「おいおい、キング・・・お前ゲームめちゃくちゃ上手いな・・・」
みかんジュースをストローで飲みながら、サイタマが驚いたような声を上げる。
「ホントにな~。結構上手い自信、あったんだけど、なっと!ああ~やられた~!」
貰ったコーラ片手にコントローラーをカチャカチャしていた俺だが、操作していた桃色の丸いキャラクターの残機が0になったことでコントローラーを置いてテーブルの上のポテチをつまんだ。
今やっているのは前世で言う某大乱闘してスマッシュするブラザーズなゲームに酷似したゲームである。
三人でできるゲームで、初心者でもある程度楽しめるということでこれが選出された。
最初はサイタマが選んだロボットシューティングをやっていたのだが、二人までしかプレイできなかった。
俺はキングとサイタマがゲームやってるところを見てるだけでも良かったのだが、キングが折角なら全員でできるゲームをしようと変えてくれたのである。
いいやつだなキング。
俺だったら自分の部屋に勝手に上がりこんできた奴にはさっさとお帰り願いたいが。
アレか?ファン(笑)の俺がいるから、気を遣ってくれてるんだろうか。
原作だとさっさと帰れみたいな感じだったし、多分そうだ。
やっぱいいやつだ。
「まあね・・・。大会で優勝したこともあるよ」
大会優勝者って、こんなに上手いんだな。
このゲームは前世でやっていたものと操作感が似ているし、前世ではゲームで遊ぶ方だったから自分はある程度できると思っていた。
もちろん怪人として転生してからゲームをしたことはないけどね。
でも、キングはそんな俺とは別次元に上手かった。
ハンデとしてサイタマと俺の二人でチームを組んでキングに挑んでいるのだが、一機も落とせずに全滅した。
これホントに凄くて、今の俺の動体視力ならキングがボタン押すのを見てからコマンドを入力するとか余裕なのだが、それでもなぜか勝てないのだ。
反射神経という点においては俺よりも遥かに優れたサイタマでもそうなのだから、少なくともこの対戦ゲームのゲームスピードにおいてはキングがダントツで最強らしい。
運もそうだが、これももはや異能の域にある。
「へ~。こんだけ上手ならそうなんだろうねぇ。ゲームではキングってわけか・・・。あ、コーラのおかわり貰っていい?」
「ふふ、まあね。・・・コーラは冷蔵庫の一番上に入っているから勝手にとっていいよ」
俺が賞賛すると、キングは得意気な顔になる。やはりファンからの誉め言葉は嬉しいのか?
俺も自宅に勝手に上がりこんでいる身だというのに、やけに無防備である。
冷蔵庫の中身を今日知り合った奴に見せるとかなかなかないんじゃないか?
そのせいで俺も結構遠慮が無くなってきてるぞ。
冷蔵庫にあったコーラ(瓶)の蓋をガリっと噛んで、そのまま中身を飲み干す。
あ~、なんか人間だったころを思い出すぜ〜。
「そういや、さっき何で逃げたんだ?今ジェノスが代わりに戦っているんだけど」
「ぼふっ!!」
サイタマの唐突なぶっこみに、キングは飲んでいたみかんジュースを吹き出した。
あ~言っちゃったか。
サイタマはこれを聞きたくてここまで来たんだろうしな。
滝のような汗を流すキングに対し、サイタマの追及が畳みかける。
「お前めちゃめちゃ強いS級ヒーローなんだろ?なんであのロボット怪人から逃げたんだ?」
「それが聞きたくてついてきちゃったけど・・・。お前ゲーム始めてるし怪人とかに興味ないのか?」
「もしかして強くなりすぎて戦うことが嫌になったのか?」
「何を考えてんだ?」
「頼む」
「教えてくれ」
・・・サイタマの表情は、いつもよりも真面目そうに・・・真面目・・・うん、顔はアレだが、雰囲気はちょっと真剣になっている。
『強くなり過ぎた』という俺からすれば羨ましい贅沢な悩みを持つサイタマだが、他者と比べて隔絶して強いのもまた問題を生むものなのだろう。
『強者故の孤独』というやつだな。戦いが一方的過ぎてつまらない、同じレベルの者がいないため共闘もできない。
勝利の感動、成長の実感も忘れ、あるのは退屈な毎日。
贅沢だとは思うが、怪人として強くなること、戦いに勝利することに快感を見出していた俺にとっては共感できる内容でもある。
成長は楽しいからな・・・。
そうした悩みを持つサイタマにとって、自分と同じような境遇かもしれない相手は珍しく興味を惹かれるものだったんだろうな。
いつもは適当なサイタマの、ちょっと真面目な追及にだらだらと汗を流しキングエンジンを鳴らすキング。
俺も口を挟めないで、フローリングに胡坐をかいてジーっと二人を見ていると、なんか違和感を感じた。
「ん?なんか来たな」
俺が思わず呟くと、サイレンの音が聞こえてきた。
『緊急避難警報!緊急避難警報!』
『M市上空に巨大怪鳥出現!建物から絶対に出ないように!』
『災害レベル鬼!災害レベル鬼!』
「ホントじゃん。最近多いな・・・。キングどうする?俺は行くけど」
サイタマが怪人退治に行こうと立ち上がるが・・・。
「いや、怪物がこっち来てる」
俺は窓の外から怪鳥がこっちに向かってピンポイントで突っ込んでくるのを見ながらそう言った。
ズドォォン・・・と重い破壊音が響き、キングのマンションの壁が破壊される。
部屋に突っ込んできた怪鳥の、ズラリと鋭い牙が並んだクチバシを片手で受け止めながらサイタマが呟く。
「驚いた。災害の方からアンタのところにやってきたぜ」
「鳥だってさ。何かに反応したのかな?・・・焼き鳥食いたい」
確かにここまでピンポイントで来るとびっくりだ。
キングに怪人を引き寄せる何かがあると言われても正直納得する。
まあ、今回はサイタマの頭の光に引き寄せられたとかそんなんだと思うが。
それはそうと、コーラ飲んでたら人間の食べ物を他にも食いたくなってきたな。
焼き鳥とか・・・。
目の前のバカでかい猛禽類見てると、なんだが無性に腹が減ってきた。
最近の献立はなんだかんだ怪人とかばっかりだったし。
・・・いやこいつも怪人か。
「流石に自分のうちまで押し寄せられたら戦うしかねぇだろ」
巨大怪鳥の方を向きながら、壁際ぎりぎりまで下がって震えるキングに言うサイタマ。
キングエンジンの頻度が上がってめちゃうるさい。
涙を流し小便を漏らし、何かに葛藤しながらキングは震える口を開く。
「俺、実は・・・」
怪鳥が咆哮を上げ、俺たちに襲い掛かる。
「本当は弱いんだ!たまたま現場に居合わせて、逃げるだけで他の誰かがやっつけていたのを周囲が勘違いしているだけで・・・!強い評判も戦歴も全部嘘で、本当は喧嘩もしたことがない!」
ボギャ!!!
怪鳥の咆哮、建物の破壊音。・・・そしてひと際大きなサイタマの打撃音。
轟音が響く中で為されたキングの告白は、しかし、俺とサイタマの高性能な聴覚にはしっかりと届いた。
目をつむって震えていたキングが目を開けると、そこには開放的になったリビングで佇むサイタマの姿。ついでにまだ床に座って胡坐をかいたままの俺。
「その話マジかよ。強い評判も戦歴も全部嘘だったって」
俺は全部知ってたから驚きはないけど、なんてリアクションすればいいのかわからん。
とりあえずノーコメント。
「な・・・!?は・・・?え?・・・・・・は!?」
サイタマがレベル鬼の怪物を倒したと理解したのだろう、困惑していたキングが愕然としてサイタマを見る。
「・・・大丈夫か?」
「・・・・・・!」
サイタマの心配に、キングは何かに気づいたようにハッと目を見開く。
キングは確か、まだ髪が生えていたころのサイタマに助けられた経験があったはずだ。
怪人タコヅメ男に襲われ、そこをまだハゲる前、大して強くもないサイタマに助けられた。
左目の三本線の傷はその時のものだな。
その時血だらけになってヒーローを目指していた青年と、目の前のサイタマがキングの中で一致したのだろう。
何かの感情が抑えきれなくなったのか、キングは泣き始め・・・そしてそれが落ち着くまで十数分かかった。
十数分後。
サイタマと、ついでに俺で、正座して俯くキングから話を聞いている。
「お前、嘘ついてびくびくしながらヒーローやって楽しいか?」
「楽しくない・・・」
「まあ俺は関係ないし説教するつもりはねぇけど」
「いやサイタマさんの手柄を俺が貰っちゃってたかもしれません」
「手柄とかそういう問題じゃねーだろ。お前は皆のヒーローなんだぜ。ファンもいるんだ、な?」
「うぇ!?・・・まあ、うん、そうだなぁ・・・」
やっぱり唐突に俺に話を振ってくるサイタマ。
普通だったら幻滅してファン辞めるんだろうが、俺はもともと知ってたし・・・。
っていうか、そういうことを言ってほしいんじゃないよなサイタマは。
・・・なんて返せばいいのかわからん!
「いや、俺は・・・」
俺の方をちらりと見て、再びうつむくキング。
俺に失望されてしまったとか考えているのだろうか。
安心しろ、だいぶ前から失望してるし、それとは別にちゃんと評価もしてるぞ。
言えないけども。
「お前が何と言おうと、皆は最強のヒーローだと思ってる。・・・キング。このまま嘘を通すのか?ヒーロー辞めるのか?」
「・・・なかなか決める度胸が・・・」
「だったら。強くなればいいんじゃね?」
「え?」
サイタマの言葉に小さくなっていたキングだが、最後の言葉にピクっと反応した。
そう簡単に強くなれるものではないが・・・。
だが、心音が周囲に聞こえるレベルで常人よりはるかに強そうな心臓を持つキングなら、案外あっさり強くなったりすんのかね。
ONE版ではサイタマに言われて筋トレ始めてたが、その成果が描かれる前に俺はこっちに来た。
・・・生き残る楽しみが増えたな。
「俺もう行くわ。・・・あー、お前も残念だったな。キングのファンだったのに」
去ろうとしたサイタマだったが、今になってキングの真実にファンの俺が傷つくという事実に気づいたらしい。
気づくのが遅いよ。
「いや、そうでもないよ。確かにびっくりすることはあったけどさ」
主にサイタマのせいでな。
「それに昼間は怪人気絶させてたじゃん?ちゃんと仕事してるし、全くの嘘っぱちってわけでもないんじゃない?」
「え・・・?いや、それは・・・」
俺が正直な所感を伝えると、キングは思ってもみなかったことを聞いたような表情になり、サイタマは感心したような表情になった。
「そうなのか?やっぱヒーローやれんじゃねキング。まあ好きにすりゃいいけどさ・・・じゃあなキング」
サイタマはそのまま踵を返すと、帰ろうとする。
「ちょっ待っ・・・!怒らないのか!?」
相変わらずマイペースなサイタマにキングは声をかける。
手柄を取られてるんだから、サイタマに怒る資格はあるよな。
本気でヒーローを目指して、ボロボロになりながら倒した敵。本来ならサイタマのものになるはずだった賞賛を、何もしてないキングが受け取ることになっちゃったんだから。
しかしサイタマは気にしていないのか、崩れた壁からジャンプしながらキングに言い残した。
「たまにゲームやりにくるから、ヨロシク」
「あ・・・うん。いいよ・・・」
マンションの22階から飛び降りて帰っていくサイタマを見送りながら、キングは拍子抜けしたような声で返事をした。
「んじゃ・・・俺も帰るよ。コーラとポテチありがとな。また会うときまで、頑張れよキング」
サイタマの奴、勝手に連れてきといて放置して帰るとは・・・。
まあいいけどさ。
俺も早くサイタマから離れたかったし。
さっさと帰るとしよう。
「お、応援ありがとう・・・玄関ならあっちで・・・」
キングの返事も聞かず、俺もまたマンションから飛び降りた。
また会うのは怪人協会編のときだろうし、その時は敵同士かもしれないが、悪くない出会いだった。
サイタマにあった時は焦ったが、結果的には良かったと言えるだろう。
・・・あの鳥、まだ死体があるなら胃袋に入れて持って帰ろう。
今夜は焼き鳥だな・・・。
ーーーーーーーーーー
S級ヒーローキングにとって、今日は厄日であった。
ゲームを買いに出ただけなのに、ロボットに襲われ、逃げ帰ってきた先で失礼なハゲとファンの子供に不法侵入されたからだ。
そのハゲはよく見ると、この前のS級会議になぜか来ていたB級ヒーローであった。
子供の方はハゲに無理やり連れてこられたらしかったが・・・。
プライベートゾーンを侵され、挙句の果てにあまり人に見せたくない趣味をよりにもよってファンの子の前で晒されて、キングは我慢の限界だった。
(なんだコイツ~~B級のくせに!図々しいしタメ口だし、俺は年上だぞこの野郎。・・・っていうか何でいるんだよ)
(こんな小さな子に気を遣われるしさ・・・。絶対幻滅されたよ。最悪だ~)
ファンの存在はキングにとっても、嬉しくないと言えば噓になる。
が、世間が持て囃すような英雄ではなく、嘘で塗り固められただけの一般人であるキングにとって、どう反応すればいいか困る相手だった。
幸い、その子供はいろいろ察してくれたようでいちいち何かを聞いてくるようなことはなかったが、それが逆にキングを惨めにさせた。
しばらく三人でゲームをしていると、警報が鳴り、いきなり現れた怪鳥が突っ込んできてキングは人生最大の危機に陥る。
(あの時もあの時も、いつだって俺はただの被害者だった・・・!)
(いつも誰かが怪人をやっつけてくれる)
(そんな日々を過ごしていたら、いつの間にか周囲が勘違いして俺が倒したことになっていた!本当は喧嘩もしたことがないのに!)
(キング?冗談じゃない。何が生態系の頂点、ヒーローの王だ!俺は嘘の塊のような男!)
キングはハッタリや嘘で凌げない危機に直面してようやく、今の自分が享受するものに見合う以上の危険が『ヒーロー』という職にはあることに気がついた。
(世間が憧れるキングは俺じゃない。だが本物のキングはどこかに存在する!)
どこか呑気なサイタマと、怪人が突っ込んできてなお胡坐をかいてコーラを飲む少女を見て、キングは今真実を言わなければ皆死ぬと察する。
「俺、実は・・・」
その告白は、言うには遅すぎた。
キングがいるから大丈夫だと思っていたであろう二人は、どう考えても避難は間に合わない距離にいた。
キングは怪人が暴れたであろう轟音を聞き、罪悪感でいっぱいになる。
(すまない・・・俺に君たちを守る力はなかったんだよ!言うの遅かったけど、許してくれ!)
だが、今回に限りその認識は正しくなかった。
B級であるはずのサイタマは、災害レベル『鬼』と判定された巨大怪鳥をあっさりと倒してしまったのだ。
「大丈夫か?」
(この声は・・・!)
サイタマの声を聴き、キングにはある思い出が蘇った。
ずっと前。
まだヒーロー協会ができて間もない頃だ。
『災害レベル虎のタコヅメ男だ!!逃げろぉぉー!』
突如出現した怪人から逃げ遅れた男は、その三本の爪によるひっかきを左目に受けて悲鳴を上げ悶絶する。
『ぎゃぁあああああああ!目がぁああああ!ああぅああ誰か、誰かぁあああ!!』
しかし、怪人からの追撃はなかった。
『おい落ち着け。怪人はやっつけたぞ』
恐る恐る目を開けると、そこにはジャージの青年がいた。
『あ、あなたは?』
『俺?まあ・・・趣味でヒーローを目指してるものだ』
青年は一目で重症と分かる傷を負っていた。
『!?酷い怪我を』
が、少しも気にする素振りを見せずに青年は笑って見せる。
『いつかヒーローが現れたら多分それ俺だぜ。こんな怪我大したことねーー。はは・・・今日は大金星』
(この人は・・・・!!)
あの時の青年が今目の前にいるサイタマだと気づいたキングは、再び助けられたという事実と、その手柄を自分が奪っていた可能性に気づき涙を流す。
その後落ち着いてから、サイタマはキングに怒るわけでもなく、ただマイペースに自分の思ったことを言って帰っていった。
(あんたは本気でヒーローを目指していたのに俺は・・・!)
またゲームをしに来ると言ったサイタマに、キングはこれから恩返ししていこうと心に決めたのだった。
「んじゃ・・・俺も帰るよ。コーラとポテチありがとな。また会うときまで、頑張れよキング」
キングはそれを聞いて、自分のファンだという少女に目を向けた。
真実を知って尚、自分を評価するようなことを言った子供。
(ホントは弱いのに・・・こんな俺を見てもまだ失望しないで応援してくれるなんて・・・)
(ヒーロー、頑張ってみようかな・・・)
キングはなんとなく、もうちょっとヒーローを続ける気になった。
今日はキングにとって厄日だったが・・・恩人とファン、秘密を知って尚態度を変えない二人に出会えたことは、これ以上ない幸運でもあるかもしれなかった。
なんとなく、悩みが軽減された気がしたキング。
「お、応援ありがとう・・・玄関ならあっちで・・・」
子供を玄関まで送ろうとしたキングは、風通しの良くなったリビングからぴょんっと飛び降りていった子供に愕然とし・・・
「ここ22階ですけど・・・」
と呟いた。
・・・・・・・・・・
怪人協会の、部屋中に目の模様がついた参謀用の瞑想室にて、ギョロギョロはハグキからの報告を聞いていた。
「キングの情報は何か手に入ったか?」
「いんや何も。家まで行ってきたけど、特にその戦闘スタイルや強さを示すようなものは無かったなぁ。あ、でも、キングと会った怪人がキングは何もしてないのに気絶してたぞ」
「そうか・・・。情報戦にも長けている、というわけか。タツマキと並んで、厄介な相手だ・・・」
「そうだな。俺から見ても、どんだけ強いのかはわからなかったよ」
「お前でもか・・・」
ギョロギョロは瞠目し、内心でキングの警戒度を何段階か上げた。
(ふむ・・・タツマキは私が相手するとして、キングは誰を当てるべきか・・・オロチか?いや、他のヒーローを始末し終えてから全員で囲むべきだな。念には念を入れて、戦力補充もするとしよう。『人間怪人』だったか?面白い奴の情報も入ってきていることだしな。・・・ふふ、俄然楽しみになってきた・・・!首を洗って待っていろ、ヒーロー協会・・・!)
それでも自信は揺らがない。
「厄介だが、それでも勝つのは我々だ。そろそろ宣戦布告する。ハグキ、お前も準備をしておけ・・・!」
「あいよ」
そんなギョロギョロを見ながら、ハグキは思った。
(一応嘘は言ってないから、いいよな・・・)
キングの秘密を知ることになってしまったが、それを怪人にバラすわけにはいかない。
適当に誤魔化したハグキは、さっさと部屋を後にした。
数分後、ハグキの自室にて。
ハグキは、持って帰ってきた怪鳥を胃袋から取り出し、居合わせたポチに何やら指示を出していた。
「何やってんだお前」
同じく居合わせた黒い精子がハグキに聞くと、ハグキは真剣な表情(口だけ)をして言った。
「焼き鳥すんだよ。・・・いいかポチ、そーっと焼くんだぞ。いつもの焦熱弾じゃなくて、この肉に火が通るだけの弱火で頼む!」
どうやら鳥の怪人の死体をポチに焼いてもらい、焼き鳥をしようとしているらしい。
災害レベル鬼だけあって頑丈で、通常の火では肉に熱が通らなかったのだ。
「ヴォウ!!」
分かっているのかいないのか、ポチは元気な返事をして焦熱弾を吐く。
しかし威力が高すぎたのか、大爆発と共に大部分が消し炭になった。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”!俺の焼き鳥ぃ!」
災害レベル竜の攻撃を鬼が耐えるのは無理だったらしい。
「・・・何やってんだ」
両手を地面につけて慟哭するハグキを見ながら、黒い精子は呆れたようにツッコんだ。
怪鳥の名前は『巨大黒烏(きょだいこくう)』と言って、牙には毒があるという設定があります。