ようこそ超能力者のいる教室へ -2年生編-   作:オールF

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最後にひとつ言っておく
『好感度は加速』する


一之瀬帆波の激走

 空助との鬼ごっこが終わり、グランピングの設営地とコーヒーゼリーは寮に戻ってから送るという話を聞いたあと、僕と高円寺は無人島サバイバル試験に復帰した。

 元々、多めに得点を稼いでいたのと2位の南雲が僕たちの復帰を待って得点を重ねていなかったのもあり、僕たちのグループは1位のままだった。

 復帰後、指定エリアに急ぎ、課題もこなして再び2位、3位との差を開けてからその日の行動を終える。

 そして、高円寺と共にグランピングの設営地にやってくると空助と彼の雇ったイケさんという初老の紳士が待っていた。

 

「晩御飯は19時からでイケさんがやってくれるから。お風呂とサウナはあそこね。風呂上がりのデザートは冷蔵庫に入れてあるから」

 

 早口で空助は「じゃあイケさんよろしくね」と言ってここまで来るのに乗っていたという潜水艦へと入っていく。

 さて、17時になり指定エリア踏みも、課題も終わったところで僕は高円寺に一言断りを入れてからこの場を離れた。

 理由は何故か僕を探していたらしい一之瀬さんと会うためである。

 鬼ごっこ中で気にかけてやれなかったが、こうして12日目の試験が終わったあとであれば問題はない。

 千里眼で一之瀬さんを探すと思いのほか近くにいたため、走って一之瀬さんのところへ向かう。

 その途中でやたらと1年生が動き回っていることに気づく。

 どうやら、椿は綾小路退学試験のための準備を進めているようだ。

 綾小路は僕と合流すると言っていたから、J6エリアに来るだろう。

 そうなると、1年生たちはそのエリア周辺にテントを構えることになる。

 森の中からグランピングが見られるということはないだろうが、綾小路の行動を窺うために見に来るやつはいるかもしれないな。

 空助は人払いを済ませたと言っていたが、自発的に近づいてくる人間は別だろう。

 一応、グランピングのテントは砂浜と同じ色で日が沈めばあまり目立たないかもしれないが、念の為近くにいる1年生たちには催眠はかけておこう。

 そう思いながら一之瀬さんのいるH3へとやってくると、川の向こう側に一之瀬さんの姿を目視した。

 

「く、楠雄くんっ!?」

 

 その姿は泥だらけで、息を切らせた一之瀬さんが僕を見つめていた。

 一之瀬さんは運動音痴なだけで、素の身体能力自体は高いからな。

 体力もある方だし、試験が終わってからここまで駆け出して来たのだろう。

 合流が早かったのは僕が早めに来たからというのもあるが、それでも女子にしては大したものだと感服せざるを得ない。

 

「私……私、楠雄くんに会いに来たの!」

 

 愛の告白でもされるのだろうか。

 だとしたらすごく困るから合流したくないのだが、疲れきった状態で言葉を切らせている彼女を見るとそうもいかない。

 

「今、そっちに、行くからっ!」

 

 そう言って、ふらふらとした足取りで一之瀬さんは川沿いを走り出す。

 

(これっ、邪魔っ!)

 

 バックパックが邪魔になって、それをその場に捨ててまで走るので僕から一之瀬さんの方へと向かう。

 川を飛び越えることは簡単だが、今そんなことをしたら一之瀬さんを余計に混乱させてしまうだろう。

 一之瀬さんに無理をさせるわけにもいかなかったので、僕が1分ほど走って合流する。

 

「や、やっと、会えたぁ……!」

 

 力いっぱい足を懸命に奮い立たせて、僕の前にまで来ると立ってられなかったのか前のめりになる。

 それを受け止めて、1日戻そうかとも思ったが流石に急に疲れが吹き飛ぶと、違和感を覚えるだろうと思って受け止めるだけに留める。

 

「ご、ごめんっ! あ、あれ? (足が全然)なんで? 足が……言うこと、きかないっ……」

 

 慌てて離れようとしてくれるが、膝が震えてまともに立てないらしい。

 どれだけ走ってきたんだこの子は。

 とりあえず、一之瀬さんのバックパックを回収するため、一之瀬さんを適当な場所に座らせ、念の為ポケットに入れていた100円とグランピング前に置いてきたバックパックの中の水をアポートして、その水を一之瀬さんへと渡す。

 

「あ、ありがと……」

 

 気にするなと言って、バックパックを取りに行き、30秒ほどで戻ってくると一之瀬は少し落ち着いていた。

 

「は、はや……」

 

 これでも校内一の俊足だからな。

 さて、どういった要件で僕を探していたのかを聞きたいところだが、このまま要件を聞くと、一之瀬さんはこれから暗くなっていく道を戻っていくことになる。

 この身体の状態では戻る途中で力尽きる可能性もある。

 そうなると、一之瀬さんはまた自責の念に苛まれることになる。

 

「あ、あのね、私、楠雄くんに、伝えたいことがあって……!」

『わかった。とりあえず、ここから抜けよう。この先に僕と高円寺の拠点がある』

「(高円寺くん……? そっか、楠雄くんと同じグループなんだった……。でも、高円寺くんは綾小路くんと同じクラスだし、綾小路くんに伝わっちゃうかも……)え、えっと……それは……」

 

 綾小路のこと? 

 1年生の包囲網か、月城関連か? 

 どちらにしろ拠点にいけば綾小路も来るし、都合はいいだろう。

 

『問題ない。とりあえず行こう』

「う、うん……でも、ごめん、私、今足が……」

 

 それも問題ないな。

 幸いにして1年生たちは綾小路が向かってきている北側にいるし、ここから直進してJ6に向かっても見られることはないだろう。

 一之瀬さんのバックパックを代わりに背負い、一之瀬さんの方へと身を屈めると僕は座る彼女の体を抱き上げた。

 

「えっ(楠雄くんが近づいて)え!? (抱き上げてって、えっ!?)えぇっ!?」

 

 バースト読んで画面端か? 

 まぁ、これなら歩けなくても問題ないだろう。

 坂柳さんの時とは違って目撃者はいない。

 いても後で消す。

 

「くっ、楠雄くんっ!? あ、あ、の、あさ、その、これはっ!?)

 

 横抱きというやつだ。

 歩けない以上はこれで戻るしかない。

 

「そ、そんなっ、わ、わたし、重いしっ! (でも、この機会逃したらこんなこと……)あ、あっ、あの、その……」

 

 誰かに見られると面倒だからな、とりあえず走るから口は閉じておいた方がいいぞと伝えると一之瀬さんは「は、はい……」と意外と素直に応じてくれた。

 それからは前回の話の通りだ。

 告白でもないのに綾小路と高円寺が気を遣って浜辺でどちらの方が足が速いかを競い合っているのを横目に一之瀬さんが僕に言いたかったことというのを聞くことにする。

 

「えっと、私……腕時計が壊れて、それで、スタート地点に戻って交換してもらおうと思ってたの……その途中で道に迷って、月城理事長代理と1年生の担任の司馬先生の2人がいて……!」

『なるほど、大体わかった』

「もう!? 私まだ3分の1くらいしか言ってないよ!?」

 

 どうせ綾小路を退学にさせる話を誰もいないと思ってペラペラ喋ってたんだろう。

 テレパシーもない一般人に一生徒を退学させる話を聞かれるとか恥ずかしくないのだろうか。

 いつのことかまではわからないが、事情は把握できた。

 しかし、一之瀬さんは全て話したいのか言葉を続ける。

 

「最終日までに……綾小路くんがリタイアしてなかったらI2に呼び出して葬り去るって……」

 

 森の中でよくもそんな物騒なワードを言えたもんだな。

 しかし、退学させられると話題に上がっている綾小路には言いたくないというのはどういうことだろうか。

 

「このことを綾小路くんに話したら……Aクラスの生徒を退学させるって……だけど、だけど……綾小路くんには話せないけど、楠雄くんにならって……ごめんね、楠雄くんに頼らないようにって……思ってたのに……私……」

 

 ふむ、一之瀬さんがやけに怯えているというか、苦しんでいる様子だったのはこういうわけか。

 なるほどな。

 

「綾小路くんとは、私、去年の夏休みの試験では同じグループだったし、時々堀北さんと一緒に話すし……堀北さんも綾小路くんのこと話したりしてて……それに、楠雄くんとも仲良いから……(もし綾小路くんが退学になって2人が悲しむの見たくないから……)だから、退学して欲しくなくて……」

 

 どんどんと嗚咽混じりに一之瀬さんは言葉を紡ぐ。

 綾小路を助けるために本人に伝えることはクラスメイトの退学を意味し、かと言って僕に頼ることは僕の手を煩わせると考えたのだろう。

 俯く一之瀬さんを見て、僕は一つ溜息をつく。

 やれやれ……面倒なことをしてくれたな全く。

 

「……楠雄くん、私のこと嫌いになっちゃった、よね? (こんな、頼りなくて、何も出来ないリーダーなんて)」

 

 一之瀬さんの不安な表情を浮かべて僕の方を見上げる。

 別にこんなことで一之瀬さんを嫌いにはならないし、頼りないと思ったこともない。

 むしろ、他クラスの生徒のため、僕の友人のために体に鞭打って来てくれた人を嫌う理由がない。

 

『安心しろ、僕が君を嫌いになることはない』

「ふ、ふぇっ!?」

 

 とりあえず、一之瀬さんをこんな目に遭わせたのは……性格的に考えて司馬だな。

 ざっくりとしか拾えなかったが、司馬に処理だとかリタイアさせるとか言われたというのが流れてきた。

 月城の方は大人の対応として、綾小路に言わなければ何もしないが、何かすればクラスメイトを退学にすると脅した程度だろう。

 まぁクラス揃っての卒業を望む一之瀬さんにとってはこれ以上ない脅迫になってしまったが。

 

「で、でも、その、楠雄くんが綾小路の退学の邪魔をすると、楠雄くんが! (退学させられちゃう!)」

 

 僕が? 

 

「綾小路くんには悪いん、だけど、私、それが一番、嫌で……私にとって楠雄くんは、退学になると、その、困るから……(だって、私、楠雄くんのことが……す、す、す……って今言うのはタイミング的にへ、変かな……?でも、でも……!)」

 

 このままだと勢い余って告白されるな。

 気持ちはありがたいはありがたいが、僕に誰かと付き合えるほどの器量はないし、付き合ったとしても一之瀬さんをガッカリさせてしまうからな。

 現実に引き戻すために僕は震える一之瀬さんの手を握った。

 

「ひゃうっ!?」

『約束しよう、僕は退学しないし、綾小路も退学にはさせない。2年Aクラスも誰1人退学にさせない』

「〜〜〜ッ!!(か、かっこいいっ……!? いや、元からかっこいいけど!? なんか、今日はお姫様抱っこのこともあって……だ、ダメだよぉぉ〜ッ!!)」

 

 一之瀬さんをこんな目に遭わせた2人を、もっともっと追い詰めて一之瀬さんが味わった以上の恐怖を味あわせてやると……言えば彼女は止めるだろうからそこまでは言わないが。

 

『だから、一之瀬さんは明日から何事も無かったかのように試験に復帰してくれ』

「すぅー、はぁ、すぅ……えっ? ……い、いいの?」

『ああ。空助の相手に比べれば綾小路の退学を何とかするのは容易いからな』

(楠雄くんのお兄さんってそんなにめんどくさいんだ……)

 

 かなりめんどくさい。

 明日には元気になって、僕に負けた腹いせに綾小路か高円寺、もしくは近くにいたからという理由で一之瀬さんに絡んできては虐めるだろう。

 一之瀬さんはともかく、あの2人が容易に傷つけられるとは思わないが……あいつはドMとドS、両方の性質を併せ持つ変態だからな。

 

『今日はゆっくり休んで明日に備えよう。あと2日、互いに悔いの残らないように頑張ろう』

「う、うん……そう、だね……(また楠雄くんに頼っちゃうけど……楠雄くんならきっと……)ありがとうね、楠雄くん」

 

 それはこちらのセリフでもある。

 まぁ月城の不審な動きには気付けたかもしれないが、詳細を知れたのは良かった。

 

「じ、じゃあ、えっと、お風呂先に入っちゃった方がいいのかな……?」

 

 そうだな。

 あの2人もやることが無くなってきたのか腕を組みながら僕たちの方を見ながら話しているしな。

 

「終わったか?」

「どうだろうねぇ。ただ、一之瀬ガールがまだ泣いているようだねぇ」

「告白が上手くいかなかったのか?」

「……君はまだまだ乙女心がわかっていないねぇ」

「むっ……こう見えてもキスまでいったんだぞ?」

「キス程度でムキになれるとは……綾小路キッズだねぇ」

 

 放っておいたら喧嘩しそうだな。

 僕もあっちに行ってやるか。

 

「一之瀬様、どうぞこちらへ。ちょうどいい湯加減となっております」

「あ、ありがとうございます……(誰なんだろうこの人……楠雄くんのお父さん? おじいちゃんとか?)」

 

 完全な赤の他人だ。

うちの父親と祖父も大概めんどくさいぞ。

イケさんが一之瀬さんを風呂まで連れて行ってくれるので僕はそれを見送ってから、砂浜で駄弁る2人の方へと向かう。

 

「終わったのか?」

『ああ。綾小路の退学を邪魔すると僕も退学になるらしい。1人で頑張れるか? というか頑張ってくれ』

(えっ)

「愉快なことになっているねぇ綾小路キッズ」

 

 事情を知らない高円寺は楽しげに笑うと、綾小路が疑問の声を上げる。

 

「一之瀬は何か聞いたのか?」

『……高円寺に言ってもいいのか?』

 

 確認を取ろうとすると、先に高円寺の方から拒否される。

 

「私は興味が無いのでねぇ、一風呂浴びる前に夜の海を堪能するとしよう(あわよくばミスター空助の潜水艦を見せてもらうとしよう)」

 

 単純に興味が無いのか、高円寺はパンツ以外を脱ぎ捨てると海の中に入っていく。

 楠雄の知らないこと、教えてあげるとかされない限りは何をしてても構わないが、今空助に会いに行っても無駄なんじゃないだろうか。

 

『司馬と月城が綾小路が最終日までにリタイアしなかったらI2で自らの手で退学にさせるという話を一之瀬さんが聞いてしまったらしい』

 

 2人は一之瀬さんに綾小路に漏らすなと言い、綾小路に言うとAクラスの誰かを退学させるし、綾小路を庇う僕も退学にすると脅した。だ

 が、一之瀬さんは綾小路を退学にさせたくなかった。

 それで僕のところに来たというわけだとざっくりと説明してやる。

 

「なるほどな。となるとオレはあの2人の罠に乗るしかないのか」

『君の死刑執行地点はI2のようだ。明後日の指定エリアに含まれるんじゃないか?』

「だろうな」

 

 一応、僕は綾小路からプライベートポイントマンをしてた時に手を貸すように頼まれたが、それは貰ったポイントの量からして宝泉との一件でチャラだからな。

 ここで無理に手を貸す必要はないが。

 

『司馬は僕が殺る。月城は君が殺れ』

「(やる……? 殺すって聞こえるんだが気のせいか……? 司馬は月城が連れてきた刺客なら腕は立つはず)お前が1人受け持ってくれるなら助かるが……いいのか?」

『司馬は私情だ。気にするな』

「(司馬のやつ一之瀬に何かしたのか……?)わかった」

 

 1年生包囲網は自力でどうにかして……いやそういえばもう1人灸を据えないといけないのがいたな。

 八神が出てきたらそっちも片付けるか。

 やれやれ、やることが多いな。

 一之瀬さんが出てきたら、僕が入る……はずだったが高円寺も綾小路も譲らなかったので結局3人で入り、一之瀬さんを1人で寝かせるため、3人でベッドで寝ることになった。

 上質なベッドで寝れていることだし、身体の巻き戻しはしなくてもいいかと思ったが空助や月城のことで疲弊していると思って3人とも戻してやった。

 疲れるだけの試験もあと2日で終わりだ。

 僕は実家で寝させてもらおうと思ったが、何故か一之瀬さんがベッドに入ってきたのでそうもいかなかった。

 本当に何故? 

 トイレの帰りに間違えたのだろうと思い、こんなむさ苦しいベッドで寝かせるわけにもいかないので一之瀬さんをまた運んで元のベッドに戻す。

 そうして、退散しようとすると寝巻きの裾を掴まれた。

 

「ごめん、ママ……今日は一緒に……」

 

 僕はママじゃないんだが……? 

 ……カメラとかついてないよな? 

 中国製のカメラは細くて小さいらしいが……サイコメトリーで探そうにも離れたら一之瀬さんが本格的に起きそうだ。

 流石にないと思って仕方なく、一之瀬さんがレム睡眠に入るまで隣にいることにした。

去年みたいに制御装置が抜かれるのは勘弁だからな……とはいえ……僕も今日は……疲れ……………………ぐぅ。

 




告白を回避できても好感度の上昇は止められないようだな……(一之瀬の好感度210)
インフレ超特急

うっかり告白はなんとか回避しました。
うっかり同衾は回避できなかったようだな……

高円寺と綾小路が「わぉ」って口を揃える未来があるかもしれない

今日は投稿しないと言ったが書けちゃったねぇ!!
褒めて褒めて
アッパレ忘れん
このオールFが金やちやほやされるために二次創作を描いてると思っていたのかァーッ!!(豹変)

補足することもあまりないし今日はここまで!!
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