そのためクオリティは低め
申し訳ない
2年続けて無人島での特別試験はみんな予想はしていなかった訳ではなかったためか、特別試験開幕開けに合わせた恒例とも言える話し合いは授業終了後すぐに始まっていた。
一之瀬さんの座る席の近く、つまりは僕の隣に集まった神崎と共に状況整理をしていた。
「同学年なら誰とグループを組んでもいいかぁ……(同じクラスだし当然だけど楠雄くんとも組めるってことだよね)」
「勝った時のクラスポイントは分配されてしまうデメリットはあるが、他クラスで徒党を組まれると厄介なのは間違いないな」
これまでの特別試験にはなかった学年同士で手を取り合える可能性。
学年を超えた戦いができると言っていた南雲の言う通りとなってはいるが、その旨みは薄い。
自分達のクラスだけで構成したグループが1位を取ることが効率よく試験を終える唯一の方法ではあるが理想論に過ぎない。
特別試験が始まってからのグループ編成は容易ではないとのことから、初めの小グループの時点である程度の人材を確保しておく必要がある。
しかし、今の僕らはAクラス、他のクラスからは追われる立場にある。
3クラスに手を組まれるリスクを考えれば、どこかのクラスと予め協定を結んでおく必要性も生まれる。
「葛城くんと坂柳さん、龍園くんに堀北さんはどう出るのかな」
「葛城は安全策を取るだろうな。意外とあちらから俺たちに接触してくる可能性はある(龍園と堀北はわからないが)」
龍園なら優勝しそうなグループに便乗のカード全ブッパとかするんじゃないかと思うが。
博打だけに頼らず他の策も凝らすのは忘れないだろう。
Aクラスを孤立させるという手段も取ってくる可能性はあるが、それは堀北さんや葛城があいつを信用できるかにかかっている。
「とりあえずうちのクラスの方針を打ち出すべきだな」
「グループ作りの猶予期間は1ヶ月以上あるから焦る必要は無いけど、有用な生徒はすぐに引き抜かれるかもしれないもんね」
そう言いつつ、僕を見るのはやめてくれないか。
どうせ話を聞いてたんだろと神崎が視線を向けてくるため、僕は本を読みつつ、『とりあえずはカードとやらが配られてから方針を決めてもいいんじゃないか』と言っておく。
「そうだな。他のクラスも同様の考えをしていそうだ」
「うん。有効なカードをグループに集めることも、プライベートポイント増やしに繋がるしね」
試験に向けた話し合いは明日を待つことに決まったが、放課後になると学力あるいは身体能力で優等生に分類される生徒たちの携帯が一斉に鳴り始める。
このクラスなら一之瀬さん、神崎、柴田といったクラスの主要メンバーばかりだ。
「……楠雄くんって携帯の通知音とか切ってるの?」
『デフォルトだが』
評価オールA+の僕ならば携帯がどっきりどっきりどんどんとうるさくなると思ったのか、一之瀬さんは僕の静かな携帯を不審に思ってくる。
「連絡先を交換してる相手が少ないとか……?」
それもあるが、ただ単に携帯の充電が切れているだけだ。
宝泉との一件でバッテリーに不具合が出たのか100%充電してもすぐに無くなってしまうようになった。
見た目はそこまで壊れてないんだが、中身はかなりズタボロのようだ。
「そうなんだ。じゃあ、えっと……」
「一之瀬、少しいいかー?」
「私も」
僕の携帯を気遣ってくれていた一之瀬さんのところに柴田や網倉さんといった面々が集まってきたため、僕たちの会話は中断される。
クラスの方針はどうあれ、他クラスからの勧誘は無視できない。
どうしたらいいかというクラスメイトの相談やらに答える一之瀬さんの後ろを通り過ぎて僕は教室の外へと出た。
さてと、誰にも見つからずに帰りたいところだったが、待ち伏せされていてはそれも難しいな。
「やぁ、楠雄。待っていたよ」
放課後になってすぐに教室の前に来ていた高円寺の存在には気付いていた。
ついでに高円寺がどこへ向かうのか、誰と会うのか気になってついてきた綾小路も目視は出来ないが、曲がり角の向こうにいる。
ここでは廊下を出て直ぐに誰かに見られるため、場所を変えようと提案するとすぐに受け入れられる。
そして、教室から離れた階段の踊り場にやってくる。
「単刀直入に言おう。私とグループを組まないかい?」
(やっぱり斉木とグループを組むつもりなのか。斉木と高円寺のグループ……間違いなく学年内どころか全学年中トップレベルのグループになる。斉木とであれば高円寺は常に本気を出して、去年の無人島試験や体育祭のようなリタイアもしない)
まぁ高円寺がこのクラスに用がある人間と言えば僕しかいないからな。
誰か1人とでも組めれば、グループの誰かが試験を続けている限り退学のリスクは薄くなる。
しかしそれは結局退学のリスクを誰かに預けることになる。
いくら自由人の高円寺でもそれは看過できないことだ。
けれども、僕とならその心配もなくなると考えたのかあるいは、混合合宿のように競い合いながらの試験がしたいのか。
本人の思考を読んでいる限りでは後者のようなので、普通の生徒であれば悪い話ではないかもしれない。
「返答は急がないが、前向きな答えを待っているよ」
YESとOKとはいしか待っていないと心の中で言い残して、高円寺は立ち去ろうとする。
仮に僕が絶対に組まないと言ったらどうなるのか。
それは予想に容易い。
どちらが上位に入れるか勝負しようと提案してくるだろう。
グループを組むにしろ、組まないにしろ、高円寺と関わることは避けられないというか、あっちが追いかけてくる……といったところか。
立ち去ろうとしていた高円寺だが、向かう先とは反対の曲がり角の向こうで僕たちの会話を聞く綾小路の存在に気付いていたらしく、声をかける。
「私たちの会話を隠れて聞いているのはどこの誰かな?」
(動物並みの感覚だな……斉木も驚いていないところを見るに気付いていたのか……?)
テレパシーや透視のない高円寺では、どこの誰かまでは特定できておらず、出てこなければ出てこないで構わないと背を向ける。
すると意外と素直に綾小路は姿を見せた。
「悪い、高円寺がまっすぐ帰らないなんて珍しいと思ってな」
別に誰が出てきてもいいと思っていた高円寺だが、綾小路の声を聞いて振り向くと、値踏みするような目で頭のてっぺんから足の爪の先まで見下ろす。
「ふむ(綾小路ボーイか。楠雄とは友人の間柄だったねぇ)今の君の発言には真実と嘘、どちらも見えてこない。私は君のような人間を信用したりしないよ」
「お前が誰かを信じるようなタイプには見えないが……例外はいるな」
「ああ、楠雄は真実と嘘の使い分けがハッキリしているからねぇ。私は私以外の人間は誰1人信用してはいないが、楠雄は例外さ」
わー、嬉しくなーい。
どういうわけか僕の真横にまで戻ってきた高円寺は、僕の肩に手を置いて綾小路へと目を向ける。
「楠雄くらい私を楽しませてくれると言うのであれば話は変わるが……君には無理だろうねぇ、綾小路ボーイ」
(オレが数学で満点を取ろうと、高円寺は表情1つ変えることはなかった。その後、誰かに詳しい話を誰かに聞いた素振りもない。高円寺がオレに興味がないのは事実だ。その逆も然りと言いたいが、うちのクラスにとって不安要素でしかないからな)
クラスメイトなんだから仲良くしろよと思いつつ、どうして僕を挟んで会話をするのかと迷惑顔を浮かべてはみるが、2人とも特に気に止める様子はない。
「今度の特別試験、斉木と組むつもりなんだな」
「フフフ、愚問だねぇ。私は楠雄と以外組むつもりは無いよ(まぁ楠雄が組んでくれるのであれば3人目に誰が来ても気にはしないがねぇ。綾小路ボーイだろうと、ドラゴンボーイだろうとね)」
(高円寺にとってはクラスポイント云々は興味がないだろうしな。ただ斉木とのグループであれば上位入賞はほぼ確……いや斉木もかなりムラっけがあるからな。下位5位にはならないと思うが、目立ちたくないと言って真ん中あたりを狙う可能性もある)
今回の試験で僕がどう動くかは具体的には決めていない。
いつも通りクラスの方針に合わせようとは思っているが、個人の願望としては1人で行動させてもらいたいところだ。
誰かと一緒だと超能力が使えないのはまだいいにしても、無人島あるあるである不意の虫の出現の際に緊急避難方法であるテレポートや虫を吹き飛ばすための念力を使えないのは僕にとっては痛手すぎる。
「斉木が組んでくれなかったらどうするんだ?」
「その時は楠雄と純粋な勝負をするか……それもダメなら、本番までにじっくりと考えてみるさ」
そう言って、高円寺は僕の肩に置いていた手を離し、歩みを再開させる。
「では楠雄、また」
今度こそ立ち去っていった高円寺の背中を見て、僕もまた立ち去ることを決める。
「おい、オレは無視か」
まだいたのか。
用があったのは高円寺であって、僕にはないと思ったから帰ろうと思ったんだが。
こうしている間にも僕を待ち構える人間は増えつつあるため、早く済ませて欲しい。
「……斉木のところには誰かから連絡が来たりしたのか?」
来ているかもしれないが、それを確認する手立ては僕にはない。
まぁテレパシーで届いてきた声を聞いた限りでは椎名さんと坂柳さんは連絡をしてきたみたいだが。
(申し訳ありません石崎くん、どうやら今は電源を切っているのか斉木くんに繋がりません)
(楠雄くんに繋がりませんし、こちらから出向きましょうか)
他にもグループを組みたいわけではないが、僕がどういう動きをするのかというのを気にしている生徒も何人かいる。
綾小路もその1人だろう。
たった1日でそんな簡単に決められるわけないだろと思いつつ、どうにかして1人で参戦する道を選ぶことは既定路線だ。
別に誰も信用していないということでは無いが、無人島で何も起きないという保証のほうがない。
害虫、昆虫、ビートル……危険は沢山潜んでいる。
草むらからいきなり飛び出してきて僕の喉元を缺き切ってくる可能性もある。
「斉木? 大丈夫か? (見たことの無い顔をしているが)」
あぁ、大丈夫だ。
わるだくみを積んでいるだけだからな。
とりあえず夜に無人島の下見をして、虫の有無を確認して、必要であれば殺虫剤を撒こう。
消毒、殺菌、消滅のためには買い出しだと思って僕もまたこの場を去ることにする。
1番いい殺虫剤を頼むべくケヤキモールへと向かうため、下駄箱へと行く。
坂柳さんや椎名さんはタッチの差というな、僕が高円寺と話すために少し離れていたこともあり遭遇することはなかった。
というか、あれは高円寺が早すぎるのだ。
それに着いてきた綾小路も同様ではあるが。
綾小路は教室に戻ったようだし、この下駄箱にたどり着いた2年生は僕と高円寺だけとなる。
そのため、誰にも見られずに帰るのはとても簡単で僕は気持ち早歩きで学校を去っていく。
翌日の朝になると携帯の充電が完了しており、画面を開くと個人のメールに学校からの通知が届いていた。
そこには追加のカード、つまりは僕が得るプライベートポイント報酬を2倍にするカードだった。
保険や半減は正直いらないと思っていたから、結果に関わるカードが来てくれてまだよかったと言える。
事前の説明通り、誰が何のカードを持っているかはOAAで確認することができるが、学年に各1枚しかない3枚の特殊カードはA、B、Dクラスに程よくバラけていた。
カードを上手く使い、報酬を増やしたり、ペナルティを軽減したり、試験を有利に進めることが求められるが、カードが交換や譲渡できることを考えると、試練のカードや追加の2倍などは争奪戦になるかもしれない。
OAAで開示されている以上は秘密にしておくこともできないが、無理やり奪うことも出来ない。
この後クラスや個人がどう行動していくのか、その過程でクラスとの関わりや人間関係の変化もあるかもしれない。
僕の方は悩みに悩んだ末に1人で動くことになったということにして無人島サバイバルに臨ませてもらうとしよう。
高円寺、綾小路に敵意というか悪印象ありそう▶︎割とどうでもいい。
椎名が連絡した理由▶︎楠雄の動向を探るように龍園から言われたため。なお充電後に『特に決めてない』とだけ返信してる
坂柳が連絡した理由▶︎「私と組みませんか?もう1人の女子は一之瀬さん以外なら誰でもいいですよ」という連絡。丁重にお断りされた
櫛田は楠雄に連絡せず。
理由は組んでもいいけど、自分から頼んだったのが残ると周りから色々言われそうだから(1年生に噂されていることは耳に届いている)
堀北は楠雄が敵にいると厄介だからどうしたものかと思ってたら綾小路から高円寺がスカウトしてに行っていたことを聞いて「それなら、まぁ、ありかもしれないわね」と一之瀬クラスとの同盟を思案
なお提案されてもくーちゃんは自由な模様
一之瀬さん「楠雄くんは無理に誰かと組ませるより本人の好きにさせた方がいいかなーって。1人の方が動きやすいだろうし、私とかが組んでも迷惑かけそうだから」と心では組みたいと思いつつもクラスのことや試験結果を優先して諦めって感じ
諦めんなよ!(修造)
途中、一之瀬が言おうとしたのは「困ったことがあったら私にできることなら協力するから」なので普通のこと。
他のキャラの初日の反応、動き
橋本▶︎楠雄と組みたいけど、足手まといになると思うので今回はスルー
龍園▶︎くーちゃんは1位になれるけど、本人の気質的にならなさそうだから様子見
綾小路▶︎組んで貰えると嬉しいがホワイトルーム関連に直接関わらせるのはまずいかと思ってとどまってる
次回からは他キャラ目線で進めていくかもです(なんも決まってない)
ではまた次回