戦闘終了後。
墜落した宇宙船を尻目に、B級やC級といった下位のヒーローたちによる生存者の救助活動が行われていた。
「大丈夫かい!?」
C級一位ヒーローである『無免ライダー』は、自慢の自転車『ジャスティス号』に乗っていち早く現場に駆け付けたのだ。
町のほとんどは壊滅状態だが、運よく生き残って瓦礫の下に取り残されている者もいた。
無免ライダーを始めとするヒーロー達は、町の中でも比較的被害が少なく、生存者が多いショッピングモールで救助活動をしていた。
「はい・・・ありがとうございます・・・!」
助けられた市民はヒーローたちに感謝をし、ヒーローたちはそれにやる気を出し更に多くの人を助けようと奮闘する。
「にしても、このショッピングモールは生存者が多いな。頑丈な作りだったのか?」
正義感が強く、無免ライダーに続き真っ先に現場にやってきたA級10位ヒーロー『スティンガー』は生存者の多さを不思議に思う。
「かもな。他は跡形もないのに、ここは原形をとどめてるし。まるで砲撃を免れたみたいだ」
スティンガーと一緒にやってきたA級19位ヒーロー『イナズマックス』もそれに同調する。
すると、助けている最中の生存者から声が上がった。
「いや、砲撃を防いでくれた人がいたんですよ。結局この建物も衝撃波で壊れちゃったんですけど」
「私も見ました!フードを被った小さな子が、ビルくらいある弾丸を止めてて・・・」
「ーーはっ? 子どもが、ビルくらいの弾を・・・?」
イナズマックスは思わず自分の耳を疑い、コンクリートの破片を取り除いていた手を止めた。 スティンガーも怪訝な顔をしながら、生存者の市民を振り返る。
「タツマキじゃないのか?タツマキなら砲弾を止めるくらいわけないだろう。実際にやってたしな」
「いえ、違うと思います・・・S級ヒーローのタツマキさんは知ってますけど、姿は全然違いました。女の子には見えましたけど」
スティンガーは見た目だけなら少女のS級ヒーロータツマキの仕業ではないかと疑うが、助けられた女はそれを否定する。
「その後も、ショッピングモールの天井を持ち上げてくれて・・・。それで生き埋めにならずに済んだんです」
「この天井を・・・?S級並みの化け物じゃないか・・・?」
ショッピングモールのあった場所からちょっと横に打ち捨てられた、数百メートルはある天井部分を見て、スティンガーとイナズマックスは戦慄した。
「その子は、今どこに?」
救助活動の手を止めないまま、無免ライダーが聞いた。
「分かりませんけど・・・その辺をうろうろしたと思ったら、宇宙船から轟音が聞こえてきて・・・その後すぐにいなくなってました」
「そうなのか・・・。ヒーロー以外にも、強い人間はいる。そんな親切な人が、助けてくれたのかもしれないね」
それがいずれヒーロー協会に戦争を仕掛ける怪人協会の幹部とは知らず、無免ライダーやそれを聞いた他のヒーローたちはその子供に負けないように強くなろうと決意した。
一方、そこからちょっと離れた場所では、S級ヒーローの童帝やその他数名が、正体不明の戦闘痕の解析を行っていた。
「この破壊規模・・・シルバーファング達四人が戦った敵と同等の敵かもね。でも、血痕や残る肉片を見るに、どうやらここでやられたみたいだ」
グロリバースの体は大半がハグキに噛み砕かれ飲み込まれたが、嚙み砕かれた際の破片が周囲に散乱していた。
童帝はその破片の一つを採取し解析する。
「とんでもない強度を誇る超高密度の生体装甲だ。これをこんなに破壊するなんて・・・どんな破壊力があったらこれができるんだ?」
「硬いのか?俺とどっちが硬いと思う?」
超合金クロビカリが童帝に聞くが、童帝はそれを聞き流しつつ考える。
「多分クロビカリさんだよ(おそらく、宇宙人の幹部格がもう一匹降りてきてたんだ。先に帰ったS級の誰かが遭遇して倒したのか?いや、だけどそんな報告は聞いてないし、こんな粉々にしそうなパワー系は全員あの場にいた・・・)」
「だろうな☆」
「クロちゃん並みに硬い奴がいたならもっと俺たちでももっと苦戦したかも知れないな・・・。じゃあ、俺たちが倒した再生する宇宙人並みの奴を誰かが倒したってことか?」
ぷりぷりプリズナーもまた、先ほど戦ったメルザルガルドを思い出しつつ、ここにある死体を見てその可能性に思い至った。
「うん。判断材料が足りないけど・・・。僕たちの知らないところで、S級が出張るレベルの戦闘が起きていたことは確かだ。おそらく、最初に宇宙船に向かって迎撃をした謎の存在がそうなんじゃないかな。ともかく、警戒するに越したことはない」
S級ヒーロー達は、正体のつかめない強者の存在を感じ取り、これから起こる激動の時代を予感した。
そのころ、A市から離れたハグキは、Z市に向かう地下道を歩いていた。
「ぶわっくしょん!・・・なんだ?誰か俺の噂でもしてるのかな?」
(多少の痕跡は残っちゃったし、まあバレててもおかしくはない、か)
S級ヒーローに自分の存在が気取られていることをなんとなく感じ取ったハグキは、それでも上機嫌で歩く。
(ま、どうせ敵対するしな。遅かれ早かれだ。ハグキとタベルがイコールで結ばれないようにだけはしないとな・・・)
ポチへのお土産が入った胃袋をポンと叩きながら、ハグキは鼻歌交じりにスキップをしていた。