多分みんなが思っていたような分からせではないかもしれない
すまない……
ああ、なんでこんなことになっちゃったんだろう。
悪天候になることが予想される森の中で、私はある2人を追跡させられていた。
今朝このD3エリアに辿り着くまでに私がどれだけの苦労を強いられたか。
それももう少しで終わる。
自分に言い聞かせながら、疲労と緊張で震える足を動かして1歩1歩踏み出していく。
もし後をつけていることがバレたら、ここまでの努力は全ての意味をなくしてしまう。
6日目から全生徒に与えられた権限で、大まかではあるものの得点を消費することで相手の位置を知ることができるGPSサーチ。
本来相手を尾行するのであれば、相手の姿を見失わないように最低限その姿を視界に捉える必要がある。
それは相手にもこちらが見えてしまうリスクがある尾行。
だけど相手がどんな人間であれ、野生の勘を持っていたとしても、私の尾行がバレることは絶対にない。
何故なら私は今、目的である綾小路くんの背中を肉眼では捉えていないから。
ジャージのポケットに入れてあるトランシーバーはある人物と繋がっていて、常に向こうの位置を特定してくれる。
万が一、相手の声が聞こえなくなったりしても、自分のタブレットで得点を消費してでも相手を追い詰めろと命令されている。
綾小路くんを退学させるだけの決定的な情報を、私は何とかして手に入れなきゃいけない。
2000万という膨大なプライベートポイントを得るために1年生の一部でのみ行われている特別試験、それが綾小路清隆退学試験。
綾小路くんを退学させた1年生には2000万プライベートポイントが与えられる。
一見どこにでもいる人畜無害な冴えない男にしか見えないが、試験の対象に選ばれてしまうのは不運が過ぎる。
けど、私は綾小路くんに秘密を守るためとはいえ胸を触らせている。
そのことが斉木にバレる可能性を考えると退学してもらう方がいいのかもしれない……そんな考えがない訳でもない。
綾小路くんが斉木にそのことを言うようには見えないし意味もないし、斉木のやつは知ったところで『あぁ、そう……』と無関心に呟くだけだろう。
……それはそれでムカつくな。
「少し止まってください櫛田先輩。どうやら前方の2人が足を止めたようです」
「えっ? やっと?」
体育祭以来、体力作りをしていたおかげであの2人を追いかけるのはそこまで苦ではなかったけど、見つからないようにというプレッシャーで疲れちゃった。
「お疲れだと思いますがもうひと踏ん張りです。まもなく決定的な瞬間がやってきます」
そうすれば私を縛るものは無くなるという八神は、まるでこちらの状況が全て見えているようだった。
「わかってる、わかってるって……」
綾小路くんと七瀬がどんな関係かは知らないし、どうしたら殴り合うことになるのかは分からないけど、私の役目は2人の争いを撮影すること。
大きなリスクを抱えて、危険な単独行動を1日取らされ続けている。
色んなところに後から根回しをする必要もあるってのに、トランシーバーの向こう側にいる八神は丁寧な説明口調で話す。
「動きがなくなりました。どうやら完全に足を止めたようです」
北西の方に息と身を潜めながらゆっくりと進むように指示が出される。
もちろん、タブレットでの撮影も忘れるなと。
綾小路くんには悪いけど、早くこんなことは終わらせてグループのところに帰らないと。
焦る気持ちを抑えつつ、バックパックから取り出したタブレットを手に持って指示された方角へと歩いていく。
少しして視界の先で2人の小さな姿を捉えた。
立ち止まっている七瀬が振り返り、綾小路くんとなにか話しているが、風の音がうるさくてどれだけ集中して聞き耳を立てても聞き取ることができない。
2人ともバックパックを背負っておらず、休憩しているのもしれないが、とりあえず言われた通りにカメラアプリを起動し録画モードに切り替える。
「……これは1年Bクラスの八神拓也くんの指示のもと撮影させられています。私は脅されています」
2人に近づく前に、小声でそう呟いてこの動画の撮影が私の意思ではないということを予め示しておく。
殴り合うなら早く殴り合ってくれないかな〜と眺めていると、今の位置が七瀬の視界に入る可能性があると気づく。
撮れなかったてへっ、で八神が済む相手ではないため、少し面倒ではあるけど落ち着いて回り込むしかない。
私は息を殺しながら、静かに移動して、距離を取って大きく迂回するために一旦離れる。
「っ!?」
と、誰もいないはずの背後から右肩を不意に掴まれて、私は声をあげそうになるが、誰のものか分からない手が私の口元を即座に塞いでくる。
予期しない出来事に頭の中が混乱する中、私の耳元に艶を放つ唇が近づいてくる。
「しーっ。驚いたかもしれないけど静かにしてね、櫛田先輩。綾小路先輩と七瀬ちゃんに気付かれちゃったらすっごく困るでしょ?」
まるで私の心の中を見透かしたような声。
私に声をかけてきたのは、1年Aクラスの天沢一夏という女子生徒。
名前と顔は知っていても話したことは無い。
天沢もそのはずだが、私のことを知っていた。
そのまま綾小路くんたちから距離を取るように引きずられて、拘束を解除される。
何とか冷静に、天沢をやり過ごすべく会話を始める。
こうしている間に殴り合いが始まってしまったら今までの苦労が全てパァ。
けれど、私の目的が天沢に悟られるわけにもいかない。
「えっと、どうして天沢さんがこんな所に?」
「たまたま通りかかったら、コソコソしてる櫛田先輩の姿を見かけたの」
「コソコソなんてしてないよ」
散歩というにはグループから離れているし無理がある。
苦しい言い訳をして墓穴を掘る訳にもいかないため、私は端的に答えた。
天沢は綾小路と七瀬に見つかると大変と言っていたし、あの2人か、あるいは私の置かれている状況を把握している可能性もある。
八神の話では1年生の一部が私のことを知っているという。
「へぇ?」
言い訳しないんだぁと鬱陶しくも甘ったるい声で呟いた天沢は私に近づいてくる。
というか、天沢のやつ、なんでバックパックも持たずにこんなところにいるの?
もしかして、綾小路と七瀬の同行……そう考えていたところに天沢の平手が向かってきた。
「っぶな!?」
「……ふぅん?」
それを間一髪で避けると、天沢は意外そうに目を細めた。
「いっがーい、櫛田先輩って動けるタイプなんだ。まあOAAでも身体能力B+とかだっけ?」
「何するの天沢さん、今の私が避けなかったら」
右頬に当たってたよねと言う前に彼女の足が私の腹部に突き刺さった。
「っうっ!?」
ドスっと靴のつま先がお腹にめり込んでくる痛みに耐えられなくて崩れ落ちる。
「かは、ごほっ、ごほ……っ! な、なに!?」
「試験中に指定エリアでもなければ課題もないこんな山奥まで1人で来てさ、何するつもりだったの?」
「ど、どういうこと……? 天沢さん、何言って……!?」
「いつまでその仮面を被り続けられるか楽しみだなぁ」
再び距離を詰めてきた天沢から逃れるためにふらつきながらも身を起こす。
「や、やめて!」
「やめな〜い」
そう言って、左手を振り上げた天沢に、今度は避けられないと判断した私は逆にこちらからタックルを仕掛ける。
「おぉっ、すっご〜い、咄嗟にその判断は……悪くないけどねっ!」
「うっ!?」
しかしそれを簡単に受け止められて、私の体を地面へと放り投げた。
バックパックごと地面に叩きつけられたおかげで背中周りは痛くなかったけど、左側から倒れたため腕に痛みが走る。
「ビンタだったらそんな痛い目見なくて済んだのに〜」
「なん、で、意味が分からないよ……!」
「わかんない? そっかぁ、じゃあもう1発くらい強めの蹴りかパンチ入れてみよっか」
「え?」
「どっちがいい? あ、ちなみにどっちも顔ね。その位置なら蹴りやすいし、グーも叩き落とせばいいし」
「なに、言って……」
「さぁ、早く選びなよ。じゃないとどっちもいっちゃうよ〜? 可愛い顔が台無しだね〜」
い、嫌だ。
そんなの……。
「櫛田先輩はあたしのこと全然知らないかもだけど、あたしは櫛田先輩のことよ〜く知ってるよ。自分が可愛いと信じて疑わない性格ドブス。他人の秘密が大好物で、自分が窮地に陥ったら周囲を巻き込んで自爆する。まさにとんだ地雷女だよね」
「だ、誰の話……? それに、暴力はダメだよ……ね?」
「暴力振るわれたって学校側に泣きついてみる? そうすれば……私を退学に追い込めるかも。だけど置き土産はするよ? 隠し通そうとしている中学時代の闇を全部全部バラして居場所奪ってあげる」
突然現れた手ぶらの天沢、単なる偶然じゃない。
現象には必ず理由がある。
もしかして、嵌められたのは綾小路くんじゃなくて、私なの?
「どうしてその秘密を知ってるの? 綾小路先輩に聞いた? って顔してるね」
してない。
けど、どうして知っているのかは気になるけど、それよりもこの状況をどうにかしないと。
「あたしは特別な存在だから、何もかもお見通しなんだよ」
「何もかも……?」
ほんとにそうか?
こいつはイカれてるけど、でも斉木ほどの脅威は感じない。
全てを見透かしたような言動や、こちらの意を汲み取ってくれるような行動をするようなこともない。
現に、こいつは私の回避行動に驚いていた。
「……あんた、別に大したことないよ」
「ん? 今、なんて言ったのかなぁ?」
「よく聞こえなかった? その歳で難聴なんて救いないんじゃない? 別に大したことないって言ったんだよ、ばーか」
バレてるならもういいやと、みんなに愛想振りまく櫛田桔梗ではなく、心から湧き出た声でそう言ってやる。
私の表を知っている人が聞けばそれだけで驚くであろう言葉に、天沢は驚くことなく嬉しそうに笑った。
「あははは! うんうん、そっちの方が私好みかな櫛田先輩っ!」
「ぐうっ!」
言いながら顔を蹴ろうとしてきた天沢の足を辛うじて両腕で顔を覆って受け止める。
躊躇なく人の顔を蹴ってくる精神性ははっきり言って異常だ。
「っ……! あんたは何なのよ……人のことボールみたいに蹴って……」
「なんなのよか〜あたしはただ……うん、綾小路先輩を救いに来ただけ」
「救う? ……あぁ、そういうこと」
八神の計画は天沢に筒抜けってことね。
というか、タブレット構えてあんなところにいればそりゃそうか。
録画モードは継続しているけど、事前に私がやりたくてやっているわけじゃないことは吹き込んであるし、事実を認めて退散するの手だ。
あのデータがあれば八神も天沢に妨害されたとわかるだろうから、過去を広めるようなこともしないかもしれない。
「へえ? 分かったんだ。1年以上一緒のクラスにいるはずなのに綾小路先輩の凄さが全くわかってない浅知恵の櫛田先輩ごときが」
そう言って天沢は綾小路くんたちがいるであろう方角に目線を向ける。
「あーあ、本当なら特等席で見るつもりだったのになぁ。きっと綾小路先輩、七瀬ちゃんを傷つけずに倒しちゃうんだろうな。見たかったな〜」
ブツブツ言いながら天沢は私の方を見下ろしてくる。
「誰に頼まれたのか知らないけどさぁ、櫛田先輩は都合よく利用されたんだよ」
どんなに風が強くても、周りが騒がしい悪条件でも綾小路くんは私の尾行を見抜いたと天沢は言う。
「やめて欲しいんだよねぇ、綾小路はあたしにとって特別な人なんだから」
「は? なにそれ……好きってこと?」
「そんな低俗な次元で語らないでね? 好きなんじゃなくて愛してる……? ううん、もっと、もっとそれ以上の……かな。愛を超越した感情ってヤツ」
「ははっ、なにそれ、意味わかんない」
そう言いつつもどこか分かってしまう自分がいた。
天沢が綾小路に向ける感情は愛情とかじゃなくて崇拝に近いものなんだろう。
神様とかそんなの。
分かってしまったのは最近まで似たような感情を持っていたからだろう。
けれど、私は違う。
私は明確にあいつが好きって気付いた。
崇め奉る相手じゃない。
人を好きになることに低俗も高尚もない。
「てことでさ、色々とあたしから勉強させてもらったってことで素直に山を降りてグループのところに戻りなよ。もうすぐ天気もグラグラだし、引き返すなら今だよ?」
そうしたくてもこっちはお腹と腕蹴られて身体も打ってそれどころじゃないっつーの。
「冗談じゃない」
それにこんな奴にやられっぱなしってのも癪で、私は痛む手で湿った土を掴んで、拒絶のサインとして天沢の方へと投げつける。
「そんなに綾小路先輩に退学して欲しいの? 綾小路先輩1人退学にさせたところでもう状況は解決しないよ? 分かってるでしょ?」
こんな年下の女1人にすごすごと引き下がるわけにはいかない。
この試験は私の力で何とかしてみせる。
そう私は誓ったんだ。
「なにー? その目。もう一度言うけどさ、綾小路先輩はあたしにとって特別な人なの。あんたみたいな部外者なんかの手で退学させるわけには行かないんだよね」
天沢は私のところまで近づいてくると、また蹴りか、それとも拳か、どちらが来てもいいように構えていたが、伸びてきた手は私の前髪を容赦なく掴みあげてきた。
「っ!? 離せ!」
「離しませーん」
色があるようで色がない天沢の目は、完全にイカれてるヤツの目だった。
この目には見覚えがあった。
綾小路くんに八神も似たような目をしていた。
私の本能が逃げろと訴えているが、ここで逃げたら私は一生後悔する。
そう思った。
「あん、た……普通じゃない……!」
「へぇ、恐怖で震えてるわけじゃないんだ? 自分は人より可愛い。人よりも優れている。櫛田先輩ってとにかく自分が大好きで仕方ないんだよね? マウント取りたくて、他人の秘密を握ることに躍起になってる。その癖マウントを取られるのが大嫌いなもんだから、自分の秘密を知ってる人間が許せない。そういうめちゃくちゃなところあたしは嫌いじゃないよ」
「あんたなんかに好かれても嬉しくない……!」
「あはは、嫌いじゃないって言っただけで好きじゃないんだけど」
そう言われて、そういえばそうだったと思い直す。
こいつは私のことについて詳しく知っているみたいな感じだけど、天沢が今まで語った私はちょうど1年前までの私だ。
どうして知っているのかはさておき、私は未だに髪を掴んだままの天沢に言う。
「私みたいなめちゃくちゃな女の方が話しやすいっていう変なやつもいるんだよ……」
「ふーん、変わってるねぇその人。どうでもいいけどさ」
本当にどうでもいいのか、天沢は私がよくここまで1人で来れたねとか、リスクがどうとか言っている。
髪から手を離して突き飛ばして、私のことを見下ろしてまだ何か言ってるけど、もう言葉は入ってこない。
あぁ、私もここで終わりかな……グループのみんなには迷惑かけちゃうけど、最低ラインの200万ポイントは確保してあるし、退学になることはない。
何があっても諦めない。
絶対に負けない。
「またその目。櫛田先輩はあたしに弄ばれてるのに、まだ抵抗するの?」
「弄ばれてるからって、いつ私が負けたっての?」
こんなことで負けを認めるわけがない。
慌てる必要はない。
ここから状況を変えてみせる。
もう斉木に頼ることなく戦えることを証明するためにも。
「へぇ……想像以上だね。クソ女だと思ってたけど感心感心。さっきの回避行動といい、精神的な意味での強さは結構なものかもね。あたしに怯えることよりも憎悪で溢れてる」
土を払うことはせずに、私は立ち上がる。
必要なら天沢を殴り飛ばしたいところだけど、身体能力……いや格闘術か何かかな。
技術面ですごく壁があるように感じる。
「やめなよ。櫛田先輩じゃ逆立ちしたってあたしには敵わないんだから。じゃあね」
そう言って背中を向けた天沢に、私は足元にあった石を放り投げてから、くの字を描いて走り出した。
石を避けることに気がいっていれば押し倒すことも出来るかもしれないと。
だけどその目論見は石を回避し、流れるように腕も躱されて足蹴にされる。
「く、うっ……!」
「相性悪いんじゃない?」
他人の秘密を武器にしてきた私では秘密もなく、力も強く、大切な友人もいない天沢には勝てないと。
綾小路くんの存在がウィークポイントだと言うが、天沢を倒すよりも難しいと言う。
「言ってて悲しくないの? それ」
「必死こいて人の秘密集めるために関わりたくないやつと関わるよりはマシだと思うけど?」
手をパンパンって叩いて私が片付いたとばかりに土埃を払いながら私を見てくる。
「それじゃあいい加減さ、ここで下がってくれる? 綾小路先輩に会いに行かなきゃ」
「……それで、どうするつもり? 私が尾行してたことを話す?」
「しないしない。そんなことしたって意味ないし。でも、もしかしたら櫛田先輩の望むような展開が待ってるかも。綾小路先輩が退学することになるかも知れないよ。嬉しい?」
別に、もう私は綾小路くんの退学に興味無いし。
「……綾小路くんが退学にするにしろ、しないにしろ、あんたのことは許さないから」
「櫛田せぇんぱぁい、勝負の前から決着はついてるんだよ。秘密を知る人間を退学させるのが唯一の自分を守る方法だろうけどさ、それが通じるのは綾小路先輩みたいに吹聴して回らない紳士だけ。あたしみたいな人間だったら、遠慮なく秘密ばらまいてから退学するよ?」
秘密?
そんなのもうどうだっていい。
私の過去がばら撒かれても知ったことじゃない。
私にはこんな私でもいいって言ってくれるやつがいるから。
それに、斉木は言っていた。
過去は変えられないけど未来はいくらでも変えられる。
どうせなんかのアニメとか漫画のセリフなんだと思いつつも、私はその言葉を信じることにした。
「過去がどんなに悲惨でも、今の私は、未来の私はそんなことしない。だから、あんたがいくら私の過去をばらまいても無駄だからさ。黙って退学しときなよ、クソガキ」
「……ほんとに、櫛田先輩のこと見誤ってたかもね」
これ以上私と遊ぶつもりはなさそうだった天沢は向けていた背中を翻して、また私の方へと向き直ってくる。
「同じ女として、顔は叩くくらいにしとこうと思ってたんだけど……その可愛いだけが取り柄の顔もズタズタにしてあげよっかな」
何やってるんだ私は、挑発したって天沢を倒すことはできないのに。
ただ、まぁ、綾小路くんのところに辿り着かせないように時間を稼げれば、それはそれで勝ちって言えるかな。
「じゃあね、櫛田先輩」
ああ、いつまでも過去に縛られたままで、結局こうなるんだなぁ。
そう思いながら、目を閉じた私は天沢から来るであろう蹴りに備えて身構える。
「は……?」
しかし、その足は私の顔どころか、フェイントで別の場所を蹴るのかと思えばそうでも無さそうで、何か驚くような天沢の声が聞こえて目を開ける。
そして、そこには……。
「……斉木?」
天沢と私の間に立ち塞がる斉木楠雄の姿があった。
「なんで……」
私はここに来ることは誰にも言わなかった。
5日目に八神と会った時に誰も近くにいないことは確認したし、グループのメンバーにも話していない。
天沢がさっき言ったようにここは課題もなく、指定エリアにならなければ来ることがない場所。
だから来るとすればグループのメンバーである高円寺くんも一緒のはずだし、来たとしてもこんな深いところにまで来るはずがない。
『君はこれ以上進めない』
「は? 何言ってんの? いきなり出てきて。王子サマ気取り?」
感情のない、無機質な表情で、いつもと同じ真顔で天沢を見ているのであろう斉木に天沢が煽る。
「あ、誰かと思ったら校内唯一のオールA+評価の斉木先輩じゃないですかぁ。地味すぎて分からなかった〜、同級生のピンチに助けに来るなんてさすが社会貢献性A+〜」
何を言われようが表情一つ変えず、ただ佇む斉木。
「……で、何しに来たの先輩?」
『この戦いを終わらせに来た』
人がボコボコにされたってのに ドン! と効果音がつきそうなセリフを吐いた斉木に私は呆れつつもどこか安心感を覚える。
「へぇ? 斉木先輩が? 言っちゃ悪いけど、多分あたしの方が強いよ〜?」
『実るほどなんとやらだな。余程頭が軽いと見える』
今度は呪いの王かよ。
しかし天沢には通じていないのか、ただ煽られているようにしか聞こえないため天沢はちょっとムッとした顔になっている。
「2人揃ってあたしの邪魔するって言うなら容赦しないよ? 今なら床に手と膝を着いたら許してあげる」
『やれやれ。今年の1年生は生意気だな』
余裕たっぷりの天沢に、 斉木は肩を竦めて右手のひらを上に向けて指先をクイッと曲げ、相手を挑発した。
『時間がないんだ。やるならさっさとやろう』
「後悔しても知りませんよぉ?せぇんぱぁい」
無人島サバイバル7日目、学年同士がぶつかることが予想されていたけど、それは誰もが予想していない形で、場所で起きていた。
1年生のイカれた女と2年生最強の男が激突する。
ボツにしたセリフ
『来いよ1年生、格の違いを教えてやる』
『ゴタゴタ抜かしてないでかかって来い、メスガキ』
櫛田がボコられる前にくーちゃん乱入させるはずだったけど、成長した櫛田ならいけるんじゃね?と思ってくーちゃん遅れさせた
精神性はホワイトルーム組からも評価されるところではあったからね
ちなみに天沢や八神が櫛田の本性バラしたところでしがらみが全部消えて、くーちゃんにアタックしない理由も消えるため、いちばん困るのはくーちゃんという可哀想なオチ
あと本編に入れようとして会話の流れ的に変だなと思って抜きましたが「斉木楠雄退学試験じゃなくて良かったね」というセリフか地の文を入れる予定でした
3巻のイベントはこれでほぼ消化したので次で終わりかな。
この後月城さんと司馬さんの会話を一之瀬が聞いて、脅されちゃったりするんだけど……綾小路のこと聞かされても原作ほど関わりのない一之瀬さんには大して聞くほどのことじゃないし、けど大人たちは脅しに2年Aクラスの生徒のグループをリタイアさせましょうとか言うし……多分正義の味方がなんとかしてくれるやろ……
てことでまた次回
一之瀬さん周りをどうするかうっかり忘れてたのでそれが決まり次第投稿します
まあ多分『我がクラスのリーダーを脅かす者は何人たりとも許さない』になる
櫛田桔梗は原作より
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強い
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変わらない
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わからない