Blue Archive:A story about youth 作:R2017
もうすぐ11時になりそうな頃、シャーレの2人はアビドス高等学校へと赴いていた。
「…初対面って、やっぱり緊張しますね…。」
「優しい子達だから、廉ならすぐ馴染めると思うよ。肩の力抜いて大丈夫。」
彼はこの世界に来てから、初めて連邦生徒会以外の生徒に出会う。彼は怖いもの無しに見える…だが、実際は前の世界とは全く違う世界に怖気付いている。だが、この底なしの善人である先生の言うことを信じ、支給されたシャーレの紋章が腕についたパーカーを見やって、覚悟を決める。そうしていると、先生がガラリと扉を開く。
「皆、おはよう。」
「あ、先生、おはよう。」
「おはようございます〜。」
「あれ、先生、隣の人誰?」
「シャーレの方…ですよね?」
「は、はい。初めまして、僕は先生の補佐をやらせて頂くこととなりました、一 廉 と申します。気軽に廉とでもお呼びください。」
ぎこちない喋り方に、少しカクつく身体の動き。誰がどう見ても緊張が透けて見える中で自己紹介を行い、一礼する。
「ん、そんなに緊張しなくていい。」
「そうですよ〜。肩の力抜いて下さい☆
私は十六夜ノノミいいます!」
「私は砂狼シロコ。よろしく、廉。」
「私は書記とオペレーターを担当している奥空アヤネと申します。この寝ている方は3年生の対策委員会委員長、小鳥遊ホシノ先輩です。ホシノ先輩、起きて下さい!」
「うへぇ…もうちょっとだけ…」
「…私は黒見セリカ。よろしく。」
「よ、よろしくお願いします。」
先生の言う通り、皆優しそうな人だけど…セリカさんにはなんだか…警戒されている気がする…ちょっとだけ敵意というかなんというか…
「せ、先生…」
彼は小声で先生に耳打ちすると、先生は優しい声で応じる。
「どうしたの?」
「セリカさんに…凄く警戒されている気が…」
「…実は…私も警戒されているんだよね…」
この先生が…?と、彼は不思議に思う。身長が高く、爽やかで美麗な顔立ち。物腰柔らかで優しい性格。そして仕事も出来る。お茶目な部分もあるが…どうにも、この人が嫌われるとはあまり思えなかったのだ。
「お二人共、何を話しているんですか〜?」
「私も混ぜて。」
「あ、えーとー…秘密です!先生と僕だけの話なので。」
「つれないねぇ〜。おじさんも混ぜてよぉ。あ、先に校舎の案内してあげよっか?」
「そんなにして貰って良いんですか!?今日はやるべきこととかは…」
「今日は特に何もないので、大丈夫ですよ。」
「色んな場所を案内しちゃいますよ☆ほらほら、セリカちゃんもお話しましょう!」
「わわっ、ちょっと!ノノミ先輩!?」
ノノミがセリカの手を取り椅子から立たせる。廉にとっては有難いことだった。セリカが話しかけにくい雰囲気を醸し出していた故に。
「…ありがとう、ございます。嬉しいです!」
多くの人の温もりに触れられることは喜ばしいことだ。それこそ、奇跡と呼ぶに相応しい。彼がこれほどに歓迎して貰えるのは、いつぶりのことだろうか。長きに渡る年月が経過しているだろうことを、彼の涙ぐんだ目が語っていた。
「ではお言葉に甘えて…校舎の案内よろしくお願い…」
突如として轟音が響き渡る。正門の方からか、と窓の外を見やる。
「爆発音!?」
「あいつらっ…まだ懲りてない訳!?」
「で、でもアジト、補給所などを破壊したはずじゃ…」
「いや、人数はいつもより少ない。それに爆発物もいつもより少ない気がする。」
「先生の指揮があればすぐ終わりますね☆」
「これから歓迎会をしようってところで、全く困った子達だね〜。」
「ボッコボコにしてやるわ!」
各々、銃を持って部屋から勢いよく飛び出していく。あまりの判断の速さに、少しばかり面食らっていると…
「廉も少し戦闘を見てみよう。」
「僕も…ですか?」
「うん、私もキヴォトスに来てそんなに経ってないけど、結構慣れられたから、廉も慣れられると思うんだ。それに、私の近くに居れば安全だから大丈夫だよ。」
当然、気は乗らない。彼の得意なことは戦闘、しかし、それは最終手段に近い。漠然と、彼は自分のために戦っているようで、嫌なのだろう。だが、戦闘によって、この世界では命は殆ど失われない。たかが、殴り合いの喧嘩程度。その程度。そのように彼は自分に言い聞かせた。
「分かりました。行きましょう!」
意を決して、彼は先生と共に戦場へと向かった。
「…これが、この世界の銃撃戦。」
覚悟は決めた。それでも、実際に目の前で戦闘が繰り広げられていると思うと、彼は複雑な気持ちになってしまう。それで本当に死者が出ないのも、衝撃的だ。廉はずっと、この世界の仕様に驚きっぱなしだった。
「…皆さん…つっよいですね…」
先生の的確な指示によって、カタカタヘルメット団はどんどんと戦闘不能に追い込まれてゆく。アビドスの洗練された動きと先生の指示の連携によって、あっという間にカタカタヘルメット団を撤退に追い込んだ。
「ふん!二度と来るんじゃないわよ!」
「来てもまた追い返す。」
「皆さんお疲れ様でした〜!」
「やっぱり、先生の指揮があると戦いやすいねぇ〜。」
「…すみません、廉さんに1つお尋ねしたいことが…」
「あ、はい、なんでもお答えしますよ!」
「廉さん、先生と同じようにヘイローがありませんが…かなり動きが身軽に見えました。それこそシロコ先輩にも劣らなそうな…」
「そう…ですね。自分でも、身体能力は高い方だと思ってます。これを活かすことは、あまり……戦うことには慣れてますから、いつでもお手伝いは出来ますよ!」
彼には事務作業ができる程の知識はなく、先生のように指揮能力もない。シャーレの先生の補佐として、誰かを守るために戦うこと。彼はそれしか出来ない、それをやらければならないと、彼は心の中で思っていた。
「別に戦わなくてもいいよ〜?私たちには自慢の後輩シロコちゃんが居るんだから。」
「私が居れば100人引き。」
「それに、先生の指揮があれば私たちは無敵です☆」
「私たちは強いんだから、見くびってもらっちゃ困るわ!」
「…皆さん、頼りになりますね。眩しいです。」
「ふふ、取り敢えず教室に戻ろうか。話の続きだったし。」
皆、先生の言葉に応じて教室へと戻った。そして、セリカが時計をまじまじと見ると、慌て始める。
「あれ、もう12時超してるの!?」
「あ、本当だ…時間の流れって早い…」
「私行かなきゃいけないところあるから!またね!」
「あ、セリカ…」
「先生は着いて来ないでよね!!」
先生がセリカに声をかけようとすると、怒声を発する。この域まで来ると、最早先生は警戒されているというか、嫌われているレベルだ。
「先生、セリカさんに何かしましたか…?」
「先生はセリカちゃんをストーカーしちゃったからね〜。」
えっ。嘘でしょ?
「えっ。嘘でしょ?ストーカー…?」
「あはは…」
不意に廉の心の声が漏れでる。廉が先生は懐疑的な目線を送ると、先生は否定できないな、と苦笑いしてしまう。その様子に、廉は
「そういえば、セリカちゃんは最近忙しそうですね。バイトでしょうか?」
「そういえば、セリカちゃんのバイト先全く知らないねぇ。」
「少し気になりますね…。」
「…そういう時こそ追いかければ解決する。」
「ほんとにストーカーするんですか??」
「うん。行こう、先生、皆。」
変なところで意気投合し始めて、全員荷物を持って教室を出ていく。多少困惑しながらも、僕も皆の後をついて行った。少し経つと、セリカさんを発見した。追いかけて追いかけて追いかけて…辿り着いた先は…
「柴関ラーメン…?」
「ここかぁ〜。予想してはいたけど、まさか当たるとはね。」
「丁度お昼ですし、ここで食べちゃいましょうか!」
と、皆は楽しそうに柴関ラーメンの中へ入っていく。
「いらっしゃいませ!柴関ラーメンで…。わわっ!?」
「あの〜☆5人なんですけど〜」
「あ、あはは…セリカちゃんお疲れ…。」
「お疲れ。」
「み、みんな…どうしてここを…!?」
「うへ〜、やっぱここだと思った。」
「どうも。」
「ご無沙汰しております…。」
「せっ、先生まで…やっぱストーカー!?」
「せ、先生は悪くないですよ!?いやまぁ…悪くないですよ!?」
悪くないと弁明しようとしたけど言葉が見つからなかった。難しいな。言い訳。
「ん、私がセリカを追いかけるのを提案した。」
「シロコ先輩かっ…!!ううっ…!」
「アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、おしゃべりはそれくらいにして、注文受けてくれな。」
「あ…はい、大将。広い席にご案内します…こちらへどうぞ…。」
目に見えてセリカさんが意気消沈している…かなり不憫だ。慰めたくなってくる。
皆、座席に着くと注文をし始める。ノノミさんはチャーシュー麺、シロコさんは塩ラーメン、アヤネさんは味噌、ホシノさんは特製味噌ラーメン、炙りチャーシュートッピング、僕と先生は醤油ラーメンを頼むことにした。
「ラーメンは先生の奢りだよね?」
「初耳だよ!?」
「まぁまぁ、良いでしょ〜?お願い先生〜!」
先生が奢ることになった。いざ、ラーメンが来ると少し感動してしまった。こういうものを食べるのは本当に久しいからだ。…ただ、美味しいというのは伝わるが、味覚障害の自分にはどうも、味わうことができないのは惜しい。でも、団欒しながら食事をするのは、本当に楽しかった。
「奢ってくれてありがと〜、先生!」
「お陰様でお腹いっぱいになった。」
「ご馳走様でした!」
「助かりました。僕は一銭もお金を持っていなかったもので…」
「セリカちゃん、バイト頑張ってましたね。」
「私たちも、あの頑張りの姿勢を見習わないとですね!」
雑談を交わしながら、再び学校へと戻ってゆく。今日は色々忙しかった…と零したら、これは日常、とシロコさんに言われてしまった。マジかよ…波乱万丈過ぎるよキヴォトス…と思わざるを得なかった。軽く校舎の中を案内してもらい、アビドスの借金についての話をして貰っていた。気づけば外は夜に近づき、各々帰宅の準備をしていた。夜は怖い。普通の都会を歩くだけでも怖い。それが、キヴォトスの夜は銃を持った人が平然と街を右往左往としているのだ。当然、治安は最悪な訳だ。数秒後、僕はあることを痛感することとなる。
「セリカちゃんと連絡が取れませんっ!!」
「…家にも居なかった?」
「誰も居ませんでした…!!」
「今までこの時間帯まで帰らないことはあった?」
「いえ、無かったはずです…。つまり…セリカちゃんは…!?」
「セリカさんが…行方不明…!?」
その治安の悪さが、仲間に牙を向けることをしっかりと考えておくべきだったことを。