この超常社会Live2Dのイケメンアバターより『疲れ切った23歳男の地声を持つロリ美少女』の方が需要あるのバグ以外の何物でもないでしょ 作:九咲
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## 1. 包囲網の中の教壇
「(……クソ、緊張で胃が爆破されそうだ……!)」
雄英高校1年A組の教室。教壇に立つ俺の前に並ぶのは、未来のトップヒーローたちの卵。
そしてその最前列には、昨日まで俺の配信のコメント欄で内ゲバを繰り広げていた『大爆破神(仮)』こと爆豪、『SHOTO』こと轟、『インジニウムに憧れる男』こと飯田、そして俺の戦闘理論をノートに書き殴っていたデクが、ギラギラした目でこちらを凝視している。
(……喋ったら一発で終わる。俺の極上低音イケボは、あいつらの睡眠用BGMなんだから!)
相澤先生が教壇の横で気怠げに口を開く。
「おい、紹介する。今回の特別講師の割内だ。戦闘力はゴミだが防犯と情報処理の分野では実践的な知識を持っている。割内、始めろ」
ゴミって言うな先輩。
俺はゴクリと唾を飲み込みあらかじめ仕込んでおいた『身バレ防止トリプル作戦』を始動した。
まず【対策1:風邪のフリをして喉を潰す】。
俺はわざとらしくゴホゴホと咳き込みポケットからハンカチを取り出して口元を押さえた。そして前世の記憶にある「デスボイス一歩手前のガラガラのダミ声」を絞り出す。
「ア、ア、……アーム。諸君、おはよう。本日、防犯……講座を担当する、割内だ。ゴホッ、ゲホッ! 喉の個性のヴィランにやられてな、声がガサガサで申し訳ない……(※ガラガラ声)」
よし、出だしは完璧だ。これならあのセクシー低音の面影は一切――
「――先生! 失礼ながら、その『喉の個性のヴィラン』とは、具体的にどのような能力だったのでしょうか。今後の防犯の参考にぜひ詳細を!」
ガタッと勢いよく起立したのは飯田! 真面目ゆえのストレートな質問が俺の脇腹を抉る。嘘だから詳細なんてねえよ!
ここで【対策2:個性『ウィンドウ』による超高速筆談&合成音声】!
俺はすかさず個性を発動。視界に出した半透明の画面を、教室のプロジェクターに無線で同期させる。screen上に文字をタイピングしながら、スピーカーから「機械的な音声」を流した。
『喉への負担を減らすため、ここからは私の個性を使い、テキストと自動読み上げ音声で授業を進行します』
「ロボットみたいでカッコいいな!」と切島が目を輝かせる。よし、これなら声を出さずに済む。完璧な防衛陣形だ。勝った。家賃3倍のギャラは俺のものだ!
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## 2. 鋭すぎるプロファイリング
授業は順調に進んだ。俺の前世の知識と底辺ヒーローとして培った「一般人がヴィランから逃げるためのリアルな泥臭い護身術」を機械音声で淡々と解説していく。
『路地裏で囲まれたら一番体格の小さい奴の膝を狙え』
『プライドを捨てて防犯ブザーを3個同時に鳴らせ』
生徒たちは真剣にノートを取っている。上手くいっている、そう確信したその時。
緑谷出久がブツブツと呟きながらノートを猛スピードでめくり始めた。
「……あれ? おかしいな。膝を狙うタイミング防犯ブザーを複数鳴らす合理性それにこの『ヒーローのプライドを捨ててでも一般人の生存を最優先にする』っていう泥臭い理論の組み立て方……。どこかで、ものすごく最近これと同じ授業を聞いた気がする……」
「(ヒィッ……!?)」
デクの『緑谷ノート』のページがパラパラと音を立てる。
ストップ、そこで手を止めるな。そのページには昨日ナビちゃんが配信で喋った内容が寸分違わずメモされているはずだ!
「おい、デク。てめぇ何ブツブツ言ってやがる」
爆豪が不機嫌そうにデクを睨む。
「いや、かっちゃん。ほら昨日かっちゃんが寮のロビーでスマホ見てキレてた時の、あの配信者の――」
「あぁん!? あのアホ面ロリケモ耳のことかよ! 一緒にするな、あの配信者の声はもっと耳障りなクソイケボだろ、この先生はガラガラ――」
「……いや」
ここでじっとプロジェクターの画面を見ていた轟焦凍が静かに挙手した。
「割内先生。……先生のその個性の画面、さっきからタイピングの速度とテキストが表示される速度が微妙にズレている。まるで『あらかじめ用意していたセリフを、脳内で再生しながら選んでいる』かのように」
「(……!!?)」
心臓が跳ね上がった。
轟くん、君はなんでそんな無駄に鋭い観察力を持ってるんだ!? ナンバーワンの遺伝子をそんなサイバープロファイリングに使うな!!
「さらに」と轟は続ける。
「先生が時折、無意識に喉を押さえる時の仕草。呼吸のタイミング。……俺が昨日、3時間連続でループ再生して聴いていた『ナビちゃんのおすすめ蕎麦屋雑談』の、あの低音ボイスの主の呼吸の癖に、酷く酷似している……」
「ストーカーかお前はァァァ!!!(ガチの心の声)」
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## 3. 【対策3:精神的カウンター】
教室の空気が一変した。
デクの目が輝き爆豪の掌からピチピチと火花が散り始める。飯田がメガネをクイッと上げた。
「まさか、割内先生、あなたが……『ナビちゃんの兄貴(中の人)』……なのか!?」
(マズい、完全に包囲された……! このままだと『23歳男のバ美肉おじさん』だとバレて、俺の尊厳が雄英高校で爆破される……!!)
追い詰められた俺は、最後の切り札を発動した。
俺はゆっくりとハンカチをポケットに仕舞いガラガラ声ではなく、あえて「ナビちゃんの配信の時の最高に深く甘い低音ボイス」へと声帯を切り替えた。
「(※吐息混じりの、極上のウィスパーボイスで)
――ふふ。……そこまで、私のことが気になっちゃうのかな? 子猫ちゃんたち」
「「「「っ!!!?」」」」
教室にいたA組の全員がその破壊的なイケボの直撃を受けて一瞬フリーズした。女子メンツは「え、何この色気……」と顔を赤くし、轟は脳が睡眠モードに入りかけて一瞬ガクッと膝を揺らした。
その隙を見逃さず、俺はすかさず機械音声のスイッチをONにして捲し立てる。
『今のは有名なVTuber「ナビちゃん」の声真似です。私は彼のガチ勢リスナーなので声紋から呼吸の癖まで完璧にトレースできます。授業中に私のファン活動をプロファイリングするのは不合理なのでやめてください。では次のスライドに移ります』
「ただの熱狂的な限界オタクのファンだったのかよ!!!」
爆豪のツッコミが教室に響き渡る。
横で見ていた相澤先生があからさまに呆れた目で俺を見て「……合理的だが、シンプルに気持ち悪いぞ割内」と呟いたが、知るか!
俺はプロヒーローのプライドとVTuberとしての尊厳をその「ファン活動のフリ」という荒技で見事に守り抜いたのだった。……胃に穴が空きそうだが、来月の家賃はこれで安泰である。