ポチとニャーンが幹部に加わって、顔合わせとして行われた幹部集会が終わり、本格的に対ヒーロー協会の準備が進んでいる。
怪人もぞくぞくと集まっており、原作での怪人協会と同じような規模に成長しつつある。
ギョロギョロ曰く、あと一か月くらいで宣戦布告をするとのこと。
ギョロギョロは世界に散らばる怪人達に声を掛けつつ、怪人細胞という人間を怪人化させることのできるナマモノを使って戦力増強を進めていたのだが、その戦力増強も佳境に入り、人知れず増やせる戦力はもうあまり残っていないのだ。
大々的に宣戦布告をして、人類に負荷をかけることで更に怪人化する人間を増やすつもりらしい。
S級ヒーローをアジトへ呼び込むべく、ヒーロー協会の重役を攫う怪人や、宣戦布告の時に出陣する怪人を選定したりと、いろいろ忙しそうにしている。
まあ、俺たち幹部にはあまり関係のない話だ。
俺たちは、のこのこやってきたヒーローを一網打尽にすればいいらしいからな。
ムカデ長老とゴウケツ、ニャーンは怪人細胞で怪人を増やしに行くらしいが。
俺も行こうかちょっと迷っている。原作通りなら、宣戦布告の時サイタマはスーパーファイトに出ているからな。サイタマに遭遇する危険がないなら、暴れるのもやぶさかではない・・・のだが、タツマキもフラッシュも町をうろうろしてるからちょっと怖い気持ちもある。
簡単に負ける気はないけどね。
そういえばつい先日、Z市に巨大隕石が落ちてきた。
結局サイタマに破壊されたわけだが、よくよく考えればあれヤバかった気がする。
隕石はZ市丸ごと吹き飛ばしただろうし、隕石の衝撃波でアジトも粉々になっていたかもしれない。幹部クラスはそれくらいじゃ死なないが、せっかく集めた500体の怪人が隕石一つでパーになるのも嫌な話なので、サイタマには感謝だな。
まあ、その怪人協会もサイタマによって壊滅するんだろうけど。
まだ先の話だし、サイタマにワンパンされないよういろいろ考えて対策してはいるから大丈夫だろう。多分。
今は自由行動なので、タベルの姿になって人間たちに紛れている。
折角ならワンパンマン世界のイベントを近くで体験したいしな。
タベルの姿なら、とりあえず人間として見られることは確認済みだ。
ヒーロー協会にある怪人検知器を突破できるかどうかは分からないが、とりあえず街を闊歩する分には問題ない。
あと、ポチにやる肉を調達(盗み)に来たのだ。
怪人も食べないと生きていけないので(そうじゃない奴の方が多いが)、怪人協会では食料の配給もある。
といってもそこまで上等なものじゃない。
ギョロギョロがいろいろ手配しているのだが、新鮮な料理とかが出てくるわけではなく、主に保存食とか日持ちのするものが蓄えられていて、それを必要なものに配給する感じだな。
お好きにどうぞ形式だと俺や最近入ってきたレベル鬼の『ダイショッカン』とかの大食いかつ強い怪人に全部持っていかれるから、ギョロギョロもその辺はちゃんとしている。
それじゃ物足りなくて、つい同族をやっちゃうのが怪人なんだけどな。
前も言った通り、味方殺しはある程度許容されているのがうちの方針だ。
話を戻すと、上等な食料は自分で取りに行かないと食えないって話だな。
幹部は言えばいろいろ用意してもらえはするが、そもそも人間の食料なんて必要とする奴の方が少ないし、自分で取りに行った方が早いのだ。
ブサイク大総統は雑兵を使ってエロ本とかモテる秘訣を書いた本とか調達させてたけどな。
俺だけならその辺の山に住む野生動物とか、極論土だろうが岩だろうがなんでもいいんだが、ポチは飼い犬だったからか人間の食料を好む。
何でも食えるが、好きなのは人間の食糧って感じだな。
怪人協会に入る前は野生動物や怪人を食って生きてきたようだし。
まあそんなわけで、俺は今A市にいる。
なぜかって?
これからボロス達が攻めてきてA市が壊滅するだろうから、その混乱に乗じて火事場泥棒しようって魂胆だ。
これなら、原作イベントを眺めながら目的も達成できる。
まさしく天才的な思い付きだな。
食料がたくさんある大規模商業施設に目をつけつつ、その時を待つ。
にしても、ヒーロー協会本部はデカいな。
遠目から見たらただの黒い直方体だが、近づくと見上げるほど高い。
スカイツリー並みに高いんじゃないだろうか。
メタルナイトお手製とのことだが、これを攻略するのはちょっと面倒かもしれないな。
まあ、レベル竜の怪人ならS級ヒーローが出張らない限り単騎でも落とせるとは思うが。
そんなことを考えていると、ドドドドドドドッという砲撃音が聞こえてきた。
音のする方向に目を向けると、天空王だっけか?
ちょっと覚えてないが、そんな感じの奴らがヒーロー協会を攻撃していた。
じゃあもうそろそろだな。
頭上がフッと暗くなった。
お、来た。
A市全体を覆うくらいの巨大な宇宙戦艦が突如として上空に出現した。
ドドドドドドドドドドドドッ!!!!
轟音と共に巨大な砲弾が飛来し着弾した。
衝撃波が地上を蹂躙し、建物が壊れ、人が吹き飛ぶ。
わずか数秒の間に、活気に満ちていた町が壊滅した。
「あーあ、こりゃひどい」
俺のところにピンポイントで落ちてきた砲弾を片手で受け止めながら、俺は言った。
S級ヒーローが揃っててこれだ。
アマイマスクではないけど、この被害を見るとこの世界の人類終わってんな、と思う。
ONE版でロボが襲来したときもそうだけど、どう頑張っても防げない被害が多すぎだな。
S級ヒーローの落ち度とかではなく、敵が強すぎるのが問題だ。
まあ、ボロス込みならこの『暗黒盗賊団ダークマター』は作中でも最強の敵勢力である。
我が怪人協会とて、ボロスに勝てるやつはいまい。この被害も、ある程度仕方のない部分はある。
掴んだ砲弾をバリバリ食いながら、崩れた建物からポチが食えそうな食料をあさっては保存用胃袋に放り込んでいく。
崩落した天井を丸ごと持ち上げると、さっきまで賑わっていたお昼のショッピングモールの惨憺たる有様が目に入る。
人間の死体も山盛りだな。
まあ、あれで生きてるのは相当運がいい奴だけだろうから当然だ。
食べるか迷うが、流石に人間の死体食ってるのを見られたらまずいので自重だ。
今回はヒーローが近くにいるのだ。あくまで人間として見られる範疇の行動しかしないようにしよう。
いやだけど、砲弾撃たれたのはちょっとむかつくな・・・。
撃ち返したい。
・・・ちょっとならいいか。
空を向いて口を開け、歯のうち一本だけを歯ミサイルとして飛ばす。
キュインッと飛んで行った歯は宇宙船に向かって真っ直ぐ飛んでいき、そのまま轟音と共に激突しその衝撃で激突した地点の周囲100メートルくらいを欠落させた。
・・・やべ、やりすぎた。
最近使ってなかったから威力の調節をミスった。
俺は日々成長しているので、たまに全力で運動して体の具合を確かめている。最近だとポチがその相手にちょうどいいじゃれつき相手だったのだが、歯ミサイルは殺傷力が高くて使ってなかったから威力が上がっていることに気づかなかったのだ。
ちらっとヒーロー協会本部の方を見ると、メルザルガルドとS級ヒーローの戦いが既に始まっている。
やべぇ。
S級ヒーローの監視の目がある。おそらく何人かに今のを見られたかもしれん。
さっさと退散しよう。
タベル形態の俺は小さいので、きっと誰が撃ち返したかまでは分からないはずだ。
瓦礫に紛れながら、ヒーロー協会本部から離れる。
S級ヒーロー達も、流石に敵に謎の攻撃をした謎の人物よりも目の前の敵を優先するだろう。
「ここまでくりゃ大丈夫かな」
戦闘が行われている地点からはずいぶん離れた。
タツマキがちょっと怖いが、まあ補足はされない距離だろう。
ここでひとまず観戦するか。
そう思って瓦礫に腰かけると、唐突に何かの液体をぶっかけられた。
ジュワァァァァと音を立てて周囲の物体が溶解する。
「あああ、折角調達した服とカツラがぁぁぁ!」
「ふははははよくもやってくれたな地球生命体!おかげで宇宙船から落ちてしまった!だがオレ様のアシッドブレスにかかれば貴様など・・・何!?無事だとぉ!?」
ぐぬぬぬ、まさかこいつが追ってくるとは。
ていうか、俺がこいつのいたところを落としちゃったのか。
ホントに学習しないな俺は。
適当に喧嘩を売るのはやめとけとあれほど・・・。
「オレ様の名は暗黒盗賊団ダークマターの最上位戦闘員が一人、グロリバース!」
グロリバース。
食虫植物みたいな見た目をした設定上では災害レベル竜の宇宙人。
サイタマにワンパンされるはずだったこいつを、俺が歯を撃ったことでおびき出してしまったらしい。
いやまあ、災害レベル竜に分類される怪人だから戦闘方法とか知りたいとは思っていたが・・・。
今じゃない。
今日はそんなつもりで来たわけじゃないんだ。
「よくも俺の服を・・・許さん」
とりあえず、ヒーローに見つからないうちにボコろう。
速攻でな!
「来い地球生命体!」
「ふんすっ!」
「ぶぺぇ!?」
俺の飛び膝蹴りがグロリバースの顔面に直撃する。
ハグキ本来の姿は見られると一発で怪人とバレるので、タベルの姿で戦闘だ。
だが、別に問題はない。
咬合力以外の要素は弱体化しないからな。むしろ、全身を引き絞っている分パワーは若干増す!
「やるな貴様!ただのチビかと思ったら、アシッドブレスが効かん上にパワーもなかなかじゃないか!」
並みの怪人なら死んでる一撃だったが、グロリバースはピンピンしている。
サイタマにワンパンされただけで、実際は強い怪人だと知ってはいたが。
こうして相対すると、その強さがひしひしと伝わってくる。
ブサイク大総統とかより数段強いかもしれないな。
だったら、こうだ!
「お返しのゲロシャワー!」
俺は消化液をグロリバースに向けてぶっかける。
「ムッ!?貴様も消化液を使うのか?」
うわっ、全然効いてないな。俺も自分の消化液じゃ溶けないし、強力な消化液を使う奴には酸に対する耐性もあるんだろうか。
原作の豚神もハグキの胃袋に入れられても溶けてなかったしな。
「むぅ!?小癪な!食らえ!ダブルバイとぉ!?」
だが、効かないのは想定済み!
ゲロシャワーの本当の狙いは目くらまし!
グロリバースの周囲にまき散らされた俺の消化液により、コンクリート片が溶けて煙を吹く。
攻撃を繰り出そうとしたグロリバースは一瞬俺を見失う。
その隙をついて背後を取り、がむしゃらに攻撃をしようとしたグロリバースに向けて両手を握りしめ思いっきり叩きつけた。ダブルスレッジハンマーだ。
グロリバースの体が地面にめり込む。
「ぐぬぅ、このチビ・・・!」
これで生きているなんてしぶといな。
貴重なレベル竜の怪人と戦える機会、本来なら色んな戦い方を試すところだが、今の俺には余裕がない。
なにせ、この瞬間にもS級ヒーローに見つかるかもしれないんだからなぁ!
「おのれぇ!スクリュー尻尾突き!」
「あたるかぁ!」
音速を遥かに超える速度で放たれた突きをスレスレで避け、懐に入り込み飛び蹴りを叩き込む。
ドゴォッ!
「ぐぇっ!」
コンクリートが粉々に砕け散り、グロリバースが更に盛大に地面へめり込む。
グロリバースの体にも罅が入っているが、致命傷には程遠いようだ。
耐久力は流石だな。
だが、もたもたしてられないのだ。仕方がないので、一瞬だけ本来の姿を晒すことにする。
「なんなのだ貴様は一体・・・!?こんな化け物がいるとは・・・!?」
起き上がったグロリバースの目の前には、大口を開けた巨大な怪物、本来のハグキがいた。
その大口は、グロリバースには奈落の大穴に見えただろう。
「やめっ・・・!」
「お粗末様でしたっ!」
バキィィンッ!
凄まじい咀嚼音と共に、グロリバースの体を一気に粉砕した。
・・・よし、完璧だ。
俺は即座に姿を変え、 タベルの姿へと戻る。
予備のカツラと服を身に着け、ホッと息をつく。
「ふぅ……危ない危ない。物騒な奴だったな。でも、結構旨いかも。宇宙人て旨いんだな」
そうひとりごちながら、戦闘の痕跡を隠すようにその場からサッと飛び退く。
ちらっとS級ヒーロー達の方を見ると、メルザルガルドがちょうど死ぬところだった。
危ない危ない。
もうちょっと戦闘が長引いてたら、こっちに注目されてたな。
空を見上げると、ボロスとサイタマの戦いへと繋がるだろう激動の気配が満ち始めていた。
上空で動く二つの大きな気配。
ちょっとどうしようもない感じがする。
サイタマは無理だと分かっていた。
だが、ボロスの足元くらいには強くなってると思ってたが・・・うぬぼれだったな。比較対象にもならない。
・・・余計なトラブルもあったし、今日はもう帰るか。
ポチへの戦利品も手に入ったことだしな。
主人公が瞬殺しちゃいましたが、グロリバースは(この小説では)マジで強いです。Gブサイク大総統より強いくらいだと勝手に妄想してます。