年目の途中で離脱し、そのまま二年目を全休した彼が戻ってきたとき、ファンは元の姿を取り戻せるのかと心配した。しかし、彼はさすがドラ1という投球を続けてファンを安心させた。

 

 西郷と底ノ尾のダブルエース。若い二人の躍動にファンは歓喜した。二人とも左利きだが、その投球スタイルは正反対だ。西郷は球威で押して、伝家の宝刀スプリットで三振を取る支配的な投球が持ち味だった。対して底ノ尾は、最低限試合を作る能力には長けていたが、華やかさには欠けていた。

 

 しかし二人の活躍の裏で、投手事情は深刻だった。真英と西郷は変わらず試合を作るが、ほかの先発は五回すら持たない登板が相次ぎ、中継ぎ陣への負担は日に日に増していく。球団フロントも前年の失敗を踏まえ、リリーフのテコ入れは行っていた。助っ人外国人の獲得や、即戦力のドラフト指名などだ。しかしそれも所詮は付け焼き刃であり、限度があった。一度化けの皮が剥がれ始めると、あとはドミノのようにブルペンが崩壊していった。

 

 そのため、序盤の勢いは長く続かなかった。4月を首位で終えたにも関わらず、交流戦の終わりには定位置の6位に収まっていた。

 

 よくないことは続くもので、今度はホームラン王ペースで打ちまくっていたウッドが自打球を受けて骨折し、シーズン絶望。前年に『ウッド個人軍』と揶揄されていた打線は、またたく間に烏合の衆と化した。

 

 そんなチーム状況の中、続いて西郷が離脱。チーム成績はさらに下降していく。幸いにも軽症だったが、一ヶ月後に戻ってきたときには、全くの別人と化していた。ストレートの球速が落ち、変化球は曲がらない。フォームもなんだかおかしい。打ち込まれる試合が続き、防御率は急速に悪化した。それでも、チーム事情が彼を二軍に落とせなかった。

 

 そんな中でも真英は変わらない投球を続けていたが、彼もシーズン序盤に築いた貯金を使い果たし、白星から見放されていった。

 

 暗い話はさておき、この年最大のトピックは、監督推薦でオールスターゲームに選ばれたことだろう。

 

 球界を代表する選手たちとの交流は、真英にとって大きな刺激になった。なかでも一番うれしかったのは、日本を代表するエースから、疲労回復の方法や食事、身体のケアについて矢継ぎ早に質問されたことだ。

 

「一年目からすげー投げてるよな」

 

 そんなふうに興味津々で聞かれ、真英は知っていることを一つひとつ答えた。

 

 あとになって、「俺のピッチングは……?」と少しだけ気分が盛り下がったのは、ご愛嬌である。とはいえ、真英自身もスター投手たちから変化球の握りや感覚を教わり、一緒に食事へ行って、そこで撮った写真を小春へ自慢していたが――

 

「見てよ小春ちゃん」

「まさくんてば、ミーハーだねえ」

 

 と、笑われてしまった。

 

 それから、ドラフト同期である柏田との再会もあった。彼はすでに球界を代表する遊撃手とまで言われており、オールスターも3年連続の選出だった。彼とは高校時代から交流があり、少ないながらも対戦があった。柏田は真英に会うなり、人懐っこい笑みを浮かべていきなりリクルートしてきた。

 

「ソコたん、神戸(ウチ)きいひん?」

「オレと対戦したくないだけでしょ」

「バレたかー」

 

 柏田は高校時代から真英との相性が悪く、それはプロに入ってからも変わらなかった。通算の対戦打率は1割を切るほどだ。2年連続で3割を記録し、今年に至っては首位打者争いでトップを走る彼にとって、タイトル争いにおける最大の障壁といっても過言ではなかった。

 

「ソコたんと当たると打率下がるんやもん」

「がんばってもろて……」

 

 同郷かつ同期という気安さで、オールスター期間中はだいたい柏田と一緒にいた真英だった。

 

 その後、オールスター明けも、真英はローテーションを守り続けた。ウッド無き打線は2桁ホームランを打っているのが一人だけという惨状だったが、打線が繋がればそれなりに点はとった。そのお陰で、真英はシーズン最後の登板で7回を投げて4失点ながらも、打線の頑張りで勝ちを拾うことができた。9勝から先の道のりは遠かったが、こうして自身初の二桁勝利を達成した真英は、三年目のシーズンを終えることになる。

 

 チームは序盤に積み上げた勝ちのおかげで昨季ほど酷い結果にはならなかったが、5位から離された6位だった。ファンもメディアも、序盤の結果を根拠に、『来年こそは』と前を向いた。

 


 

そこのおまえ 3.18 10勝11敗185.2回←コレ

 

[名無しの代走]

ようやっとる

 

[名無しの代走]

10勝しても10敗するそこのおまえはいる

 

[名無しの代走]

なんかもっと打たれてる印象だったがこんなもんか

 

[名無しの代走]

ようやっとる

やりすぎとる

 

[名無しの代走]

負けすぎ

 

[名無しの代走]

2桁おめ

野手に感謝しろよ

 

[名無しの代走]

>野手に感謝しろよ

ウッドの間違いだろ

 

[名無しの代走]

ウッドさん・・・どこ・・・ここ・・・?

 

[名無しの代走]

ウッドの残留が最大の補強

 

[名無しの代走]

>ウッド

まあ来年はいないだろうな

 

[名無しの代走]

若狭  3勝9敗 4.81

美作  6勝8敗 5.24

アルバレス  1勝7敗 6.88

西郷  4勝10敗 5.67

柿谷  0勝5敗 7.41

 

[名無しの代走]

グッロ

 

[名無しの代走]

投球回数も併記しろ

 

[名無しの代走]

>投球回数も併記しろ

やめてクレメンス

 

[名無しの代走]

相対的に若狭がマシに見える

 

[名無しの代走]

若狭いけるやん!

 

[名無しの代走]

おまえ「監督…おかしいですよ…」

 

[名無しの代走]

>おまえ「監督…おかしいですよ…」

おかしいのはおまえの身体だよ

 

[名無しの代走]

ウッドが9人いれば優勝できた

 

[名無しの代走]

>ウッドが9人いれば優勝できた

ファイアーすぎるwww

 

[名無しの代走]

【さがしています】序盤の西郷さん

 

[名無しの代走]

彼はもう…

 

[名無しの代走]

西郷…

 

[名無しの代走]

西郷は別人といれかわってるだろこれ

 

[名無しの代走]

今年も最後まで元気だったなあ、おまえ

 

[名無しの代走]

正岡「おまえはわしが育てた」

 

[名無しの代走]

✕育てた

◯勝手に育った

 

[名無しの代走]

ローテにそこのおまえが5人いれば優勝できた

 

[名無しの代走]

雨雨おまえ雨おまえ

 

[名無しの代走]

来年も同じ感じで頼む

 

[名無しの代走]

頑丈すぎるなこいつ

 

[名無しの代走]

若狭…よみがえれ…

 

[名無しの代走]

アルバレスとはなんだったのか

 

[名無しの代走]

つーかマジで去年のドラ1はどこ行ったんだよ

 

[名無しの代走]

>つーかマジで去年のドラ1はどこ行ったんだよ

やっこさん5月以降二軍登板ないよ

 

[名無しの代走]

>やっこさん5月以降二軍登板ないよ

おお、もう…

 

 

 

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