超合金クロビカリとシルバーファングの連携。
これはマジでヤバい。
どちらも物理における攻防の頂点に立つヒーローだが、ベクトルが違う。
方向性の違う最高峰が互いを補い合うことで、最高以上の成果を叩き出している。
俺の攻撃は変幻自在で、なおかつ一撃が必殺になり得る。
消化液に噛みつき、普通のパンチですら、シルバーファングは、最大限の警戒をしながら俺の攻撃に対応しなければならなかった。
だが、クロビカリはそうではない。
一度や二度の攻撃で張り倒せる相手ではなく、倒すには攻撃を重ねないといけない。
しかしシルバーファングは、クロビカリに攻撃が集中しないよう一部の攻撃を受け流していた。
全てを受け流さなくても、クロビカリが耐えられないような攻撃や、最悪連続で食らうことことになる攻撃だけを狙って受け流していればいいのだ。
シルバーファングが主体となって俺の相手をしていた時より、随分余裕そうにしている。
その上で、両名共に確かな攻撃力を兼ね揃えている。
威力のクロビカリに、命中力のシルバーファング。
単体では対応可能なクロビカリの攻撃は、シルバーファングの関節や弱点を狙った的確な姿勢崩しによって対応が難しくなる。
それどころか完璧な軌道修正をして、俺の歯ではない肉の部分に確実に当ててくる。
攻撃の一方通行。
単純な硬度と技による受け流しの二重の防御力によって、俺だけが攻撃を喰らい続けるジリ貧状態に陥っていた。
だが、この二人だけならどうとでもなった。
遠距離攻撃を持たぬ二人である以上、消化液に衝撃歯など、多種多様な遠距離攻撃を持つ俺なら引き撃ちで一方的な展開に出来ただろう。
次に厄介なのがこの二人。
ボンブと鬼サイボーグだ。
衝撃歯と消化液を相殺し散らすボンブの旋風鉄斬拳は、長年の研鑽を感じさせる先読みで俺の攻撃を他のメンバーに届かせない。
攻撃自体は俺の体に傷をつけるようなものでは無いが、中距離を維持され俺の攻撃が届かない以上厄介なことに変わりはない。
鬼サイボーグ───ジェノスは、付かず離れずを維持しつつ焼却砲を次々と放ってくる。
小さい焼却砲では脅威にならないが、俺の進路を的確に妨害してくる。
縦横無尽に空を駆ける機動力も厄介だ。
それに、先ほどの『真螺旋焼却砲』にも注意が必要だ。
俺の身体の耐久性は、歯>口周りの筋肉>胃壁>その他の順で高いのだが、『真螺旋焼却砲』は胃壁を焼き破った。
まともに身体に受けた場合、戦闘に支障が出るレベルの負傷をする可能性がある。
それにサポートに徹する二人も、鬱陶しいが簡単に排除できる状態ではなかった。
豚神はフブキの前に立ち、戦闘の余波からフブキを庇っている。
耐久力に関しては並外れている豚神だ。
攻撃がクリーンヒットしたならともかく、片手間で倒せるような相手では無い。
おまけに体力をフブキに分けており、そのせいでフブキの超能力が真価を発揮してしまっている。
地獄のフブキ。
コイツは多芸だ。
最も厄介と言っても過言では無いかもしれない。
コイツは肉弾戦で戦う四人に身体能力の強化を掛けつつ、負傷した者がいた場合即座に治癒する。
身体能力の強化がなければ俺がダメージを受けることなどそうそう無いだろうし、治癒が無ければ豚神はもう倒れていただろう。
消化液を無碍にする念動力も厄介だ。
クロビカリへの有効打を的確に排除していくその働きは、この戦闘におけるMVPと言っても問題ないというレベルで有能だ。
一歩引いた場所から的確な指示を出せるのも強い。
戦闘速度についていけてる訳じゃないようだが、高速で移動する俺の体から吐き出された消化液だけなら的確に捌けるようだ。
まあ消化液に速度はないので、妥当と言えば妥当だ。
咆哮系の技や歯ミサイル、吸い込みはこの状況を打開出来る可能性があるが、放つのに必要なタメをさせてくれないのだ。
今もそうだ。
連携を崩すために俺が壁を殴って数階分の天井と床を崩落させる。
「超合金バタフライ」
クロビカリが瓦礫を掻き分けながらこちらに突進してくることで、失われかけた視界が再び明瞭になる。
突進してくるクロビカリに『ゲロシャワー』を放つも、割り込んだシルバーファングが腕を回転させた風圧によって吹き飛ばす。
飛び散ったとしても地面に撒き散らされ、地に足をつく者達の行動を阻害するはずの消化液は、フブキの超能力によって戦場とは関係のない場所に運ばれていった。
ならばクロビカリの突進に対処しなければならないが、シルバーファングの足関節への攻撃により膝カックンされたみたいな状態になり、後退も踏ん張ることもままならない。
全身にチカチカと焼却砲を受け、目も眩んでいる状態で衝撃歯を放つが、クロビカリはその程度じゃ揺らがない。
真っ正面からクロビカリのタックルをもらってしまう。
「ぐほぉッ!」
吹き飛びそうになるが、ジェノスの背後からの焼却砲によって強制的に踏みとどまらされ、タックルの衝撃を余すことなく受けることになる。
鈍痛。
こうしたダメージが蓄積していくことで、徐々に追い詰められつつあるのだ。
なんとか挟まれている状況を脱しようとするも、数歩移動したところで足場がバラバラになり体勢を崩してしまう。
ボンブの仕業だ。
こういう妨害も厄介だった。
苦し紛れに移動しながら撒き散らす衝撃歯と消化液は、縦横無尽に駆け回るジェノスとボンブに対処され、フブキが遠隔で味方が攻撃しやすいように場を整える。
フブキのこうしたサポートが連携をより高度にしているのはわかってる。
だが、フブキを攻撃しようとすると豚神が庇う。
ボンブと鬼サイボーグの妨害、そして意外と素早い豚神を抜いて攻撃を届かせるのは不可能だ。
まずい、ジリ貧過ぎるな。
再生するとは言え、確実に体力は減らされていく。ダメージも蓄積される。
体力勝負には自信があるが、フブキが豚神の体力を分け与えられる都合、主体となって戦闘している四人の体力切れは期待しない方がいいだろう。
というかどう考えても俺の消耗の方が多い。
なんとか猛攻を捌いていると、突如として足元の床が欠落した。
また旋風鉄斬拳か。
円状にくり抜かれた床に俺の体がはまってしまうが、こんなもん何の足止めにも───!?
突如として背筋が凍った。
これは・・・マズイ・・・!
はまった瓦礫を破壊し宙に投げ出された俺に、クロビカリが組み付く。
「この・・・!離せェッ!」
消化液を胴にかけてなお離さないだと!?
ならば!
俺は口を開け『歯ミサイル』を使用する。
一刻も早くこの場から離れなければならない。
数秒のタメの後、十本ほどの歯をクロビカリに向けて発射する。
全て放つと他への対処が疎かになるので、十本程度だが・・・。
それでも、噛みつきに準ずる威力を発揮するはずだ。
数本は角度が悪く、クロビカリの皮膚に弾かれアジトを貫通しながら吹き飛んでいった。
だが、四本の歯がクロビカリの筋肉に刺さり、クロビカリは着弾の衝撃で吹き飛ばされる。
「うぐぅッ!」
クロビカリにも見てわかるような明瞭なダメージが入った!
よし・・・すぐにこの場を脱して───!?
クロビカリが立っていた場所のすぐ後ろに、バングとボンブが並んで立っていた。
しかもこの構えは───!
真後ろからも悪寒がする。
視線を向けると、豚神に支えられたジェノスが胸の装甲を開き中から巨大な砲門を覗かせていた。
対処を優先するべきは───ジェノスの方!
体をジェノスの方に向け、達人兄弟に無防備な背中を晒す。
所々歯抜けだが口はしっかりと閉じ、全身の筋肉を固めて防御姿勢を取る!
「これで終わりじゃ化け物め」
「俺たちの勝ちだ」
『轟 気 空 烈 拳』
『真螺旋焼却砲』
超威力の二つの技が、俺を挟み込むように炸裂した。
「オオオオォォオオオォォオッ!!!」
痛い!熱い!ヤバい!
背中からの衝撃によって骨にヒビが入り、肉は裂ける。
正面からの熱線によって口周りは焼け焦げ、歯の隙間から侵入した熱線が口内と内臓を焼く。
苦痛を伴う、永遠にも等しい時間。
実際には10秒もなかっただろうが、俺にはそれくらい長く感じた。
だが───耐え切った!
連撃が途切れ、熱線も尽きた時、俺はなんとか立っていた。
フラフラだが、アイツらも技の反動があるはず、ここからなんとか反撃をして───
突如として俺の立っていた場所が影になる。
上を見上げると、俺から食らったダメージそのままに、両手を組んで隕石のように落ちてくるクロビカリがいた。
歯が身体に突き立ったまま・・・胴も表皮は溶かされているってのに・・・!
『超合金メテオ』
腕が俺の脳天に振り下ろされる。
「───ッ!!!!」
轟音。
地面に叩きつけられ、衝撃が伝播し十数階分の層が丸ごと崩壊した。
ヤバい・・・これ・・・意識が・・・。
「こいつまだ立つか!?」
「だが死にかけじゃ!畳み掛けるぞ!」
まずい死ぬ・・・・・・。
───いや。
俺の悪運も尽きてはいなかったようだ。
近づいてくる感じ慣れた気配。
「お前達!何かが来るぞッ!」
ジェノスの警告も束の間、巨大な火球が飛んできて周囲が爆炎に包まれる。
「なんじゃコイツは!?」
「まだこんな化け物が・・・!?」
なんとか防御したヒーロー達の前に現れたのは、黒くてデカい怪物。
「ヴォオォォオオオォォオォォォッ!!」
幹部が一匹、『育ち過ぎたポチ』だ。
いやぁーナイスタイミング過ぎるぞポチ!
マジで助かった。
あのまま攻撃受け続けてたら本当に死んでただろう。
現に今も動けるほど回復してないしな。
再生は始まっているが、全身ボロボロ過ぎて時間がかかっている。
だが、ヒーロー達はポチが無数に撒き散らす焦熱弾の対処で手一杯になっていて、俺には攻撃が届かない。
そのおかげで俺は、再生に専念できるってわけだ。
やはりポチの面制圧力は流石だな。
ホームレス帝とどっちが上かは断言できないが、強くて硬くて素早い奴が息をするように面を攻撃できるのは強過ぎる。
息をするようにとは言ったが、口を開けると複数の焦熱弾が飛び出してくる以上息するよりも手軽なのかもしれないな。
にしても、この荒ぶり様は初めて見るな。
もしかして俺が傷つけられたことを怒っているのか?
可愛い奴だ。
よく見ると血を流しているし、ポチも万全ではなさそうだ。
サイタマに殴られた後な以上当然だが。
どちらにせよ、俺もさっさと戦線復帰した方がいいってことだな。
「よーし完全回復。残念だったな、お前ら」
消耗した体力は戻らないが、傷は治ったし体力自体はまだまだ残っている。
「そんな・・・!コイツだけで手一杯だったのに、同じクラス二体同時なんて無理よ!」
フブキの言葉に、ちょうど『交牙竜殺拳』をポチにぶつけるもダメージを与えられなかったバングとボンブが同調する。
「このワンコも歯の化け物と同じくらいタフじゃぞ!」
「どうするバング!二体揃った状況では・・・こりゃ倒せんぞ・・・!」
そうだろうな。コイツらの連携なら大抵の幹部は倒せるだろうが、二体同時となると話は違ってくる。
特に俺とポチは───連携も出来るしな。
俺が大咆哮の構えを取ると、ポチが察して飛び上がる。
「オオオオオオォォォ!!」
俺の咆哮による衝撃波で、ポチのいる上空以外が次々と破壊されていく。
俺の放てる面攻撃の中でも上位の技だが───ヒーロー達も流石だ。
即座にクロビカリの後ろに隠れ、何とか無事の様だ。
フブキがクロビカリの鼓膜を保護するという芸当までやってみせた。
なかなかやるな。
それなら、吸い込みでどうだ?
突如として発生した絶大な引力により、ヒーロー達の身体が俺に向かって引き寄せられる。
「きゃッ!?」
フブキが悲鳴を上げる。
「ぐぅうううッ!」
クロビカリが踏ん張るが、地面ごと喰らい尽くすような技だ。踏ん張れるはずがない。
フブキをジェノスが担ぎ、なんとかバングとボンブ、ジェノスとフブキは引力圏内から脱した。
が、そこにはポチの焦熱弾が殺到する。
「コイツら・・・怪人が連携を・・・!?」
ジェノスの砲による迎撃とバングの受け流しで何とか切り抜けた四人は、俺たちの連携度に驚愕する。
クロビカリと豚神という重量級の二人は、何とか俺の吸い込みに抗っていた。
まあ至近距離まで誘ったところでクロビカリ相手だと決定打にはなるまい。
吸い込みを止め、衝撃歯を撃ちまくる方向にシフトする。
他を戦闘不能にした後、クロビカリを倒すとしよう。
俺の衝撃歯。
ポチの焦熱弾。
撒き散らされる破壊に、ヒーロー達はただ必死に身を守るしかなかった。
「何とか奴らを分断せねば勝機はないぞ!」
「でも一体に六人で手一杯だったのよ!?こっちも分断されたら・・・」
「俺が片方を相手取る!その間に残りのメンバーでもう片方をどうにかしろ!」
「無茶よ!」
分断の提案にジェノスが無茶をしようとするが、フブキはそれを止める。
そこで、クロビカリが声を上げる。
「俺がハグキを相手取る。俺ならすぐには負けない。鬼サイボーグやバングさんがいれば、黒い怪物の方は倒せるかもしれない・・・その後助けに来てくれ!」
言うや否や、クロビカリは飛び出した。
「そんな・・・」
フブキは何か言いかけたが、この状況だとそれが最適解だと分かり推し黙った。
ほーん?
戦闘続きでアドレナリンでも出てるのかもしれないけど、勇敢じゃないか。
いいぜ、乗ってやろう。
「ポチ!お前は残りを相手に暴れろ!」
「ヴォウ!」
ポチに残りを任せ、俺はクロビカリの相手をする。
豚神がいるが、ポチの相手はONE版の原作通り、ポチが死ぬようなことにはならないだろう。
そもそもポチの耐久力は俺並みかそれ以上だ。
クロビカリ以外には負けまい。
クロビカリは俺と組み付くと、足を踏み鳴らし地面を崩した。
数十階降りたところで互いに少し離れ、俺たちは再び向き直る。
「いいのか?死ぬぞお前」
フブキに近づいた際に何とか回復してもらったようだが、俺の歯が深く突き刺さった部分からは血が溢れている。
「命を懸ける、と言っただろう。悪あがきくらいさせてくれ」
まあ死なれたら困るんだけどさー。
さっきまではハイになってたが、ポチが乱入してきて頭が冷えた。
折角だし、俺の新形態でも披露するか。
さっきまでの戦闘でも使いたかったんだが、何せ連撃を喰らい過ぎて使う暇がなかった。
この姿でもクロビカリに勝てるが、手加減がしづらいしな。
俺は丸っこいフォルムをグニグニと変形し始める。
「・・・何だ?」
クロビカリは静観する構えのようだ。
時間稼ぎが目的である以上、それも間違いではないだろう。
だが好都合。
クロビカリ単体に妨害されたところでそこまで変形が阻害されるわけでもないが、じっくり変身できるわけでもないからな。
俺ことハグキは、普通に強い怪人である。
やられ役ではあるが、高い身体能力に格上に通用しうる消化液という武器、それに再生能力まで備えている。
それをバキバキに強化していった俺だが、ではそんな俺に残っている弱点とは何だろうか?
それは、口である。
ONE版にせよ村田版にせよ、俺は縦か横かの違いはあれど口を真っ二つにされ死んだのだ。
つまりは、大抵の傷を治せる俺だが、口を大きく損傷すると死ぬ可能性がある、ということ。
言わば『再生核』というべきか、俺の場合はそれが口なのだ。
これは問題だ。
口を使って戦う怪人なのに、口が弱点とは。
簡単に破壊されるものではないが、それでも弱点を見せながら戦うみたいでちょっと怖いよな。
まあ実際のところは、俺の最大の武器でもあるのだが。
歯の硬さ、そして咬合力。
クロビカリに容易にダメージを与えるこれは、恐らく外れ値を除くすべての相手に通用するものだろう。
俺は悩んだ。
今後覚醒したガロウと戦うなんてことになった場合、攻撃しようとして口を破壊されて死亡なんて洒落にならない、と。
本当ならクロビカリとやるのもちょっと怖かったんだがな。
流れで戦うことになって、結局平気だったからいいんだが。
で、だったらどうするか?
その答えがこの形態だ。
タベルの形態だと、口は小さくなる。
つまり、弱点が小さくなる。
体を引き絞っている分、パワーも若干だが増している。
だが、それは咬合力に勝るようなものではない。
ならば、変形を駆使し、口周りの筋肉を全身に移動させられればどうか。
咬合力を担っていた、俺の中で最も鍛えられた最強の筋肉による格闘戦。
これが実現するのだ。
これこそが俺の見出した答え。
さらに、全身を絞ることで筋骨隆々の格闘戦が可能な人に近い体型を実現する。
ゴウケツ達から学び取った武術を再現するのに、ハグキのブヨブヨした体は適していなかった。
その問題点が解消され、最大の攻撃力と防御力を持った新たな格闘スタイルが生まれたのだ。
名付けて。
「『バイトシフトモード』」
噛む力(バイト)を全身に移行(シフト)するって感じだな。
見た目のイメージは・・・『呪術廻戦』の『摩虎羅』の装飾が取れた全裸バージョンみたいな感じだ。
さて、じゃあこの肉体の性能を試してみるか。
「俺と肉弾戦・・・?合わせてくれるのか?」
クロビカリより大きかった体躯が縮み、クロビカリと同じくらいになった。
側から見たら、弱体化してるようにも見えるだろうな。
最大の武器だった口も小さくなり、消化液を吐き出す出口も小さくなってるわけだから。
「そんなもんだ。だが、お前に合わせるような生優しいものじゃないぞ」
この形態の本質は、最大の膂力と武術の両立ができること。
身体が縮み、可動域が広くなったことでゴウケツやシルバーファングから学び取った通りの動きが可能になるのだ。
脚にも筋肉が移行してるので、スピードもマシマシだ。
おまけに何本かの歯を腕や脚につけることで、凄く硬いものを超威力、超スピードでぶつけるという脳筋戦法が実現するのだ。
「行くぞ」
「こィッ!?」
俺が踏み込んだ次の瞬間には、クロビカリの頭が地面に叩きつけられてクレーターを作った。
ピッとクロビカリの頭から血が噴き出す。
かすり傷だが、これをつけるのにどれだけ苦労したか。
だが今の俺なら、一秒もかからない。
立ちあがろうとするクロビカリの真上を取り、踵落としを叩き込み下層に落とす。
何とか着地したクロビカリが、俺に向かってパンチを打ってくる。
「超合金バズーカ!」
前までなら受け一択だったそれを、腕の回転で受け流す。
そしてその威力を腕に込め、クロビカリの腹に力一杯叩き込む。
「おげェッ!?」
数十メートル吹き飛ばされたクロビカリが、地面に手をついて血を吐いた。
ふふ、やはり自分が強くなっていることを実感するのは楽しいな。
ま、ほどほどにしとかないと死ぬかもしれないからあとは適当にボコって気絶させて、ポチの方に行こうかな。
「ん?」
クロビカリに向かって歩いていると、突然血まみれのボロ雑巾のようなものが飛んできた。
べちゃっと俺の体にぶつかってきたので手に取ってブラブラしてみると、それがゴミではなく生きている人だと気づいた。
「んだこれ。ってぷりぷりプリズナーじゃん」
血まみれボコボコで分かりにくいが、アフロヘアーにケツアゴ。
このイカつい風貌は間違いなくS級17位の『ぷりぷりプリズナー』で間違いない。
「ってことは・・・」
ぷりぷりプリズナーが飛んできた方向を見ると、そこに居たのは───。
低姿勢で唸り声を上げる男が一人。
ガロウだった。
「おいおい」
とりあえずぷりぷりプリズナーをペっと捨てると、俺はガロウに向き直った。
「ぷりぷりプリズナー!大丈夫か!」
投げ捨てられたぷりぷりプリズナーにクロビカリがフラフラと駆け寄り声をかける。
「クロちゃんか・・・そっちこそボロボロみたいだけど・・・そうか、相手は例のハグキか。随分とイサましい姿になってるみたいだけど・・・」
「ああ・・・プリズナーは誰にやられたんだ?」
「ガロウだ・・・想像以上に力をつけていた。強くなったつもりだったがかすり傷一つつけられなかった」
「そうか・・・アイツに俺も歯が立たなかったよ」
「クロちゃんが!?」
「プリズナーは下がってろ。恐らく一撃喰らうだけで死んでしまう」
「クロちゃん・・・♡」
「やめろ俺に惚れないでくれ・・・」
筋肉ダルマ二人がぺちゃくちゃ喋ってるが、俺の興味はもうガロウに向き始めた。
「ガァッ!」
獣のように襲いかかってきたガロウを拳で叩き落として、軽く蹴り飛ばす。
「起きろ」
「あ“!?」
バッチリ目覚めたガロウは周囲を見渡すと、俺を見て何かに気づいたようだ。
「テメーは・・・まさかハグキ、か?」
「そうだぞ」
「ヘッ、どうやら俺は寝ながらテメーとドンパチやってたらしいな」
「いや、俺は割とさっき会ったばっかりだぞ。お前がさっきまでボコしてたのはぷりぷりプリズナーだ」
「・・・そうかよ。じゃあ今度こそボコボコにしてやる。手紙ですら俺をコケにしやがって・・・。ヒーロー協会も怪人協会も今夜消滅するから安心して死ね!」
「言っとくけど、俺もお前に腹の中殴られた恨み忘れてねぇからな」
互いに恨み節を言い合って構え、今度こそ俺とガロウは激突した。