ようこそ超能力者のいる教室へ -2年生編-   作:オールF

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久しぶりにドラゴンボールとスラムダンクが読みたくなってウズウズしてる
H2も読みたい(これだけサンデー)
とりあえず4巻、無人島試験ラストまで一気に駆け抜けます
Are you ready?
できてるよ


終幕

 I2に侵入し、境界線をとっくに越えたはずだが腕時計に到着の合図が来ない。

 通常ならばGPSの誤差の可能性も考えるが、今回に限りそれはないと判断できる。

 月城か司馬か、もしくはオレを退学させるために送り込まれたホワイトルーム生……天沢一夏がこのエリアのどこかにいるはず。

 今日までエリアの境界線に足を踏み入れれば、腕時計が震えたが、今回はそれがない。

 腕時計の位置情報の不具合と誤認させるためにオレをエリアの中央に寄せさせるつもりなのだろう。

 逃れることの許されない道を、突然の奇襲に備えてオレはゆっくりと進む。

 10分も歩くことはなく、深い森は徐々に光を吸収し始め、視界の先には青い海と青い空が広がっている。

 腕時計に一切の反応はなかったが、代わりに目の前に広がる小さな浜辺には2人の大人と、2つの意味で後輩にあたるであろう1年生2人の計4人がこちらを見て立っていた。

 大人は月城理事長代理と、1年Dクラス担任の司馬。

 まだ息の根があるのを見るに斉木には見つかっていないようだ。

 そして、1年生の方は天沢と、櫛田と同じ中学であり生徒会に所属している1年Bクラスの八神拓也。

 この場にいるということは、あいつもホワイトルーム生なのだろう。

 

「随分とギャラリーが多いんですね、月城理事長代理」

 

 オレは4人に近づきながら、そう声をかけた。

 

「どうにも上手くいかないことばかりでしてね。これが私の取れるギリギリの選択だったというわけです」

 

 今までの14日間を振り返ってみるが、月城がこのI2にオレをおびき寄せることが最終的な罠だった。

 この北東エリアには指定エリアも課題もないため、他の生徒が来ることは無い。

 だが、オレが指定エリアを捨てて課題を目指す可能性もあったはず。

 単なる運任せで月城がこの場をセッティングしたりすることはありえない。

 昨日以前からオレがここに来ることは彼らの中で確定していた未来だった。

 ただ彼らにも誤算は多かったのだろう。

 それは教員と共にいるホワイトルーム生2人が物語っている。

 

「それで、これからオレはどうなるんでしょうか」

 

 視界の端には小型船があり、エンジンをかけたまま波に揺られて停泊している。

 つまりいつでもこの場から離れて本島に戻る準備は出来ているということ。

 

「出来れば素直に指示に従っていただき、私たちと共に乗船していただきたいところですね」

「綾小路清隆の自発的なリタイア宣言、という形なら丸く収まるだろう」

 

 付け加えるように司馬先生がそう補足してきた。

 素直に乗り込む選択肢がオレにあると思っているのだろうか。

 

「そこの2人もそうですが、司馬先生も月城理事長代理側の人間だったんですね」

 

 正体を明かしてきた天沢はともかく、八神は意外だった。

 あいつもまた高校生としての情緒と感情を学ぶ訓練を受けてここまで来たのだろうが、以前会った時の明るい表情では無く、なにかに怯えるような顔をしてるのはなぜなのか。

 司馬がオレとの接点を持たなかったのは、天沢と八神の監視役だったからなのかもしれない。

 その必要性が消えて、もう隠す気はなくなったのだろうか。

 何も無い北東にオレがいるのは多少怪しいだろうが、あちらは切羽詰まった状況だ。

 なんにせよオレを監視しているのは月城側の人間だろうから、GPSの位置もズラしたりして他の生徒に怪しまれないようにしているかもしれない。

 

「目に見えて危険なものは見えませんが、素手でオレとやる気ですか?」

「はい。生憎とあなたは商品ですので、無事に奪還させることが義務ですから、必要なのは己の拳と判断しました」

 

 砂浜に立つ月城は、そう不敵に微笑むと両手を軽く広げる。

 たまに斉木と柴田が廊下でやっているポーズに見えるが、奴らの発する「ほーっほっほっ」という上品な笑い声は付いていない。

 この場を切り抜けるには月城と最悪の場合はホワイトルーム生2人を相手にする必要がありそうだ。

 七瀬の時のように攻撃を避け続けて心を折るやり方は通用しない。

 

「退学を避けるためには受けるしかない……というわけですね」

「そういうことになります」

 

 静かに頷いた月城にオレはやれやれと思いながら口を開く。

 

「出来ればこういうことは今回で勘弁してもらえませんか。暴力による解決方法は本来推奨されるべき行為ではありませんし、オレはこの学校の生徒です。通常のルールに基づいて考えればこれは反則だ」

 

 それにオレとは関係のない人を巻き込みすぎている。

 

「確かにそうかもしれませんねぇ。しかし綾小路くん、君はホワイトルームの中でも偉大な成果を残した成功例。限られたルール内で戦っても敵などいないでしょう」

「それはどうでしょう。少なくとも1人はオレといい勝負ができて、もう1人はオレを赤子のように捻ることができる奴がいますよ?」

 

 オレのいう2人に、月城はすぐに思い至ったのだろうが、彼が口を開く前に天沢が言った。

 

「その、綾小路先輩を捻ることができるのって、斉木先輩、ですか……?」

「天沢、お前は口を閉じていろ」

 

 司馬が制するも、不安げにオレを見つめてくる眼差しは、否定して欲しいと訴えかけていた。

 その気持ちはわからなくもない。

 オレたちの10数年が、無垢なる天才によって破壊されるわけだからな。

 人は生まれながらにして天才ではない、天才は後天的に生み出すことができるというホワイトルームの理念を真っ向から粉砕する存在、それが斉木楠雄……いや斉木兄弟だ。

 

「その様子だと……そうか、そういうことか」

 

 天沢と無人島で再会した際、やけに落ち着いた様子だったのは、既に斉木にやられたあとだったからと考えれば、今の質問の理由も納得がいく。

 そして、八神もまたオレの知らないところで斉木の実力を分からされていたのだとしたら。

 オレはこの学校に来てから体育祭までは、この学校にいる生徒と競い合うことそのものが愚かだと思っていた。

 オレが本気を出さずとも勝てるやつしかないと思っていたからだ。

 ただそれも体育祭の日に覆されることになった。

 

「仮に斉木くんがあなたより優れていても、ホワイトルームの悲願は日本の掌握、ひいては世界の掌握。成功体の君が彼に劣っていても、いずれ生まれる更なる成長体は世界を掌握し彼すらも……!」  

 

 それは無理な話ですよとは言わなかった。

 言えば、天沢と八神の心が壊れることがわかったからだ。

 どんなにオレが成長しようとも、オレの技術を叩き込まれた後輩がいくら生まれようとも、オレの遺伝子を継いだ子供が産まれたとしても、オレが真の意味で斉木楠雄に勝つことはできない。

 その必要もない。

 なぜなら、オレは……。

 

「斉木楠雄はオレの大事な友人です。あんた達の夢物語にあいつは関係ありません」

 

 とは言いつつも、あいつをオレの退学阻止のために頼ってしまったが……無人島でのあいつの話を聞いていたら頼まなくても手を貸してくれたような気もする。

 しかし、月城の言葉は大仰ながらも薄っぺらく感じるのはなぜなのか。

 月城としてはあくまで忠実に、淡々と職務をこなそうとしているだけ。

 

「友人ですか……感情を廃されたと聞いていましたが、まさか取り戻してしまったのですか?」

 

 聞けば先生が悲しみますねと白々しく言う月城にオレは鼻で笑う。

 

「子供は親の思いどおりにならないものらしいですよ」

「みたいですね……それもいいでしょう。先生が欲しているのはあらゆる状況下で優れた成績を残し、そして大勢を導ける人間の存在なのです」

「だったらオレは不要ですね」

 

 ホワイトルームが全てだと思っていたオレにとってこの学校は宝箱のようだった。

 オレにしてみれば、この学校のレベルは幼少期のうちに通過した道だが、ここにはホワイトルームでは絶対に生み出せなかった人材がたくさんいる。

 オレとの話し合いでは埒が明かないと思ったからか、月城は司馬へと軽く視線を送った。

 

「周囲に人は?」

「いえ、我々以外にはいません。懸念であった斉木楠雄の反応は朝から消失したままですが……」

 

 司馬はそこで言葉を切ると、その名を聞いて震え出した八神を見るが、肩を竦める。

 

「非常時の備えはこうして揃えてあります」

 

 そんなので足りるのかとオレは思ってしまうが、月城は司馬に何も言っていないのだろうか。

 天沢と八神もどのような形で斉木に負けたのかは知らないが、宝泉の時のような形であれば体に恐怖の一撃が刻まれているはずだ。

 

「彼が来る前にことを成してしまいましょう」

「分かりました。お前たち」

「は〜い」

「はぃ……」

 

 無駄話は終わりとでも言うように、月城と司馬が歩き出す。

 お互いにと時間を無駄に浪費するのは避けたいところではあるが、オレはそうでもない。

 月城も司馬もここに立っていることを考えればそれなりの実力者のはず。

 龍園や宝泉といった喧嘩でものを言わせてきた不良たちとはレベルが違う。

 それに加えてオレよりは劣るであろうがオレを退学させるためにここに来たホワイトルーム生が2人。

 

「4対1は不公平だとは言いませんよね? あなたは仮にもホワイトルームの最高傑作。これでもこちらはかなり不安を感じているのです」

 

 どこか余裕のない表情で言う月城は数ヶ月前に完治した右足を見やる。

 1対1でも十分に渡り合えるという確信がありつつも、手の内を全てさらけ出してまでオレとの武力行使を望んでいる。

 プライドなんてものは一切ない、磐石の態勢。

 警戒すべき点があるとすれば小型船の乗組員が加勢してくることだが、月城はそれはないと微笑む。

 その言葉を鵜呑みにできるほど月城は単純な相手ではない。

 見たところ手ぶらではあるが、外傷の残りにくいスタンガンはもちろん、オレを傷つけないというのをブラフにナイフなどの暗器を隠し持っている可能性はある。

 未知の実力を持つ大人、それもエージェント級の2人を相手に上手く立ち回りつつ、ホワイトルーム生の攻撃もいなすなどマルチタスクで脳が焼き付きそうな状況だが、精神的な乱れはない。

 不条理、不利な状況での戦闘は幾度となく幼い頃から繰り返し叩き込まれているのもあるが、相手に常人しかいないのであればなんとかなりそうだ。

 

「自分が負けるとは微塵も考えていない、そんな顔をしていますね」

「どんな顔ですかね。鏡でもあれば見たかったんですが」

 

 既に背後を司馬と天沢に取られているが、まだ相手は様子を見ている。

 素早く終わらせるのであれば先手を打ち、ホワイトルーム生の2人を無力化したいところだが、こちらから仕掛けるのは得策じゃない。

 オレだけが手を上げるということになれば、戦い以外の場面で不利に運ぶ。

 

「そちらからは動きませんか。仕方ありませんね、司馬先生」

 

 名前を呼ぶと同時に、2人の大人と2人の高校生がオレへと同じタイミングで歩み始める。

 焦ることなく詰将棋のように距離を縮めて来るとともに6人目の足音が聞こえ、全員がそちらへと意識を向ける。

 そして、その先にいる男にオレは口角を上げた。

 

「来ないんじゃないかと思ったぞ」

『悪い』

 

 オレ1人でこの4人は流石に時間がかかりすぎるからな。

 それに斉木は約束を違えないということを知っていたから来る確信があった。

 少しでも話を長引かせようとした意味はあったのかもしれない。

 

「来てしまいましたか……司馬先生」

「はい、天沢と八神に対処させます」

 

 この場に無関係な生徒が現れれば、月城たちにとっては迷惑な話。

 そのイレギュラーを足止めするために天沢と八神は呼び出されたらしいが。

 

「拓也……」

「あぁ、分かってる。けど……」

 

 2人は向かってくる斉木の前に立つも、その声にホワイトルーム生特有の自信の色はない。

 そして、斉木もまた2人は眼中になく、その瞳に捉えている人間は1人だけ。

 

「……ほう?」

 

 その視線に気づいた司馬は、ゆっくりと片足を後ろに下げると重心を落とす。

 

「2人から大凡のことは聞いたが、とんでもない化け物らしいな」

 

 司馬はそう言って斉木に対して最大限の警戒を示すが、天沢と八神は斉木に背を向け司馬に言う。

 

「やめたほうがいいですって。この人、絶対司馬先生よりも強いですって」

「そ、そうですよ……か、勝てるわけがない……!」

「はぁ、失敗作は所詮どこまでいっても失敗作というわけか」

 

 震えながら司馬に訴えかけるも、情けないと司馬は首を振った。

 

「お前たちのことだ、子供のように純粋に、力と力だけをぶつけ合う喧嘩とは違うもので挑んだのだろうが……16年も訓練を受けて、たった一度の敗北でそのザマか」

 

 落胆した様子を見せる司馬は構えたまま斉木を睨みつける。

 

「八神の話では他国の諜報機関のエージェントだと言われていたがどうなんだ?」

『僕は2年Aクラスから貴様を倒すためにやって来た』

 

 穏やかな心を持ちながらはげしい怒りによって目覚めた伝説の戦士のように斉木は静かな怒りを滲ませた瞳で、司馬へとゆっくりと迫る。

 司馬はその鋭い目を細めると斉木に肉薄し、右足を大きく後ろに蹴り上げ、斉木へと一撃を放つ。

 

「ふっ……んっ!?」

 

 しかしその蹴りを斉木は左手で掴む。

 

「ふんっ! んっ! くっ! んぅっ!?」

『いい加減にしろよ、このクズ野郎』

 

 斉木の手から逃れようと司馬は右足に力を入れるが、斉木の腕は鉄のように動かない。

 それどころか、斉木は掴んだ司馬の右足を強く握ると、握力だけで服にシワが浮かび上がる。

 

『……よくも一之瀬さんを泣かせたな』

「ッ!? な、舐めるなよっ!」

 

 掴まれて動かせない右足の状況を変えるため、司馬は左足で斉木へと回し蹴りを叩き込もうとするが、斉木は右足から手を離し回避行動を取る。

 ようやく右足の自由を取り戻した司馬は体勢を立て直すが、先程まで掴まれていた右足の感覚がまだ完全に戻らないのかややふらついていたが、闘志は失っていないのか斉木のことを睨みつけている。

 

「天沢と八神を倒したというのは本当らしいな……だが!」

 

 軍人としての矜持があるのか、司馬は構え直すと、斉木に向かって行く。

 右腕、左腕、右足、左足と彼の持てる技術の全てを使って斉木に攻撃を仕掛ける。

 しかし、斉木はそれを全て僅かな動きで躱し、冷ややかな目で司馬を見上げる。

 司馬は次第に焦り始め、その表情は強張っていく。

 

「なんなんだ、お前はっ……!」

 

 いくら全力で殴ろうが斉木の体幹は崩れない。

 まるでそこに攻撃が来るのが分かっているかのように避けている。

 宝泉の時に見た光景だった。

 オレと共に斉木の圧倒的スペックを見た月城は斉木に興味津々のようで、観戦モードに入っている。

 

「あれが斉木空助の弟……綾小路先生の理念の破壊者」

 

 司馬の体術が見かけ倒しなものでないのは一目見てわかるが、それでもなお斉木との間に歴然とした実力差があることは明らかだった。

 息の上がってきた司馬に対して斉木は一度も攻撃を受けていない。

 斉木が本気を出せば、この程度の人間はものの数秒で粉砕することすら難しくないだろう。

 

「貴様ァ! さっきから避けてばかりで! そんなことで俺が……!?」

 

 叫ぶ司馬にお望み通りにと斉木が右手の拳を腹部に叩き込んだ。

 相変わらず予備動作が全くないにも関わらず鋭い突きは、まるで鉄球がぶつかったかのような凄まじい威力のパンチだったのだろう。

 鳩尾の急所に寸分違わぬ精度で放たれたその拳に、司馬は瞬時に呼吸を詰まらせてしまう。

 痛みと苦しさが重なり、胃酸が込み上げ、悲鳴を上げることすら許されずに膝を折ってしまう。

 

「が……ァァあ……っ……!!」

『お前はもう謝っても許さないぞ』

 

 吐き捨てるように倒れた司馬は砂浜に這いつくばり、苦痛の喘ぎを漏らした。

 激しく咳き込み、腹部を押さえながら、荒々しい息遣いで胸を上下させている。

 全身を蝕むような激痛に耐えながら、震える声で月城へ助けを求めようとする。

 

「う、ぐ、っ、げほっ……! ……つ、つ、つき、し、ろさ……ぁ……っ」

『どこへ行くんだ?』

「ぁっ!? ぁぁあっ!? あぁぁっ!!?」

 

 それを許すまいと斉木が這いつくばる司馬へと問いかける。

 司馬は屈辱感と恐怖に支配され、全身の血の気が引いていく。

 完全に心も体もへし折ったことを確認すると、斉木は月城へと向き直った。

 

『僕の用は済んだ。あとは好きにしろ』

 

 そう言うと、斉木は来た道を引き返す途中、立ち竦んで動けなくなっていた1年生2人の前で止まる。

 

『お前たちも試験に戻った方がいいんじゃないか?』

「あ〜、はい……ですよねぇ……」

「はい! はい! 戻ります! 戻ります! 戻らせてください!」

 

 天沢は引きつった表情で、八神の方は無理やり作ったのであろう満面の笑みで頷くと逃げるようにして浜辺から去って行った。

 同じく去っていく斉木の後姿を見ながら、月城は顎に手を置く。

 

「興味深いですね。あれがあんなごく普通の家庭から生まれたとは……」

 

 ごく普通? 本当に? そう疑いたくもなるが、あれだけの力を持っていながらも邪心や驕りに満ちた様子がないのはまぁそういうことなんだろうな。

 オレたちとは比べ物にならないほどの、到底理解できない力を持っていると感じ取った月城は、自身の持つ認識を改める必要があると悟ったのだろう。

 

「……仕方ありません。私も司馬先生のようにはなりたくありませんし、手を引くことにしましょう」

「やけにあっさりですね。斉木は司馬先生だけが目的であなたは粛清対象じゃないみたいですよ?」

「あの動きを学習した君と戦いたくないんですよ」

 

 それに、自分1人で勝てるほど自惚れていないと降参の意を示すように月城は手を挙げた。

 

「一之瀬を中途半端に脅したことが失敗でしたね」

 

 まぁ、徹底的に処理していたら司馬と月城は海どころか宇宙の藻屑になっていた可能性の方が高いが。

 そう考えていると月城は不服そうに言う。

 

「これでも私は抑えたんですがね……あまり強い言葉を使ってはいけないとは本当だったようです」

 

 現状、月城が有利な点は変わらないが、増援として呼んでいた司馬は虫の息。

 その司馬は自業自得だから特に可哀想とは思わない。

 こいつが一之瀬を必要以上に脅したのだろう。

 ホワイトルーム生2人も立ち去った。

 小型船にいた人間も遠目から斉木の動きを見ていて恐れ慄いたのか、あいつが立ち去った方向を注視していた。

 

「君の得点はかなり微妙なラインですが、君のことです、セーフティラインは超えているんでしょう?」

 

 月城の問いかけにオレは頷きを返すと、笑みを消さぬまま、小型船のいるもう1人の男へと声をかけ、司馬を運ぶように指示をする。

 

「最後に1つ聞かせてください月城理事長代理。あなたは本気でオレを退学させようとしていたんですか?」

 

 強い制約はあったかもしれないが、もしオレが月城と同じ立場ならもっと確実な方法を用意して実行したはずだ。

 目の前の男はそれを思いつかないほど愚かな存在だとは思えない。

 

「買いかぶりすぎ……と言いたいところですが、今年に入ってからイレギュラーな事が多くてですね。私の用意した特別試験には身に覚えのないルールが追加されていたり、日本を代表する天才の弟がいたりとね。私は上の指示に従って君を全力で退学させようとしましたが、君も含めて君の陣営が予想以上に手強かったということですよ」

 

 月城という男はまだ底を見せていない。

 今の言葉に嘘偽りがあったかどうかは不明だが、他にも狙いがあったと考えるべきだろう。

 天沢と八神への伝言を残し、月城は今後はオレや斉木に手を出さないことを誓う。

 

「では、最後まで足掻いて見せてください」

 

 月城は司馬を乗せた小型船に自分も乗り込むと、そのまま砂浜を離れていく。

 それを見送ってオレも試験に復帰しようとするが……ここからではそれも難しいだろう。

 そして、程なくして無人島試験は終わりを迎えた。

 

 ###

 

 長い長い2週間にも及んだ無人島サバイバル試験は終了した。

 夕方の6時過ぎには参加中の生徒が全員戻り、オレたちは数日ぶりにシャワーを浴びることができる。

 とはいえスタート地点でシャワーを浴びたり、突如やってきたマッドサイエンティストの作ったグランピングで風呂に入っていない限りの話であり、オレとしては2日ぶりにシャワーを浴びた。

 1人で浴びるシャワーは当たり前だったのだが、2日前に高円寺と斉木で入った風呂の印象が強くなんだか物足りなさを感じた。

 結果発表までの時間、オレは船内を散策していた。

 本来なら携帯で友人や恋人とやり取りするところだが、携帯は学校が預かったままなのでそれもできない。

 何人か同じクラスの人間とすれ違い、互いに軽く労いの言葉を交わしたりしつつ、オレは斉木の姿を探していた。

 しかし、あの目立つピンク髪とアンテナヘアピンの姿は確認できず、結果発表の時間を迎えることになる。

 7時の夕食時間になり、自然と2年Dクラスのメンバーで固まって食事が始まる。

 昨日と今日で下位グループのリストは閲覧不可能であり、どのグループが不調だったのかを知るには直接聞き出すしかない。

 高円寺以外のDクラスのメンバーが全員いるのは退学を避けられたということだろう。

 2年生の他のクラスの様子も見てみるが、特に欠けている生徒がいるようには見えない。

 Dクラスの場にいなかった高円寺は何故か2年Aクラス……というよりは斉木の隣に陣取っており、楽しげに食事を楽しんでいる様子だった。

 実に2週間ぶりの豪勢な食事に舌鼓を打ちつつもどこか物足りなさを感じていると、午後8時の合図とともにマイクがオンになる。

 

「一時、食事、会話を中断をしてください」

 

 そのようなアナウンスが3年Aクラス担任の佐々木から促され、オレたちは手にしていた食器を置く。

 労いの言葉から始まった佐々木の挨拶はすぐに退学となった下位5グループを発表する。

 全て3年Aクラス以外の生徒で構成された3年生グループであり、佐々木先生の説明に1、2年生はどよめきを起こした。

 てっきり南雲が救済して拾い上げるかと思っていたが、そうはならなかった。

 救済措置を使えた生徒はおらず、3年生から全15名がそのまま退学となったと言う。

 この結果を踏まえると、3年生の5グループが退学することは内々で決まっていたのかと思ったが、多くの3年生たちの顔に余裕はなく、信じられないといった動揺が走っていた。

 退学者の発表を終えた佐々木先生が壇上の端へと移ると、巨大スクリーンに電源が入る。

 そして白い映像が映し出されたところで月城理事長代理が出てくる。

 

「ではこれから無人島特別試験の結果、上位3組の発表を行います」

 

 結果発表ォー! とは言わないのか……いや今までの特別試験でも淡々としてたな。

 そう思い返していると、月城理事長代理は平静に進行を進めていく。

 

「第3位、2年Bクラス坂柳有栖グループ。280点」

 

 2年生で唯一の7人グループの利点をフルに活かし、メンバーもA、Bクラス内で総合力が高い生徒で固めた効果もあってか、3位になったようだ。

 桐山副会長のグループが途中までいたはずだが、終盤失速していたのが大きく響いたのだろうか。

 そして第2位だが、ここで全てが決まると言っても過言では無い。

 しかし、ほとんどの生徒にはその結果は分かりきっていた。

 

「第2位、3年Aクラス南雲雅グループ。362点」

 

 月城理事長代理からそう読み上げられると、3年生からは歓声どころか悲鳴のような声が上がり、逆に1年生からは何故か歓声が上がる。

 そのまま1位の発表がされる。

 

「第1位……2年Dクラス高円寺六助グループ。502点」

 

 その名前が呼ばれた瞬間、一気に全生徒の注目と視線がある2人に集まる。

 勝ち誇った様子もなく、誰かにアピールすることもなく、ただ斉木とジュースの入ったグラスをぶつけて乾杯をしていた。

 たった2人であれだけの得点を稼いだのはまさに驚異的。

 南雲のグループも7人グループであり、数の利はあちらの方があったはずなのに、圧倒的な差を付けての勝利だった。

 2人グループであるためAとDにそれぞれ150クラスポイント、そして個人に100万プライベートポイントと、更にはプロテクトポイントを得ることになる。

 

「本当に化け物ね……同じ人間なのかしら……」

 

 堀北がそう呟きながら高円寺を見ると、やつは上機嫌にグラスを掲げていた。

 この結果によって高円寺は次の試験で動かなくてもいいという免罪符を手にした。

 堀北は素直に喜べないようだが150クラスポイントのおかげでDクラスから脱することができた。

 2年生も奇跡的に1人も欠けることなく、夏を乗りきることができたのであれば学年としては言うことはない。

 天沢と八神がホワイトルーム生であることもわかったし、月城もしばらくは手を出してこないと言う。

 ただこれらもまた月城の思惑という可能性もあるため、警戒を続ける必要はある。

 しかし、今は長きに渡る無人島試験が終わったことを喜ぶことにしよう。

 





4巻終わり! さっさと司馬を連れて自分たちの施設にけぇれ!
動けないホワイトルーム関係者などいるものかーッ!
とはならないとは思うけど司馬先生はリタイアです

くーちゃんが遅れたのは興味本位でやってきた鬼龍院を押しとどめるため
『危ないから来るな』
「そう言われると気になるじゃないか、それに私ならちょっとやそっとじゃ」
『鬼龍院さんがいてどうにかなる相手じゃない』
「そんな相手がいるところに後輩2人が行こうとしているのを黙って見ていろと?」
『ああ』
「わかった。そこまで言うなら引くとしよう。私は物分りのいい女だからな」
《ほんとにそうか……?》

といった感じ。
なお、黙って見ていればいいということだったので遠目から黙って見ていたら興味のある男子がめちゃくちゃ強くて興奮してた。

本編で語る予定だった愛理のグループが下位にいなかったのはお節介あしながおじさんが夜に1日戻しを愛理にしてたから。
それなりに気にかけてるが、《多分この子この学校に僕以上に合ってないよなぁ……》と思っている。

司馬は、シバータが楠雄に言った「一之瀬のことは泣かせないでくれよ」という約束を破らせたので遊びなしでブチ切れられた
周りに人がいるからワンパンで済ませたが、いなかったらうずまきレベルで全間接外して丸めてた。

くーちゃんと高円寺の異常なポイントはなんとなくでつけたけど2人なら取れそうだしええやろと

月城さんが思いのほか早く引いたのは空助来てるのを察したから
まあくーちゃんが介入してきたのもある

坂柳グループが原作より得点を伸ばしたのは一之瀬の離脱がなかったのと、その一之瀬がグランピングで休息して終盤フルパワーだったから。
シバン(僕にはわかったよ一之瀬……なったんだね……伝説のスーパー恋愛ウーマンに)
橋本(こりゃ斉木と会ってメンタル的にも回復したのか……?いいねぇ、本気で好きな人がいるってのは)
なお休息だけが理由じゃないことは柴田と橋本にはバレている。

南雲も原作より点を伸ばしているのは楠雄たちへの妨害はせずにがむしゃらに挑んだため。
たまに課題が被ることがあったが、全敗している
「あいつら強ぇわ!けど高円寺は勝てない強さじゃねぇなぁ……」と楽しみながら戦えてるので負けたことに関しては特に何も感じてない模様
3年生が失速したのは桐山の独断で高円寺グループ封じをしようとしたからで南雲は「やめとけやめとけ」と注意したが聞かなかったので知らねぇってなってる。

龍園の宝泉との喧嘩は無くなってたり、その影響で坂柳との学年末で戦う約束とかも無くなってるけど気にすんな!

この暑い夏に飲み物を沢山くれて……ありがとう……!!!
適当に目に付いたやつをほしいものリストに放り込んだ甲斐があったな……!
頭痛くなっても冷えピタたくさんあるからロキソニンに頼らなくても良くなったので感謝感謝。

4.5巻は来月から始めると思われ(多分)
1ヶ月で4巻進めたってヤッベーイ!
おまけで他のグループと組んだ時書くとか言っといて書けてなくてごめーん!続きはFANBOXで!(大嘘)

試験終了後のみんなの評価?知らねぇ〜!!
嘘です!全て嘘です!
4.5巻の本編で触れつつあとがきで補足していきますね

素敵なイラストをいただいたので公開させていただきますね
公開しやがれーッ!

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ってことで今日はここまで!
バイバーイ!
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