とうとうプラモデルまでいただいてしまったので感謝の正拳突き投稿です
同室のメンバーで夕食を食べ終えると自室に戻り19時半まで雑談をして過ごす。
20時に近づけば誰かしら話題に出すんじゃないかと思っていた慰労会の話は誰1人として口にすることなく時間だけが過ぎていた。
みんなが行くなら行くかくらいのスタンスの僕は今夜の慰労会はどうするのかとあまり聞けない立場にいた。
聞いてしまうと「楠雄のやつ楽しみにしてたんだぜ!」と揶揄われたり、話題のタネにされる可能性があるからだ。
そもそも主催が今回は一之瀬さんや柴田ではないという点が少し気になる。
8時に5034号室で! と書かれていたが、2年後ではダメだろうか。
部屋番号的に男子ではなく女子が寝泊まりしている客室であり、間取りはこの部屋とそう変わらないだろう。
そんな部屋に20~30人の人間が入れるとは思えない。
それにこの手の話題に乗り気の柴田と渡辺がのんびりしているのも気になる。
とても嫌な予感がする。
千里眼で見てみるかと思った時に渡辺が声をかけてきた。
「みんな、暇だしトランプでもしないか?」
「構わんが……(斉木はやらないよな)」
以前の混合合宿でトランプに参加したがらなかった僕を見ながら神崎が言う。
いや、そんなよりも悠長なことをしてていいのかという疑問がつく。
「どうしたんだ楠雄」
どうしたもこうしたもない。
お前ら慰労会はいいのかと部屋に備え付けられている壁掛け時計を指して尋ねてみると3人は疑問符を浮かべていた。
「慰労会? 何の話だ」
「そんな話出てたか?」
「出てなかったと思うけど……」
神崎が首を傾げ、柴田と渡辺が携帯をチェックする。
仕方ないので、僕は小橋さんからのメールを見せた。
柴田が代表してそのメールを読み上げる。
「今日の夜、クラスの子達でお疲れ様会をするから、斉木くんも来てね。みんな食料を貰ったお礼もしたいって言ってるし。8時に5034号室で! 待ってるね……(これが斉木に?)」
「知らないな……」
「俺も初耳だ(プールの時そんなこと言ってなかったけどなぁ)」
当惑した表情を浮かべる3人に僕は焦りのようなものを覚え、3人に背を向けてから千里眼で小橋さんを見る。
すると、決して広々とは言えない4人部屋に所狭しと女子たちが座っていた。
1、2、3……小橋さんを入れて10人も女子がいた。
プールに参加していたメンバーはもちろん、この手の会には顔を出さなさそうな姫野さんの姿も見えた。
「なんで俺らは声かけられてねぇーんだ?」
「メールの内容からして斉木にお礼をしたいメンバーが集まっているんじゃないか?」
「あぁ、そういうこと! そういうことか?」
柴田の疑問はさておき、神崎の言う通り部屋にいる女子たちは無人島サバイバルにおいて、僕が持て余した食料や水を分け与えたメンバーばかりだ。
ただ、渡辺の言う通りそういうことでも無さそうではある。
それなら高円寺も誘った方がいいのではと思ったが、あいつは勘が鋭い。
仮に手が空いていたとしても、恐らく僕から声をかけてくることを訝しんで拒否してくるに違いない。
「もうすぐ8時だな……」
地獄へのカウンドダウンを呟くようにして神崎が言う。
行くか行かないかを選べるのであれば迷わず行かない……なのだが。
「小橋がいるってことは一之瀬もいるよな(じゃあ楠雄だけだよなぁ、呼ばれてるのは)」
「そうだね……(俺たちが行くのは却って邪魔になるよな)」
柴田と渡辺は確認し合うように言うと、僕に笑顔を向けてくる。
「行ってこい楠雄! (無人島で一之瀬となんかあったっぽいし、俺らが呼ばれてないってことはそういうことだよな!)」
「帰ってきたらどうだったか聞かせてくれよ!」
「よく分からんが……楽しんできてくれ」
楽しめるわけないだろ。
柴田はこういう時は空気読むんだったな。
行くとは返事をしてないから行かないという手は取れなくもない。
だが、慰労会の存在を公にし、柴田と渡辺の態度からして行かなかったらそれはそれで面倒なことになりそうだ。
仕方ない、行くだけ行くか。
そう決意して部屋を出る。
客室5034号室の前まで行き、透視で中の様子を見てみると千里眼で見た通り女子しか居ない。
まぁ女子部屋だしな。
その女子部屋に異物混入しようとしている訳だが。
女体化してから来るべきだったかもしれないなと冗談を言いつつ、再び中の様子を見る。
誘ってきた肝心の小橋さんがいないなと思っていると、どうやら買い出しに出ているらしい。
テレパシーを聞いている限りでは、僕が来ると知っているのは彼女だけのようなので、今ならうっかり忘れていたと言い訳して引き返すことができる。
しかし、ここまで来たし、小橋さんには男子でポーカーをやることになったからと断るために来たことにしようと決めてわずか数メートルまで戻ってきていた小橋さんを迎える。
「あ、来てくれたんだ! (行くって返事無かったから来ないと思ってた)」
小橋さんの手には大きめのビニール袋が握られており、中からはスナック菓子やペットボトルのジュースなどが顔を出していた。
それに向けて手のひらを出すと小橋さんは「ん?」と首を傾げた。
重そうだから代わりに持とうとしたのだが、伝わらなかったらしい。
それにもうドアの前だしな。
「(あぁ、持ってくれようとしたのかな。変なところで気がつくのになぁ)お気遣いありがと。もうみんな集まってるから遠慮せず入ってよ」
小橋さんは袋を持ったままドアを開けると、男子の部屋にはない花のような蜜のような、今日食べたジェラートやビッグマック、コーヒーゼリーとは異なる甘い香りが漂ってきた。
そして、扉が開いたことに気づいた女子たちの眼球が小橋さんと僕を捉えてくる。
「じゃじゃーん! 斉木くん呼んじゃいました〜!」
(く、楠雄くん!?)
(いつの間に)
(プールには来なかったのにここには来たんだ……)
(呼んじゃったって……女子会なのに!?)
ふむ、やはり僕が来るとは知らなかったようで、女子たちは僕を視界に捉えるなり、それぞれ違う反応を示す。
「ちょ、夢ちゃん呼んじゃったって言い方〜」
「えぇ〜? 連れ込んだより良くない?」
ビニール袋を小さな客室のベッド付近にある小さなテーブルに置いた小橋さんは僕の肩を叩いてくる。
「じゃあ斉木くんはどこ座ろっか。あ、帆波ちゃんの隣でいいよね」
答えは聞いてないと言わんばかりに小橋さんにそう言われる。
一之瀬さんの隣は空いており、元々は小橋さんがいたのだろう。
その小橋さんは網倉さんの隣に行き、空いたスペースはあそこだけになった。
顔を出すくらいに留めるつもりがそういうわけにもいかなかったな。
言われた通り、一之瀬さんの隣に座るも未だに右隣の一之瀬さん、左隣の姫野さん以外から視線を集めていた。
「はい、斉木くん」
透明のカップに注がれたお茶が、姫野さんから渡されると、全員の手に飲み物が行き渡ったことを確認して今回の進行役である網倉さんが声を張る。
「それじゃあ早速だけど、無人島試験のお疲れ様会、そして1位になって食料とかお水を分けてくれた斉木くんにお礼をする会を始めまーす! かんぱーい!」
網倉さんも知ってたのかと驚きつつ、乾杯の音頭に合わせてカップを上に掲げる。
「ありがとね、斉木くん。あの時は助かったよ」
網倉さんがお礼を言ってくるがどの時だろうか。
クラスメイトには色々と渡したからな。
考えてくれないとパッとは思い出せない。
適当にぺこりと会釈すると一之瀬さんの隣に陣取っている白波さんが口を開く。
「私も、その、魚を分けてくれてありがと(携帯食料ばっかで味気なくて嫌だったからほんとに助かった)」
礼を言われるようなことではないと僕は『高円寺がいらないと言ったから渡しただけだ』と答える。
その後も4人ほどお礼を言ってくるが、僕からすれば昼下がりのコーヒーブレイクと何ら変わらない平穏なものだ。
お礼を言ったあとは、みんなはお菓子をつまみ、飲み物を飲んでガールズトークに花を咲かせている。
もう僕帰ってもいいんじゃないかと思ったところで隣からクッキーの箱が出てきた。
「これモールエリアにあったやつ。美味しいんだって」
「食べるでしょ?」ときいてきては箱の中身を見せてくれる。
まるで宝石箱のように輝いてみえるクッキーを見て僕のテンションが1段階上がる。
が、1枚も減ってないことに気づいて顔を上げた。
『姫野さんは食べないのか?』
「私も食べるけど……斉木くんが先に選んでよ」
こういうのは買った本人が先に選ぶべきだろうと姫野さんを促すも彼女は首を振った。
「別に、私は後でいいから」
頑なに僕におさきにどうぞしてくる姫野さんを怪訝に思っていると一之瀬さんが呟いた。
「多分それ、楠雄くんのために買ってくれたんじゃない?」
僕のため?
「……私もご飯とか分けてもらったからお礼しようと思ってて……そしたら今日来るって小橋さんから聞いたから、買ってきた」
顔を背けながらそう言う姫野さんの表情は分からないが、その顔が見えるところにいる安藤さんの「わぉ」という顔を見ればなんとなく察しはついた。
恐らくは照れているのだろう。
『じゃあ遠慮なく』
お礼ということならありがたくいただいておこうとチョコチップクッキーを手に取る。
包装を破いて1口噛むと、口の中でバターとチョコレートの味が広がる。
パサリとした小麦にバターの芳醇さがからみつくうまさだ。
チョコがバターを、バターがチョコをひき立てている。
ハーモニーというのか、味の調和というのか。
たとえるなら修二と彰のデュエット。
伊達みきおに対する富澤たけし。
大場つぐみの原作に対する小畑健のバクマン。
…………という感じだな。
「他のも食べていいから……」
「楠雄くん、クッキーならオレンジジュースの方がいいんじゃないかな」
両隣から餌付けされて僕は帰るタイミングを逸して、アウェー状態の女子会に囚われた哀れな子羊になってしまった。
しかし、貰ったものは食べなければ無作法というもの。
「……姫野ちゃんも結構斉木くんに入れ込んでるのかな」
「今更? 麻子ちゃん気づいてなかったの?」
「あの2人、目を離したら普通に話してるしね」
「なんであんなのがモテ……(頭脳明晰、運動神経抜群、クールなフリして仲間思いで気配りの名人で下心で帆波ちゃんや姫野ちゃんに近づいたりしてないっていうか斉木くんからは近づいてない)……るのは何となくわかるけど(性欲まみれの有象無象とかよりはいいからとりあえず許すか。帆波ちゃん泣かせたら死刑、没収かな)」
よく分からないが僕は何を奪われるのだろうか。
もし奪われるのであれば超能力がいいなと思っていながら次々とクッキーを食べていると、何故かそのクッキーが一之瀬さんに取り上げられた。
コンフィスケイション!?
「楠雄くんあんまり食べすぎるとおなかいっぱいで食べられなくなるから、また明日にした方がいいよ」
ぐっ、どうして母さんみたいなことを……。
「姫野ちゃんもいいかな?」
「ま、そだね。これ日持ちするし」
姫野さんは一之瀬さんからクッキーを受け取って蓋を閉めてしまう。
僕の宝石箱が……。
まぁ、1夜で食べ切ってしまうのは勿体ないし、仕方ないか。
「姫野ちゃんみたいに何かお菓子とか用意したら良かったね」
「明日みんなで買いに行く?」
「あーいいね! そうしよっか」
手持ち無沙汰になり、再びアウェー状態に戻ると、女子たちは思い思いに話を始めた。
姫野さんと一之瀬さんは気を遣ってくれているのかみんなの話には混ざらずに時折僕に視線を寄越してくる。
やっぱり僕がいては落ち着かないだろうし、出ていくにはちょうどいい頃合いだと感じた。
僕はお値打ち価格のクッキーを持って退室するぜと立ち上がろうとして、「そういえば」と二宮さんが呟いた。
「斉木くんは1年生から告られたりしてないの?」
これまた唐突な質問だな。
どうしてそんなことを聞くのかと尋ねれば、どうやら無人島サバイバルが終わって以降、一之瀬さんに告白だったりそれに類する声掛けをしてくる男子が増えているらしい。
「斉木くんもテストで満点とったり、無人島試験であしながおじさんしてたから、もしかしたらそういうことになってるのかなーって」
心配半分、興味半分といった感じで尋ねてくる二宮さんに対して僕は首を振る。
「そうなんだ」
「まぁ斉木くんは帆波ちゃんほど交友関係広くないし」
(その帆波ちゃんとか桔梗ちゃんと話題になってたり、坂柳さんとか3年生の鬼龍院さんに狙われてたりするのもあるんじゃないかな)
2年生からはOAAのせいで多少目立つのもやむなしと思っていたが、告白などは今のところ受けてはいない。
恋愛沙汰の噂のおかげというよりは網倉さんの言う交友関係の薄さが強いのだろう。
メールアドレスを交換していない為、僕との連絡手段はなく、豪華客船では手紙を入れたりということも出来ない。
1年生で僕の連絡先を知っているのは石上だけだしな。
しかし、つくづく思うが女子は本当に恋愛話が好きなんだな。
何が面白いのかは分からないが、感受性の高い女子特有のものなのだろうか。
あの同性恋愛者の白波さんすら僕に尋ねてくる。
「斉木くんって誰とも恋愛する気ないって言ってるのは本当なの?」
Exactlyと答えるの白波さんはやや疑いの目を向けてくるが、実際にする気は欠けらも無い。
僕が虫を好きになる可能性くらいと言えば伝わるだろうか。
だから、僕みたいなやつに好意を向けたところで時間の無駄でしかない。
「恋愛は人それぞれだからね。ね、麻子ちゃん」
「うん、そうだね」
この話は終わりとばかりに小橋さんが気を遣って止めてくれる。
さて、と僕は部屋に戻らせて貰うとするかと今度こそその場から立ち上がると隣の一之瀬さんが見上げてくる。
「あれ? もう帰っちゃうの……?」
(ほ、帆波ちゃん!?)
最終日の月城と司馬のことや、綾小路の件はどうなったのかと聞きたいことは山ほどあるものの隣に居てくれるだけでいいという境地に達していた一之瀬さんが問いかけてくるが僕は扉の方を見た。
『いや、追加のゲストが来てるみたいなんでな』
「ゲスト……?」
(呼んだっけそんなの……)
小橋さんが不思議に思う他所で、僕はドアに向かって歩くと口の前で人差し指を上げてみんなに静かにするように伝えてから、勢いよく扉を開いたら壊れるかもしれないので少しゆっくり開け放つ。
すると、扉の前で聞き耳を立てていた柴田と渡辺がみんなの視界に入った。
「げっ」
「しまっ……斉木!」
非難するように言う渡辺だが、この状況で悪いのは僕になるのだろうか。
ならないだろ。
「シバータに渡辺くん、そんなところで何してるのかな〜?」
いいもんみっけという顔でしゃがんでいる柴田と渡辺を見下ろしながら言う小橋さんに、2人は言い訳を始めた。
「ちが、俺は斉木が心配になって」
「そうそう! もしかしたらその質問責めとかお菓子漬けにされてるんじゃないかって!」
一応両方それっぽいことはされたな。
まぁこいつらはそれを知らないが。
なかなか……と言っても15分程だったが、戻ってこない僕を心配してという建前でどんな話をしているか、何か変なことをしてるんじゃないかと気になってやって来たのだ。
「だったらノックくらいしなよ〜(斉木くん、よく気付けたね。グッジョブグッジョブ。夜はまだ長いし)じゃあ、2人からも色々聞いちゃっおかな〜」
「な、なにを!?」
「く、楠雄! 後生だ! 助けてくれ!」
『断る』
僕の代わりに話のネタになってくれと、僕は2人を引き摺り入れたあと、ごゆっくりと頭を下げてから部屋を出た。
今回の慰労会とは女子を労う場らしいから、男子はせいぜい道化として頑張ってくれと自分の部屋へと歩いていく。
その途中で何故か一之瀬さんが追いかけてきているのがわかり、どうしたのかと振り返ってみる。
「あ! 楠雄くん!」
ジャージ姿で走ってくる姿は前にも見たなと思いつつ『どうしたんだ』と尋ねると一之瀬さんは少しだけ息を整えてから口を開いた。
「ごめんね、夢ちゃんが強引に誘ったみたいで」
別にそうでもなかったが、まぁ行かなかったらめんどくさい事になりそうだとは思ったな。
「私も、その、お礼したくて……明後日なんだけど時間あるかな?」
別にいらないが……と言えば、おそらくは「私が! お礼! したいの! だから、その、えっと……あはは、ごめん……やっぱり迷惑だよね……」と一之瀬さんが急に声を張り上げたり窄めたり忙しないことになるのは目に見えている。
まぁ姫野さんからのだけ受け取って、一之瀬さんのは受け取らないというわけにもいかないだろうと、『おそらく』と返事をする。
「じ、じゃあ、どうしよ……お昼前とかでもいいかな?」
今のところ予定と呼べる予定はないし、時間帯などは一之瀬さんに任せるとしよう。
そう伝えると一之瀬さんはどこか嬉しそうに笑った。
「わかった、じゃあ、また明後日ね! おやすみなさい!」
手を振って立ち去る一之瀬さんに『ああ……』と僕もぎこちなく手を上げてみたが、
それもすぐに下ろして自室へと戻ることにする。
部屋に戻ると神崎が何があったんだと聞いてくるが、手に持っているクッキーを見せながら『お礼を貰っただけだ』と返す。
柴田たちに関しては放っておけばいいと伝えて、今日は昼寝はしたが、少し疲れたので寝る前に温泉でゆっくりしようと再び部屋を出た。
一之瀬が姫野のことちゃん付けするくらいには席替え効果で話すことも増えてる
姫野も原作よりはクラスの居心地が悪くなってないので仮病使わずにちゃんと居た
なおくーちゃん帰った後に眠くなってきたから先に戻るねと帰った模様
一之瀬はコソッと抜け出したつもりだけどくーちゃん追いかけていったのはバレバレだった(帰ってきた時嬉しそうなのも合わせて)
白波がエージェントとかなら「ピーンと来ました。帆波ちゃんが斉木くんの隣でソワソワしていたのは13日目の夜に何かがあったからでーす」みたいなこと言えたけど流石に分からなかったぜ!
明日は仕事の都合もあって投稿できるか分からないぜ!
以上だ!