この超常社会Live2Dのイケメンアバターより『疲れ切った23歳男の地声を持つロリ美少女』の方が需要あるのバグ以外の何物でもないでしょ 作:九咲
雄英高校から少し離れた、とある古いアパートの一室。
薄暗い部屋のモニターの前で、ジェントル・クリミナルは高級な紅茶のカップを震わせながら、画面を凝視していた。
画面に映っているのは雄英高校の特別講師・割内駆(ナビゲイトのナビちゃんねるのアーカイブ映像だ。
『ナビちゃん(CV:割内):――……静かに。……悪い子は、誰かな?(※極上の重低音イケボ)』
「……素晴らしいッ!!! なんという気品、なんという合理性、そしてなんという破壊的なギャップ萌えだ……!!!」
ジェントルはガタッと椅子から立ち上がり胸に手を当てて深く感動の息を吐き出した。
「見てごらんよ、ラブラバ! このプロヒーロー『ナビゲイト』氏の動画構成を!
彼は自身のヨレヨレとした生身の姿を隠し、白髪ケモ耳ロリ美少女という『バーチャルの妖精』を被ることで、現代の若者たちの情緒を一瞬にして掌握している!
これこそがネットという文明の利器が到達した新時代の『ジェントルマン(紳士)』のあり方ではないか……!」
「うん!! ジェントル、すっごく輝いてる!! ナビちゃんって人のイケボも素敵だけど、ジェントルの声の方が100万倍ジェントルマンでカッコいいよ!!」
ノートPCのキーボードをパチパチと叩きながらラブラバが目をハートにして見上げる。
「そうだろう! 私は気づいたのだよ、ラブラバ。
なぜ私の動画が、今まで世間に評価されずチャンネル登録者数も伸び悩んでいたのか……!
答えは簡単だ。この私の『紅茶好きの初老の英国紳士』という生身の姿が、今の刺激の強すぎる超常社会の若者(リスナー)にとっては、いささか地味すぎたのだよ!」
ジェントルはビシッと画面のナビちゃんを指差した。
「今から動画テロの計画を変更する! 雄英高校の文化祭に生身で突入するのは野蛮だ! 紳士のすることではない!
ラブラバ! 君のその天才的なハッキング能力とプログラミングの『愛(ラヴ)』で今すぐ私に【最高にエレガントで、最高にロリでキュートな金髪ゴスロリ美少女のLive2Dモデル】を作ってくれたまえ!!」
「ジェントルのためなら、私3日で世界一カワイイモデルを作っちゃう!!」
「ありがとう、ラブラバ!
私たちは、雄英高校の文化祭のメインサーバーをハッキングし、ステージのプロジェクターを乗っ取る! そして、私の受肉したバーチャル美少女『ジェン子ちゃん』の姿を大画面に投影するのだ!
全校生徒の前で、金髪ゴスロリ美少女(ガワ)から私のこの(※無駄に響きの良い英国紳士の声)『諸君、おつジェン……! 紅茶の時間は、お好きかな……?』という極上紳士ボイスを轟かせ、彼らの脳を大混乱(バグ)に陥れるのだよ!! これこそが歴史に残る最高のエレガンス!!」
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## ■ その頃割内(ナビちゃん)事務所
「(……ゾクッ!!! な、何これ、急に背筋にすっごい悪寒が走ったんだけど……!?)」
次回の授業用の防犯プリントを作っていた割内駆は個性の『ウィンドウ』の画面が謎のノイズで一瞬揺れるのを見てガタガタと震え出した。
「待って、ウチの防犯ハッキングアラートが聞いたこともない『ジェントルマン風の暗号コード』を検知してる……。
ちょっと解析して……画面に出力……」
半透明のウィンドウに表示されたのは、ラブラバが夜な夜な構築している『ジェン子ちゃん(仮)』の、金髪ツインテールのゴスロリ美少女のLive2Dのワイヤーフレーム(設計図)データだった。さらに、音声のテストログとして、ジェントルのあの渋い声が、ロリ美少女の口の動きと完璧に100%同期して再生される。
『ジェン子(CV:ジェントル):――おつジェン♪ 規律を乱す悪い子には、私の個性『エラスティシティ(弾性)』で、画面の向こうから優しいゴムの弾力をプレゼントしちゃうぞ……(ウィスパー気味の渋い声)』
「嫌だアァァァァァ!!! ネットの海に俺以外の、しかもガチのヴィランのバ美肉おじさん(初老)を解き放つなァァァ!!!」
割内は(※極上の重低音イケボで)頭を抱えて叫んだ。
「何これ、よりによって俺の護身術講座のアーカイブを参考にして動画の最適化アルゴリズム組んでるじゃん!!
マズい、このまま文化祭当日に雄英のメインサーバーが乗っ取られたら、A組のバンドステージの背景に、金髪ゴスロリ美少女(CV:ジェントル・クリミナル)が乱入して、生徒たちの情緒が『神野の悪夢』ばりに大崩壊を起こす!!」
割内はソッコーでスマホを掴み、車椅子の上で寝不足になっている相澤先生に緊急の電話を入れた。
「相澤先輩!! 緊急事態です!! 文化祭当日、雄英に肉体(リアル)ではなく、『電子のガワ(バーチャル)』で潜入してこようとしてるクソ物凄く厄介なバ美肉ヴィランを検知しました!!」
『……割内、お前は何を言っているんだ。頭の個性がバグったのか、不合理だ』
「ガチです!! 相手のハッカー(ラブラバ)の技術がウチの事務所並みに高くて俺のワンオペの処理能力じゃ当日のサイバー防衛戦がギリギリなんです!!
お願いです先輩、今すぐ公安の守宮(アイギス)と、マウンティレディの事務所のサイバー班に連絡して、雄英の全サーバーに『法律ヤクザ仕様の物理障壁』を展開させてください!! じゃないと俺のバ美肉の特許(尊厳)がヴィランに盗まれます!!」
『チッ……。お前が蒔いたバ美肉の種がついにヴィランにまで伝染したか……。本当に不合理な世界だな』
こうして原作の「リアルな殴り合いの文化祭襲撃」は、割内先生の徹底的なサイバー先制攻撃(セキュリティの30重ロック)と、ジェントルたちの「Live2Dのモデリングの微調整によるタイムアップ」によって、【未曾有のサイバーバ美肉防衛戦】へと姿を変え、雄英高校の文化祭は、生身のデクたちが血を流すことなく、裏方のネットの海で静かに、かつ最高にカオスな形で阻止されるのだった。