この超常社会Live2Dのイケメンアバターより『疲れ切った23歳男の地声を持つロリ美少女』の方が需要あるのバグ以外の何物でもないでしょ 作:九咲
## 1. 絶望のハッカーアパート
「……ああ、ラブラバ。私の負けだ。雄英の文化祭を金髪ゴスロリ美少女(ジェン子)のガワでジャックし、私のこの(※渋い声)『諸君、おつジェン……!』という極上紳士ボイスを轟かせる計画は、あの電子の妖精(ナビちゃん)の前に無惨にも散った……! 歴史に名を残すどころか、ただの不審なネットの塵さ……!」
古いアパートの床で紅茶のカップを握りしめたままガタガタと震えるジェントル・クリミナル。
その横で、ラブラバも涙目でノートPCを抱きしめていた。「ジェントル、ごめんなさい……! 相手のセキュリティAIの処理流速が、ウチの『愛』のハッキング速度を完全に凌駕してたの……!」
その時、二人の目の前の空間にパチパチと半透明のデジタル画面――『ウィンドウ』が複数枚ポップアップした。
「――全く、危ないところだったよ。俺が裏で警察庁のサイバー班のログを書き換えて、突入を5分遅らせておかなければ、君たちは今頃『不正アクセス禁止法違反』でガチの鉄格子の中だったからね」
「なっ……何奴ッ!!!(渋い声)」
暗闇の部屋の隅から聞こえてきたのは夜な夜な日本の若者(主に雄英生)の情緒を狂わせている、あの深く甘い脳の髄までとろけるような超絶低音のイケボ。
ジャージ姿の割内駆が視界のウィンドウを操作しながら、疲れ切った目で二人の前に歩み出た。
「国家公認バ美肉プロヒーローのナビゲイトこと、割内だ。どうも、おつナビー(地声)」
「ナビちゃんの中の人……!? 実物は思ったよりヨレヨレの、家賃に追われてそうな青年(23歳)じゃないか……!」
ジェントルが驚愕に目を見開く。
「ヨレヨレ言うな。それより、ジェントル・クリミナル」
割内はスッとマイク(私物)を引き寄せると前世のあの「平和の象徴」が言った伝説の名台詞を最高に現金で、最高にセクシーな重低音ウィスパーボイスでパロディしながら、ジェントルに向かって手を差し伸べた。
「――君のあの動画テロに対する無駄に洗練された編集技術そして紅茶に懸けるエレガントな情熱。……ネットの規律(規約)さえ守れば君のその声と魂は世界中の人間を癒やすオアシスになれる」
割内の後ろの画面に、ラブラバが作った『ジェン子(金髪ゴスロリ美少女)』のLive2Dモデルが美しく起動した。
「ジェントル。……きみは、バ美肉になれる……!」
「な……ッ!!!!!(英国紳士のガチ泣き顔)」
ジェントルはその場に膝をつき、溢れ出る涙を高級なハンカチで拭った。
「ラブラバ……! 聞いたかい……! 国家公認のバーチャルの先駆者が、私のエレガンスを認めてくれた……! 私に、美少女の皮を被る資格があると言ってくれたのだよ……!!」
「うん……!! ジェントル、すっごく輝いてる!!」
「というわけで」と割内は胸のポケットからクシャクシャの契約書を取り出した。
「ウチの『ナビゲイト&アイギス合同ヒーロー事務所』の公式配信クリエイター(V部門)として君たちを雇用する。もちろん、過去の軽犯罪の罰則の代わりに来週から警察庁で行われる『正しいバ美肉(サイバー防犯)研修会』のデモンストレーターとして全国の警察署を回ってもらうけどね。……ギャラは折半、ラブラバちゃんの機材費は事務所の経費で落としてあげるよ」
「謹んで、お引き受けしよう……! ナビゲイト社長(はぁと)!!」
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## 2. 数日後の『ナビちゃんねる』:驚異のシニア枠デビュー
そして、ネットの海にさらなる天変地異が起きた。
完全身バレを経てタワマンから配信を続けるナビちゃんのチャンネルに、初の「公式所属VTuber」として、あの金髪ゴスロリ美少女『ジェン子』が彗星のごとくデビューしたのだ。
『ジェン子:――ごきげんよう、子猫ちゃんたち。……おつジェン♪ 割内社長の導きにより電子の海にエレガンスを添えに参った、ジェン子・クリミナルだよ……(※ラブラバの技術で100倍あザとく動くゴスロリのガワから流れる、最高に渋い英国紳士の声)』
コメント欄は1秒間に5000行を超える大爆発(バグ)を起こした。
『ウソだろおいィィィィィ!!!wwwww』
『ジェントル・クリミナル、動画テロ諦めてバ美肉に就職してて草』
『声の渋さとガワのロリさのレイヤーが厚すぎて脳の処理が追いつかない』
『大爆破神(仮):おいコラ紅茶ジジィィィ!!! てめぇ何可愛い新人の皮被ってウチのクソ教師(割内)の横に並んでんだコラァ!!!(怒りの3万円赤スパ)』
「(爆豪くん、新人のデビュー戦から怒りの3万円ありがとう! でもジェン子ちゃんの紅茶を淹れるLive2Dモーション、お前実生活の規律の参考になるからじっくり見なさいよ!!)」
(ピコン! ディスコードの回線に、公安のアイギス(盾)のガチトーンの極上イケボが割り込む)
『アイギス:ジェン子、およびラブラバ。……我が事務所への所属を歓迎する。ただし、次回の警察庁セミナーの台本(PDF)の暗記が1ページ遅れているぞ。ネットの規律を乱す新人には、私がガチの音声監査(立ち入り検査)を行う。法を舐めるなよ』
『ジェン子:ひえっ……! 盾ちゃんさん、相変わらず規律の刃がガチすぎる……! すぐに音読いたしますので、Mt.レディ事務所へのガサ入れのついでにウチのアパートをボイスシールドで囲むのはやめていただきたい……!』
画面のコメント欄は、
『新人が入ってますます事務所の男気が強くなった』
『法律ヤクザと紅茶おじさんとバ美肉社長のトライアングルカオスすぎるwww』
『SHOTO:ジェン子の紅茶雑談、ナビちゃんの声と同じくらいよく眠れる。……明日、先生のタワマンに紅茶の葉を1年分送る(赤スパ:5万円)』
「(轟くん、5万円ありがとう! でもタワマンに紅茶の葉1年分はカビるから事務所の給湯室に直接納品して!! あと添い寝の準備は本当にやめて!!)」
はぁ……と、割内社長(ナビちゃん)は、最上階の夜景をバックに、最高にセクシーで、最高に賑やかなため息をネットの海へと放流した。
現場のヴィランを「殴り合い」ではなく「契約書(バ美肉の魅力)」で無力化し、そのまま事務所の即戦力へとコンバートしてしまう新時代の治安維持。
国家公認VTuber事務所『ナビゲイト&アイギス』は、このエレガントで最高にカオスな新人を迎え入れ電子の海の絶対王座へとさらに加速していくのだった。