ありがとうオリゴ糖。
その後にこんな話を書いていいのだろうか。
大晦日へと近づこうとしている最中、昼前に橋本から連絡が来た。
どういうわけか高円寺、龍園とグループチャットを作成して。
【橋本正義:鍋パしようぜ!】
鍋パ、つまりは鍋パーティの略である。
鍋の中に思い思いの具材を入れて食べる。
学生時代にやるかやらないかで言えば、部活動に所属していたり、陽キャとカテゴライズされる人間ならやるかもしれない。
それくらいのイベントである。
【高円寺六助:よく分からないがこの4人で集まるということかな?】
【橋本正義:他に呼びたい奴がいるなら増やしてもいいぜ】
【龍園翔:どこでやるんだよ】
意外にも高円寺と龍園は橋本の誘いを断る気はないらしく、詳細について尋ね始めている。
【橋本正義:斉木の部屋でどうだ? 大所帯になるならケヤキモールの中にある集会所とかを借りるつもりだ】
なんで僕の部屋なんだ。
そして、龍園と高円寺は特に否定せずに賛成している。
僕が見ていることは既読の数で把握しているようで、僕が抗議の声を出さないことから橋本は了承と取ったらしく、時間や材料の買い出しの話へと移る。
【橋本正義:今日の夜にやるとして、材料の買い出しはどうする?】
【高円寺六助:橋本ボーイと楠雄が用意するんじゃないのかい?】
【橋本正義:鍋パってのは自分が食べたいもんを持ち寄るものなんだよ】
(肉だな)
(肉だねぇ)
男子高校生は肉しか食わないのか?
思い思いのでいいならチーズケーキでもぶち込んでやろうか。
今回は好きな鍋の具であるのと、一般常識や倫理観は怪しいものの食に対するこだわりはまともなメンバーであるためあまり心配することはないが。
【橋本正義:4人で買いに行くのとそれぞれ持ってくるのどっちがいい?】
この4人で……?
バカを言うなよと思ったが、そういえば今年の1月の混合合宿で一緒になってからなんだかんだでよくいることが多かったような気がする。
夏休みも何故かラーメンを食べていたし、何故か龍園のクラスで昼飯を食った記憶もある。
いつの間にか斉木軍団と呼ばれるようになっているし、何かがおかしいと思っていると高円寺と龍園がメッセージを送ってくる。
【高円寺六助:楠雄に任せるとしよう】
【龍園翔:あいつに任せたらコーヒーゼリーとか入れるぞ】
冗談を言うな。
好きな食べ物を持ってこいと言われたら持っていくが、鍋に持ち寄るものではない。
というか、僕は部屋を提供するのだし、買い物に付き合う必要はないのではと思ったと共に肝心の鍋とカセットコンロを僕は持っていないことを思い出す。
【斉木楠雄:鍋とカセットコンロがない】
【橋本正義:もう買った】
メッセージと共に新品の電気鍋の写真が送られてくる。
この前のクリスマスセールの時に買ったもののようだ。
3人とも乗り気であるため、僕が断ったところで龍園と高円寺あたりが乗り込んでくるのは確実。
なんなら、断れば一之瀬さんのことでからかわれたりする可能性もある。
というか、急になんで鍋パーティをしたくなったんだ橋本のやつは。
それに龍園と高円寺が乗り気なのも気がかりだ。
もしかするとこれは、僕の知らないところで3人が共謀して僕を罠に嵌めようとしているんじゃないだろうか。
しかし、今日は予知夢も見ていないし、僕に不都合な予知も見ていない。
考えすぎだろうか……。
【橋本正義:じゃあ、17時にケヤキモールのスーパーに集合な】
(まぁ、その時間ならいいか)
(ではそれまで私はジムで汗を流させてもらうとしようかねぇ)
怪しんでいると知らぬ間に結局4人で材料を買うことが決まっていた。
龍園と高円寺は返事はしていないが、テレパシーを聞いている限りでは時間は把握したらしい。
あまり気は進まないが3人が僕を貶めようというのなら止めないわけにはいかない。
この前、坂柳さんにもしてやられたばかりだからな。
今度の僕はちょっと強いぞということを見せてやらねばならない。
とりあえず、3人が来るのなら部屋は掃除しておくか。
それと、静かな時間も17時までということなら今のうちに溜まっていた本やドラマを観ることにしよう。
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17時前にケヤキモール内のスーパーに着く。
夕食前ということもあって材料を買いに来る生徒が多いかと思ったが、日が沈んで寒くなる前に済ませたのか思っていたよりは数は少ない。
「よっ、斉木」
何処で待っていればいいのかよく分からなかったため、スーパーの入口横の壁にもたれていると橋本がやってきた。
どうやら他の2人はまだのようだが、一応はこの場所に向かってきている様子だ。時間を過ぎても来ない場合は僕と橋本で買えばいいと思っていたが、そういうことにはならないらしい。
『鍋は?』
「流石にここまで持ってくるのは重いからな。斉木の部屋に材料を置いたら、取りに行くつもりだ」
それなら事前に置いていくか、そもそも橋本の部屋でやればいいんじゃないだろうか。
そう言うも橋本は少し散らかっているから難しいと答える。
『神室さんと何かあったのか?』
「神室ちゃん? (なんで斉木が神室ちゃんのことを? まぁ確かにクリスマスの日に部屋に誘ったら断られたが……)特に何もないぜ。強いて言うなら片付けが進まなくてな。それに龍園が来るとなると面倒なものもある……あとはわかるだろ?」
別にエロ本くらい置いてあっても龍園は気にも留めないと思うが。
ただどういう類のものかによるだろう。
アブノーマルな性癖であれば弄ってくる可能性は高い。
「そういう斉木こそ、イブと本番はお楽しみだったんじゃないのか? (イブは知らないが、クリスマスは一之瀬や綾小路とか1年生と一緒にいるのを見たやつがいて、何やら楽しげだったとは聞いたが……まぁロールケーキ食ってるならそりゃ斉木は楽しげだよな)」
特に楽しいということはなかったな。
美味しいとは思ったが。
坂柳さんたちがサンタ衣装で訪ねてきたことなどは広まっていないようで何よりである。
悪くないロールケーキを食べたと話していると、龍園と高円寺がそれぞれ別方向からやってくる。
「意外だな。2人とも時間を守るなんて」
「遅刻してクソみたいなもん入れられたら堪んねぇからな(そこのクソメガネに)」
「私と楠雄が食べるに相応しい食材を選ぶからには当然だとも」
2人が遅刻するとみていた橋本は若干驚いた表情を見せた後、4人揃ったところでスーパーへと入って鍋の具材を探し始める。
カートにカゴを入れて橋本が押しながら歩く。
「さてと、まずは野菜からだな。って、高円寺は鍋は食ったことあるのか? (ラーメンはなかったが)」
「すき焼きなら食べたことはあるが、今日やるような寄せ鍋と呼ばれているものははじめてだねぇ」
「チッ、相変わらずのボンボンだな」
白菜やネギ、菊菜などといった鍋の定番の野菜が並んでいるコーナーに行きながら各々が意見を交わしていく。
高円寺は鍋料理はすき焼きしか食べたことがないらしく、ある程度調べた後に悪くないと思ったのか、一度くらいは食べてみようということで今回の参加を決めたらしい。
しかし、気になることが一つ。
『具材はいいとして、出汁はどうするんだ?』
鍋であるのならば出汁が必要となるはずだ。
それについて問いかけると、橋本が得意げな顔をする。
「それなら問題ない。昆布だしを取らなくても鍋の素を買えば問題ないからな」
なるほど。
言われてみれば、最近は様々なメーカーから昆布や鰹だしを取らなくても〆まで美味しいなべスープや素が出ている。
寄せ鍋の素やあごだし、ゴマ豆乳鍋、柚子鍋、キムチ鍋、カレー、トマトと多種多様な味が楽しめるようになっている。
「ラーメン屋が監修してる鍋の素も増えてきたしな」
「俺からすればあんなの邪道だ。天一が食いてぇなら天一に行くべきだろ(カップ麺やチルドでも出てるのが店で食うのが1番だ)」
インスタントで人気チェーン店のラーメンが楽しめるというのは悪くないことのように思う。
ただ、龍園のように本場の味や元の味こそ至高と思う人間がいるのも事実。
そう思う人間は店に行って食えばいいだけの話である。
「まぁ今回はシンプルなやつにするけどな。しゃぶしゃぶにしてポン酢でいただくのはどうよ」
まぁ寄せ鍋のような形になるのであればそれが無難だろう。
龍園も文句はないのか「だったら、大根おろしはマストだ」と3分の1にカットされた大根をかごにいれる。
誰がすりおろすのかはさておき、野菜の方はいいのかとカゴを見る。
すると、とても4人だけで食うには多すぎる量の野菜が入れられていた。
何? 明日もやるのこれ? と聞きたくなるような量だ。
白菜にしめじ、椎茸、ネギ、菊菜ときのこ類が2つある以外は別にいいんだが、白菜が丸々1つとネギが4本というのは過剰すぎないだろうか。
(男4人だからこれくらいは食うだろ)
おばあちゃんの家じゃないんだからその量は出すな。
バレないように適切な量へと調整しつつ、豆腐コーナーの前を通る。
「次は肉だなー」
「当たり前だろ」
「そうだねぇ」
豆腐は!?
鍋に豆腐はマストじゃないのか? と思いながら、鍋用に予め切り分けられた豆腐があったため、それを入れる。
そんなことには気付かずに3人は魚コーナーの前を通る。
「橋本ボーイ。鍋には魚を入れることもあると目にしたが、今日は入れないのかな?」
「あぁ、白身魚とかあとは貝類も入れたりするけど今日はいいんじゃね?」
一応、鍋の季節ということもあって鍋用の魚としては学生の財布にも優しい鱈以外にも鯛や牡蠣やホタテ、カニなどの鍋用に下準備されたものなどが多く並んでいる。
しかし、龍園は目もくれずに肉コーナーへと歩いていく。
「肉は牛肉か? 豚か?」
「何でもいいだろ。全部でいいじゃねーか」
「いいねぇ。とてもいい」
良くは無い。
入れて2種類まで、それも鶏肉と豚肉くらいでいいだろう。
牛肉はアクも出るし、値段も張る。
「何ケチくさいこと言ってやがる(学年で一番ポイント持ってるくせに)」
持ちたくて持ってる訳じゃない。
しかし、2年生になってからは無人島試験や夏休みの豪華客船での宝探し、そして体育祭などでポイントを得る機会が多かったため個人的な資産は学年の中では最も多くなってしまっている。
なるべく目立たないようにと思っていたのに、結局はこの始末だ。
それもこれもこの高校の制度やら方針が悪い。
おのれ坂柳理事長め、あんな面倒で恋愛脳で頭の良い娘を作りやがって。
「どうした斉木、顔怖いぞ(牛肉嫌いなのか?)」
嫌いじゃない。
というか、今回の支払いはどうするんだ?
「割り勘じゃないのか?」
「あ? 斉木の奢りだろ」
「橋本ボーイの奢りじゃないのかね?」
バラバラすぎる。
橋本はともかく、奢られる気でしかいない2人は論外だ。
外国産の肉でもいいかと思いきや、そこは橋本が国産がいいと断固として主張してきたため、仕方なく国産の豚肉、牛肉、鶏肉を人数分購入することとした。
龍園と高円寺は黒毛和牛やプレミア豚などに手を出そうとしていたが『買うなら自分で払えよ』と言うと舌打ちしながら棚に戻していた。
僕はお前らの母さんか。
「よっしゃ。あとは〆のうどんだな」
「〆までやんのか? まぁいいが」
うどんに限らず、鍋の〆といえば雑炊やラーメン、トマト鍋などであればリゾットと結局は炭水化物などがある。
今回はだしつゆで、ポン酢につけて食べるためうどんの方がいいだろう。
そのためのポン酢をカゴに入れ、橋本がウインナーを入れる。
『飲み物はどうするんだ?』
アルコールは禁止されているので普通にジュースなどを買っていけばいいが。
お茶、水、炭酸系と必要なものを揃えていく。
箸とコップは実家から持ってきておいたため、問題ない。
箸の他にも取り皿や取り箸なども母さんに事情を話して貸してもらっている。
「あひゅ〜! くーちゃんがお友達とお鍋パーティ〜! どんどん持っていって! 棚ごと貸すわ!」
そんなにはいらなかったので丁重にお断りした。
4人で会計を済ませてそれぞれ均等に荷物を持つとスーパーを出る。
男4人が冬休みに外を歩いていたところで、普通であれば注目を集めることはない。
しかし、人目を惹きやすい龍園と高円寺に加えて、諜報活動をしていたせいで顔の広い橋本、そして体育祭の活躍で学年どころか学校最強にまで昇格させられてしまった僕の組み合わせとなれば多少なりとも目立ってしまう。
「な、なんだよあの4人……」
「知らないの? 斉木軍団だよ」
知らないだろそんな軍団。
たけし軍団なんて今の学生のほとんどが知っているはずもない。
まぁ、僕らの由来は桜木軍団らしいが。
怯える1年生に椿さん……って、椿さんも1年生か。
クラスメイトらしき1年生に椿さんが教える。
「斉木楠雄。あのグループのリーダーってわけじゃないけど中心かな。噂は聞いたことあるよね」
「う、うん。学校最強で、1人で1学年分の戦力があって、OAAオールA+で、プライベートポイントマンで、斉木先生の弟で、体育祭で世界記録を更新して宝泉くんを岩盤に叩きつけてMVP取って、スイーツが大好きなカフェ男子のフリして学校の危険人物を見張っているエージェントで、文化祭にガチ女装をして多くの男の子と同性愛者の女の子の性癖を狂わせた人だよね」
噂が肥大化してる!?
否定できるのが1人で1学年分の戦力とエージェントのところと、性癖を狂わせたところくらいか……?
「あと生徒会長の婚約者。あ、新しい方……一之瀬会長の方の」
古い方の婚約者になるくらいなら僕はこの地球を消すぞ。
1年生たちのコソコソ話は途中まで目指す方向が同じで近い距離を歩いているせいもあってか龍園たちの耳にも届いていた。
「ククク、良かったな。人気者じゃねぇか」
「一之瀬ガールとキスはしたのかい?」
「おいおい、お前らあんまり揶揄うなよ」
宥める橋本だがその顔は笑っており、楽しんでいるように見える。
キスなら別のやつに不意を突かれてしたところだ。
思考が多すぎて読めなかったのと、考えずに本能に従ってされたせいで避けられなかったのは不覚すぎた。
まさか母さんと父さんの結婚記念日にタイムリープした時に会ったあのケツアゴの不良みたいなやつが他にもいるとは。
そのうち相棒とか呼んで来ないだろうな、坂柳さん……。
「あんまり怖くないよ。スイーツ好きだし、意外と優しいし、話しかけたら気だるそうだけど答えてはくれるし」
「ふふっ、桜子ちゃんみたいだね」
「私は違うって」
椿と同級生の話を聞いていても気が滅入るだけなので聞くのはやめようと思ったが、僕の話ばかりで他3人に触れられる気配がなかった。
それに龍園が目を細めていた。
面白そうというわけではなく、僕を睨むような細い目だ。
「お前……後輩にまで手ェつけてんのか……」
「そういや、天沢と七瀬とも飯行ったんだよな……(クリスマスだけじゃなくて無人島試験終わりの豪華客船でも食ってるとこ見たって聞いたが)」
「強き男に女性が群がるのは当然だと思うがねぇ。ところで、私の話はいつ出るのだろうか? (楠雄があれだけ持ち上げられるのであれば、この中ではNo.Ⅱの私はどのような称号がついているのかねぇ)」
やれやれ。
最近は1人でも目立つというのにこいつらといては余計に目立つな。
『後輩に手を付けてるのはお前もだろ、龍園』
「キメェな……なんで知ってんだ? 見てたのか?」
龍園は特別年下が好きというわけでは無く、普通の女の子が好きなんだそうだ。
この学校にそんな希少種がいるとは思えないが、下の学年には少数だが存在しているらしい。
いじめているのかと思ったが、そういうわけではないようで暇つぶし程度に遊んでいる程度だ。
傷つけるつもりもなければ、本気で付き合っているわけでもない。
どこの綾小路だ。
まぁ、龍園が誰とどう関わろうと好きにすればいいと思うが。
おかげで龍園へと話題が移ったのをいいことに寮までの道を歩いていく。
直ぐに鍋を食べられるというわけではなく、野菜を切ったり、鍋を沸騰させたりとやることは多い。
「そういえば、昨日、うちの真田が斉木と……(泣いてる姫さんを見たって聞いたが何かあったのか?)」
『橋本、荷物持ってやるから鍋を持って来てくれ』
「え? あぁ。(まぁ、また後で聞けばいいか)わかった」
その話だけは絶対にさせない。
話せば僕が今日死ぬか生きるかの戦いになるからな。
とりあえず、この鍋が美味かったという感想で終わることを願うばかりだ。
オチは?
特に、なぁい。
海藤▶︎橋本
燃堂▶︎高円寺
窪谷須▶︎龍園くらいの感覚で描きました。
厨二病じゃない海藤
知性のある燃堂
義のない窪谷須
誰!!?
てことでまた次回
好きな女の子キャラ(一部のみ)
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坂柳有栖
-
一之瀬帆波
-
椎名ひより
-
櫛田桔梗
-
鬼龍院楓花
-
天沢一夏
-
七瀬翼
-
椿桜子
-
堀北鈴音
-
佐倉愛里
-
伊吹澪
-
姫野ユキ
-
白波千尋
-
森下藍
-
白石飛鳥
-
山下美紀
-
斉木久留美
-
斉木栗子
-
この中にはいない
-
私はゲイです