この超常社会Live2Dのイケメンアバターより『疲れ切った23歳男の地声を持つロリ美少女』の方が需要あるのバグ以外の何物でもないでしょ   作:九咲

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第6話「幼馴染みのトップヒーローの悪意なき介入」

 

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## 1. 嵐の前の、いつもの居酒屋

神野区の片隅にある、個室完備のちょっと高めの居酒屋

 

「ぷはぁーーー!!! 生き返るぅぅぅ!!! 最近マジで週休ゼロ日で働き詰めだったからさぁ!」

 

ジョッキを豪快に空けてそう叫んだのは今やテレビで見ない日はないトップヒーローMt.レディこと岳山優だった。私服姿でも隠しきれない抜群のスタイル。だが中身は昔なじみのガサツな幼馴染みのままだ。

 

「優、声が大きい。個室とはいえ、お前の声のボリュームは近所迷惑だ。……あと、まだ俺たちの分が届いていない」

スーツ姿の守宮盾(アイギス)が生真面目な顔で手元のウーロン茶に口を付ける。

 

「いいじゃん硬物盾ちゃん! それよりさぁ!」

優はニヤニヤしながら、メニュー表の陰で死んだ魚の目をしている俺の肩をバシバシと叩いた。

「駆! あんた最近、なんか雄英高校の特別講師に抜擢されたんだって? 相澤さんから直々に指名とかやるじゃん底辺卒業!?」

「底辺卒業どころか毎晩命の危険を感じてるよ……」

俺は(※極上の重低音イケボで)力なく呟きA組女子からもらった高級のど飴を口に放り込んだ。

 

「うわ、何その無駄なセクシーボイス。相変わらず声帯だけは100点満点ね」

 

優は上機嫌で焼き鳥を頬張る。

 

数ヶ月ぶりの定例会。優が有名になりすぎて忙しくなってからテレビの中でキラキラ輝く彼女を見るたびに「遠い世界に行っちゃったなぁ」なんて少し寂しく思っていたが、目の前でガサツに笑う姿は完全に昔のままで少しだけ安心する。

 

「まぁ……あんたがどれだけ美少女になってようがこうしてまた3人で飲めるなら何でもいいわ。……はい、駆、盾ちゃん、乾杯し直し!」

この時は、本当に楽しかったんだ。

この数日後このお気楽なトップヒーローが俺のバーチャル隠密生活を根底から木っ端微塵に粉砕するとは夢にも思っていなかった。

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## 2. 10万円の弾頭

居酒屋での定例飲み会から数日後。

俺は今夜もアパートの自室で「美少女の皮を被った底辺ヒーロー(CV:無駄にイケボ)」として企業案件の防犯グッズを紹介する生配信を行っていた。

 

「(※吐息混じりの、深く甘い低音ボイスで)」

 

「――はい、おつナビー。……ふふ、今夜も画面のナビちゃんは最高にカワイイでしょ?

今日はね、こないだ女子高生の皆さんに大好評だった『ピンクゴールド仕様の催涙スプレー』のより具体的な噴射角度について解説を――」

 

(ピコン! 画面に、今までに見たこともない巨大なレインボーのエフェクトが走る)

【¥100,000(赤スパ)】

【Mt.レディ(※公式認証マーク付き)】

『駆ー! 配信見てるよー! この間はありがとね! あんたが配信で言ってた催涙スプレー、あたしの事務所のサイドキックたちにも配ったら大好評だったわ! 来週の定例飲み会、焼き肉にしよっか! 盾ちゃんにも連絡しといてー!』

「(……はい、俺の配信者人生、および雄英での教師生命が今、完全に粉砕されました。ありがとうございました)」

画面の向こうのLive2Dナビちゃん(白髪ケモ耳ロリ美少女)がかつてないレベルで白目を剥いて完全に硬直する。

コメント欄は、1秒間に1000行を超える大津波と化した。

『ええええええええええええええ!??!?!?!』

 

『Mt.レディ本物!!!? 公式マークついてるんだけど!?』

『待って、レディがナビちゃんを「駆(かける)」って呼んだ!?』

『「駆」って、雄英のあのガラガラ声の特別講師、割内駆先生じゃん!!!』

『重力ゼロ子:……やっぱり、割内先生がナビちゃんやったんや……!』

『インジニウムに憧れる男:割内先生!! 貴方がナビちゃんだったのですか!! なぜ今まで我々に隠されていたのですか!!』

『大爆破神(仮):おいコラ陰キャ教師ィィィ!!! てめぇふざけんじゃねぇぞブチ殺すぞコラァ!!!(怒りの5万円赤スパ)』

「(あぁぁぁ……コメント欄が神野の悪夢より焦土と化している……!!! 爆殺王の赤スパが、怒りのあまり札束の暴力になって飛んでくる……!!!)」

 

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## 3. 現実(リアル)を見てね

俺はマイクのミュートボタンを連打したい衝動を必死に抑え限界まで声を低くセクシーにいや、10割ただの「生々しい絶望の男声」で画面の向こうの幼馴染みに向かって叫んだ。

「岳山ァァァ!!! お前何してくれてんだよ!!! 応援するにしてもやり方ってものがあるだろ!! なんで公式垢で10万も投げてんだよ!

あと『駆』って呼ぶな! 『パートの壁の防音性』を舐めるな! 盾がガチのトーンで怒り狂ってお前の事務所の前に物理的なボイスシールド展開しに来るぞ!!」

 

(ピコン! さらに追加の赤スパ:5万円)

『Mt.レディ:え、ごめん。あたし悪気はなかったんだけど……。スマホの操作よく分かんなくてつい普段のノリでコメントしちゃった(汗) あ、バラしたお詫びに次の焼き肉、あたしが特上カルビ奢るから許して☆』

 

「許せるかァァァ!!! カルビで俺の尊厳と隠密生活が買えると思うなよ!!!

あ、見て、コメント欄の『SHOTO』くんが……『割内先生=ナビちゃん……。つまり、俺が毎晩添い寝代わりに聴いていたのは、昼間ヨレヨレのスーツを着ている担任の同僚のお兄さんの声……?』って、ガチの宇宙猫みたいな顔のアイコンのままフリーズしてる!!!

 

違うんだ轟くん! 騙して悪かったけど、君の家庭環境のストレスを癒やしてたのは間違いなく俺の極上イケボなんだ!! だからお願い、実家(エンデヴァー)に通報しないで!!」

画面のコメント欄では

 

『女子一同:割内先生が……中の人……(尊死)』

『男子一同:俺たちが毎晩金的の角度を教わってたロリ美少女、学校のあの冴えない先生だったのかよ……(複雑な感情)』

と、雄英1年A組の情緒が完全に大爆発を起こしていた。

「はぁ……(※全リスナーの脳の髄まで響く、最高にセクシーで、最高に疲れ切った大人男性の吐息)」

「……もう隠し通すのは無理だね。

はい。画面の前の子猫ちゃんたち、および雄英A組の諸君。私が白髪ケモ耳ロリ美少女のガワを被って家賃4万のアパートを維持している底辺ヒーロー、割内駆です」

 

これ以上配信を続けると明日の朝のホームルームで相澤先生に文字通り『抹消』される。

「A組の男子諸君、明日の授業は怒らないから、大人しく席についててね。女子諸君、生身の俺にピンクゴールドの催涙スプレーを向けないでね。……よし、じゃあ治安維持(相澤先生への謝罪メールの作成)に行ってきます。おつナビー。……みんな、良い夢(現実)を見てね」

プチッ、と配信の接続を切った。

静まり返ったアパートの自室で、俺はスマホを握りしめ、来週の定例会で岳山優の口に特上カルビを限界まで詰め込むことを固く誓うのだった。

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