この超常社会Live2Dのイケメンアバターより『疲れ切った23歳男の地声を持つロリ美少女』の方が需要あるのバグ以外の何物でもないでしょ   作:九咲

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第12話「タワマンからの不定期配信」

 

「(……はぁ。部屋が広すぎて、マイクの前で喋る声がちょっと反響して恥ずかしいな……)」

 

最新の防音壁とオートロックが3重にかかった都内タワマンの一室。

俺は最高級の配信用マイクの前に座り窓の外に広がるきらびやかな夜景を見つめていた。1ヶ月前まで100円ローソンのもやしで食い繋いでいた底辺ヒーローの部屋ではない。

 

ピコン、と配信開始のシグナルを入れる。

 

画面上に現れたのは、お馴染みの白髪ケモ耳ロリ美少女『ナビちゃん』。しかし、中の人の声はもうガラガラ声の偽装を完全に捨てた、極上の重低音セクシーイケボだ。

 

『――はい、おつナビー。……ふふ、みんな待たせてごめんね。国家公認バ美肉おじさんこと、割内駆です。……うん、見ての通り無事に引っ越しました。もう女子高生にガスのメーターボックスをチェックされる心配のない最強のセキュリティハウスだよ(※脳の髄まで響くウィスパーボイス)』

配信開始わずか10秒でコメント欄が狂気の大津波と化した。

『ナビちゃん引っ越しおめでとうーーー!!!』

 

『ボロアパートからタワマンへの成り上がり生々しくて草』

『重力ゼロ子:先生、疑ってアパート特定しようとしてごめんなさい! タワマンの頭金にしてください!(赤スパ:1万円)』

 

「(お茶子ちゃん、1万円ありがとう! でもこれ社宅だから頭金いらないの! 自分の生活費のために貯金しなさい!!)」

画面の向こうのLive2Dナビちゃん(可愛い白髪ロリ)が、あざとく首をピコピコと傾げる。

するとコメント欄に一際巨大なレインボーの弾頭が着弾した。

【¥100,000(赤スパ)】

 

【大爆破神(仮)】:おいコラ陰キャイケボ教師ィィィ!!! てめぇ、こないだの公式特番で相澤(猫耳)の肩に手ぇ置きやがったな!? 何が「バ美肉・国家防衛陣形」だクソが!! 画面の画角が狭苦しいんだよブチ殺すぞ!!

 

「(爆殺王さん、怒りの10万円ありがとう!! 引っ越し祝いのご祝儀だとしても金額がバイオレンスすぎるんだよ!! あと相澤先生の肩に触れたのは、そうしないと俺が捕縛布で絞殺される空気だったからだよ!!)」

 

俺が冷や汗を流しながら(※極上の重低音で)「爆豪くん……じゃなくて大爆破神(仮)さん、高額スパチャありがとう。でも、配信上で前回の愚痴を叫ぶのは規律違反だよ」となだめるとさらに間髪入れずに別のレインボーが降ってきた。

 

【¥50,000(赤スパ)】

 

【SHOTO】:タワマンの住所を教えてくれ。マイ枕と蕎麦つゆはもうカバンに入っている。自習室は相澤先生がうるさくて眠れない。先生の生声での『こころ』の朗読が必要だ。

「直球で不法侵入の予告をするな(※轟くん)!!! 5万円はありがたくウチの事務所のサーバー強化費にするけど、タワマンのオートロックは君の氷結の個性でも突破できない設定にしてあるからね!? あと『こころ』の朗読は絶対にしないから!!」

 

コメント欄は、

『轟くんガチ勢すぎて引くwww』

『爆豪の10万と轟の5万でコメント欄が体育祭になってる』

『女子一同:割内先生(地声)のツッコミセクシーすぎて耳が幸せ……(尊死)』

 

と、すでに大炎上の一歩手前。

 

そんなカオスなチャット欄に、突如として「あの男」が静かに現れた。

【¥1,000(青スパ)】

【イレイザー(※公式マーク付き)】:割内。……お前が今、新居で機嫌よく囁いているその裏で、俺は広報部から「次回の特番用アバター(新衣装・ゴスロリパンク猫耳仕様)」の監修を迫られている。非常に不合理だ。今すぐその配信を止めて、雄英のシステム防衛のバグチェックを手伝え。

 

画面が一瞬で静まり返る。

『ひえっ、担任の先生直々のガサ入れだ……』

『ゴスロリパンク相澤先生とか広報部神かよwwwww』

『大爆破神(仮):おい相澤!! 新衣装とか浮かれてんじゃねぇぞクソが!!(赤スパ:2万円)』

 

「(爆豪くん、相澤先生のゴスロリパンクにキレて追加で2万投げるのやめて!! 完全に広報部の財布にされてるから!!)」

 

俺は(※最高にセクシーで、最高に引き攣った低音ボイスで)マイクに顔を近づけた。

 

『――……静かに。……悪い子は、誰かな?

これ以上騒ぐと、明日の朝のホームルームで相澤先生のゴスロリパンクの怒りが全員に一斉照射(グラウンド100周)されるからね……?

 

今夜はもう、僕の声を聴いて、大人しくベッドに入るんだよ。……おつナビー(吐息)』

プチッ、と配信の切断ボタンを連打した。

タワマンの広いリビングに、静寂が戻る。

俺はスマホを手に取り相澤先生宛てに『今からオンラインでシステムチェック手伝います! 高級エナジードリンク3箱送りマース!!』と爆速でメールを送信した。

 

完全身バレを経て、国家公認となったナビちゃんねる。

家賃4万のアパートからは脱出したものの、生徒たちの狂暴な推し活と、担任の先生からの合理的理不尽の包囲網はタワマンのセキュリティすらも軽々と突破して割内駆の胃壁を削り続けるのだった。

 

 

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