ハグキ転生   作:増えるヤバイ奴

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3噛目 大怪蟲ムカデ長老

地下で危ない目に遭ってから、もう2ヶ月。

 

俺は地上に戻ってから、再び特訓を始めていた。

 

地下トレーニングを経てだいぶ強くなってはいるが、オロチを見た後だと自分なんてまだまだだと思い知らされる。

 

あれが完成形だなんて言わないが、当分の強さの目標として申し分ないだろう。

 

怪人王の強さを目指して、つまりは災害レベル竜最上位の強さを目指して、俺は今邁進中なのだ。

原作のハグキはフィジカルにものを言わせて噛みつき飲み込むだけの怪人だったが、俺は今様々な戦法を開発している。

 

この間獲得した変形能力も駆使して、全く別と言ってもいい怪人へと俺は進化した。

見た目はそんな変わらんけどな。

 

まず、最も大事なサイタマに取り入る形態。

 

俺の変形能力は食べたことのあるものの性質に変質することが可能らしい。この間岩のように変形していたのも、岩を食べたことがあったからできた芸当ということだ。

変形能力を駆使して、人に近い見た目になることに成功した。

まず、その辺の人里をひょいパクっと襲って、人間を食べる。人里の痕跡ごと平らげたのでそう簡単に発覚はしないだろうし、見ても土砂災害か何かで全て抉り取られたように見えるだけだろう。

元人間の理性はちょっと申し訳なく思うが、今の俺は怪人なのだ。

人間であった頃のモラルなど残されていないのだ、悪く思わないでほしい。

 

そうして得た人間の情報を使って、人の肌の質感を再現する。

本当は丸ごと変身できれば良かったのだが、目を作ったり髪を生やしたりは出来なかった。

なので、身体の変形を駆使して人間に見えるようにした。

まず頭をバスケットボールくらいに小さくして、胴体をキュッと細くする。

四肢もそれに合わせたサイズにして、指は四本から五本へ増やしておく。

これで口以外ないのっぺらぼうではあるが人間には見えるだろう。

細部を調整して鼻のような突起や、耳みたいなものを頭に生やす。

 

ここで、その辺の人間から奪っておいたカツラを装着。目元を隠し、服を着れば!

 

なんと、やたら歯並びが立派な目隠れ少女(性別はない)の完成だ!

 

結構手足も細くしてるし、カツラの髪が長いので正直女の子に見える。性別はないが、女子の方が優しくされそうだしな。それっぽくした。

 

うん、どう見ても怪しいな。でも元の姿よりマシだ。

 

この形態は『タベル』と名付けよう。

 

この形態だと流暢に喋れる。

 

「アーアーテステス…オレはタベル!災害レベルは竜だ!」

 

人間として見られるのに問題はないだろう。

 

いずれ目も再現出来るようにならないとな。

 

ハグキには目がないが、目が見えてないわけじゃなくて普通に見えてる。

それどころか耳も鼻もないが、それでも音は聞こえるし匂いも感じる。

 

なんでかなーと思ってたら、なんとめちゃんこ小さい穴が身体中に無数にあって、それが目や鼻や耳の役割を果たしていたのだ。

殺せんせーみたいだな。

 

この感覚器官、恐ろしく高性能だけど変形がすごい難しいのだ。

 

巨大化させて目に出来たりしないか試行錯誤したんだが、未だそれは叶っていない。

 

ともかく、目下一番の問題であった怪人として認識されないようになることは達成した。

 

出来れば動物が良かったんだが、毛を生やすのがめんどくさかったり、不都合な部分を衣類で隠せる人間の方が何かと便利なので今は取り敢えず『タベル』で行く。

 

因みに、服やカツラは収納用胃袋を作ってその中に入れている。豚神が仲間を溶かさずに体内で保護できるのを思い出し、似たようなことが出来ないか試したのだ。消化液が強すぎたので、消化液を分泌しない新たな胃袋を生成してそこに収納する感じにした。

 

ボフン、と音を立てて元の姿に戻る。

 

さて、次に新たな戦闘技能の方だが…おっと、なんかデカい気配が地中にあるなぁ。

 

強さはオロチほどじゃない。察するにこれは…『大怪蟲ムカデ長老』だな。

 

ゴゴゴゴゴッと地鳴りが起き、地面が隆起したかと思えば黒く輝く巨大ムカデが飛び出してくる。

 

やっぱデケェな。

 

災害レベル竜はダテじゃない。

 

けど、なんで俺のとこに出てきたんだ?

 

「貴様かぁ!この間儂の体を齧り取ったのはァ‼」

 

ん?何の話だ?俺がムカデ長老の体を齧り取った?

 

・・・そういえば、地下に潜行したときに途中で妙に苦みと旨味のあるものをかみ砕いた覚えがあるな。神やらオロチやらで忘れていたが、あれムカデ長老だったのか。

ムカデの味ってあんな感じなんだな。中国とかでは食用になってると聞いたことがあるが、なるほどあれは珍味だった。

 

で、ムカデ長老は俺に報復しに来たわけか。ムカデ長老と言えば怪人協会の幹部の中でも武闘派なイメージがあるし、昔の俺だったら普通に負けてたかもしれん。

サイタマに一応マジ殴りを使わせた怪人だしな。

改めて考えると、俺無意識にいろんな所で無謀な喧嘩売りすぎだな。

もうちょっと慎重にならないといけないかもしれない。

 

でも、今の俺は一味違う。

力を試したくてうずうずしてるのだ。歯もガチガチと鳴っている。

特訓で新たに獲得した戦闘力を試させてもらうとしよう。

 

ニューハグキの力を思い知れ!

 

俺が戦う気満々なのが伝わったのか、ムカデ長老からの殺意も大きくなった。

 

「何処の木っ端怪人か知らんが、調子に乗るなぁ‼」

 

ムカデ長老が俺に向き直って突進してくる。

 

「潰れろ!」

 

俺はそれを全力で歯をむき出しにして受け止める!

 

ガキィィン!!

 

硬質な物同士が撃ち合う甲高い音が響き、衝撃波が周囲を駆け巡る。

 

ムカデ長老の巨体と速度ならば、その突進はとんでもない威力を誇るはずだが・・・。

 

俺の体はその場から動かず!真っ向から膂力で対抗して見せた!

 

「なにぃ⁉」

 

ムカデ長老が驚きの声を上げる。

よく見ると、俺の歯に当たった部分は甲殻が砕けているようだ。

俺の歯のほうが強いってことだな、よし!

 

そのまま両腕で押さえつけ、嚙み砕こうと口を開けるがそこは相手も連戦錬磨の怪人。

鋭く巨大な顎で俺を切り裂こうとしてくる。

仕方なく噛みつく相手を変更。

俺は口をぐにゃりと変形させ、両側から迫る顎を白刃取りする。

イメージは『BLEACH』の『リルトット・ランパード』の能力『食いしんぼう』だ。

口回りは変形させると咬合力が弱まるため噛み砕くことはできなかったが、それでも攻撃を受け止めるには十分だった。

 

口と腕がふさがってしまったが、まだ俺の攻撃手段は残されている。

 

食らいやがれ!

 

『ゲロシャワー』!!

 

超強力な胃液を口からぶっかけるだけの技!だが、マジでなんでも溶かすぞ多分。サイタマの体以外は!

 

「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

ムカデ長老の顎や顔面、体表がぐずぐずに崩れ、悲鳴を上げる。巨体だから、全体で見たら微々たるダメージかもしれない。

だが、確実に通用する威力だ。

 

ムカデ長老の攻撃手段である顎を溶かしたことで、俺の口が解放された。

頭から丸かじりにしてやろうと口を開くと、今度は横合いからぶっ飛ばされた。

 

「ブゥッ⁉」

 

不意打ちでちょっと驚いた。

吹っ飛ばされながら態勢を整えて見ると、ムカデ長老の胴体が俺に体当たりを仕掛けてきたのだった。

頭を俺に押さえつけられてても、体が長大な分胴体は自由に動けるってわけか。

 

「百足大うねりィ!」

 

ムカデ長老が暴れだす。

相変わらずバカみたいな破壊規模だな。

あの巨体でかなり素早いのも流石は災害レベル竜といったところか。

大暴れを飛んだり跳ねたりしてかわしながらそんなことを思う。

 

ムカデ長老は俺に決して頭を向けてこなくなった。

俺の口の危険度を味わったからだろうな。

ビビってくれてるのはいいんだが、こういう狡猾なところは相手にすると厄介だ。

 

だが、俺にだって対抗手段はある。

 

まず一つ目。いくぞ!

 

『衝撃歯』!

 

遠距離攻撃が必要だと思って開発しておいたのだ。空気を捉えて思い切り噛み砕くことで、噛みつきの衝撃波を飛ばす技だ。

 

飛んで行った衝撃波は、ムカデ長老の頭に近い部分の胴体の端を削り取って彼方まで突き進んだ。

 

命中精度に難アリか。だが、十分通用している。

 

何度も連射していると、ムカデ長老も慣れたのか楽に躱すようになった。ジェノスの焼却砲に追いつくレベルの速さをしてるから、まあ理解はできるけどちょっと悔しいな。

まあ、衝撃波の速度なんて所詮音速よりちょっと速い程度だ。

 

他にも攻撃手段はある!

 

二つ目。

 

『歯ミサイル』!

 

俺の歯を超音速で飛ばす技!生え変わる数十秒の間攻撃手段はなくなるし連射も利かないが、その分高威力で追尾もする!

 

ちゅどどどどど!と小気味いい音と同時に発射され、展開し四方八方から硬い歯が襲い掛かる!

 

無数の歯がムカデ長老の体に叩き込まれ、その体表に大きく罅が入った。

 

うーん、効いてはいるが決定打には程遠いな。

 

ムカデ長老は既にボロボロだが、俺はムカデ長老に脱皮があることを知っている。

どうせすぐに脱皮して全回復するはずだ。

 

まあ、威力を確かめられただけでヨシとするか。

歯を生やすのは面倒だし、これは切り札だな。

 

やっぱ俺の決定打は頭から丸かじりすることだけなんだが、ムカデ長老はそれをさせないように立ち回っている。

 

頭も回る、流石に図体だけじゃないな。

ネオヒーローズ編で出てくる『ケンザンネズミ』や『ウナギドラゴン』よりも、大分手ごわい相手のように感じる。

やはりレベル竜でも上位、と言ったところか。

 

よし、では最後の手段だ。

 

思いっきり、吸い込む!!

 

ずごぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

俺の前方の空気が俺に向かって引き寄せられる。周りの木々や地形も全部寄ってくるが、すべて飲み込み消化する。

 

そして、その延長線上にいたムカデ長老の頭もまた、こちらに引き寄せられるのだ!

 

「ぐぬぅぅぅぅぅ‼」

 

だが、ムカデ長老も全力で抵抗する。全身の爪を地面に突き立て、全身の筋肉をふり絞って俺の吸い込みに対抗している!割れた甲殻が剥がれてどんどん俺に吸い込まれていくが、それでも尚ムカデ長老は重い。

 

これは…流石に吸い込めない、か?

 

数秒、あるいは数十秒か。

 

俺は息が持たなくなったので吸い込みをやめた。

 

ぜぇぜぇと息を吐き、再びムカデ長老に向き直る。

多少疲れたが、吸い込んだときに食べたものでエネルギー補給はばっちりだ。

まだまだ戦える。

 

ムカデ長老もまた、体を起こし敵意の混じった視線をこちらに向けてくる。

あ、脱皮した。

ボロボロの甲殻の下から新しい無傷の甲殻が生成され、さらに大きくなったムカデ長老がこちらを睥睨した。

 

周囲の地形は既に原型をとどめてないが、まだ互いにやれるだろう。

 

第二ラウンド開始だ…と思ったところで別の声がかかった。

 

「そこまでだ」

 

ふと見ると、目玉に翅がついたような変な怪人が俺とムカデ長老の間を飛んでいる。

 

お、ギョロギョロじゃーん。

 

「なんだ貴様は?」

 

「・・・」

 

ムカデ長老も俺もいったん手を止め、奇妙な生物を見つめる。

二体の注目が集まったことを確認すると、目玉が喋り始めた。

 

「私はギョロギョロ。お前たちが強力な怪人だと見込んで、『怪人協会』に勧誘しに来たのだ」

 

お、ついにこの時が来たか。

 

「怪人協会だと?なんだ、それは」

 

「・・・?」

 

ムカデ長老は疑問を呈する。俺は知ってるが、原作で知ってるだけなので分からないフリをしておく。

 

「邪魔なヒーロー共を殲滅し、怪人による新たな社会を築くための組織だ。まだ設立したばかりだが、『怪人王オロチ』様をリーダーとし、既に何匹かのレベル竜の怪人に声をかけている。お前たちと同様にな。お前たち災害レベル竜の怪人には、怪人協会の幹部として協力してもらいたい」

 

ギョロギョロは話を続ける。

 

「ムカデ長老、お前のことは知っている。ブラストに負けて、復讐の機会を狙っているとな。ブラストは一向に表舞台に出てこないが、ヒーロー協会が壊滅するとなれば出てこざるを得ないだろう。どうだ?悪い話じゃないだろう?」

 

「ぬぅ…」

 

ムカデ長老は負けたというところで憤りかけたが、その後の話を聞いて考え始めた。

 

「そしてお前は…何と呼べばいい?」

 

ギョロギョロは俺にも話を振ってきた。

名前か。原作ではハグキは喋らなかったけど、名前ってどうやって決まったんだろうか。

誰かに呼ばれてそうなったのか、自分がハグキだと思っていて周囲にそう伝えたのか…。

理性なさそうな奴だけど、ギョロギョロの指示にしたがって豚神を襲ったり、ブサイク大総統に殴られるまでは味方を襲わない程度には分別が付くんだよな原作のハグキも。

 

つまりどっちもありそうだし、それにどうせ真実は分からない。

 

じゃあ、名乗ってしまっていいだろう。

 

「ハグキ、だ」

 

「喋れたのか貴様…」

 

「理性はあるとみていたが…これは驚きだな」

 

名乗っただけで驚かれた。なんでやねん。

確かに喋りそうにない見た目してるけどさ。

ムカデ長老はともかく、ギョロギョロはお前から振ってきただろ。

あれか?超能力でテレパシーかなんかで返答を読むつもりだったとかか?

 

まあいい。

 

「ではハグキ、お前もどうだ?ヒーロー協会にはタツマキ、キング、ブラストと言った一筋縄ではいかない者たちもいる。お前が如何に強力な怪人だろうと、単体でそれらを凌ぐのは至難の業だぞ。怪人協会への加入は、お前にとっても悪い話じゃない」

 

さて、どうすっかな。

怪人協会に加入したほうがサイタマに取り入るタイミングは図りやすいが、その分強力なS級ヒーローと相対しなくてはならないリスクもある。

既に人型になれる今、人類社会に溶け込むのも手ではあるが…。

 

いや、俺はハグキなのだ。

ワンパンマンのファンとしては、やはり原作を追体験してみたいし、怪人協会幹部のハグキとして登場したいのだ。

死にたくはないけどな。

それに、サイタマに飼われるなら黒い精子やポチと言った面々と交流を深めておきたいしな。黒い精子は頭が回るし、ポチは強い。どちらもONE版最新話より先を生き抜くうえで頼りになるだろう。

 

決めた。

 

「いいぞ。入る」

 

「ふふ…助かるよ。歓迎する。これでまた一歩人類の全滅が近づいた」

 

ギョロギョロは嬉しそうに目を細めた。

 

「ムカデ長老の方はどうだ?」

 

「・・・いいだろう。協力してやる。ハグキ、貴様との決着もヒーロー共の後にしてやる。ただし、怪人王とやらの下にはつかんぞ」

 

ムカデ長老は俺との決着を先延ばしにすることにしたようだ。

ま、俺も構わない。おあずけは嫌いだが、今は最新話をおあずけされないように頑張ってる最中だし、どうせこいつはサイタマのマジ殴りで跡形もなくなる。

 

「あいよ。・・・あ、おれも服従はしない」

 

怪人協会の幹部になるとはいえ、オロチに服従はごめんだ。実力は認めるが、サイタマにワンパンされる奴など頼りにならん。

 

「ああ、それで構わない。承諾してくれて嬉しいよ。それでは怪人協会のアジトへ案内しよう」

 

俺たちは見つからないよう地下に潜り、Z市のゴーストタウン地下へ向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

たった一体で都市が何個も壊滅するような災害。

 

それらが三体、地下通路を通って怪人協会のアジトへ向かう。

 

二体の災害レベル竜の怪人を先導しながら、ギョロギョローーーその中身である超能力者サイコスは口元を緩める。

 

(いい拾いものをした)

 

(ムカデ長老を勧誘しに行ったら、まさかムカデ長老と互角に戦える怪人がいるとは・・・!)

 

(ハグキ、か)

 

(知性も高いし、攻撃力もある。手数も多い)

 

(攻略に悩む何名かのS級ヒーローへの対抗策となるだろう)

 

(それに、まだまだ発展途上のように見えた。私が育てれば、ヒーロー協会に対する切り札と成り得るかもしれん)

 

(これほどの戦力がそろえば、ヒーロー協会の崩壊も現実味を帯びてくる)

 

(ふふ、私が世界を裏から牛耳る日も近いな・・・・!)

 

・・・サイコスは怪人たちですら知らない地下深くで、グラスを傾け計画の順調さに満足する。

正攻法では決して勝てない厄介で狡猾な支配者は、その知略をもってすべてを飲み込もうとしていた。




主人公は人間としての記憶があるだけで、精神性は怪人です。
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