ハグキ転生   作:増えるヤバイ奴

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14噛目 食い逃げ犯

さーて、再びやってきたぞS市に。

 

先日ムカデ長老と俺によって破壊された中心部から少し離れた郊外にある森林公園の地下にて、俺はムカデ長老やその他の怪人の部下と共に待機している。

 

今地上ではガロウと下級ヒーローが戦ってる最中だ。

 

俺にやられた傷がどう影響するか分からなかったが、そのままここに休みに来て、ヒーローに気取られたことで戦闘をしている、という感じだな。

 

番犬マンとは戦っていないと思われる。

まあ、俺は直接見ていたわけじゃないから知らないが。

 

原作ではガロウと鬼サイボーグ、シルバーファング、ボンブの三名が戦うことになり、ガロウを勧誘しに来た怪人協会の援軍もフェニックス男とムカデ長老を除いて全滅していた。

S級クラスの実力者三名相手だと災害レベル『鬼』でも援軍として微妙なので、まあ当然だとは思う。

ガロウの勧誘が目的な以上、ムカデ長老をパッと投入するとガロウごと殺しかねんしな。

そんな中誘拐を達成したフェニックス男はやはり実力のある怪人である。

 

だが今回は俺がいる。

 

幹部ならばこの三名の前に姿を現しても負けない。少なくとも瞬殺はされないだろう。

いやまあ、ONE版でハグキを瞬殺したシルバーファングの前に姿を現すのは少々億劫だが、今の俺なら大丈夫だと思う。思いたい。

 

地下にてざわつく雑魚怪人どもを横目に、俺はこれからの算段を立てる。

 

原作では、ガロウを離脱させたフェニックス男がその場をムカデ長老に任せ、ムカデ長老は鬼サイボーグ達を追い詰める。

が、サイタマがやってきたことによってあえなくマジ殴りで消滅してしまったのだ。

 

サイタマが・・・というよりこの場にS級達が集まってきたのは、ガロウにやられたヒーローの一人が救援信号を出していたからだったはずだ。

サイタマはキングから情報を得てやってきていたはず。

 

つまり、ムカデ長老が姿を現さなくともサイタマ出現のタイムリミットは迫ってきているということ。

 

なら俺は、マジで速攻でガロウを攫って、その場に残ったS級の始末をムカデ長老に任せる。

これしかないだろう。

 

名づけて食い逃げ作戦。

 

さっきはメタルナイトを横取りしたことに怒っていたし、ムカデ長老に任せたなら喜んで相手してくれるはずだ。

 

そうこうしていると、鬼サイボーグがやってきていたようだ。

しばらく地響きが鳴り、一旦音が落ち着いたタイミングがあった。

 

すると、地中から地上を様子見していた怪人の一人が号令をかけた。

 

「鬼サイボーグの気がそれた!ヒーロー狩りを援護しろ!」

 

俺は一旦様子見だ。

 

今ついてきてる怪人たちは血気盛んで、手柄を立てようと息巻く奴らばかり。

その意思を尊重して、まずは任せてみようってわけだな。

まあ瞬殺されるんだけど。

 

数十秒待ってたら怪人たちの気配が消えた。

 

まあ持った方だろ。途中から強そうな人間二人の気配も追加されたしな。

 

俺も地面を突き破ってモコっと姿を現した。

 

「テメェは・・・!!」

 

俺の出現にガロウへの攻撃の手を緩めたシルバーファング。

それによって俺に気づいたガロウは、厄介な奴が出てきたとばかりに顔をゆがめた。

 

「ようガロウ、ボコボコじゃねーか。助けてやろうか?」

 

まあ絶対来てもらわなきゃなんだけど。

 

「余計な真似すんな・・・!」

 

俺に反発するガロウ。

ちょっと前まで戦った相手だからまあ当然っちゃ当然だが、あの時はガロウから突っかかってきたんだからな?

 

「貴様も怪人協会の手の者か!即刻排除する!」

 

ジェノスが俺に向かって焼却砲を放つが、俺はそれをすべて吸い込み無効化する。

ポチの焦熱弾と比べると雲泥の差だ。

カルピス感覚で飲めるぜ。

 

焼却砲が食われたことで驚きを隠せないジェノスに近づき、焼却砲を放つために突き出していた腕を食いちぎる。

バキャ!という音と共にジェノスの腕が破壊された。

 

「な・・・!?」

 

機械系は手加減しなくていいから楽でいいな。

 

そのまま腕でぶん殴り、遠くに吹っ飛ばしておく。

 

「ぐっ!?」

 

「ジェノス君!」

 

ムカデ長老戦で死んだら困るから壊れるほど強く殴ってはないが、少なくとも数十秒は戻ってこれまい。

 

ジェノスといったら二回目の遭遇だが、タベルと同一人物だとバレなくて何よりだ。

ジェノスに怪人としての気配を偽っていることをバレかけた後、もう一度変形を鍛えなおして、今度は自然な形で気配を取り繕えるようになったのだ。

ハグキ形態の時は怪人、タベル形態の時は人間の気配を出す、といった具合にな。

 

とまあ、そんな話はどうでもいいとして。

 

「じゃあ、いっただっきまーす」

 

超スピードでガロウに近づき、パクっと飲み込むとさっさと地面に潜ろうとする。

意識朦朧としていたガロウは反応できなかったようだな。

ガロウを入れるのは収納用胃袋だ。

いかに頑丈とはいえ、俺の超強化された消化液に触れたら今のガロウは無事ではすむまい。

 

「させんぞ!」

 

地面に潜ろうとする俺に、強力な打撃が叩き込まれる。

 

シルバーファングだ。

 

流石と言うべきか、金属バットの最大火力を彷彿とさせる威力だった。

だが、今の俺は早く帰りたくて本気モードだ。

 

この程度の衝撃じゃビクともせんぞ。

 

同時にボンブが旋風鉄斬拳を放ってくるが、俺の肌には傷一つついていない。

いや嘘、指を紙で切ったみたいな痛みがある。

 

つまり結構痛い。

 

まあ、両名の攻撃は鬱陶しいが、俺の潜る動作を妨げるほどではない。

強力な合体奥義を喰らう前に逃げ出すことが出来そうだ。

いつもなら相手したいところだが、サイタマが来るならそうも言ってられないしな。

残念だ。

 

さっさとムカデ長老にバトンタッチしよう。

そう思ったところで、腹の中から強烈な衝撃が来た。

 

「うぷっ」

 

ガロウ!寝てろや!俺の腹の中で暴れるんじゃない!

 

俺の収納用胃袋は、変形で無理やり作ってるものだから本当の胃袋と違って強度が低いのだ。

 

再生しまくることで破られはしないが、ガロウの拳でもダメージを負う。

っていうかガロウ、もう旋風鉄斬拳を使い出してるな?

腹の中がヒリヒリするぞ・・・。

 

俺が腹の痛みで硬直した隙を見逃さず、バングとボンブの合体奥義が炸裂する。

 

「「交牙竜殺拳!!」」

 

「・・・・・!!」

 

あでででで!

 

口を開いたらガロウが逃げるため、噛みつき攻撃はおろか声を出すことすら出来ない。

 

そんな状態で、連携奥義による外側からの圧力とガロウの大暴れによる内側からの圧力の二つに晒された俺は、今までの怪人生で一二を争う不快感を感じた。

 

バングとボンブの連撃は続く。

普段なら反撃出来るが、ガロウが胃の中で大暴れしてる現状、思うように体が動かねぇ。

 

クソ、これじゃ地面に潜れない。

 

せめてどっちかをどうにかしなければ・・・。

 

ムカデ長老が出てきてくれればいいんだが、声が出せないから状況を伝えられない。

 

ガロウを吐き出せばいいだけの話だが、逃げ足も速いやつだから追いかけっこになって撤退が遅れてサイタマ登場、なんてことになったら目も当てられない。

口を開けるリスクは取れない。

 

なら、バングとボンブをどうにかしなくちゃな。

 

どっちかを崩せば連携奥義は放てない。

そして、片方だけの攻撃では俺の行動を阻害できない。

 

狙うべきはボンブだな。

 

防御に秀でた流水岩砕拳よりもダメージを与えるハードルが低いだろう。

 

俺は一旦仕切り直すために空中に飛び上がると、バングとボンブが油断なく構える場所から10メートルほどの地点に降り立った。

 

距離はあるが、この超人達なら瞬きの間に詰められる距離だ。

 

「なんちゅう硬さじゃこの化け物。ガロウも腹の中で暴れとるようだが・・・さっさと決められなければ体力的にしんどいぞバング!」

 

「わかっとるわい。ガロウは返してもらうぞ!」

 

「・・・・・・」

 

数秒間の睨み合い。

 

互いに隙を窺うこの時間は、次に動き出すまでの数秒に満たない時間しかなかったにも関わらず何十倍にも長く感じた。

 

先に動いたのはシルバーファング。遅れてボンブが飛び出した。

それを見て俺も動き出す。

 

俺の狙いは当然ボンブ。

 

風のように迫るボンブに対し、歯茎突進で突っ込む。

俺のこれを防げるやつはそういない。

目の前の老人1人くらい、容易く戦闘不能に出来るだろう。

 

元々近かった俺とボンブが互いに猛スピードで接近している以上、接触までの時間は刹那だったはずである。

 

だが、バングは割り込んできた。ボンブの目の前に割り込み、俺に拳を向けて・・・

 

次の瞬間、俺の天地はひっくり返っていた。

 

「!?」

 

なんだ!?頭から地面に突っ込んでいる!?

 

衝撃音と共に、地面に巨大なクレーターができる。

 

まさか受け流されたのか。

 

歯茎突進の軌道を、そのまま直角に曲げて地面に俺を叩きつけたのだ、と俺の頭が理解した。

 

いや、ガロウの技とは比較にならないだろ!

なんだこれ、慣性ガン無視じゃねーか。

実際に体験してみるとわかる。

これは受け流すとかそういう次元じゃない。

 

まずい、追撃が来る!

 

回避は間に合わないと察し、全力で防御を固める。

 

「「轟 気 空 烈 拳」」

 

「・・・!!!!」

 

・・・確実にこれまでで一番のダメージだ。

 

打撃の威力はそこまででもないが、衝撃が全身に伝播して筋肉や骨が傷ついて行くのを感じる。

 

だが!

 

これくらいで死んでたら怪人協会編を生き残るなんて出来やしない!

 

息つく暇もない連撃の隙間を見定めて、右腕でバングを、左腕でボンブを殴りつけた。

 

バングには流されたが、ボンブにはクリーンヒット。

派手に吹っ飛んで森の中に消えていった。

 

「なぬッ!?」

 

「お兄ちゃん!・・・よくもやってくれおったな・・・!」

 

これで一対一。

 

だが、シルバーファングにこだわる理由もない。

受けたダメージも再生しつつある。

 

さっさと潜ることにする。

俺を殴りつけるバングを無視して、地面に穴を掘る。

口が使えないので速度はちょっと遅いが、それでも10秒あれば十分だ。

 

だが、あと少しで地面に潜れるというところで、真横から超威力の熱線が飛んできて俺の身体を後退させた。

 

これはジェノスか。

流石に時間をかけ過ぎたなクソ。

 

こっちは急いでるってのに・・・!

 

振り向くとそこには、胸部の装甲が大きな砲口と化したジェノス。

焼却砲に俺の身体を傷つけるほどの威力はないが、今の最大火力は俺の身体を押し除けるくらいの圧力があった。

 

俺の行動の阻害にはなるだろう。

 

吹っ飛ばしたボンブも戻ってきている。

距離を取るための軽い打撃だったとはいえ、なかなかタフな爺さんである。

 

口を開くことができれば、『衝撃波』や『咆哮』で片がつく。

 

が、身体能力で乗り切らねばならぬ現状、格闘戦で無類の強さを誇るバング、連携奥義で俺にダメージを与えられるボンブ、俺の行動を妨げるくらいの遠距離攻撃が出来るジェノスの三人を相手するのは骨が折れそうだ。

 

「今のを受けて倒れんとは・・・」

 

「じゃが、こいつも確実にダメージが蓄積していっておる。このまま攻め続けるぞ!」

 

「援護する!」

 

まじでこいつら・・・。どうしたもんかね。

サイタマが来るという焦りが増大していく。

 

するとそこへ、救いの一声があった。

 

「ムカデ長老ォーー!!ガロウはハグキが確保した!この場は任せたぞぉー!」

 

フェニックス男!

なんて痒いところに手が届くやつだ。

 

俺の真後ろから巨体が姿を現す。

その身体が森林公園の各地から岩盤を突き破って現れ、地面をめちゃくちゃにしていく。

 

「なんじゃ!?」

 

「信じられん・・・これが生物か!?」

 

「これが生体反応の正体・・・!」

 

地上から出てくるムカデ長老を尻目に、俺は地面に潜行する。

 

「待て・・・!!ガロウを返せ・・・!」

 

バングが吠えるが、その場にいたヒーローたちの救護で手一杯のようだ。

俺にそれを聞く義理もない。

 

ムカデ長老にあとは任せた、と目配りをしたが、俺に見てわかるような目はないから多分伝わってないな。

 

これからムカデ長老はサイタマに殺される。

思えば、ムカデ長老とは長い付き合いである。

初めてぶつかり合ったレベル『竜』の怪人で、一緒に怪人協会に加入した。

 

殺されると分かっているのに置いていくのは申し訳ないが・・・。

でも相手サイタマだから。俺がいてもどうしようもないから。

 

許してちょーよ!

 

ムカデ長老の最期の雄姿を目に焼き付けて、俺は森林公園を後にした。

 

 

未だに腹の中で暴れるガロウを逃げ場のない地下通路の中でペッと吐き出すと、壁に叩きつけて気絶させる。

 

「はー、辛かった。強い奴を胃袋に閉じ込めるのはなしだな」

 

原作でハグキが腹の中で暴れる豚神を吐き出していたが、消化液で溶けない相手なら一旦噛み砕いてから食べようという判断は正しいのだと実感した。

 

自分の体内で暴れられるのは、実際のダメージ以上の辛さがあるのだ。

 

 

そんなことを考えながら怪人協会に戻って来て、ギョロギョロの指示通りにガロウを寝かせる。

 

タベル形態になったら手先も器用だからといって、包帯まで巻かされるのはどうかと思う。

ギョロギョロのやつ、俺を便利に使いすぎだろ。

幹部の中で一番働いている自覚があるわ。

 

おまけにガロウが起きた時用の書き置きまで書かされた。

 

ガロウ君へ

怪人協会へようこそ。これを読んでいるということは一命をとりとめましたね。その命を救ったのは俺。怪人協会幹部ハグキです。その命の恩人の腹の中をバカスカぶん殴りやがったなこの野郎。次舐めた真似しやがったらマジでぶっ飛ばす。この部屋ならしばらくヒーローは来ないから、静かに待っとけ。

服を用意してあるので使ってください(^^♪

 

よし、こんなもんか。途中で私情が出たけど、怪人の手紙なんてこんなもんだろ。

字を書くのなんて久しぶり過ぎてちゃんと書けてるかわかんね。

 

 

しばらく自室にて休んでいると、侵入者が出たとかでちょっと騒がしくなった。

 

侵入者・・・?

 

誰かいたっけ、と思い捕まったというので集会場に向かってみると、そこにいたのはスーツを着た7人組。

 

ああ、ナリンキが送り込んだ私設部隊か。

別に興味ないが、彼らを捕まえたやつには興味がある。

 

機神G5。

 

この間の機神G4の後継機だな。

まだレベル『鬼』だが、アトミック侍相手に逃亡ができるくらいには優秀。

 

ま、情報は見せないようにしないとな。

怪人協会が終わっても、『組織』は健在。展開次第だが、俺も戦うことになるかもしれないし。

 

ナリンキ私設部隊の処遇決めをぼーっと眺めているとキリサキングと弩Sが出てきて、機神G5の発言で最終的に弩Sが協調して駒として使うことになった。

 

まあ正直どうでもいいかな。こいつらいたところでS級に対して何ができるのって話だし。

 

でも、彼らが着ているパワードスーツには読者としての興味がある。

ハンマーヘッドが盗んだというパワードスーツは『組織』から盗んだものだったわけで、それに似ているよな。

ネオヒーローズのスーツも『組織』製だし、このパワードスーツも『組織』製だったりすんのかな。

だとしたら機神G5が駒として使うように提言したのも納得ができる。

『組織』的には情報収集がしたいだろうからな。

パワードスーツを着た人間がどれほど強くなるのかとか、怪人たちの情報に対峙するヒーローの情報とか。

 

まあ、その辺はこれからのお楽しみだ。

 

その後ガロウがやってきて、オロチがヒーローの首を持ってくることを条件にガロウを怪人として認め、幹部として怪人協会への加入を許すという結果になって集会は終わった。

 

自室に戻る途中、黒い精子が俺に話しかけてくる。

 

「ハグキ、どう思うよ?ガロウをいきなり幹部だなんて、好待遇すぎねーか?アイツは俺たちと肩を並べられるほど強いのかよ?」

 

「今は別にそこまで強くないけど・・・けど、成長性は異常だな。短期間で二回戦ったけど、二回目は格段に強くなってたよ。このまま成長を続けたなら災害レベル『竜』にも届き得る。そういう成長性込みの評価じゃね」

 

「そんなもんか。まあ、ヒーローどもに対する戦力になるってんなら文句はねーけどよ。けどアイツ、怪人じゃなくて人間寄りじゃないか?」

 

「あー・・・まあそれはそう。ヒーロー狩りめっちゃしてるのに死人が全然出てないしな。怪人同士で背中を預けるなんてないけど、ガロウを信頼するのは間違ってるだろうよ」

 

ガロウは結局、ヒーローになりたいという思いをこじらせた人間なのだ。

そこに気づくとはさすが黒い精子。いい観察眼だ。

 

黒い精子に別れを告げて、自室に戻る。

 

そこにいたのはポチと、その世話をするマナコ。

最近、俺が出回ることが多くなったので、餌やりを任せられるやつを探していたのだ。

 

マナコを選んだのは、目玉の怪人と口の怪人ってことで絶妙にシンパシー感じたのと、多分死なないからだな。

 

ポチは冷静な時は力加減とかも一応できるし、俺がいないときはアジトの見回りをしていることが多いので別にそこまで危なくもないだろう。

 

俺も食べ散らかすことがあるので、その掃除とかもお願いしている。

 

「あっ、お疲れ様です・・・」

 

「ヴォウ!」

 

「ようお疲れ。ポチもただいまー」

 

ポチと遊んで暇をつぶそうかと思ったが、ポチは餌を食べて満腹になったのか寝始めた。

 

じゃあ俺も暇だな・・・となったところで、ギョロギョロからテレパシーが来た。

 

またか・・・。

 

『何?』

 

最近テレパシーでの応答ができるようになってきた。

事あるごとにギョロギョロがテレパシー使ってくるから、いちいちあの目玉だらけの部屋に行くのも面倒だと思っていると応答だけはできるようになってた。

何故かはわからん。

俺は食べたものの能力を使えるようになることがあるから、グロリバースとかがそういう能力を持ってたのかもしれないな。

真相は俺の胃袋の中だが。

 

『ガロウが外に出た。キリサキングと蟲神に尾行させているから、どうなるかを観察してほしい』

 

『まあ暇だからいいけどさ。お前俺をいいように使いすぎだぞ』

 

釘は刺しておく。好き勝手使える駒のような扱いは不快だ。

 

『ああ、済まないな。今回限りとするよ』

 

よし、まあ仕方ないし暇だから行ってやるか。

 

「マナコ、服よこせ服」

 

「あ、はい」

 

最近気づいたのだが、服は洗わないと臭くなる。

収納用胃袋は密閉された空間なので、一度着た服をそのまま入れておくと臭くなるのだ。

怪人協会はもともとジメッとしていて臭いから全然気づかなかった。

 

そこで役に立つのが、マナコの紫外線殺菌である。

マナコはいろいろな波長の光を目から出せるのだが、その一つに紫外線があるのだ。

なので、一度着た服はマナコに預けて、殺菌してから着るようにしている。

 

マナコにはタベル形態を見られることになるが、もう何人かにバレてるから別にいいや、という感じ。

 

ギュギュっと体を縮めると、マナコから受け取った服とカツラを装着して部屋を出た。

 

「いってらっしゃーい」

 

 

アジトを出るとガロウを尾行する。

 

キリサキングと蟲神にはタベルの姿を見せてないので、見られても俺がハグキとは気づかないだろう。

 

怪人に迎合しようとか言ってる人間たちを尻目に、レストランに入ったガロウを追って俺もレストランに入る。

 

せっかくだし、なんか食べよう。

 

すると、ガロウからちょっと離れた場所にサイタマがいた。

 

「アレ?お前キングのファンじゃん。どうしたんだこんなところで」

 

そういやいたなサイタマ。

まあ、タベル形態で遭遇する分には構わない。

気づかれちゃったので、仕方なくサイタマの対面に座る。

 

「どうしたって、そりゃご飯を食べに来たんだよ」

 

「そりゃそうか」

 

とりあえず注文するか。

 

「すいませーん。このページの肉料理を全種類10人前ずつお願いします」

 

「え、食べきれるんですか!?」

 

「いけますいけます」

 

驚いた顔をして厨房に入っていった店員さんを見ながら、サイタマが口を開く。

 

「お前めっちゃ食うな。金持ってんのか?俺は子供だからって奢らねーぞ」

 

「金あるから平気平気」

 

最近ビッグアイアンとかいう賞金首をそいつの組織ごと潰したので、金はたんまりある。

その辺歩いてたら突っかかってきたので正当防衛で反撃したのだ。

そいつらは当然、全員俺の胃の中だ。

ビッグアイアンは首だけ残して警察組織に渡したら、ちゃんと金も貰えた。

賞金首ってホントに首でいいんだなって変に感心した思い出があるよ。

そいつらがため込んでいた金も盗んだので、貯金はばっちりなのだ。

 

しばらくしてやってきた肉料理をガツガツ食い始める。

店員さんは大変そうだった。ガロウもたくさん頼んでいるようだしなぁ。

 

久しぶりに食べた肉料理はめっちゃ美味しかった。

やっぱ味付けって大事だな。

 

多分常人なら100人前くらいはありそうな量を10分ほどで平らげ、鉄板を積み上げて息をつく。

 

「ごちそうさマグロ。ん?どうしたサイタマ」

 

こちらを見ながら挙動不審になっているサイタマがいた。

 

「いや、あのさ・・・財布、どっかに落としちゃったみたいで・・・あとで返すから、会計頼んでいい・・・?」

 

ああ、そういえばそんなんだっけ。

 

「ああ、いいよ」

 

俺はそういって、口に手を突っ込んで胃袋に収納した札束を取ろうとする。

 

「え、何してんのお前・・・?財布口の中に入れてんのか?」

 

サイタマがぎょっとして俺を見る。確かに人前で見せるもんじゃないな。レストランに入る前に出しときゃよかったぜ。

 

「うっぷ・・・よいしょ」

 

俺がなんとか掴んで出したお金は。

 

細切れの血だらけでべっちゃべちゃだった。

 

あっ、ガロウが暴れたから・・・。

 

「そりゃそんなとこ入れてたらそうなるだろ・・・」

 

サイタマが呆れたように告げる。

いや違うんだって。

ホントは大丈夫なんだけど、ちょっとこれは諸事情で・・・。

 

「ごめん、じゃあお金払えない」

 

「へ?じゃあどうすんの?」

 

俺とサイタマは顔を見合わせる。

俺だけなら食い逃げしてもいいが、サイタマの前でそれやるのはちょっとな・・・。

 

するとそこへ、女の声がかかってきた。

 

「サイタマ!探したわよ」

 

視線を向けると、そこには黒いドレスに身を包んだ女性、B級一位ヒーロー『地獄のフブキ』がいた。

 

「え?なんでここにいんのお前?」

 

「また話の途中で出て行っちゃうんだから。・・・この子は誰?ヒーローの話は部外者には聞かせてあげられないんだけど・・・」

 

「こいつはキングのファンだよ」

 

そういえば、俺サイタマに名乗ってすらなかったな・・・。

 

「名前はキングのファンじゃない。タベル、っていうんだ」

 

ハグキの名前は名乗れないからな。

 

「そうなのか。変な名前だな。よろしくなタベル」

 

「よろしく。ハゲマントに変な名前なんて言われたくないんだが」

 

「おまっ、なんで知ってんだよ!」

 

「ヒーロー協会の名簿に載ってたよ」

 

「ちょっと!私を除け者にしないでくれるかしら?・・・ちなみにタベルちゃん、私のことは当然知ってるわよね?」

 

俺とサイタマの会話が盛り上がっていると、フブキが割り込んできた。

 

「知ってるぞ。地獄のフブキだろ。B級一位の」

 

フブキに関してはどっちかていうと怪人協会の重要人物リストの情報が大きいかな。

戦慄のタツマキの肉親なので、地雷という意味でも、人質にするうえで有効という意味でも重要な存在だ。

戦力的には大したことないけどさ。

 

「ふふ、どこかの誰かさんと違ってこの子は博識みたいね?」

 

「なんだよ・・・すみません、山盛りポテト一つ追加で・・・」

 

サイタマをからかうフブキに突っ込みつつ、サイタマが注文を追加する。

 

「全く、あなたのことだからヒーロー狩りのことも詳しく調べてないんでしょ?ここではできないけど、追跡に必要な情報提供は私がしてあげるから、あなたは私の指示に従って動きなさい。協力してあげるんだから、成功のポイントの振り分けは7割もらうけど・・・って聞いてんの?」

 

ポテトが届き、それをボケーっとしていたサイタマがフブキに差し出す。

 

「くれるの?ありがと」

 

ヒョイっとそれを口にしたフブキを見て、サイタマがニヤニヤしだした。

会計をフブキに任せようって算段か。それにしてはちょっと俺食いすぎたな・・・。

 

「食い逃げだーーーーーーッ!!」

 

「まだやってねーーーーーッ!!」

 

唐突に店内に響いた声にサイタマがビクッとなって叫ぶ。

ガロウが食い逃げして店を出て行ったようだ。

 

しばらく惚けたサイタマは、状況を把握すると俺を脇に抱えて走り出した。

 

「食い逃げとは何て悪い奴だ俺達で追いかけよう。フブキ!お前ポテト食ったよな!会計は任せたぞ!」

 

「ちょっと・・・サイタマ!?」

 

「ごめんな会計よろしく~」

 

会計10万円とかなりそうだったけど、フブキ大丈夫かな。

・・・まあB級一位は稼げそうだしいいか。

 

レストランを後にした俺たち。

サイタマは途中で降ろしてくれた。

 

「んじゃ、俺は食い逃げ犯に一応注意してくるわ・・・なんとかなってよかったな。これからは財布ちゃんとしたとこに仕舞っとけよ」

 

「どうも・・・ありがとね」

 

サイタマが追ってる食い逃げ犯は俺が観察すべき人間怪人でもあるんだが・・・。

 

まあ、ここは一旦離れるか。

 

「じゃあ、また今度」

 

俺は走り出したサイタマの後をこっそりついていくと、見つからなさそうな物陰から公園での一部始終を観察した。

 

 

ガロウに注意だけして帰ろうとするサイタマにガロウが突っかかり、ワンパンされて撃沈。

 

ブサイクな子供に介抱されて、数分後に目を覚まして・・・そこでキリサキングと蟲神が登場した。

 

ブサイクな子供・・・タレオに喝を入れて逃がしたガロウは二匹と戦闘開始。

 

攻撃を食らいながらも、徐々に善戦していくガロウ。

武闘派とはいえ所詮は『鬼』。S級相手にも善戦できるガロウにとって相手は容易だっただろう。

 

だが、俺の視界の端でいつの間にかやってきていたヘドロクラゲがタレオを捕まえていたことで戦況が一変。

 

タレオを触手で縛り上げたヘドロクラゲに気を取られ、キリサキングと蟲神から決定打をもらってしまい・・・キリサキングの狂ったような斬撃にガロウは倒れ伏す。

蟲神にキリサキングが止められた時には、ガロウは既にどこからどう見ても死んでいるような有様だった。

 

 

去っていった一同を確認してから俺はガロウに近づくと、息があるかを確認する。

俺が何回かダメージを与えてるから、もしもそれで死んでたらどうしようって感じだな。

 

「おーい生きてるー?」

 

ぺしぺしとガロウの頬を叩くと、ぴくっと瞼に反応があった。

 

・・・良かった、息はあるようだ。

 

人間の耐久力じゃないが、まあそこはガロウだし。

 

ほっといたら勝手に起き上がって復讐しに来るだろう。

 

 

俺は安心して場を後にした。

 

 

帰り道の途中、日も傾いて暗くなったZ市のゴーストタウンを通っているとき。

 

「あれ、タベルじゃねーか」

 

またサイタマに出くわした。

サイタマも帰ってくる途中だったようだ。

 

足元には大量の怪人の死骸。

 

ちょっと冷や汗でるな。今の俺は擬態してるからいいとして、怪人形態でサイタマに出会ったら俺といえど転がってる怪人たちのように死体に早変わりだ。

 

「サイタマ。一日に二度も会うなんて奇遇だなー」

 

「ほんとにな。ってかお前、この辺に住んでんのか?」

 

「うんまあそうだね」

 

住んでるというか潜んでるというか。

 

「へー、こんなゴーストタウンにもまだ人がいたんだな。知らなかった」

 

いや、あんたとジェノス以外は怪人しかいませんけど。

 

「あ、これから鍋しようと思ってるんだけど、お前来るか?」

 

「鍋・・・いや、いいや。今日は帰るとするよ」

 

鍋は食いたいが、多分サイタマの家にさっき戦ったジェノスやバングもいるだろう。

ついさっきまで殺し合った奴らと鍋囲むってのはなぁ。

 

誰かと飯食うのは悪くないんだが、それも相手によるのだ。

ちょっと前に豚神と飯食ったときは悪くなかったしな。

 

「そうか。怪人多いから気を付けて帰れよ」

 

「ああ、またな」

 

次に会うのはいつになるか。

 

できれば怪人協会が壊滅した後でお願いします。

 

 

俺はアジトに戻ると、ギョロギョロにガロウ生存の報告をした後マナコに服を預けて自室に戻ってきた。

 

ポチはどっか行ってるみたいでいなかったが、まあポチなら大丈夫だろう。

 

ギョロギョロによるとヒーローたちが突入するまで一日もないとのこと。

確か正午くらいに突入してたはずだから、今が夜だと考えると本当にあと12時間あるかないかってとこだろうな。

 

ハグキの死亡イベントも明日。なんとか乗り切らなきゃな。

 

英気を養うために寝るか。

俺は寝転がると、久しぶりに意識を手放した。

 

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