この超常社会Live2Dのイケメンアバターより『疲れ切った23歳男の地声を持つロリ美少女』の方が需要あるのバグ以外の何物でもないでしょ   作:九咲

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第5話「身バレ防止大作戦と法律ヤクザの降臨」

 

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## 1. 迫り来るピンクの脅威

「(ひえぇ……! 何これ、なんで雄英の女子生徒たちの間で、俺の家特定の一歩手前までプロファイリングが進んでるわけ……!?)」

 

週末の夕方。俺はアパートの自室で個性『ウィンドウ』を使ってネット上の自分の関連ログをアクセス(防犯上の通信テストという名のエゴサ)しリアルに嘔吐しかけていた。

A組女子らだと思われるポストで、前回の「イケボで男子を黙らせた配信」の翌日から『第1次女子寮世論戦争』が勃発していたらしい。

「W先生が中の人で確定なら、お揃いの催涙スプレー持ってアパートに生声を拝みに行くべき!」という行動派(三奈・お茶子)と、「現実を見たら23歳の底辺おじさんという絶望が待ってるから幻想を守るべき!」という慎重派(耳郎・梅雨ちゃん)が血で血を洗う思想闘争を繰り広げ、結果として「とりあえず近くのボロアパートのガスメーターボックスを調べよう」という最悪の結論に至っていた。

 

情報収集能力をそんなサイバー犯罪レベルの特定に使うな。

もはや包囲網はアパートの目と鼻の先。明後日の授業でカマを掘られたら確実に終わる。

 

「――というわけなんだよ盾(タテ)ぇぇぇ!!! 頼む、この通りだ! 今夜だけ俺の影武者(VTuber)になってくれ!!」

 

俺は床に五体投地し我が家に招き入れた小学校からの幼馴染み――守宮盾(カミヤ タテ)に向かって頭をこすりつけた。

盾は大手事務所に所属する、将来有望な23歳のエリートプロヒーロー(ヒーロー名:アイギス)だ。個性は『ボイス・シールド』。発した声を物理的な透明な盾に変える能力だがその精密な声帯コントロールにより実は「他人の声を完璧にコピーする(声紋偽装)」という裏技が使える。

 

「断る。理由が不条理すぎる」

 

高級なヒーロースーツを着た盾は、冷徹な目で俺を見下ろした。

「駆、お前が生活費のために動画配信をしているとは聞いていたが、まさか『美少女の皮を被って女子高生にストーカー一歩手前のプロファイリングをされている』など全プロヒーローの風上にも置けない不祥事だ」

 

「不祥事じゃない! 健全な防犯講座だ!!」

 

俺はガバッと顔を上げ涙目で訴えた。

 

「今夜の生配信で『生身の割内先生が画面に映っている目の前でナビちゃんが同時にリアルタイムで喋っている』という、完璧な物理的アリバイを作るしかないんだよ! 配信の台本はこれだ! 頼むお前の大好きな高級プロテイン1か月分奢るから!!」

 

「……チッ、1か月分だな。今回だけだ」

 

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## 2. ガチの規律、ネットの海へ

 

その夜、ネットの海に衝撃が走った。

 

いつもは1枚絵のLive2Dしか映らない『ナビちゃんねる』に、突如実写のビデオ通話画面がワイプで表示されたのだ。そこに映っているのは、ヨレヨレのジャージを着てガラガラ声で手を振る俺(割内駆)の姿。

 

そして配信のスピーカーからはいつも通りの「あの極上低音イケボ」が流れ出す。もちろんマイクの前に座っているのは、超真面目な顔でカンペを睨みつける盾だ。

 

『――はい、おつナビー。……ふふ、今夜はいつもと趣向を変えて私の防犯理論を絶賛してくれているプロヒーローの『ナビゲイト』氏と、同時ビデオ通話でお届けしているよ……(※盾が完璧にコピーした極上イケボ)』

コメント欄は一瞬で大パニックになった。

 

『ええええええ割内先生じゃん!!!』

『本物だ!!! え、じゃあやっぱり中の人は別人で二人は知り合いだったの!?』

 

『重力ゼロ子:えっ……じゃあ、ウチらのプロファイリング、間違ってた……?』

『イヤホンジャック:ほら見なよ!! リアル突撃なんてするから先生に迷惑かかってんじゃん!!』

 

画面の裏で、俺は(勝った……!!!)とガッツポーズを決めていた。

女子たちの特定班が見事に瓦解していく。これぞ完璧なアリバイ工作。

しかし、ネットのノリを1ミリも知らないエリートヒーロー・守宮盾は、ここから暴走を始めた。割内が書いたファンサ用の台本を完全に無視し手元のガチの法律文書のような文面を重厚なクソ真面目トーンで朗読し始めたのだ。

 

『(※極上イケボで)……さて今夜の防犯講座だが、昨今、女子高生による悪質なストーカー行為およびボロアパート周辺の徘徊事案が多発している。これは刑法第130条の住居侵入罪、ならびにストーカー規制法に抵触する重大な犯罪行為だ。……画面の前の不届きな子猫ちゃんたち、法を舐めるなよ?(※真顔)』

 

コメント欄が急に静まり返る。

 

『あ、あれ……? 今日のナビちゃん、なんか言葉の刃がガチすぎない……?』

『「法を舐めるなよ」の低音ボイス、イケボすぎて逆に警察のガサ入れかと思った』

 

『大爆破神(仮):あぁん!? 誰が不届き者だコラァ!! 法律ヤクザみたいな喋り方してんじゃねぇぞ金的ロリが!!』

焦った俺は、実写画面の向こうで必死に「もっと柔らかく! 吐息混ぜて!」と盾にジェスチャーを送る。

 

盾は小さく舌打ちする台本の最後の行――割内が書いた「ファンサ用のセリフ」を、エリートの威厳マックスの超低音ウィスパーで出力した。

『(※マイクに顔を近づけ、重厚な破壊力を持つ超低音で)』

『――……静かに。……お前たちの規律の乱れは私が許さない。……今夜は大人しくベッドに入って、我が事務所の防犯ガイドライン(PDF)を10回音読して、おやすみ……子猫ちゃん(※10割ガチの脅迫・公安トーン)』

 

(ドゴォン!!! と、信の向こうの雄英男子寮から謎の爆発音が響く)

『ひえっ、今日のナビちゃん覇気がトップヒーローのそれ!!!』

『ベッドの中で正座してPDF読みます!!!』

『SHOTO:……今日の声、いつもより低くて心臓に響く。蕎麦がうまい』

 

「(轟くん、起きて!!! 覚醒しちゃってるから!!!)」

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## 3. 外堀の新たな崩壊

 

こうして、幼馴染みのエリートヒーローを巻き込んだ「身バレ防止大作戦」は一部のリスナーに重度の恐怖とトキメキを植え付けながらも見事に俺のアリバイを証明することに成功した。

 

翌日の授業では疑惑が晴れて申し訳なくなったA組女子たちが職員室で「割内先生、疑ってごめんなさい!」と大量の高級のど飴を差し入れしてくれるというかつてないモテ期(?)まで到来した。

だが、地獄は終わらない。

 

その日の夜、もう一人の幼馴染みであり、今やビルボードチャート上位常連のトップスター――Mt.レディこと岳山優から、3人のグループLINEに1通の通知が届いた。

 

『駆! 盾ちゃんに聞いたよ!盾ちゃんに影武者やらせて配信で法律ヤクザやったんだって? ウケるー! っていうかさ、あたし最近忙しくて定例飲み会全然できてないじゃん! 寂しいから今週末、いつもの居酒屋ね! 駆、10万くらいスパチャ投げてあげるから特上カルビ奢りなさいよ☆』

「(絶対にやめて!!! お前みたいな有名人がウチの配信に関わったら、今度こそこの世から俺の存在が抹消される!!!)」

画面の向こうで、俺は再び迫り来る「もう一人の幼馴染み(出世頭)」の悪意なき破壊の予兆に、胃薬を握りしめて絶叫するのだった。

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