この超常社会Live2Dのイケメンアバターより『疲れ切った23歳男の地声を持つロリ美少女』の方が需要あるのバグ以外の何物でもないでしょ 作:九咲
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## 『超実践的防犯生特番(※ただし画面は地獄)』
「(……神様、今ならまだ間に合います。どこからかヴィランが襲来してこの配信を物理的に強制終了させてくれませんか……)」
国家公認の配信スタジオ(※公安が用意したガチの防音部屋)。
俺の視界の『ウィンドウ』には配信開始30秒前を示すカウントダウンが表示されていた。
隣に座る相澤先生は首元にいつもの捕縛布を巻き手には「猫耳のフェイストラッキング用ヘッドセット」を装着した状態で、死んだ魚の目をしている。
「割内、言っておくが、俺は一切のファンサ(萌え台詞)を拒否する。少しでも台本から逸脱したらお前の個性を消去してこの部屋の壁に叩きつけるからな」
「わ、分かってます先輩! 俺だって先輩の猫耳なんて見たくないですから!!」
ピコンと配信開始のシグナルが灯った。
画面上に現れたのはお馴染みの白髪ケモ耳ロリ美少女『ナビちゃん』。
そしてその横に並び立つジト目の黒髪猫耳ロリ美少女アバター――『イレイザーちゃん』。
『――はい、おつナビー! 諸君、こんばんは。国家公認バ美肉プロヒーローのナビゲイトこと割内駆です(※極上の重低音セクシーイケボ)』
『……イレイザーヘッドだ。広報部の不合理な命令により、今夜はこの姿でサイバー防犯の規律を説く。……コメント欄、騒ぐな。消去するぞ(※ガチの寝不足社会人男性の声)』
配信開始からわずか1分。同時視聴者数は驚異の「150万人」を突破。
美少女のガワから流れる「極上低音イケボ」と「疲れ切ったおじさんのダミ声」のデュエットに日本全国のネット回線が悲鳴を上げた。
コメント欄は、一瞬で爆速のスクロールと化した。
『相澤先生ええええええええええええ!!!』
『猫耳ロリのガワ被って「消去するぞ」はご褒美すぎるwwwww』
『大爆破神(仮):おいコラ相澤ァァァ!!! 何可愛い皮被って偉そうに喋ってんだコラァ!!!(怒りの5万円赤スパ)』
『SHOTO:今日の配信は最高だ。ナビちゃんの低音と相澤先生のローテンション声が完璧にハモって、脳がかつてないスピードで睡眠モードに入りかけている(赤スパ:5万円)』
「(爆豪くん、担任の先生を呼び捨てで煽りながら5万投げるのやめて!! あと轟くん、これ防犯特番だから寝ないで!!)」
俺は冷や汗を流しながら、Live2Dのナビちゃんに可愛いキツネサインを作らせた。
『さて、今夜のテーマは【SNSを使った最新のヴィラン勧誘・詐欺の防衛策】についてです。イレイザー先輩最近の若者のネット犯罪の傾向について、合理的かつあざとく解説をお願いします!』
『あざとく、は不要だ。……いいか諸君、最近のネットヴィランは、お前たちのような警戒心の薄いガキを「簡単、高収入、個性の有効活用」といった不合理な文句で闇バイトへ引きずり込む(※相澤先生が苛立ちで頭を掻いたため、画面の黒髪猫耳がピコピコと激しく連動する)』
『イヤホンジャック(※耳郎):きゃあああ!!! 相澤先生のお耳ピコピコ動いた!!! カワイイ!!!』
『重力ゼロ子(※お茶子):先生カワイイ! でも声が渋渋の渋で脳がバグる!!』
「(女子寮のメンツ、完全に相澤先生のバ美肉をオモチャにしてるな……。明日の朝のホームルームがガチで神野の悪夢になるぞ……)」
配信が中盤に差し掛かったその時、画面に見覚えのある「超ド派手なレインボーエフェクト」が走った。
【¥100,000(赤スパ)】
【Mt.レディ(※公式)】:相澤さーん! 猫耳ロリ最高に似合ってますよー! あたしもコメント欄から応援してまーす! 特製カルビの準備はいつでもオッケーでーす☆
『……岳山』
相澤先生の目が画面越しに怪しく赤く光った。アバターの黒髪猫耳が怒りのあまりピンと逆立つ。
『お前、公式アカウントでの経費スパチャを趣味にするな。不合理だ。明日、お前の事務所の防犯監査(立ち入り検査)を通常の一十倍の厳しさで行うよう、公安の守宮(アイギス)に手配しておく』
(ピコン! 通信の向こうからアイギス(盾)の極上イケボが弾丸のように割り込む)
『アイギス:了解した、相澤先輩。マウンティレディ事務所の会計監査、および防犯ガイドライン(PDF)の遵守状況を、法に基づき徹底的に査察する。優、覚悟しろ』
コメント欄は、
『法律ヤクザきたーーー!!!』
『レディ、良かれと思って乱入して公式に実家(事務所)をガサ入れされるの草』
『国家権力のバ美肉コラボ、おもしろすぎるwww』
ともはやお祭り騒ぎの大焦土。
「はぁ……(※全日本の若者の情緒を完全に掌握する、最高にセクシーで、最高に疲れ切ったため息)」
俺はマイクを限界まで引き寄せ、画面の向こうの、興奮しきった150万人のリスナーに向けて囁いた。
『――……静かに。……悪い子は、誰かな……?
ネットの規律を乱すヴィランには、僕たちのこの(※一瞬だけ相澤先生の猫耳アバターの肩に手を置く)「バ美肉・国家防衛陣形」が夜道でも電子の海でも、100%の純度で金的を狙い撃ちにするからね……?
今夜はもう、僕たちの声を聴いて、大人しくベッドに入って、良い夢を見るんだよ。……おつナビー(吐息)』
プチッ、と配信の切断ボタンを押した。
静まり返ったスタジオ。
同接は最終的に250万人を超え警察庁のサーバーには「若者の防犯意識が前日比で300%向上した」という狂ったデータが記録されていた。
ヘッドセットを外した相澤先生は本日一番の重いため息を吐き俺のジャージの襟元を掴んで引き寄せた。
「割内。……明日のホームルーム、俺の代わりに喋れ。生徒たちの前にこの顔で立つのは不合理だ」
「先輩、それは身から出た錆(公式アバター)ですって!!!」
国家公認のバーチャル妖精たちの明日はどっちだ。