ようこそ超能力者のいる教室へ -2年生編-   作:オールF

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花京院の魂がかえってきたしなんか他にも色んな魂が手に入った
俺は運がいいね

夏らしくホラー描写を入れてみました


見えざる敵

 人はいつだって自分と誰か、誰かと誰かを比較して生きている。

 どの期の、どの生徒よりも優れていたとか、優れているだとか。

 そんな話を聞かされてきた。

 

「1年前の綾小路清隆は、もっと凄かった」

 

 どれだけ努力をしても、どれだけ抜きん出た成績を収めても、姿も形も知らない、名前しか知らない神や寓話の生き物のような存在に追いつけと言われる日々。

 たった1人の子供が、1つ下の5期生である僕たちに影響を及ぼしてくる。

 あの男はどんなに過酷なカリキュラムでも常に好成績を残してきた。

 それは僕も同じだった。

 5期生の中で飛び抜けた成績を収め続けてきた。

 誰よりも優れた天才であると証明してきた。

 なのに、僕が褒められることは1度としてなかった。

 綾小路清隆という人間は存在せず、自分たちを奮い立たせるためだけに作り上げられた架空の人物と疑った時には、マジックミラー越しに、綾小路清隆の存在を肉眼で確認させられた。

 淡々と驚異的な成績を残していく姿に、身体が小刻みに震えたのを今でも覚えている。

 神を見たからという興奮や感動からではない。

 勝てるわけが無いという恐怖でもない。

 アレのせいで僕は認められないんだという怒り、憎悪……そうだ、憎悪という感情が自らの身体を震わせていたのだ。

 片時もこの感情を忘れることなく憎み続けたからこそ、僕は今も尚生き残ることができた。

 組織の人間たちにとっては、僕たちがどうであるかなどは別問題。

 重要なのは研究を確立させ、非凡なる卓越した人間を量産していくこと。

 天才は生まれながらに天才ではなく、天才は努力の積み重ねである。

 それを証明するための部品に過ぎない。

 自分であろうと、綾小路清隆だろうと、成功例であればどちらでも構わない。

 だからこそ、失敗例には全くの価値がなく、綾小路清隆よりも劣っているのなら、それは失敗例の烙印を押されてしまうことになる。

 なんて惨めな末路だ。

 脱落していった、僕が見下してきたアイツらと変わらない。

 そんなことを認めるわけにはいかない。

 どんな手段を使っても綾小路清隆が1番ではないことを証明しなければならない。

 そのためには常識などという絵空事はかなぐり捨ててしまう方がいい。

 存在しない後輩を偽り、友として近づいた同級生を欺いて葬り、その副次効果で結束を勝ち取る。

 こんな回りくどいやり方をしているのは月城が邪魔だからだ。

 僕としては綾小路と真正面からやり合う気だった。

 ただその前段階で不用意な行動をすれば月城から妨害を受ける可能性を考えて、時間稼ぎに徹してきた。

 生徒会に入って、この学校の生徒の情報を仕入れたが大したことは無い。

 3年生トップの南雲雅は集団を率いて、兵隊を使った戦法が得意のようだが本人があの程度であるのなら問題はない。

 2年生トップの斉木楠雄はOAAはオールA+と学年どころか校内最上位のスペックを持ち、ペア試験では全教科満点と多少はやるみたいだけど、高円寺という生徒も取れていたし、数学と理科は櫛田桔梗も96点と高い点数を取れていた。

 運動神経の方は未知数だが、去年の体育祭のリレーではほぼ最下位の状況から1位になったというが脚が速いだけではホワイトルームでは価値がない。

 腕力は男子高校生の平均並みで、体の動きは素人のソレだ。

 宝泉を不意打ちでしか倒せない、逃げるだけしかできない臆病者。

 やはり僕が倒すべきは綾小路清隆だけだ。

 GPSサーチが解禁され、七瀬が綾小路に仕掛けるところを撮影するという作戦を実行に移すまでに暇がある。

 綾小路清隆に気付かれることなく、色々と遊ばせてもらう。

 真のホワイトルーム生として、こんな自堕落でつまらない学校に僕自身がカオスを起こす。

 そのために無人島サバイバルの試験4日目の早朝、まだ上位と下位のグループのランキングが開示されるよりも前に、僕は綾小路清隆と同じ学年の生徒を怪我でリタイアさせる計画を実行するべく、あるグループを追いかけていた。

 

「ごめん、2人とも、私、その……」

「あ、OK。じゃあ、私と小宮くんその辺で待ってるから」

 

 急斜面で落ちれば骨折……頭から落ちれば死ぬだろうかという崖近くに差し掛かったところでグループのメンバーの1人がトイレへと向かう。

 2年Dクラスの篠原と2年Cクラスの木下、小宮のグループは2回連続で指定エリアの到達を逃して焦っており、こんな視界の悪い森を朝日も出ていない早朝に歩いていた。

 薄暗い中で気をつけ合ってはいるが、それでも背後に潜む僕には気付けない。

 

「この下って崖だよな?」

「うん、そう思うけどそれがどうしたの?」

「いや、ここをショートカットできたら結構な時間短縮になりそうだと思ったんだけどさ」

 

 互いの位置を照らすための明かりを崖へと向けて、2人は急斜面になっているのを見て「これは無理そうだな」とそう呟いたところに僕は駆け出して、2人の足を蹴ってその斜面へと突き落とそうとして─────。

 

『動くな』

「!?」

 

 な、なんだ!? 

 体が動かない!? 

 いっ……一体何が……? 

 

『あの2人に近づくな』

 

 !?

 な、なんだ!? 

 まるで誰かの声が、頭の中に!? 

 だ、だれかが僕の後ろにいる!? 

 こ、この僕が気付けなかった!? 

 いや、それよりも、なんで体も喉も動かないんだ!? 

 

『余計なことはするな。お前はただこの場から回れ右して立ち去って、グループに戻ってこの試験を淡々とこなしていくだけでいい』

 

 お前! 

 僕に一体、何をした!? 

 おい!? 答えろよ! 

 

『忠告はした』

 

 な、なんなんだ!? 

 本当に!? 

 

「お待たせ、2人共」

「あ、おかえりー」

「何見てたの?」

「いや、ここをショートカットできないかって見てたんだけど、無理そうだなって」

 

 クソ! アイツらが行ってしまうじゃないか! 

 

「なん、なんだよ、お前!」

 

 そう声を出せるようになり、振り向いた時には、背後にいた謎の気配はなかった。

 男だったのか、女だったのか。

 それすらも分からない。

 僕は怪奇現象だとか、オカルトは信じないタチだが、これはあまりにも……。

 ただ試験のことや、グループということを知っているということは学校の関係者のはず。

 でも、僕の身体が動かなかったのは何故だ? 

 震えることすらなく、ただ動けなかった理由がわからない。

 

「くそ……!」

 

 なんだったんだ本当に……。

 この島に伝わる呪いの類とでも言うのか? 

 とりあえず、あいつの言葉に従うわけじゃないが、ここは引き返した方がいいだろう。

 

 

 ###

 

 

 池と須藤のグループ、そして恵のグループと夜を明かした翌日となる無人島サバイバル4日目。

 この4日目からは上位10組と下位10組が公表される。

 そして大グループ解禁の課題が追加される日でもあり、もし課題にこの報酬が出現すれば、即定員に達する厳しい争奪戦になるだろう。

 その前に指定エリアを確認しておくと、指定されていたエリアはG3。

 軽く1時間はかかりそうな道のりだが、特にトラブルもなく休むことができたため、着順報酬が得られる可能性は十分にある。

 

「俺らとはまた別行動だな」

 

 須藤たちの指定エリアは西側になるようで、オレたちとはまた離れることになりそうだ。

 恵の方は南西へと進んでいくことになるらしい。

 周囲の目があるため大っぴらに挨拶は出来なかったが、気付かれないように手を振ってくる。

 それにオレが頷きを返していると本堂が驚きの声をあげる。

 まさか見られたかと危惧したが本堂の目線は持っているタブレットに注がれていた。

 

「マジかよ高円寺と斉木のやつ、ぶっちぎりの1位だぜ!」

 

 まぁ、そうだろうなという感想しか浮かばないオレはバレた訳じゃないなら良かったと思いつつ、オレもランキングを見ることにした。

 2位の南雲グループとはすでにダブルスコアを超えた得点を重ねている高円寺と斉木のグループが1位で、3位には1年生と各学年のグループが上位3位に食いこんでいた。

 しかしまだ4日目であるため、学年の方針や動き方で順位が変動する可能性は十分に有り得る。

 上位も気になるが、何よりも重要なのは退学になるリスクを背負っている下位の5組だ。

 

「私にも見せてもらっていいですか?」

 

 七瀬が一言断りを入れて、オレのタブレットを覗き込んで来る。

 誰が所属しているグループであるかや得点はもちろん、その内訳も分かってしまうのだが、下位10組を見て七瀬が呟いた。

 

「これは、7組とも3年生のグループですね」

「ああ、しかもどのグループにもAクラスの生徒がいない」

 

 最下位に至っては3年Dクラスのみで構成されており、総得点は21点のみ。

 ただこの3人に関しては1人が特別試験開始当日にリタイアした生徒がいるため、多少の同情の余地がある。

 残る3組は1年生3組。

 2年生のグループは下位に入っていないようだと安心するも、やはり油断はできない。

 特に体力面に不安を抱える愛里のいる明人のグループが少し心配だ。

 下位10組にはいないものの、下から数えて20位。

 得点の内訳を見るに、到着ボーナスを2回に1度もらい、近くにある課題をこなして下位10組から脱しているのだろう。

 一方で1年生も3組が下位にいるが、それは2人でグループを組んでいるところだけで、スタート時点で4人組が組めている1年生たちはある程度得点を重ねているのだろう。

 

「意外ですね。3年生がこんなにも下位に沈んでいるなんて」

「昨日の様子からして南雲会長か桐山副会長が得点を取るグループと、そうでないグループに分けているのかもな」

「な、なるほど……」

 

 単に能力不足というよりは意図して取っていないような雰囲気を感じたため、そう口にしたがそんなことよりも今は自分のことだ。

 

「ひとまずG3に向かおう」

「はい」

 

 4日目は着順報酬と試験の報酬もあって順調に得点を重ねられたオレは今のところ下位10組に入るような兆候はない。

 月城が手を出してこないのは気がかりではあるものの、この調子でいけば上位も視野に入れられるだろう。

 2日連続で須藤のグループと過ごしたが、今夜は七瀬と2人での野営をしていたところ、七瀬がタブレットを見ながらつぶやいた。

 

「それにしても斉木先輩と高円寺先輩はすごいですね」

「そうだな」

 

 ぶっちぎりの1位と呼ばれるのも頷ける総合点。

 1回目の指定エリア到達で1位を逃したものの、以降は全て1位でたどり着き、着順報酬で115点というだけでも恐ろしいのに課題でも全て1位を取っており、総合点は200点を超えている。

 しかし試験はまだ明日以降も続き、10日も残っている。

 疲労の蓄積や怪我などのアクシデントが起これば一気に順位は落ちてしまうが……あの2人ならそんなことが起きてもどうとでもなりそうだ。

 

「お2人はエリアのランダム指定を受けていないのでしょうか?」

「そんなことは無いだろうが、この結果を見るとそうも思いたくなるな」

 

 しかしこの学校がそんな不平等なことをするとも思えない。

 どの指定エリアを通過したかは見ることは出来ないが、少なからず2人も無理をした場面はあるはずだ。

 この無人島サバイバルは2週間という長い期間、オレたちの肉体と精神を酷使させてくる。

 初めは筋肉痛という分かりやすい形から始まり、段々と足が重たくなって歩くペースが落ちていき、そして必要最低限の栄養と水分しか補給出来なくなる。

 そんな状況下でずっと初日から今日までのペースを最終日まで維持するのは難しいだろう。

 ただ、それもあの2人には関係なさそうと思えるのは何故なのだろうか。

 ホワイトルームという天才を意図的に、人為的に生み出すための施設しか知らずに育ち、その空間では常にトップだったオレが外に出て出会った初めての強者。高円寺は肉体的なスペックでは劣るかもしれないが、技術面であればオレの方が勝ると思っている。

 ただ、斉木に関しては……逆に技術面では勝っていると確信できるが、その技術が飾りでしかないと言わんばかりのフィジカルを持っている……と、オレは思っている。

 確信は無い、が、確実にオレより足が速く、動体視力や身のこなしはこの学校どころかホワイトルームの教官すら超えている。

 

「斉木先輩とはお友達なんですよね?」

「ん? まぁ、そうだな」

 

 オレがこの学校に来て初めてできた友達。

 斉木はそう言っても差支えがない存在だろう。

 堀北はその時はクラスメイトかつ隣人というのも怪しく、須藤とはお世辞にも仲がいいとは言えなかった。

 

「クラスが違うのにどうやって知り合ったんですか? 部活動説明とかでしょうか?」

「いや、あいつと知り合ったのは中間テストが明けてから1週間後くらい、だったな」

 

 記憶通りなら6月の末で、斉木が愛里を訪ねてやってきてオレをモールス信号で呼んできたのが始まりだった。

 

「モ、モールス信号で?」

 

 やはりそういう反応になるか。

 ホワイトルームから出たばかりのオレはモールス信号で人を呼びつける人間もいるのか、知らなかったらどうする気だったんだとかツッコミつつも対応したが、その後堀北や平田などにモールス信号を知っているか聞いてみても、全員名前は知っていても実際に使いこなせる者はいなかった。

 

「そこからだな。斉木と関わったのは」

 

 思えば愛里のカメラを修理しに行った時、愛里のストーカーをしている店員の存在に……気づいたかと思えばスイーツ家電なるものに目を奪われていたり、夏休みのプールバレーでは魔球サーブでオレの脳を揺らそうとしてきたりと異常なところは多々あった。

 決定的になったのが体育祭であったというだけで、違和感自体は随所にあったのだ。

 オレはこの学校に来てから、オレが本気を出さずとも勝てるやつしかいないと思っていたが、初めて本気を出しても勝てないかもしれない……いや、勝てないと思う相手に出会った。

 そいつはその力を自分のためだけではなく、誰かを助けるために使っていた。

 愛里はもちろん、櫛田も手を貸してもらったと言うし、元Bクラスのメンバーもそうなのだろう。

 オレももしかすると、どこかで人知れず助けられていたことがあるのかもしれない。

 七瀬に話すと1年生に斉木の異常性が伝わってしまうが……それも今更っぽいなと思って話せる範囲で斉木としたことや話したことを話していく。

 堀北のロケットパンチも話してしまったが、これは仕方ない。

 

「……本当にいいお友達なんですね、綾小路先輩にとっての斉木先輩は」

「そう、かもな」

 

 ただスイーツに釣られやすすぎるし、時々オレでも不可解に思う行動や言動を取ることもある。

 けれど、あれが天然モノ……つまりはオレのように意図的にそうあれと育てられてきた天才ではないのであれば、あいつこそがホワイトルームの存在を否定する鍵になる。

 それに、オレ自身、あいつから学べることもある。

 ようやく、去年見た殺人サーブも打てるようになってきたしな。

 宝泉の懐に潜り込んで一瞬で腹パンしたあの動きはまだまだ未習得だが、いずれは……。

 

「そろそろ、寝る支度をしよう。明日も動き回ることになるしな」

「はい、そうですね」

 

 斉木楠雄との出会いはオレにとってはかなり刺激的で、この学校に入学して良かったと思える1つであったとともに、少し違和感のあることもある。

 あいつがひよりと仲がいいというのは知っていたが、ひよりがあいつに見せる顔を見ていると言い表せない違和感が生じる。

 これが一体何なのか、それを知るその日はいつ来るのか。

 それを楽しみにしつつ、オレは就寝の準備を始めるのだった。

 




三宅グループが下位に沈んでない理由はどこかで書けたらいいなと思います

今回は特に補足することはないはず
冒頭の1年生を襲った怪奇現象の正体とは一体……?
そのおかげで原作と綾小路の動き大きく変わっちゃったけど、まぁ是非もないね。

初期案では小宮たちが落とされるけどそれをくーちゃんが念力で大怪我にならないように対応して、1年生の作戦を失敗させるってものだったんだけど、斉木ママの同窓会の回が好きなのでそれを取り入れる話にしてみました
では、また次回
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