入学式。
その単語だけ聞くと何を思い浮かべるだろうか。
出会いというのが一番近い発想なのではないだろうか?
自分が通っていた学校から離れ、新たな新天地に訪れ、何かを探す。
そして、俺は今日『高度育成高等学校』に入学し、出会いを求めて入学する。
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1年Dクラス。
俺が配属されたクラスだ。
俺はクラスの振り分け表を見た後、自分の教室に向かいそのまま着席をした。
教室を見渡すと、40名中30名ほどがいたことから俺は遅い到着だったのだろう。
自分の席に座り、右隣には本を読んでいる黒髪ロングの美少女。
左隣には無表情で教室を見つめる好青年。
俺は友達作りの第一歩として、隣の何考えてるかわからない青年よりも美少女に声かけることを選んだ。
「隣の席になった一条 玲だ。よろしくな」
「…」
む、無視された。
この長い黒髪の美少女にだ。
世間一般的に見てもこの女子は可愛いと言われる部類だろう、いや美人の方が似合うのだろうか?
「人の顔ジロジロ見ないでくれるかしら」
「す、すまん…」
「はぁ…堀北 鈴音よ。名前がわかったのだから話しかけることも見ることも必要ないわよね?」
「あ、あぁ…」
俺を鋭い目で見つめて自己紹介?を終えた後、すぐに手元にある本に視線を向けた。
な、何だこいつ…。
あんまりイライラしない俺でもイライラしたぞ。
右隣にいる堀北は放置するか、これ以上話しかけたら自分が傷つきそうだし…。
「よ、よお!俺一条 玲って言うんだ!よろしくな!」
「…あぁ、よろしく」
「…名前なんて言うんだ?」
「…綾小路 清隆だ」
「…よろしくな、綾小路!」
「…あぁ」
何なんだこいつら。コミュ力低すぎるだろ。
俺も別に高いわけじゃないが流石にここまでではない。
しかも俺が綾小路に挨拶した後、堀北が「ふっ」と笑った気がする。
「席につけ」
この気まずい空気を消すかのようにスーツを纏った女性が入ってくる。
正体はわからないが多分俺たちの担任だろうと予想がつく。
「これからこの学校について説明をする」
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毎月10万。
それが俺たちが貰える額らしい。
支給された携帯端末を見つめながら、俺は綾小路と共にコンビニで商品を見ていた。
ちなみに自己紹介は俺は難なく終えてたが、綾小路は自己紹介に失敗していた。
「毎月10万も支給されるのか」
「そうだな、10万なんていう大金毎月もらってたら社会に出た時金銭感覚おかしくなりそうだし、しっかりしないとな」
商品を見ながら綾小路が呟いたことに対して、俺も考えてることを綾小路に返す。
実際社会に出たら10万という金で生活はできないが、あいにくとこの学校は家賃や光熱費など住むことに関しては、お金はかからない、かかるとしても、食費のみだろう。
となると、新卒で貰えるお金は手取りで18万ほど。家賃や食費などかかるもの含めると、手元に10万残るかどうか怪しい。
そう考えると俺たちにとっては大金と言えるだろう。
今のうちに節約癖をつけておかないと、多分社会に出たときに苦労すると思った、俺は手に取ったポテトチップスを棚に戻した。
この際に自炊とかした方が良さそうだな…。
「これ無料で売られてるんだな」
「ん?ほんとだ」
無料商品と書かれたものが、一つの棚に纏められて置かれていた。
そこには生活必需品の物が多かった。
「使いすぎた人のための救済措置か?」
「まあ、そうだろうな」
綾小路が無料商品を手に取り、俺は視線を横にやるとシャンプーやコンディショナーを選んでいる堀北がいた。
「よ、堀北。お前もコンビニ来たのか」
「…」
「無視すんなよ…」
「…はぁ、話しかけないでと言ったはずだけれど?」
「それはさっきだ。今は言われてない」
俺は隣の席だし話しかけておこうと思ったが、間違いだったみたいだ。
綾小路は無表情だったから何考えてるかわからない。
ちょっとムカついたし堀北に反抗しといた。
「揚げ足取りね」
「それで堀北は安いの買うんだな、10万もあればもう少し良い商品買っても良さそうだけど」
「必要ないわ、それに一条君。貴方も人のこと言えないわよね?最低限の生活必需品、しかも安物の商品」
「男は別にシャンプーとかこだわりないからな、お前は女子だしもう少し選んでも…すみません、何でもないです」
鋭い眼光で睨んできたのでこれ以上の追求はやめておく。
こいつ、怖えよ。
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ある一定のイベントを終え、寮に戻った俺は買った物を袋ごと机に置いて、制服のままベットに横になる。
「高度育成高等学校か…」
そう呟いた後、窓を見る。
日は落ち、太陽はオレンジ色に輝いていた。
高度育成高等学校。
就職率、進学率共に100%を誇る屈指の学校。
そして毎月10万に充実した設備。寮に関しても不満が産まれることがない。
俺は目を閉じ、眠りが訪れるのを待った。
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5月1日。
事件は起きた。
ポイントが俺たちには振り込まれてなかったのだ。
それに対して、クラスメイトがざわついていた。
まあそれはざわつくよな、実際給料が振り込まれてないみたいなものだしな。
「席につけ、授業を始めるぞ」
茶柱先生が入室してきた。
それに合わせるように、みんなが慌てたように席に着く。
そして何事もなく、授業を始めようとした途端クラスメイトの池が手を挙げた。
「せ、先生!ポイントが振り込まれてないんですけど!」
「いや、ポイントは間違いなく振り込まれた」
「え!?いや…だって…なぁ?」
改めて携帯を見つめても増えているポイントは0だ。
これは紛れもない事実。
そして口々におかしいなど、振り込まれてないなど発言する者が後を耐えなくなった。
「お前たちは本当に愚かだなぁ」
茶柱先生は笑った。
本当に愚か者を見る目で自分の教え子であるクラスメイトを見つめた。
そして、説明した。
なぜ振り込まれなくなったのか。
授業態度、素行の悪さなど。
学校でしては行けないことを俺たちのクラスでは行った、ただ単純な理由。
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そして俺たちのCPは0ポイント。
0に何をかけようが0ポイント言うことだ。
「そ、そんなの聞いてねえよ!」
「だからお前達は愚かだと言ったんだ、何故10万という大金をただ入学したお前らに振り込まれる」
「何故、疑問を疑問のまま放置しておく?」
「っ…」
「前代未聞だぞ、たった1ヶ月で全てのポイントを吐き切ったクラスは存在しなかった」
俺たちは本当の不良品ということを身に沁みて実感することとなった。
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茶柱先生のくだらない話を終え、昼休み。
授業を終えた瞬間、俺と綾小路は茶柱先生に連れられていた。
「先生、俺たちをどこに連れて行くんっすか?」
「黙ってついて来い、次私語を話せば退学にする」
どんな権限があるんだよ、この先生に。
でも退学しないという保証がどこにもない。嘘の確率は高いが、本当の可能性もある以上俺と綾小路は顔を見合わせ、口を紡ぐ。
いやしかし、何故俺たちなんだ?
現在クラスメイトは金がないとは思うが、何らかの食事を摂っているだろう。
何故俺たち二人だけが呼ばれている。
そしてある空き教室に連れてこられ、給湯室で待機してろと命令された。
しかも私語厳禁だとよ。
流石に入学早々に退学になるのを恐れた俺は指示通り待っている。
「先生、何故私がDクラスなんですか!?」
「その理由は明かせられないな」
「私は勉強も運動もそこら辺にいる人よりも優秀です!何故私はAクラスじゃないんですか!?」
「聞こえなかったのか?明かせられないと言ったんだ」
(声の主は堀北か…)
隣の席になってから何かと俺が堀北に話しかけるため、声を覚えてしまった。
話しかけるたびに嫌そうな顔はしていたが。
そして茶柱先生は給湯室の扉を開けた。
「一条君?それに綾小路君も…」
「よ、よぉ堀北、何話してたんだ?」
「お前達がいた場所は壁が薄くてな、声が聞こえていたはずだぞ」
「「…….」」
ニヤニヤとしながら茶柱先生が俺らに告げる。
堀北は聞こえてたという確信を持ったため、激しい眼光で睨んでいた。
「それで、茶柱先生。オレたちを呼んだ理由は何ですか?」
「ああ、そうだな綾小路。その説明がまだだったな」
綾小路を呼んだ理由は、入試試験全て50点。先日行われた小テストも50点という。偶然には出来すぎている点数だった。
綾小路は偶然の一点張りだったが。
「そして一条、お前も面白い生徒だ」
「一条君が?」
「そうだ、こいつは私がSシステムについて教える前から気づいていたみたいだぞ、この学校の仕組みに」
「そんなわけないじゃないっすか」
オレの発言に薄ら笑いながら茶柱先生は続ける。
「お前はこの5月1日を迎える前、
それについては悪いことでも何でもない、一年生は一年生のフロアにいなくては行けないなどと縛りはないからだ。
「そして接触を図った。その内容はニ年生、三年生クラスは何人いるのか」
そう、俺がしたのは40人クラスではなく、ニ年生、三年生には何人いるのかを知りたかった。
そのクラスには何人退学しているのか知りたかった。
だがしかし俺らの代が全クラス40人だっただけで2年生と3年生は40人入学したとは限らない。
だから俺はーー
「二年の先生に聞きに行った、そこでポイントを支払ってな」
「ポイント…?」
そう、確証を得るためには生徒ではなく先生に聞くべきだと思った。嘘を吐かれる可能性もあったからな。
そして先生に聞きに行った時、答えられないと告げられたがポイントを支払い入学人数を聞いた。
2年生、3年生どちらも変わらず、40人の入学。
「それより待って、先生がそんな買収みたいなことを応じるの?」
「最初に茶柱先生が言ってたぞ、『ポイントで買えないものはない』と」
入学初日、茶柱先生は確かに言っていた、ポイントで買えないものはないと。
だからその検証も含めて先生に入学の人数について聞いたら見事にビンゴだった。
そこから現在残っている人数を数える。
先生に聞いても良かったが、流石にポイントを大切にしたい。入学の人数を聞くだけで2万
だから俺は
そこで分かったことは、どのクラスも40人よりは下ということ、どこかで停学、退学どちらかがあると分かった。
€
「ちょっといいかしら、一条君」
放課後、俺は堀北に声をかけられた、鋭い眼光と共に。
あまり関わりたくなかったが、隣の席だし放置するのもアレだと思った俺は仕方なく着いて行った。
そして昼休みに一緒に呼ばれた、綾小路の方を見るといつの間にか帰っていた。
あいつ…逃げたな…。
「貴方気づいていたのね、この学校の仕組みに」
「気づいていたというか、推理を確実にするために動いてたとしかなぁ」
カフェに着いてから、俺はアイスコーヒーを注文、堀北は紅茶を注文し、席についた。
呼ばれた手前奢ってほしいとは思ったが、そんなこともなく、アイスコーヒー代を支払った。
「いつおかしいと気づいたの?」
「茶柱先生の説明の後だ」
「『ポイントで買えないものはない』よね?」
「まあ、それもそうだが確信に至ったのはそれじゃない」
淡々と迫る堀北に俺はアイスコーヒーを一口飲んだ。
「入学初日俺たちはいくら振り込まれた?」
「10万よね?」
「俺らのクラスは40人、それだけで160万の出費だ、そして一年生は160人。計算すると1,600万の出費。ただの高校生にだぞ?」
堀北は紅茶に一切口をつけず俺の話を聞いていた。
「それがあり得ないということね」
「俺は今後も10万が振り込まれる可能性は低いと考えた」
俺はアイスコーヒーをかき混ぜながら、堀北に告げる。
考えられるのは学力や運動能力、それらの低いものから落として行く。
だが個人個人で落とすのはないと思った、学校という集団生活を重じる場所、しかも本来であれば存在する、クラス替えも存在しない。
だからクラスごとに支給されるポイントが何らかで変動すると予想できる。
そして上級生の入学人数が優秀であるはずの、Aクラスですら減っている点からして、実力がなければ生き残れない学校だとわかる。
「一条君、あなた何者なの…?」
「ただの疑り深い高校生だ、俺以外にも気づいてる奴は多少はいると思うぞ、多分」
俺はアイスコーヒーを一気に飲み干し席を立ち上がる。
説明も終わったし、これ以上の長居は不要だ。さっさと帰って寝るに限る。
「ちょっと待って」
「何だ?」
「私はAクラスに上がりたい、協力してくれないかしら?」
「協力ぅ?俺は別にAクラスとか興味ないぞ」
実際あまり興味はないが…
いや、ここで動かなければ
「いや、やはり協力しよう」
「どういう心変わり?」
「俺もポイントがない生活は嫌だと思ってな、協力してもいいと思った」
実際ポイントがない状態で、三年間生活して行くのは苦しい。
だからここで協力して行ってもいいだろう。
「まずは茶柱先生が言っていたテストをどうにかする」
「そうね、まずは赤点を取ってしまうどうしようもない生徒を救い上げないといかない」
堀北はいつの間にか紅茶を飲み干しいたようで鞄を持って立ち上がった。
堀北に別れを告げると、俺は寮へと歩き出した。日は落ち周りの生徒も帰宅するためにケヤキモールから抜け、寮へと向かっている。
俺は俺自身のために目的を遂行する。
それはAクラスに上がりたいとか、ポイントが欲しいなど、そんなくだらないことじゃない。
俺は目的を達成しなければ、この学園出た後どうなるかわからない。
だから目的を達する。
どんな手段を用いてもだ。