ようこそ超能力者のいる教室へ -2年生編-   作:オールF

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1年生編をしれっと更新してますので暇と興味があれば見てくだされ
相卜命が高育に来てたら〜って話です
相卜命その2を書く予定でしたが先にこっちが出来上がったのと2日に1回は更新するって言ったので

一之瀬▶︎くーちゃん視点と変わります


二度あることは三度ある

 試験が終わってから2日が経ち、私たち2年Aクラスは、クラスメイトの何人かを誘って豪華客船にあるプールに来ていた。

 このプールは朝の9時から夕方の5時まで開放されていて、夏の暑さと無人島試験の苦しい日々を忘れさせてくれる。

 

「はぁ……」

「帆波ちゃん、またため息?」

「あ、ごめん夢ちゃん」

 

 楽しいはずの時間なのに私は時折……というか、クラスメイトに心配される程度にはため息をついていた。

 それはお昼ご飯を食べている今も変わらずだ。

 

「せっかく選んだ水着が好きな人に見てもらえないからってそんなに落ち込む?」

「えっ!? いや、そんなことなっ……て、私好きな人とかいないからっ!」

 

 別に水着を見てほしいとかそういうのはないけど、ただ柴田くんや渡辺くんは来てくれたのに楠雄くんがこの場にいない……というのは確かに寂しい。

 神崎くんもいないけど、柴田くんの話では2人でどこかに行ったという話でもない。

 渡辺くんは「疲れてるんじゃないのか? 昨日も出かけたと思ったらさっさと戻ってきたし」と言ってくれたけど、もしそうなら疲れさせたのは私かもしれない。

 試験が終わったあとは部屋でシャワーを浴びて、そこから少し話そうと思っていたけど、楠雄くんの周りには自然と人が集まる。

 最初は柴田くんといて、その後は葛城くんと少し話して、高円寺くんがやって来てそのままご飯も食べてという感じだった。

 昨日は私も疲れてたから1日間を空けることにしたんだけど……。

 

「こりゃ深刻だな」

「柴田くん、ドラゴンボールで例えるとどういう感じなのあれ?」

「そうだなぁ……セル編で悟空が死んだ後のZ戦士の反応に近いな」

「通夜じゃん」

 

 柴田くんと紗代ちゃんが何か言ってるのに夢ちゃんがツッコんでるけど、別に悲しいとかじゃないから。

 というかなんでみんなドラゴンボールわかるの? 

 私も一応見たけどそんなに頭に入らなかったな……って、そういう事じゃなくて。

 

「ほんとに楠雄くんは関係ないから」

「誰も楠雄の話してな」

「シバータ、シャラップ」

「じゃあなんでため息を?」

 

 柴田くんが何か言いかけたのを夢ちゃんが止めている間に、浜口くんにため息の理由を聞かれる。

 私は言うかどうか迷いつつ、周りに聞き耳を立てている人がいないかを確認してから言うことにする。

 

「その、昨日から1年生の子達とか、あとは3年生の先輩からもご飯とか遊ばないかって誘われててさ、断るのがちょっと疲れてきたっていうか……」

「誰? そいつら」

「千尋ちゃん、殺気強すぎるよ」

 

 落ち着いてと麻子ちゃんが千尋ちゃんを宥めてくれるが、千尋ちゃんはガルルと唸っていた。

 それを引き気味に見ていた渡辺くんが口を開く。

 

「告白とかはされてないんだよな?」

「う、うん、けどまぁそれっぽいことは……」

 

 メールとかではそんなになんだけど、昨日今日会った3年生とかは結構ハッキリ言ってくるかな。

 1年生は出来れば〜とか、1度だけでも〜みたいな控えめな感じで、玉砕覚悟みたいな雰囲気が伝わってきた。

 その辺のことを言うと千尋ちゃんが暴走しそうだから言わないでおこう。

 

「それで悩んでるっていうか疲れちゃったんだ」

「うん……」

 

 麻子ちゃんが言ってくれたことに頷いていると、ジュースを飲み終えた夢ちゃんが呟いた。

 

「1年生は仕方ないにしても3年は懲りないねぇ〜」

「2年生になるまでに何人に告られたんだ?」

「えーっと……」

 

 渡辺くんに聞かれてざっくりと思い出してみるが、多分25人くらいだった気がする。

 そのことを伝えるとみんな驚きはしていたけど、すぐに納得した様子を見せた。

 

「まぁ、元からモテるのは知ってたしな」

「帆波ちゃんは優しいからね」

「そんなことないと思うけど……」

 

 私なんて大したことない。

 もちろん私のことを見て、好意を抱いてくれた人に申し訳ないと思っている部分もあるし、声をかけてくれた人には全員に出来る限りは誠実に対応してるつもりだ。

 

「元々顔が整っているってのもあるんだろうけど、生徒会に入って1年生との交流の場を作ったりしたし」

「ルックスもあるけどやっぱり性格ですね。見た目以上に優しいですし」

「普通なら大勢に好かれると嬉しいってなるけど、ここまで頻繁だと確かに勘弁して欲しいよなぁ」

 

 渡辺くんと浜口くん、柴田くんが男子目線の意見を述べてくれるが、そう言われても私は困るだけだ。

 そう思っているとバーサークから収まった千尋ちゃんが呟く。

 

「興味ない人から向けられる好意が1番気持ち悪いのにね」

 

 麻子ちゃんに好意を寄せているのであろう渡辺くんと柴田くんに好意を持ち始めている紗代ちゃんが薄らダメージを受けていて、2人はもちろん、他の子達も身に覚えがあるのかそれには誰も触れずに、私の話を続けていく。

 夜には試験のお疲れ様会もあるからその時までにはテンションは戻しておきたいけど、難しいかもなぁと思いながら私は目の前のお昼ご飯をちびちびと食べるのだった。

 

 

 

 

 ###

 

 

 

 椿との昼食を終えた後、僕は部屋に戻るも柴田たちはまだプールで遊んでいるのか昼食かで戻ってきておらず、神崎も同様だった。

 4人部屋で1人だけというのは貴重ではあるが、特にやることがない。

 読むための本は持ってきてはいるが今は読む気にはなれなかった。

 できれば人混みは避けたいがどこに行っても人がいる船だからな。

 それに行く先々で1年生には好奇の視線で見られ、3年生には恨みの籠った目で見られるため、どうにも外に出る気にはなれなかった。

 こういう時は寝るに限るかとゲルマニウムリングを嵌めて眠ることにした。

 こうすれば、余計なテレパシーなどは入ってこない。

 とはいえ、寝れたのは2時間ほどと短いものだった。

 それも柴田と渡辺が戻ってきた際の扉の開閉音に驚いて飛び起きてしまったため、あまり寝れた気がしなかった。

 

「あ、悪い」

 

 謝る渡辺に気にしなくていいと首を振る。

 携帯に表示されている時刻を見ればまだ3時であり、小橋さんの言う慰労会とやらの時間までまだ5時間もあった。

 夕食は18時に食べるとして、それまでどうするかを考えねばとベッドから降りると唐突に柴田が声をかけてきた。

 

「楠雄はずっと寝たのか?」

 

 急に話しかけられたのでビクッとしながらも頷く。

 テレパシーが聞こえないと思っていたらゲルマニウムリングをして寝たことを思い出し、嵌めていた指から引き抜く。

 

「なんだそれ? 指輪? (楠雄がアクセサリーなんて珍しいな)売店で買ったのか?」

 

 売店……? 

 あぁ、そういえばショッピングエリアがあるし、雑貨屋の中に探せばあるかもしれないな。

 柴田がこの指輪の有無を確認することはないだろうが、念の為前から持っていたものであり、僕にとっては入眠しやすくなるものだと伝える。

 

「へー。安眠グッズってやつか?」

 

 そんなところだなと肯定しておく。

 他の人がつけたところで大した効果はない。

 健康グッズとして販売されているが、効果については個人差があるため無理に買うというやつはいないだろう。

 

「なんか斉木が指輪外してるの見ると『リカ、全部だ』って言って欲しくなるな」

「おっ、渡辺も呪術見てるのかよ〜」

 

 渡辺のふとした発言に柴田が嬉しそうに食いつく。

 

「楠雄は乙骨よりも伏黒って感じじゃね?」

「まぁ指輪外してるの見て言っただけだから。けど身体能力とか考えると虎杖なんじゃないか?」

 

 僕を呪術で例えると誰かという話題で盛り上がっている2人を置いて、そっと僕は部屋を出た。

 悪くない話題ではあるが、僕が中心というのはあまり好ましくないな。

 部屋を出たはいいが、さてどうするかと考えながら歩こうとして視線を感じた。

 

(あ、斉木先輩出てきた)

 

 今日はやたらと1年生に絡まれるなと思っていたら今度はお前か天沢一夏。

 というか、まだ……いたんだったな。

 月城からはホワイトルームに居場所はないと言われていたが、運営主である綾小路の父親はどう思っているのだろうか。

 今回の綾小路退学試験は、綾小路の腕や勘が鈍っていないかを確かめるために月城の用意した茶番だったわけだが。

 その茶番に綾小路だけが巻き込まれるのであれば僕も手は出さなかったが、宝泉が堀北さんと須藤、八神が櫛田さんやその他大勢を巻き込もうとしたから抵抗させて貰った。

 天沢は七瀬と戦う綾小路が不意を突かれる形で退学にならないようにするためにあの場に来たため、櫛田さんと鉢合わせたのは偶然でしかない。

 ただその後の行動が目に余るものがあったため軽くお仕置はしたため、宝泉のようにビビられる覚えはあってもこうしてあとをつけられるようなことはしていないと思うんだが。

 何はともあれ僕に直接何かしようというわけではなさそうだな。

 ここで天沢を追い払うのは簡単ではあるが、この一週間ずっと付き纏われるのは面倒でしかない。

 クルリと振り向いてダッシュで天沢の方へと行くと彼女は(やばっ!?)と慌てた様子で隠れようとするも、それより先に天沢の肩に手をかけた。

 

『よぉ、天沢ぁ〜』

「ヒィッ!? あ、あっ、斉木センパイどーも〜……(あー、バレるのはっや〜……)」

 

 僕が滅多に浮かべないであろう笑顔を貼り付けていたからか、天沢は(あ、これやっちゃったパターン……?)と若干青ざめつつも元のテンションを保とうと必死だ。

 

『どうしたんだこんな2年生の客室で』

「え〜っと……綾小路先輩を探してて……(うわぁ、このテンションの斉木先輩と話せないよ! 怖いよ! 教官とか可愛く見えちゃうもん!)」

 

 そんなに怖いか? 斉木楠雄が! 

 と、まぁいじるのはこの辺りでやめておくか。

 僕は普段通りの表情に戻して、平静に尋ね直した。

 

『僕に用があるみたいだったが、違ったのか』

「えっ? (バレて〜ら……)まぁ、はい、その、用っていうか聞きたいことがあるっていうか〜」

 

 今日はそんな話ばかりだったな。

 このまま1年生と話して2日目を終えそうだ。

 いや、慰労会もあるんだったな。

 

『その話は長いか?』

「(えっ?)……聞いてくれるんですか?」

 

 聞かなくていいなら聞かないが、聞きたいことがあると言ったのは天沢の方だ。

 そこまで大事な話じゃないならわざわざ僕の部屋番号を調べてまでここには来ないだろう。

 

『聞かないと明日明後日も待ち伏せされそうだからな』

 

 そう言うと僕は立ち話もなんだし場所を変えようとウルトラコーヒーゼリーなるものがある喫茶店に向かうことにした。天沢は僕と一緒に歩いていると周囲から思われないように携帯を弄りながら少し離れて歩いていた。

 傍目から見ればたまたま行先が同じだけに見えるだろう。

 それ故に事故というものは起こりやすい。

 

「あら、楠雄くん。ご機嫌よう」

 

 前から神室さんと歩いてきた坂柳さんに声をかけられ、僕も『ご機嫌よう』と会釈を返して通り過ぎようとすると心臓疾患持ちとは思えないスピードで服の裾を掴まれた。

 

「えっ、ちょっと待ってください。私たち会うの何日ぶりか知ってますか? 久方ぶりの再会がこんな温いので許されると思ってますか?」

 

 必死な坂柳さんを見て神室さんは(うわぁ)と引いており、後ろで見ていた天沢は(へぇ、斉木先輩、坂柳先輩とも親しいんだ。ふぅん……面白そっ)と興味津々に見つめていた。

 

『久しぶり、元気だったか』

「恐ろしいほどの社交辞令的な挨拶ですね……はぁ、まぁいいですけど(楠雄くんと話せるだけで嬉しいものです)」

 

 呆れたように言いつつも嬉しそうにする坂柳さんは、僕が連れているように見えたのか天沢について問いかけてきた。

 

「後ろの方は? 見たところ1年生みたいですが」

『そうみたいだな』

 

 別に隠すことでもないんだが、ホワイトルーム生のことや、無人島であったことを勘繰られるのもお互い良くないだろうと知らないふりをすることにした。

 天沢は空気を読んでくれたのか「あ、ごめーん、ジッと見ちゃって〜」とそそくさと僕の向かう進行方向へと退散していく。

 

「可愛い子ですね。もしかすると楠雄くんのファンかもしれませんね」

『そういえば、神室さんとは仲直りしたのか?』

 

 夏休み前は森下さんや白石さん、西川さんを伴っていることが多かったが、どういう心境の変化なのか尋ねてみる。

 

「部屋が同室でして。やることもないなら散歩でもどうかとお誘いしたんです」

「そゆこと。別に家来に戻ったとかそういうのじゃないから」

 

 元々は家来だったのか。

 弱み握られて従わされている半グレメイドくらいにしか思っていなかったが。

 まぁ、お互いに素直になれていないが、こうしてまた隣を歩けるようになったのはいい変化なのかもしれない。

 そう思っていると神室さんがバツが悪そうな顔で言う。

 

「その、バレンタインの時、勝手なこと言って、ごめん……」

 

 一瞬何の話かと思ったが、バレンタインの日に押しかけてきた日のことか。

 自分たちで一之瀬さんの悪評を広めておいて僕に事態の収拾を図れと言ってきたんだったな。

 あの後櫛田さんが来たからあんまり深く覚えていなかったな。

 

『忘れた』

 

 僕はそう言って喫茶店に向かう。

 それを聞いた神室さんは(え? キレてる?)とポカンとした後、坂柳さんに「気にしてないみたいですよ」とフォローされると安堵したように胸を撫で下ろしていた。

 一方で坂柳さんは(楠雄くんのデレを目の前で拝むことができたのでラッキーでした)とよくわからない感想を抱いていた。

 

「あっ、楠雄くんを食事に誘うのを忘れていました」

「まぁいつでもいいんじゃない? どうせカフェ巡りとかしてるだろうし」

 

 流石、杜撰な尾行で僕の身辺を調査していただけのことはあるな。

 明日以降もカフェ巡りをするかは未定だが、このペースだと最終日までにコンプリートするのも難しくは無さそうだ。

 そう思いながらカフェエリアへと着くと天沢はなんでもないように携帯を触りながら僕が来たら見える位置に立っていた。

 時折、クラスメイトに話しかけられることはあっても、愛想良く笑って躱していた。

 仲がいいのはホワイトルームで一緒に育ってきた八神だけらしく、この夏休みになっても誰かと群れて遊ぶということはして来なかったらしい。

 ホワイトルーム生はコミュニケーション術などは教えなかったのか、あるいは教えなくてもいいような人材育成に力を入れたのか。

 どちらでもいいが知れば知るほど存在そのものが邪悪な部屋であり、そこに子供を預け……いや天沢と綾小路に関しては永住みたいなものか。

 入れる親の気が知れないな。

 そういう意味ではあの子も親のエゴによって人生と人格を歪まされた犠牲者とも取れるが、僕には関係の無いことだ。

 目当ての喫茶店に入り、窓の外からは見えにくい位置を指定して座ると、5分もしないうちに天沢が入ってきた。

 

「いや〜斉木先輩ってモテモテなんですね〜櫛田先輩でしょ? あと同じクラスの一之瀬先輩に、さっきの坂柳先輩もいるなんてすごいですね」

 

 坂柳さんにはタメ口だったのに、僕には敬語使うんだな。

 自分の認めた相手には使うのか? 

 とりあえず、ウルトラコーヒーゼリーを頼み、飲み物はオレンジジュースを頼んでおく。

 天沢はアイスコーヒーだけでいいのか、それだけ頼むと店員はカウンターへと引き返していく。

 注文が来るまでの間に話をする気は無いのか、天沢は大人しく席で待っていた。

 そして、注文した品が届いたことで天沢はグラスの中で氷が揺れる音を響かせながらストローを回すと一口含んで喉を潤すように飲む。

 

『それで、聞きたいことってなんなんだ?』

 

 それまで何を話していいかもわからなかったのか、静かに過ごしていた天沢だったが、飲み物を飲んだことで決意を決めたのかようやく話し出した。

 

「斉木先輩ってどこかの施設とかで訓練とか受けたりしました?」

『薮からスティックだな』

「いやまぁ、私その辺の男子なんかに負けないくらい自信があったんですよ。それこそ宝泉くんとか宇都宮くんなんて目じゃないくらい」

 

 それがこんな喧嘩慣れしてなさそうなへなちょこに負けたのが悔しいということなのだろうか。

 一応、喧嘩慣れはしてないぞ。

 喧嘩というのは同じレベルでしか発生しない……のは争いだったか。

 似たようなものだろう。

 

「それが見えるようにゆっっっくりやってやるよって言われたのに全然見えない攻撃で気絶させられちゃって……これが特殊な訓練を受けたエージェントとか言われたら仕方ないなってなるじゃないですかー?」

 

 なるのか? 

 ホワイトルームの目的は国を守るエージェントの育成ではなく、世界に通用する人材を育て上げて、次代に繋いでいくという概要だったと思うが。

 だからこそ、戦闘や諜報活動に特化したエージェントに負けるのなら仕方ないという理屈なのだろうか。

 

『残念ながら僕は一般家庭の次男だぞ』

「またまたぁ〜……えっ? マジ?」

 

 マージ・マジ・マジーロ。

 特殊な訓練を受けた覚えは無いし、親に特に何か英才教育を受けたという記憶もない。

 生まれた時からそうなんだと握手しながら言えばそれっぽいセリフになるかもしれないが、今はウルトラコーヒーゼリーだ。

 

(こんなのが一般家庭で生まれて育っただけであんなスピードとか、司馬先生ワンパンできる? それだったらホワイトルームとかいらなくなるじゃん)

 

 スプーンで軽く弾いてみれば、ぷるんと弾力のあるゼラチンで固まったコーヒーゼリー。

 スプーンですくって、そのまま口へと運べば苦味の中にほんのり甘味を含んだバランスの良い味。

 一口入れただけなのに満足してしまって困る。

 

「え……(斉木先輩こういう顔もするんだ意外……っていうかギャップ萌えみたいなのあるかも)」

 

 ん? どうかしたかと天沢の方を見ると、天沢は「なんでもないです」と首を振った。

 

『僕が君や八神、司馬に勝てたのは怒りの力だ。感情はパワーだ』

 

 適当に言い切って、ウルトラコーヒーゼリーを堪能する。

 

(まぁたしかにこんな顔しながらコーヒーゼリー食べるのがあの部屋で生まれるわけないか……はぁ、あたしの16年ってなんだったんだろ)

 

 アイスコーヒーを瞬く間に飲み干し、ため息をついた天沢はやや不満げながらも納得するしかないと気持ちを切り替えていた。

 

「斉木先輩って綾小路先輩より強いんですよね?」

『いや綾小路の方が強いぞ』

「ウソツキ。綾小路先輩はそんなこと言ってませんでしたよ」

『綾小路の方が僕より嘘つくぞ』

「へー、あ、それ美味しいんですか? 1口くださいよ」

『自分で頼めばいいだろ』

「美味しいかどうか判断するだけなんで1口でいいんですよ」

 

 こいつあれだけビビっておいてどうしてこんな態度を取れるんだ。

 呆れている僕の態度で考えていることがわかったのか天沢はにんまりと微笑んだ。

 

「先輩が悪い人じゃないってのと、お友達を傷つけなかったらあたしをいじめないってなんとなくわかったんで」

『じゃあ口開けてろ、ゆっっっくり、食わせてやるよ』

「ちょちょちょ! それはタンマですって!?」

 

 こいつドラゴンボールGTの最後の方見たら泣くんじゃないのか? 

 別の意味でだが。

 さて、こういう喫茶店にはスプーンやフォークの入ったカラトリーケースがあるものだが、この店にはないみたいだな。

 僕は特に間接キスなどは気にしないが、天沢も気にしなそうだな。

 

『ほら』

「え?」

 

 1口、本当に味が感じられるくらいの1口分だけスプーンで掬って差し出してやると天沢はキョトンとした表情を浮かべた。

 

『いらないのか?』

「あ、えっ、いりますいります!」

 

 あーんは流石にしたくないので、スプーンを渡してやると、天沢は「いただきます」とコーヒーゼリーを口にする。

 

「うん、うんうん……まぁ、美味しい、かな」

『なんだその感想は』

 

 せっかくこちらが断腸の思いで1口分けてやったというのに。

 というか、美味しいのは当然だ。

 名前にウルトラなんて冠されているのだ。

 恐らくこの上にタロウやメビウスとかもあるはずだ。

 メニュー表には書いていないが。

 

「斉木先輩って今はフリーなんですか?」

 

 フリー? 最近の携帯は現物のSIMカードのないeSIMというものが主流になりつつあるが、そもそも僕は携帯を持っていないしな。

 それとも、恋人がいるかどうかか? 

 楠雄の隣空いてますよとは口が裂けても言わないな。

 現在進行形でその隣を狙われているし、下手なことを言うのは櫛田さんや一之瀬さんに失礼だ。

 

『残念ながら定員オーバーだ』

「ちぇっ、ざんねん。ほら、あたし強い男の人好きじゃないですかー?」

 

 何がほらなのか分からないし、だったら天沢よりは強い綾小路でいいんじゃないだろうか。

 同じ施設の先輩だし、僕よりは話が弾むかもしれない。

 

『僕は別に天沢のことは好きじゃないんでな』

「いやまぁ、あたしも本気で言った訳じゃないんで……」

 

 なんで僕が振られたみたいになってるんだ? 

 天沢や八神、綾小路の事情はよく知らないという体でいるため、椿の時ほど露骨なアドバイスはできないし、天沢に対して言えることもない。

 

『聞きたいことが終わったなら、もう帰っていいか?』

「うーんまぁまだちょっとあるけど、今日はいいかな。斉木先輩優しいし、また話し相手になって貰おっかなってことで(拓也のことも退学にさせないでくれたし、綾小路先輩より強いなら興味あるし)」

 

 天沢はそう言うとこの場は僕の奢りということにする気なのか足早に喫茶店を出ていく。

 僕はそれに『やれやれ』と呟きながら伝票を取ると会計に向かった。

 




一之瀬に告った1年生が玉砕覚悟なのはくーちゃんのせい
なお振る時「クラスに好きな人がいるんだ、ごめんね」と言ったら「ですよね!すんません!!」と振られた側が土下座してくるのも悩みの種
水着はまだ第1形態で、プライベートプールとかで関係の無い人の目がなければもうちょい大胆な水着を着るらしい。
くーちゃんは興味ないだろうなと思いつつも少しでも気が引けたらいいなという乙女心。

坂柳はくーちゃんとご飯食べたいけど、暫くはクラスメイトとも交流しておこうと思っている
神室が一緒にいるのは森下や白石の世話は見てて危なかっしいからとのこと。かむろママ〜。

天沢さんはくーちゃんの前ではなるべく敬語使うようにしてたけど、敵対してなければ怖い人じゃないとわかってちょっとずつ元に戻ってる
今は自分探しというか、ホワイトルームを出て自分が何をするべきか考えているところでその参考をくーちゃんに求めているって感じ
天沢からのくーちゃんへの好感度は58くらい
七瀬が62で、椿が64くらいです
宝泉は5で八神は32
宝泉はシンプルトラウマ、八神はトラウマだけど楠雄の説教が正論だと思って反省しつつもやっぱりトラウマで50は下回るという感じ
石上は68で宇都宮は52です。
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