主人公くんはガンダム一通り知ってるけど、ビルドシリーズは知らない設定です。
プラフスキー粒子。
今から10年ほど前に見つかったプラスチックに反応を示し、浸透する新粒子であり、その諸技術や精製方法などは開発したPPSE社により徹底的な情報規制のもと門外不室となり、未だ公にはなっていない。
そしてこのプラフスキー粒子を限定的なエリア内に散布。
機動戦士ガンダムシリーズのプラモデル(以下ガンプラ)に反応及び粒子を浸透させ、特殊操作コンソールを用いることでガンプラを操作することが可能。
結果、この粒子の普及により、自身が作成・改造・フルスクラッチ等を施したガンプラを使うシミュレーションバトル、ガンプラバトルが全世界的に大流行となり世界大会が開かれることになる。
また、この粒子はガンプラ以外のプラモデルにも反応を示すことが確認されているが、1番反応したのがガンプラであり、普及率等の様々な問題から他プラモデル業界に大きな経済的打撃が起こり、通称───
「はいはいはい、なるほどね……」
スマホで調べたwikiの情報を途中まで読み進め、後は読まなくていい、と思った僕はスマホをテーブルにおき、軽く天井を見上げる。
「……何だよ、このガンプラ贔屓世界は」
小さなため息をついて、頬杖をつき、棚に置かれたガンプラの箱を見る。
型式番号ASW-G-08。分かりやすく言うならHG ガンダム・バルバトスルプスレクスの箱には、ご丁寧にリボンが巻かれていた。
16歳の高校生、僕、ヨシダ・アサヒは絶賛入院中だ。
どうやら交通事故に遭い、両足を複雑骨折。更にはこの間まで意識不明だったらしい。当分車椅子生活になるのは確定している。
ガンプラは見舞い品としてくれたみたいだけど、この世界は果物とかじゃなくてガンプラを見舞い品にするのか? いみわかんねぇって。
いや、まぁ……それはさておき。
そんな状況から無事に目が覚めた僕は、まず思い出した。
漫画やゲーム、最近では小説で良くある前世の記憶というやつをだ。
最期の記憶としては、普通に社会人やってた僕が仕事帰りにプラモを買い、そのプラモを作るぞ作るぞ考えていたら、交通事故。
多分そのままご臨終だ。
目が覚めたら僕はこのガンプラ贔屓の世界で、1人の若者として存在しているわけで。
剣と魔法の世界だーとか、実は異能力が蔓延る近未来だった! というわけでもなく。ただプラフスキー粒子が存在しているだけの近未来に転生していたのだった。
まぁ良かったと思う。
僕なんかが、そんな超常的な世界観で生き残ったり武勲を挙げることなんて出来るわけないし。丁度いい丁度いい。
前世と同じく、適当に就職して、プラモ買い漁ってればいいや。と思っていた。
プラモが動かせるなんて、モデラーが聞いたら目の色も変わるだろ?
考えてくれよ。
マクロス動かせるんだぜ? 戦術機も動かせるんだぜ? 戦車だって、空母だって。思いのままだ。
僕が1番作っていたプラモシリーズも動かせる。髪が風に靡く。光に照らされる装甲。想像するだけで胸が高まると、思っていた。……そう、思っていたんだ。
「なんで……なんで美プラは……美少女プラモデルはないんだ?」
フレガは? ねぇ武装神姫は? 中学の頃に出会って以来ずっと相棒のアーンヴァルは?
そういう系のプラモはいくら調べても情報は出てこない。所謂擬人化のプラモも同じくだ。
ベッドに大の字に横たわる。
唯一しっかり作っていたシリーズである美少女プラモデル。
ああいうロボ×美少女みたいなのは正義だ。
なんたって癖も出る。ロマンも出る。
まさに最高傑作が出来るのは、美少女プラモデルだと僕は思っているわけだけど、それが無いなんて……。
「ガンダムめ……」
誤解のないために言うと、ガンダム自体は別にそんな嫌いじゃない。なんなら初めて作ったプラモはヤクト・ドーガだったと思う。
僕のモデラー人生の始まりはガンダムではあったけど、経過点はガンダムより美少女プラモデルに移った。まぁ武装神姫に出会ったからだとは思うんだけど、それは置いておこう。
無いんだもんな……。キット化されてないならどうしようもな──
天啓。
ビビッと来た。
「そうだ……」
無いなら作れば良いんだ。
1から、全てフルスクラッチで。
どれだけ時間がかかるか、どれだけの技術が必要か分からないけど。
プラフスキー粒子で動く美プラが見れるのであれば。
やってやろうじゃないか。
口角が釣り上がるのが止まらない。
「待ってろよ、美プラァ……」
***
そして車椅子ではあるけれど、無事退院した僕は両親に手伝ってもらって帰宅してすぐにそのまま僕はなけなしのお小遣いを握りしめ、近くの模型店に向かうことにした。
ネットで調べたところ、イオリ模型店というプラモデルショップが徒歩15分くらいの距離にあるそうで。そこに無かったらどこか別のところを探すとしよう。
びっくりするくらい色々と必要なものがあるらしく、部屋になかった工具類含めて沢山買わなきゃいけない。一回で揃うかどうか、って感じだな。
「いらっしゃいませ〜……?」
女性の店員に軽く挨拶を返し、店内を見回る。
小さいながらに道具やフルスクラッチ用のプラ板も揃ってるし、ガンプラも沢山種類がある。それに少しではあるけれど戦車とかもある。
おー、Ⅳ号戦車じゃん。うわぁ大洗行きたい。
「あのー、もしあれだったら、取れないものがあったら遠慮なく言ってね?」
「あ……ありがとうございます」
店員の女性は僕の車椅子を見て、そう言った。
普通にそれはありがたい。立ち上がれないから届かないものもある。優しい店員さんだ。
「えっと、ちなみになんですけど、フルスクラッチ用のピンバイスとか欲しくて……どの辺りにありますかね」
「ピンバイス……ごめんね、ちょっと分からなくて……あ、ちょっと待ってね!」
店員は小走りで店の奥に向かい、制服姿の1人の少年を連れてきた。
顔が似ているから多分息子さん。年齢的に同い年か一個下くらいだろうな。
「私の息子なんだけど、色々詳しいから多分頼りになると思うから!」
「母さん、ちょっと急に……ってヨシダ先輩? 退院したんですね?」
……うわ知り合いやん。
一応、僕がヨシダ・アサヒとして生きていた16年間の記憶はある。それとプラスに前世の記憶を思い出したってだけで。
ただ事故の影響か、記憶を思い出したからか、16年間の記憶は靄がかかったように若干曖昧になっている。
「あー……っと、そっか、イオリ君とイオリ模型店。ここ君の家だったんだ?」
それっぽく返す。
「はい、父さんのお店で! えっと、確か何か欲しい道具があるんですよね?」
「うん、フルスクラッチしたくてさ。道具一式とプラ板とかかな? あ、ちなみに予算はこれくらいね」
僕はピースするように指をイオリ君に見せた。
「フルスクラッチ! 先輩ってガンプラ結構作るんですか!?」
「うーん。まぁそこそこ、だと思う」
イオリ君は僕と話しながら、ピンバイス含めた色々な商品を持ってきてくれる。金額的にはお財布に優しいレベルが多く、商魂は二の次のようだ。
「もし分からないところとかあったら、相談してくださいね! 答えられるところならお教えしますので!」
「あ、それは助かるかも。ありがとうイオリ君」
僕らのそんな会話をレジカウンターに移動していたイオリ君の母親は、頬杖をつき、ニヤリとしながら僕らを微笑ましそうに眺めていた。
気が向いたら続きます。