ハグキ転生   作:増えるヤバイ奴

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おまたせしました。

書きたいことガンガン入れて行ったらめっちゃ長くなった。


13噛目 金属バットと人間怪人

「さっき俺にボコされたのに勝てる気でいるのか?」

 

俺に吹っ飛ばされた後もガロウにボロボロにされたんだろう金属バットは、立ってるのが不思議な程の怪我を負ってなお、俺に対して溢れんばかりの闘気をぶつけてきていた。

 

「当たり前だろ。負ける気で戦う馬鹿が何処にいんだよ」

 

バットを中段に構え答える金属バット。

普通ならやせ我慢だと思うところだが、こいつの場合は実際にレベル『竜』だって打倒するポテンシャルがあるから怖いもんだ。

 

っと、その前に。

 

「お前ら、さっさと人質取って帰れ。他のS級に応援に来られても面倒だ。金属バットの妹はほっとけ、お前らじゃ今の金属バットの攻撃一発でお陀仏だぞ」

 

フェニックス男とヘドロクラゲに帰るように言う。

蘇生の能力を持つフェニックス男と物理攻撃に高い耐性を持つヘドロクラゲが一撃で死ぬかどうかは知らないが、危険なことに違いはない。

妹を狙ったら瞬間に起きたんだし、また妹ちゃん襲った瞬間に馬鹿力出してくるだろう。

そんな意味を込めて言った。

まあさっさと帰ってほしいだけだが。

 

「そうだな・・・サイレスラーの奴も遊んでいるようだし、目的をサッサと果たすとするか。この場は任せたぞ」

 

「チッ、仕方ね〜な。ハグキ様~人間怪人の野郎にも痛い目見せてやってくれよ~」

 

「わかったわかった。早よ行け」

 

思っていたより素直だな。自分の命が危険だと怪人もやっぱり素直になるみたいだ。

 

「行かせるかよ・・・!」

 

「俺を無視できるとか思ってんじゃないだろうな?」

 

離れていく二匹に攻撃を加えようとした金属バットだったが、流石にそこまで許すわけにはいかない。

二匹と金属バットの間に立ちふさがり、金属バットを威圧する。

 

「チッ・・・じゃあ今度こそ、テメーを倒してやんよ・・・!ゼンコ!!ダッシュで逃げろ!こいつ相手じゃ暴力禁止なんて言ってられねぇ!」

 

「うん・・・!!絶対に生きて帰ってきてね!!私待ってるから!!」

 

「おうよ!!」

 

金属バットはゼンコを逃がした。当然の判断だな。

俺も追うようなことはしない。

 

妹の目の前では暴力禁止の家庭内ルールがあるからか、ゼンコはこちらを一瞥もせずに去っていく。

俺がヤバい相手だって分かってるんだろう。

金属バットが気兼ねなく本気を出せるようにか?こちらを見もせずに全力疾走だ。

良くできた妹だな。

 

「さーて、じゃあやろうか。掛かってこい!」

 

「はっ、待っててくれたってか?舐めんな!!」

 

第二ラウンドは、前と同じく金属バットのフルスイングから始まった。

 

魔愚那武(マグナム)ホームラン!」

 

お、知らん技だ。見た感じ横方向のフルスイングか?

 

だが、俺に通用するレベルではないだろ。どっしり構えて受ければ・・・!?

 

「はうっ!?」

 

凄まじい衝撃音と共に真横から俺の胴に直撃したその攻撃は、俺の重い体をわずか数センチだが持ち上げることに成功した。

ムカデ長老の突進を受け止めても真っ向から競り合える俺が、後退させられたと?

 

・・・マジか。

 

S級ヒーローを侮ってたかもな。

 

わずかだがダメージも感じた。

といっても、今まで0ダメージだったのが10ダメージ入るようになった程度の攻撃力ではあるが・・・。

だが、更に攻撃力が上がるなら油断できない。

 

これはこちらも、気合を入れて掛かる必要がありそうだ!

 

「シャオラァ!!ハッ、人間舐めんなよ。掛かってくんのはテメーだろ」

 

「・・・。」

 

金属バット、生意気な奴だ。

けど、その馬鹿力は誇っていいだろう。

 

タダではやられないってわけだな。S級ヒーローのS級たる由縁を感じる。

 

怪人協会に攻めてくるS級共とやり合う前の肩慣らしに、丁度いい相手だ。

 

その怪力、真正面から叩き潰してやる!

 

バットを片手に垂直に立てて、半身で俺に構える金属バット。

 

俺は咆哮を上げ、拳を握り金属バットに殴りかかった。

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

スマイルマンと拳闘魔人の前に現れたのは、S級3位『シルバーファング』。

 

武術家の頂点を目の前にして、拳闘魔人は興奮して言う。

 

「S級ヒーローだな!?知っているぞ・・・高名な武術家でもあるという・・・俺も格闘技を極めた末に満足できず、その力で暴れたいという衝動に駆られ怪人化したんだ!」

 

「・・・・・・。」

 

「今の俺は無敵だぁ!S級の首を持ち帰れば一目置かれる・・・!かかってこいやジジあがべッ!?」

 

沈黙するシルバーファングに殴りかかった拳闘魔人を襲ったのは、流れるような拳の乱打。

シルバーファングの動きはジャブを打つような軽いものであったが、その拳に秘められた威力は計り知れない。

一発一発が拳闘魔人の体をへしゃげさせ、あっという間に絶命へ至らせる。

 

「ガロウを探そう。奴がこうなっちまう前にな」

 

ガロウ捜索の任についていたバングは、協力者である兄ボンブに告げると足早に去っていく。

それを見ながら、スマイルマンは思う。

 

(一瞬で片づけた。強えー・・・)

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

弩Sはフブキに激昂する。

鞭の一撃を受け、洗脳されたかに思えたフブキだったが、強靭な意思で跳ね除け、弩Sに反撃までしてみせたのだ。

 

傷を負わされたことで、フブキを打ち殺そうと迫る弩Sだったが・・・そこに突如として振動音が響いた。

 

「なんだいこの振動・・・!?」

 

フブキは困惑する弩Sに告げる。

 

「私がダメージを負ったことを感知された。タツマキが来る!」

 

振動音と共に怪人たちの死体が降り注ぐ。

かろうじて息のある怪人が呻いた。

 

「そこ・・・にいるの・・・弩Sか・・・た・・・助けろ・・・とんでもない化け物がいた・・・向こうはもう全滅・・・」

 

尋常ではない様子に恐怖を覚える弩S。

 

「もうおうちに帰りなさいフブキ。全部私が片づけるから」

 

フブキに向かって声がかかる。

遥か上空からフブキと弩Sを睥睨するのはS級2位『戦慄のタツマキ』。

 

その脅威を認識した弩Sは、即座に恋奴隷達に命令する。

 

「命を捨ててタツマキを迎え撃ちな!!」

 

逃げる時間だけでも稼ぐ気だった。

 

それを見て力を高ぶらせたタツマキに、フブキが慌てて声を張り上げる。

 

「待ってお姉ちゃん!味方よ!洗脳されてるだけだから攻撃しないで!」

 

タツマキはため息をつき、超能力で全員を持ち上げると建物の壁にたたきつけめり込ませることで動きを封じた。

僅か数秒での決着だったが、弩Sはレベル『鬼』の怪人。タツマキの意識が逸れた間に逃げ出すことに成功していた。

 

「あーもう!逃げられちゃったじゃないの。私だけならこんなことにはならないのに!他にも怪人がいるみたいだし、私は行くわ。そいつらに後で伝えといてくれる?こういう災害時は、邪魔だからさっさと避難しといてって」

 

飛んでいくタツマキの物言いに反感を覚えたフブキだったが、何も言い返せずに立ち竦んだ。

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

デスガトリングは複数のA級ヒーローを集め、攻勢に出ようとしていた。

弱点の予測・共有。

常に冷静に判断するデスガトリングの強みだ。

 

しかし、そこに水を差す者が現れる。

 

「よせ無駄だ。半端な戦力で向かったところで、タコが暴れて余計に被害が拡大するだけだとわからないのか」

 

S級13位『閃光のフラッシュ』。

 

「半端な戦力だと?だったらお前一人でどうにかするというのか?」

 

デスガトリングは反発するが、閃光のフラッシュは一瞥もせずに言う。

 

「黙って見ていろ」

 

閃光のフラッシュは、突如として走り出し怪人との距離を詰める。

瞬間移動と見間違うような速度だった。

本来なら、死角がなく接近が許されなかった百々目蛸だが、フラッシュは反応できない速度で接近することで強引に距離を詰めたのだ。

 

蛸の体を駆け回り、複数の目を全て刺し潰していくフラッシュ。

わずか数秒の間に、数十メートルはあろうかという巨体の全てに穴が開き血が噴き出す。

 

蛸が痛みにのたうち回り、更に被害が拡大するかに思われたが・・・。

 

フラッシュが蛸を仕留めるために『絶技』を放とうとする。

 

が。

 

途端に、蛸が空中に持ち上げられる。

吸盤で地面に吸いついていた蛸を持ち上げたのは、怪人を探して移動してきた戦慄のタツマキだった。

そのまま硬いはずの体をアルミ缶のように押しつぶし、半径数メートルのボールにしてうち捨てる。

災害レベル『鬼』の怪人を一瞥もせずに、タツマキは惚けるヒーローを見て声を荒げた。

 

「人手が足りないって時に雁首揃えて何遊んでんの!?」

 

集まったA級達はもちろん蛸を倒そうとしたのだが、タツマキなら片手間で始末できる相手にだらだらと時間を掛けていたことは否定できず、また反論すると面倒くさそうだったので反論しなかった。

 

しかし、その物言いに耐えられないプライドの高いヒーローが一人。

 

「追い詰めた獲物を横取りしておいて何を言っている馬鹿め!」

 

フラッシュだ。

A級たちはぎょっとして、タツマキにフラッシュの声が聞こえないよう妨害する。誰だってS級同士の喧嘩に巻き込まれたくはないのだ。

 

「ったく、使えないんだから」

 

「ふんっ、余計なことをする奴ばかりだ」

 

そう言って去っていくS級二人。

 

その背中を見つめながら、デスガトリングは歯嚙みする。

 

(悔しいが俺たちでは退治できなかった・・・A級の立つ瀬がないな・・・クソ)

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

Y市のガンリキは、『イヌマン』を相手にしていた。

数々の毒を食らわせ、イヌマンが人間でないことを見抜くガンリキだったが、イヌマンは自爆しダメージを負う。

 

しかし、そこは『鬼』。

 

爆発のダメージでも死ぬことはなく、本性をむき出しにし、イヌマンの操縦者S級5位『童帝』を見つけ出した。

童帝はイヌマンを噛ませて毒を解析することで、既に噛まれたヒーロー達を救う血清を作ろうとしていたのだが、それが完了した油断を突かれ背後を取られてしまう。

 

(しまった・・・不利な態勢だぞ。せめてランドセルを背負っていれば・・・!!)

 

童帝のランドセルは独自の改造が施してある戦闘兵器。歳に見合わぬ類い稀なる頭脳と、努力に裏打ちされた高い身体能力、改造ランドセルを用いれば、『鬼』といえど童帝の相手ではなかったが・・・。

今回は、ランドセルを脇に置いて潜んでいたため、即座に戦闘に移れる状態ではなかったのだ。

 

そんな童帝の危機に駆け付けるはS級10位『豚神』。

人間とは思えぬほど大きなデブである。

爆発音を聞いて、建物の壁をぶち破って駆け付けたのだった。

 

「なんだ!?汗臭くて食えそうにない奴だ。すぐに死ね!」

 

ガンリキの頭に生える無数の蛇が豚神に襲い掛かり、噛みついて毒を注入する。

象でも即死するような強力な毒だった。

 

「ああっ猛毒が・・・!くそ、よくも!」

 

童帝はそれを見て、ランドセルを背負い闘志をみなぎらせるが・・・。

童帝の視界に映ったのは、猛毒に倒れる豚神ではなかった。

 

「んごっんごっんごっ」

 

豚神が、ガンリキを頭から丸呑みしていた。

 

「あれ、見間違いかな・・・?・・・た、食べているのかな?」

 

童帝は少しの間思考停止するが、毒の存在に思い至り慌てて豚神を止める。

だが、豚神は平然としていた。

 

「うん・・・食った感じ大丈夫。いける。・・・怪人はまだいるみたいだよ、僕はあっちの方角に行く」

 

怪人退治に歩き出した豚神に童帝は声をかける。

 

「ほ・・・本当に体調は大丈夫なんですか?」

 

「えっとね・・・問題ない。運動すればすぐ消化できるし。胃袋にはまだ空きがあるから心配無用」

 

「いや・・・満腹かどうかを聞いているんじゃなくて・・・まあいっか」

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

C市の現場に駆け付けたのは、S級ヒーロー『鬼サイボーグ』。

 

C市で開催される格闘技大会『スーパーファイト』にて、出場する師を応援していたが、大会を邪魔されないために怪人退治に乗り出したのだ。

 

『焼却砲』『ハイボルテージフィスト』『マシンガンブロー』『ロケットスタンプ』。

 

次々と怪人を退治していく『鬼サイボーグ』ことジェノスは、5体目の怪人に残りの怪人の居場所を吐かせるとその討伐に向かう。

 

カオハギが市民を襲っているところに間に合ったジェノスは、焼却砲を食らわせるが・・・カオハギは両手に持つ包丁を交差させ完璧に防御していた。

 

「鬼サイボーグか・・・ジェノス、お前の顔も剝ぎ取っていい?」

 

カオハギは一瞬でジェノスの懐に入ると、その包丁による素早い連撃を叩き込む。

 

(速い)

 

ジェノスは両腕でそれをなんとか受け止めるが、受け止めた衝撃で地面が砕けるほどの激しい猛攻に両腕の装甲がボロボロになる。

 

高電圧を纏わせた拳で反撃を試みるジェノスだったが、包丁の片方で的確に受け止められ、反対の包丁による一撃をなんとか躱し距離を取ることしかできなかった。

 

「どうよ俺の包丁捌き。隙なく確実にガードしつつ、相手の肉を削ぎ落していくっつー話よ」

 

ヒュンヒュンと包丁を回し、得意げに話すカオハギ。だが、その実力は本物だった。

ジェノスの装甲を容易く削り取るパワー、ジェノスの一歩先を行く反応速度とスピード。

実力でいえば、怪人協会に所属するレベル『鬼』の中でも上から数えた方が速いだろう。

 

「ならば焼き尽くすまでだ」

 

焼却砲の構えを取ったジェノスの隙を突き、ジェノスの脳天に包丁を振り下ろすカオハギ。

勝利を確信して高笑いを上げるが、それはジェノスの作戦だった。

 

「え?俺の包丁・・・」

 

ジェノスの頭部には生身の脳があり、そこは保護のため最も硬く作られている。

そこに包丁を振り下ろした結果、包丁の方が砕けることとなったのだ。

 

「隙ありだ、消えろ」

 

隙を見せたカオハギを、ジェノスが至近距離からの焼却砲で始末する。

 

 

最後にジェノスがやってきたのは、複数のヒーローが倒れる路地裏。

 

「S級ヒーローか・・・強いよ、私は」

 

姿を現したのはゴキブリの怪人、『覚醒ゴキブリ』。

 

出会い頭に焼却砲を放つジェノスだったが、覚醒ゴキブリはその砲口を複数ある腕を使って逸らすことで回避する。

そのまま肉弾戦に移行する二人だが、ゴキブリの手数が多いうえに、先の戦闘で破損しているジェノスは左腕を捥ぎ取られてしまう。

 

残った右手で焼却砲を放つが、それすら回避され更なる打撃を貰ってしまう。

 

何とか態勢を立て直すジェノスだったが、周囲を高速で動き回る覚醒ゴキブリを捉えることができず、舌打ちを溢すしかない。

 

スピード、手数、独自の緩急や歩行、建物の死角の利用・・・。

 

様々な要素がジェノスと覚醒ゴキブリの間に絶対的なスピード差を作り上げていた。

 

ジェノスはわずかに逡巡するが、仕方ない、と『とある兵装』の使用を決意する。

 

「これだけは使用すまいと思っていたが、仕方がない」

 

「ほう?何かまだ特別な武器を持っているのか。先に言っておくが、仮に光の速さで撃っても私には当たらない。殺意を読み取って体が勝手に避けるんだ。やけくそに撃ちまくったところで、それに当たる私でもない」

 

「俺はこんな兵器実装したくなかったんだが、どうしても相手が上回る分野の存在については受け入れなければ成長できない」

 

「(それほどまでに強力なのか・・・?それともこけおどしか・・・?)散弾銃か?追尾ミサイル?毒ガス・・・殺虫スプレーなんてことはないだろうな・・・」

 

ジェノスの兵器について探りをいれる覚醒ゴキブリだったが、ジェノスの油断を誘うため一芝居うつことにした。

 

「・・・・・・・・・・・よし!やめた!君には十分な損傷を与えたし、トドメは別の怪人に任せるとしよう。他にも強力な怪人が残っているはずだからね!さらばだ!」

 

そう言って覚醒ゴキブリは一度離れ、ジェノスの背後に回り込むと高速で接近しトドメを刺そうとした。

 

が、それこそジェノスの罠だった。

 

「なにィ!?脚が動かん!」

 

突如として脚を取られた覚醒ゴキブリ。その足元には、超強力な瞬間接着剤。

 

サイタマに付きまとうストーカーであるソニックと対峙し、スピードで負けかけた経験があるジェノスは、対ソニック用の兵装としてこれを用意していたのだった。

ジェノスとしては速度で負けていることを認めるようなもので腹立たしかったが、今回はそれが役に立った形となる。

 

「焼却」

 

爆炎が覚醒ゴキブリを包む。

 

が、覚醒ゴキブリは脚を切り捨てて逃げていた。ゴキブリの本領はしぶとさ。

だが、脚を失った覚醒ゴキブリは大幅に戦力をダウンさせてしまった。

ジェノスの勝利と言えるだろう。

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

各市で、S級ヒーローによって『鬼』以上の怪人たちも倒され始めた。

S級ヒーローという超戦力は、間違いなく人類の切り札なのだ。

 

そして、ここS市でも。

 

「オラァ!!」

 

「・・・!」

 

「もう一発!」

 

「・・・・・・!」

 

「まだまだァ!」

 

「この・・・!」

 

「気合ィ!」

 

「怒!羅!厳!シバき!」

 

「うごご・・・!」

 

おおよそ生物同士がぶつかり合っているとは思えない轟音が連続して響く。

 

ぶつかり合うのはヒーローと怪人である。

 

一方はS級ヒーロー金属バット。もう一方は怪人協会幹部ハグキ。

 

災害レベル『竜』という圧倒的脅威を前にしては、超人である金属バットですら不足であるかに思われた。

 

だが。

 

遭遇時にハグキに殴られ、ムカデ長老に撥ね飛ばされ、人間怪人に武術でボコボコにされた金属バットは、既に意識を失う瀬戸際にありながら妹を守るという意地で復活を果たした。

 

気合。

 

それは金属バットの在り方、戦闘スタイルを象徴する言葉である。

 

肉体がどんなに疲弊しようと、どんなに傷を負ったとしても。

 

その黄金の精神力により、何度でも立ち上がり、それどころかパワースピードタフネス、全てがより強くなる。

 

限界に達していたはずの金属バットは、その限界を打ち破り、『竜』の絶対強者を前に拮抗してみせていた。

 

ハグキが金属バットに殴りかかる。体の大きさに対して小さく感じる腕だが、その実態はどんなものも掴み離さず引きちぎる剛腕である。

実際数刻前の金属バットは、その剛力を前になすすべなく吹き飛ばされるしかなかった。

 

しかし今、ハグキの腕と金属バットのスイングが衝突すると・・・轟音と共に衝撃波が発生し、互いに弾かれる結果となった。

 

ハグキが反対の腕で殴ろうとしても、返すバットで相殺する。

 

衝突。衝突。衝突。衝突。愚直にそれを繰り返す。

 

最初は金属バットが押されていた。金属バットの方が大きく弾かれ、後手後手に回ってしまっていたはずだった。

だが徐々に、金属バットのスイングはより速く、より強くなっていった。

そして今、ハグキの殴りと金属バットのスイングは拮抗し、上回りつつあった。

 

防御に割いていた力を攻撃に回し、金属バットの攻めはさらに加速する。

攻撃がハグキの胴体に当たり始めたのだ。

 

最初は攻撃が当たっても微動だにしなかったハグキだが、今では直撃をもらうたびに半歩下がっている。

それでも、大したダメージではなかったが・・・。

自分の身体能力なら金属バットを押し切れると考えていたハグキは、自分が下がらされているという事実に歯噛みする。

 

(この俺が食い下がるとか・・・!!)

 

加速度的に勢いを増す攻撃に、ハグキは真っ向から身体能力で押し切ろうなんて考えを捨てた。

S級は超人だが、所詮人間であり本物の怪物であるハグキが本気で滅茶苦茶やったら死んでしまう。

そんな考えもあり、人間と戦うときは何かと制限をつけていたハグキだったが、それは間違いだった。

得意分野で勝負すれば、レベル『竜』すら上回り得る。故にS級なのだ。

 

馬鹿正直に金属バットの打撃を受け止めることを止めたハグキは、その図体からは想像もできぬスピードで動き、打撃を完璧に避けた。

 

(避けられ・・・!?ヤベェ!追撃が・・・!)

 

真上からの振り下ろしをスカされると判断した金属バットだったが、ただでさえ気合で体を力ませて動いている現状、もはや動作を途中で止めることなどできなかった。

 

金属バットの隙をついて、ハグキは噛みつきに移行する。

 

振り下ろす動作を終えていない金属バットの横から、ハグキが不可避の噛みつきを行う。

 

絶体絶命かに思えたその時。

 

金属バットの攻撃の軌道が突如として曲がり、これまでで一番の威力となってハグキの顔面を襲った。

 

ハグキの歯と金属バットの攻撃がぶつかり、甲高い音が鳴る。

 

「痛ってぇ!ガロウか!」

 

金属バットの攻撃の軌道を曲げたのは先ほど吹き飛ばされたガロウ。

 

「へっ、ざまーみろ」

 

吹き飛ばされた先で瓦礫に埋もれていたが、何とか戻ってきて、流水岩砕拳によってハグキに金属バットの攻撃をぶつけたのだった。

 

「チッ、面倒なのが戻ってきやがった」

 

ガロウを見て悪態をつく金属バットだったが、ガロウはハグキの方を見て言った。

 

「金属バット、まだ生きてやがるとはしぶとい奴だが・・・まずは怪人、テメーからやってやるよ。俺はやられっぱなしですごすご引き下がれるような性分じゃねーんだわ」

 

ガロウは言うや否や、ハグキに拳を叩き込む。しかし、先ほどと同じ様にハグキは微動だにしなかった。

 

(チッ・・・やっぱとんでもなく堅ぇ。これがレベル『竜』か・・・)

 

「どけ!」

 

ガロウの後ろから金属バットが攻撃を加える。

 

ハグキはそれをスレスレで躱したが・・・またしても、ガロウが攻撃を受け流すことで直撃する事になる。

 

「ぐぬぅ・・・なんか受け流した方が威力上がってない?お前ら」

 

ガロウや金属バットは与り知らぬことだが、二人の力の性質は似通っていた。

増幅と共鳴。

金属バットの攻撃は、ガロウが受け流すことで威力を増すのだ。

 

ハグキはそんな知識を思い出しながら、現時点では格下の二人にいい様にされている事実に苛立った。

 

ギリギリと歯ぎしりしながら苛立ちをあらわにし、大きく息を吸い込むと大咆哮を上げた。

 

「ブモォォォォォォォ!!」

 

吐き出された空気は衝撃波となって周囲を駆け巡り、近くにいたガロウと金属バットを吹き飛ばす。

 

「なんだ!?」

 

「うるせぇ!」

 

耳を押さえながら態勢を立て直した二人は、全身の筋肉を隆起させて震えるハグキを見た。

 

怪人協会幹部の実力、それをしかと味わうことになるのだ。

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

覚醒ゴキブリに勝利したジェノス。

逃げたゴキブリを探しても無駄だろうとジェノスは追跡を諦め、スタジアムに戻ろうとする。

 

そこで、もう一体の高速接近反応を感知した。

 

慌てて反応に向き直ろうとするジェノスだったが、バギョッ!という打撃音と共に、ジェノスの意識はそこで途切れた。

 

仮にもS級ヒーローであるジェノスを一撃で沈めたのは怪人協会幹部『ゴウケツ』。

 

その災害レベルは『竜』だ。

 

「フン、他愛ないな。S級ヒーローといってもこんなものか」

 

あっさりと決着したことにつまらなそうな表情を浮かべると、ゴウケツは本来の目的である武術大会の会場に向かっていった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

金属バットとガロウ。

 

この二人の相性がいいのは知っていたが、よもやここまでだとは思わなかった。

現段階のガロウでも、金属バットの攻撃力を上昇させ、自分の攻撃の威力をも増幅させることはできるらしい。

天才ゆえか、先ほど食らわせたショルダータックルもギリギリだが避けるようになってきた。

しかも食らっても復帰が早い。

 

『気合』を学習しているのか?

 

恐ろしい成長速度だ。

 

金属バットの方もかなり強い。

「鬼でも竜でも俺はいける」というセリフは強がりでもなんでもなく、ただの事実だったのだ。

ムラはあるが、その上限値はシルバーファングや超合金クロビカリといった肉体派トップにも並ぶものだろう。

 

金属バットの攻撃は読みやすい。

だが、俺が避けるとそれを読んでいたガロウが軌道を曲げ、攻撃を俺に直撃させる。

 

別に大したダメージではないが、一秒にも満たない硬直が生まれ、その間に金属バットが次の攻撃を仕掛け、俺がそれをなんとか避けるもガロウに再び当てられる。そんなループが発生していた。

俺からの攻撃はガロウが受け流しつつ、突進などの受け流しにくい攻撃は金属バットがそのパワーでなんとか止める。

 

連携しているつもりはないのだろうが、互いの隙を交互に埋める素晴らしい連携度だ。

 

だが、それでも足りない。

 

ポチやゴウケツと遊んでいるときの方がまだヒヤヒヤする。

 

想定よりも強くて面食らったが、それだけだ。この二人より強い敵など今までもいくらでもいたのだ。

 

俺はまず、ガロウに狙いをつける。

 

隙は金属バットの方があるが、現段階での耐久性に関してはガロウの方が下だ。

重い一撃を入れて戦闘不能にし、金属バットとのタイマンで金属バットを仕留める。

 

ガロウに噛みつきを仕掛けると見せかけて、飛び上がって下に『衝撃歯』を放つ。

 

なんとか避けたガロウだが、地面が粉々に破壊されたことで空中に投げだされた。

 

俺は空中に浮き上がった瓦礫を蹴り、無防備なガロウに向かって『歯茎突進』を放った。

本気ではないが、災害レベル『竜』の怪人ですら無傷では済まない威力だ。

 

「うおっ・・・!?ぐはッ!」

 

ガロウは血を吐きながら吹き飛ばされ、飛んで行った先で気絶した。

 

そのまま地上に突き刺さった俺は、跳ねるように軌道を変えて金属バットにも『歯茎突進』を仕掛ける。

 

「ガロウ!?テメェ!」

 

金属バットは俺を撃ち返そうとバットをフルスイングした。

 

激突。

 

「ふぎぎぎ・・・ぐうッ!!」

 

数秒間の押し合いの末、押し負けた金属バットはガロウと同じように撥ね飛ばされた。

死んではいないだろうが、両者ともしばらく動けないだろう。

 

俺の勝ちだ。

 

勝利の余韻に浸っていると、ムカデ長老が地面に潜っていくのが見えた。

どうやらあいつらは無事に誘拐に成功したようだな。

 

俺も帰るとしようか。

 

「・・・ま、待てよ・・・」

 

「まだ終わってねぇぞ・・・」

 

おいおい・・・まだ立ち上がるのか。

手加減しすぎたか?

いや、絶対人間に耐えれる威力じゃなかったと思うが。

 

両者ともフラフラだが、しっかり立っている。

まだ戦えるのかも知れないが・・・ここは打ち止めでいいだろう。

 

今から集会もあるのだ。

 

「俺はもう帰る。これを生き残れたら、また今度相手してやるよ」

 

俺はこれまでで一番大きく息を吸い込むと、全方位衝撃歯ともいうべき超咆哮を放った。

 

 

オオオオオオオオオオオオオッ!!!

 

 

到底生物の発する音とは思えぬ爆音が響き、周囲のビルが俺を中心に吹き飛ばされる。

S市全体を衝撃波が駆け巡り、俺の周囲100mは核爆弾が爆発したかのような更地になった。

 

さて、あの二人は生きてるかどうか・・・。

 

お、生命の反応があるな。流石耐久力に定評のある二人だ。

 

だが今度こそ動けないはず。

 

今のうちに帰るか。

 

俺は地面を掘ると、ムカデ長老が掘った通路に降りて怪人協会アジトへと向かった。

 

 

 

 

例の大広間に戻ると、もう集会は始まっていて覚醒ゴキブリがオロチに食われるところだった。

覚醒ゴキブリも別に弱いわけじゃないが、脚を失っていて弱体化しているし居ても居なくても変わらないだろうからどうでもいい。

 

「お、戻ってきたのかハグキ。ヒーローどもはどんなもんだ?」

 

黒い精子が俺に聞く。

 

「S級ヒーローは厄介だったな。戦いは一応成立する。まあ本気でやれば鏖殺できるけど」

 

「ふーん。まあ楽しめそうだな」

 

「ところで今どういう状況?」

 

「ギョロギョロのオロチを王にするって発言に反発してたら、オロチの奴が敗者がどうのこうの言いだしてな。負けて逃げ帰ってきた怪人が粛清されてるって感じだ」

 

「なるほど」

 

目線の先では弩Sがギョロギョロとオロチに問い詰められていた。

 

弩Sはタツマキから逃げてきたんだっけ。

それは流石に仕方ないと思うが。

 

ギョロギョロも苦言を呈するだけで見逃したな。

タツマキは幹部でも複数人がかりでやっとって相手だし、ギョロギョロの評価も高いからな。

 

「えーっと、文句のある奴は事が済んでからオロチ様に挑むといい。万が一オロチ様に勝てたら晴れて新ボスの誕生だ」

 

「・・・いいぜ」

 

黒い精子がギョロギョロのセリフに答える。

まあ俺もそのつもりだ。ヒーロー協会との戦闘後も怪人協会があったらの話だが。

 

「ところでギョロギョロ、ゴウケツの姿がないようだが」

 

オロチがゴウケツがいないことに気づいたようだ。

 

「おや?そういえばまだ戻りませんね・・・集会だというのに。様子を見に行くか・・・」

 

ギョロギョロが分身体を飛ばし様子を見に行ってしばらくして。

 

「まさかゴウケツが・・・誰にやられた!?・・・やはり一筋縄ではいかないようだな」

 

ギョロギョロの発言に怪人たちがざわめく。

 

「へぇ?」

 

「そうか・・・」

 

黒い精子は挑発的な笑みを浮かべる。

 

俺は知っていたが、いざこうやって聞くと来るものがあるな。

そこそこ仲いい奴だったし。

 

ま、怪人なのだ。好き勝手やる以上、誰に殺されても文句は言えないだろう。

 

俺はしんみりとした気持ちで集会を後にした。

 

 

 

そしてやってきたのは、ゴウケツがやられたC市だ。

 

サイタマに遭遇してしまったのが運の尽きだな。

 

凄まじい力で首を吹き飛ばされたであろうゴウケツの死体を見ながら、そんなことを思った。

とはいえ、原形があるのは流石にレベル『竜』というべきだな。並みの怪人なら粉々になっていただろうから。

 

そしてそのおかげで、俺がこうして死体を食えるってわけだ。

 

強い生命体の肉は強さに直結する。

得られる栄養もエネルギーも、普通の食い物とは段違いだ。

 

こうして腐るくらいなら、鍛えた体が俺に肉体の一部になる方がゴウケツも喜ぶだろう。

いや、実際どうかは知らないが。

 

ゴウケツの死体を咀嚼し飲み込む。

一回噛むごとにいい歯ごたえと、濃厚な風味が溢れだしてきて、俺の体が強くなるのを感じる。

 

全てを食い終わった後の満足感に心地よくなっていると、俺を探しに来たギョロギョロの分身体がやってきた。

 

「ここにいたのかハグキ。ゴウケツの死体を食ったのか?」

 

「ああ、悪いか?」

 

「いいや。お前の強さに繋がるなら有意義だろう。ところで、戦争前にお前に仕事を頼みたいんだが」

 

「別にいいけど・・・何があるんだ?」

 

「人間怪人と交戦したらしいな。そいつを怪人協会に引き入れたい。再びムカデ長老と共にガロウのもとへ向かい、アジトに連れてきてほしい」

 

「はいよー」

 

ん?ちょっと待てよ。ガロウの勧誘といったら、S市の森林公園でシルバーファングや鬼サイボーグといざこざやってるガロウをフェニックス男が攫うやつだよな。

ムカデ長老がジェノスたちを追い詰めるやつ。

 

その役割自体は全然いいが・・・。

 

 

 

あ、サイタマが来るじゃねーか!!

 

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