この超常社会Live2Dのイケメンアバターより『疲れ切った23歳男の地声を持つロリ美少女』の方が需要あるのバグ以外の何物でもないでしょ   作:九咲

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閑話3「ジェン子ちゃんねる初単独配信」

 

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## 1. 紳士、バーチャルの頂へ

 

割内(ナビゲイト)社長にスカウトされ警察庁のバ美肉研修のデモンストレーターという「社会奉仕活動(実質:全国ツアー)」を終えたジェントル・クリミナルとラブラバ。

 

彼らに与えられたのは割内事務所のセキュリティ万全なタワマン新スタジオの一角だった。

今夜は、ジェントルが受肉した金髪ツインテールのゴスロリ美少女『ジェン子』としての初の本格的な単独生放送。

 

配信のテーマはジェントルの魂そのものである「最高にエレガントな、英国式ロイヤルミルクティーの淹れ方講座」だ。

 

「ラブラバ、カメラの同期、およびLive2Dのフェイストラッキングの感度は良好かね? 今日こそは、私のこの(※渋い声)紳士たる魂を、全国の迷える子猫ちゃんたち(リスナー)にお届けするのだよ」

 

「バッチリだよジェントル! 今日のジェン子ちゃん、ラヴの力でウインクしたときのエフェクトを10%増量しておいたから、世界一カワイイよ!」

 

ピコン、と配信開始のシグナルが入ると、わずか数分で同時視聴者数は80万人を突破した。完全身バレ後の『ナビちゃんねる』のブーストがかかっているとはいえシニア枠(中身:初老)としては異常な注目度だ。

 

画面上に現れたのは紅茶のカップを両手で持ちあざとく首をピコピコと傾げる金髪ゴスロリ美少女。しかしマイクから流れるのは、骨董品のように深みのある英国紳士の声だ。

 

『――ごきげんよう、画面の向こうの子猫ちゃんたち。……おつジェン♪ ジェン子・クリミナルだよ。今夜は、張り詰めた社会のストレスを極上の香りで癒やす、紅茶の淹れ方についてエレガントに解説しよう(※無駄に響きの良い渋い声)』

 

コメント欄は開始早々からカオスな弾幕で埋め尽くされた。

『ジェン子ちゃん(中身:初老)きたーーー!!!www』

 

『ガワの動きがラブラバの愛のせいで滑らかすぎるww』

 

『声が渋すぎて画面のロリ美少女から加齢臭ならぬ高級紅茶の香りが漂ってくる気がする』

 

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## 2. 脳筋リスナーたち、優雅さに敗北(?)する

 

ジェントルが手元( Live2Dのカメラ範囲内)でお湯の温度や茶葉の選定について熱弁を始めるとコメント欄に早くもお馴染みの「高額なレインボーの弾頭」が着弾した。

(ピコン! 画面に走る派手なエフェクト)

 

【¥30,000(赤スパ)】

 

【大爆破神(仮)(※爆豪)】:おいコラ紅茶ジジィ!! てめぇの言う通りジャンピング(茶葉の対流)意識して淹れたら、お湯の温度が高すぎて渋みがガチで出ただろーが!! スプーンの回し方のスナップが甘ぇんだよクソが!! もっとキレのある蒸らし方を教えろ!!

 

「(……お、おぅふ。アカウント名『大爆破神(仮)』さん……。相変わらず文面が物凄くバイオレンスだね……。だが、お湯の温度に対するその熱い情熱、嫌いではないよ……!)」

 

ジェントル(ジェン子)は冷や汗の Live2Dエフェクトを流しながらも、嬉しそうにツインテールを揺らした。

 

『大爆破神(仮)さん、3万円もの気高いスパチャをありがとう。だが諸君、お湯は沸騰したてを一呼吸置いた「95度」がベストなのだよ。君の爆発的な情熱(個性)でお湯を沸騰させ続けると茶葉の繊細なプライドが傷ついてしまうからね(※極上紳士のウィスパーボイス)』

 

『大爆破神(仮):あぁん!? 誰が湯沸かし器だブチ殺すぞ!!(追加の2万円赤スパ)』

 

「(爆豪くん、ジェン子の紅茶理論にマジレスされて悔しくて追加で2万投げるのやめて!! 完全にウチの事務所の養分になってるから!!)」

 

隣のスタジオからガラス越しに監視していた割内社長(ナビちゃん)が、頭を抱えて突っ込みを入れる。

 

すると、間髪入れずに別の巨大な札束が降ってきた。

【¥50,000(赤スパ)】

 

【SHOTO(※轟)】:ジェン子。先生(割内)のイケボも眠れるが、お前のこの重厚なローテンションの声も実家の親父の怒鳴り声(エンデヴァー)を遮断するのに非常に有効だ。……タワマンの給湯室に送った1年分の最高級アッサム茶葉は届いているか。今夜から、その紅茶の香りを嗅ぎながら『こころ』の朗読を……。

 

『……お、おぅふ。アカウント名『SHOTO』さん、5万円のノーブルなスパチャをありがとう。だが、私は初老の紳士であって、23歳の社長(割内)のような添い寝のキャパシティは持ち合わせていないのだよ……。あと紅茶の葉1年分は、湿気(規律)の観点から非常に管理が難しいので、今すぐ公安のアイギス氏の倉庫に――』

 

(ピコン! 通信の回線に、公安のアイギス(盾)のガチトーンの極上イケボが強制介入する)

 

『アイギス:ジェン子、およびSHOTO(轟)。……我が事務所の倉庫は、未成年からの不審な物資(茶葉)を保管する場所ではない。規律の乱れは看過できん。……それとジェン子、お前は今、 Live2Dのカメラの前でウインクを飛ばしたが、それは台本の「防犯の規律」に記載されていない不必要なモーションだ。法を舐めるなよ』

 

『ジェン子:ひえっ……! 盾ちゃんさん、相変わらず規律の刃がガチすぎる……! 私はただ、画面の向こうの子猫ちゃんたちに紳士的なファンサービスを――』

コメント欄は、

『法律ヤクザのガサ入れ(青スパ)きたーーー!!!』

『爆豪の5万と轟の5万で、ジェン子の紅茶が1杯10万円の超高級品になってるの草』

『女子一同:ジェン子ちゃん(CV:紳士)、割内先生とはまた違う「枯れおじの色気」があって耳が幸せ……(尊死)』

と、もはやお祭り騒ぎの大焦土。

 

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## 3. エレガンスの勝利

「はぁ……(※全日本のリスナーの脳の髄まで響く、最高にセクシーで、最高に深みのある初老の紳士のため息)」

ジェントル(ジェン子)はマイクの限界まで顔を近づけ、ラブラバが作った「最高に愛らしい微笑み」のガワをシンクロさせながら、画面の向こうの100万人のリスナーに向けて囁いた。

 

『――……静かに。……悪い子は、誰かな?

 

夜中に熱い紅茶を飲みすぎると、胃の規律(健康)を損なって、明日の朝のホームルームで相澤先生のゴスロリパンクの怒り(グラウンド50周)に触れることになるからね……?

今夜はもう、温かいミルクを飲んで、大人しくベッドに入るんだよ。電子の海の悪意は、私と、割内社長の30重防壁が、すべてエレガントに叩き潰しておくからね。……おつジェン(吐息)』

プチッ、と配信の切断ボタンを押した。

スタジオの中に、静寂が戻る。

同接は最終的に120万人を超えコメント欄の男9組の脳筋リスナーたちも「紅茶の淹れ方ガチで勉強になったわ」「明日マイボトルで学校に持っていこう」となぜか驚くほど優雅にデトックスされていた。

 

ヘッドセットを外したジェントルは、ハンカチで涙を拭いながら、割内社長に向かって深く頭を下げた。

 

「割内社長……! 素晴らしい、素晴らしいよ……! 私はかつて、動画テロという間違った方法でしか世間に声を届けられなかったが……この『バーチャルの皮(バ美肉)』を被ることで、こんなにも多くの若者たちの情緒を、エレガントに護ることができた……!」

 

「へへ、よかったじゃんジェントル」

割内社長は(※極上の低音イケボで)ニヤリと笑い、社長デスクの上のタブレットを叩いた。

 

「これで今月のウチの事務所の売上、過去最高更新ね。あ、これ相澤先生からの伝言。『ジェントルの紅茶配信のおかげで、爆豪が今朝、奇跡的に穏やかな顔で登校してきた。合理的だから来週もやれ』だってさ」

 

「光栄の至りだよ……! ラブラバ、来週は『最高にエレガントなスコーンの焼き方講座(CV:英国紳士)』の Live2Dモーションを構築してくれたまえ!!」

 

「うん!! ジェントルのためなら、私、最高に美味しそうなスコーンの3Dモデル作っちゃう!!」

動画テロリストから、国家公認の「バーチャル癒やし系紳士(ガワはロリ)」へと華麗なる転身を遂げたジェントル・クリミナル。

彼らの所属するVTuber事務所『ナビゲイト&アイギス』は、このエレガントすぎる新人を武器に電子の海の平和(と家賃)をますます強固に守り続けていくのだった。

 

 

 

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