始まることは知っていたがまさか参加させられるとは思っていなかった宝探しゲームが幕を開けた。
基本的に違反となるルールのみで、守るべきルールは大したことは無い。
普通にやっていればペナルティを受けることはまず無いだろう。
他の参加者は運に身を任せるのみだが、僕の場合はそうでもない。
「わー、スタート地点からすごい人だね(まるで人がゴミのようだってこういうのを言うんだろうな)」
ジャンケンに勝利し、僕とペアを組むことになった櫛田さんは機嫌がいいのかハイエナが死肉を求めるようにして二次元コードを探している連中を見ながら呟く。
僕は参加するとは一言も言っていないのに結局巻き込まれてしまったな。
アプリをインストールさせられ、参加料を払わされておまけに受付で名前も書かされたため、僕は正真正銘の参加者となってしまった。
誰とペアを組むかは受付で表明する必要はなかったため、2年生の参加者の受付をしていた堀北さんと一之瀬さんは櫛田さんと組んでいることは知らない……はずだ。
一之瀬さんは(さっきの4人の中の誰かと組むんだろうなぁ……私も参加したかったなぁ)と心の中でボヤいていたが、口にしなかったので聞いていないことにした。
「斉木くんってこういうゲーム得意そうだよね。あ! さっきの謎解きとかもうわかってたりするの?」
このモードの櫛田さんを見るのが久しぶりなため違和感がすごい。
しかし、この子も一之瀬さんとは別ベクトルで人気者であるため、周囲からの目線が集まりやすい。
3年生はまだ僕の監視を続けているのか、ゲームをしながらもこちらに目線を向けている。
それには櫛田さんも気付いたのか「ちょっとごめんね」と友達にチャットを送る振りをして僕に【3年生たちになんかしたの?】とチャットを飛ばしてくる。
そんなことしなくても頭の中で呟いてくれれば……いやそれに返事したら僕が超能力者ってバレるな。
歩き携帯でのタイピングは得意ではないため、首を振って答えると櫛田さんは「ふーん」と考える仕草を取る。
(よく分かんないけど、無人島試験で1位になったのが原因なのかな? あれだけ大差つけられて負けてればやり返す気とかも出ないと思うけど)
2位のグループのメンバーは僕に何もしてきていないな。
とりあえず気にする必要はないと言っておくと、櫛田さんは納得はしていないようだが顔に笑顔を貼り付け直して先ほどと同じ調子に戻る。
「このヒントって100万や50万とはいかなくても10万ポイントくらいなら貰えるのかな?」
難易度からしても5万かその辺りが妥当だろうな。
しかし、僕もそうだが櫛田さんもこの手のイベントに参加するのは少し意外かもしれない。
このイベントに参加するのはポイントに困っているか暇を持て余しているかのどちらかに限られるだろうからな。
人気者で毎日誰かしらに声をかけられるであろう彼女が完全なプライベートでイベントに参加するのは珍しい。
「まずはここから離れて、まだ見つかってない二次元コードを探してみよっか」
どこにあるかは既に把握済みだが、櫛田さんはそうでもないので純粋にイベントを楽しむ気のようだ。
この宝探しゲームは夕方まで開催されているが、勝負が決まるのは1、2時間程度だろう。
櫛田さんに先導してもらって上層へと赴いて二次元コードを探しに行く。
「結構簡単な所にあったりするね(ベンチとか自販機の裏だし5000ポイントくらいかな)」
目に付く場所には貼っていないだろうと櫛田さんが屈んだり、四つん這いになったりして2枚の二次元コードを見つけるが、難易度的にはその辺になる。
僕を見張るためか2グループほど3年生がついてきたが、彼らも監視していることが露骨にバレてはいけないからかちゃんと二次元コード探しをしている。
それを見ていると櫛田さんが不満そうに僕に目を向けてきた。
「斉木くんも探してくれるかな? 私1人じゃ効率悪いし……(気にする必要は無いって言っといてやっぱり気にしてんじゃん)」
まぁ櫛田さんは監視対象じゃないから気にしなくていいってだけで、やはり視界やらテレパシーが届く範囲でうろちょろされるのは鬱陶しくはある。
それに櫛田さんを巻き込んで不快にさせるのはよろしくないかと僕は仕方なく宝探しでどれくらいのポイントを見つけたいのか櫛田さんに尋ねた。
「ポイント? できるなら多めに欲しいけど……(なくて困るってことはないし、また斉木がプライベートポイントマンとかやった時に高く買えるかもしれないし? 備えはあった方がいいでしょ)」
僕に何をさせる気なんだこの子は。
よっぽどのことじゃなければ断るからいいとして、ポイントが欲しいというのなら迷惑料も含めていいのを見つけてやるかと歩き出す。
すると、僕の意図を察したのか他の参加者に聞かれないように小さない声で聞いてくる。
「もしかして斉木くん、高ポイントの二次元コードの場所がわかるの?」
ああ、残念ながら……でもないな。
こうして早々に動いて終わらせられるのなら悪くない。
運も実力のうちと言うしな。
そう言えば、天沢は櫛田さんに謝罪したようだが、八神の方はどうしたのだろうか。
ふと、気になって聞いてみると櫛田さんは苦笑いを浮かべる。
「うん、天沢さんと一緒で試験の後、斉木くんがクラスの女子会に参加してる時かな。その時に謝りに来たよ」
いつかは別に言わなくてもよかったんじゃないだろうか。
少しばかり刺があるような気がするのは気のせいか。
「ふふっ、いい匂いとかした? 女の子の花園は……なんてね(まぁただお礼貰って帰ったって聞いたし、特に心配はしてないけど)」
誰から聞いたのかは分からないが相変わらずテレパシーも千里眼もないのに恐ろしい情報網だな。
しかし、八神も謝りに来たということであれば、櫛田さんが今後利用されるということはなくなる。
「というか、やっぱり斉木くんが八神くんに何かしたんだね」
『……まぁ、僕のことも舐めてたからな』
「嘘でも私のためって言ってくれればいいのに」
『嘘をつくのは苦手なんだ』
というか、随分と大胆なことを言うんだな。
聞かれていたら、櫛田さんが僕に好意を寄せていると取られてもおかしくない発言だ。
「大丈夫だよ。私、在学中に特定の誰かと付き合うつもりはないから」
そういう問題か?
「(ま、それも斉木から告ってきたら変わるかもだけど……って、絶対天地がひっくり返ってもありえないよね。私が全身スイーツとかになったらワンチャンくらい?)でも、ありがとね。おかげでまた平和な学校生活が送れそうだよ。お礼した方がいい? (いらないって言いそうだけど)」
『いらん』
「だよね」
言って櫛田さんは嬉しそうに笑う。
何が嬉しいのかはさっぱりだが、まぁいい。
とりあえず尾行を撒きながら歩くと、先生らの貼った二次元コードの中で最も高額な100万ポイントの二次元コードが隠されているところに着く。
二次元コードは基本的に、自販機の裏、ベンチの下やソファーの裏、スタンドライトカバーの裏と言ったように死角になる位置に貼られているが、どれもこれも意識的に探せば見つかりやすい。
では、1番高額な報酬である100万ポイントの鍵である二次元コードは最も難易度が高いと見るのが妥当だ。
だが、それはただの高難易度であって、生徒に見つからないように貼ったものではない。
ひとつなぎの大秘宝のように、探せば見つかるし、100万ポイントの宝箱が存在すると明言されているのなら必ず存在するのだ。
「あった……二次元コード」
見つけた櫛田さんは半ば驚愕したような顔をした、通路に置かれた電話台の上にある電話、その受話器の持ち手の内側に二次元コードが貼ってある。
見つけやすい部類ではあるが、まさかここに貼ってあると考える生徒はそう多くはないだろう。
しかも会場を出てすぐの廊下だ。
この電話機は内線しか使えないため、生徒が使うとすれば自分や他の客室の生徒に連絡を取る時くらいだが、各生徒に携帯を与えられているため無用の長物だ。
「読み込んでいいの?」
『誰も見つけてなければな』
「こんなとこ見つからないと思うけど……」
携帯を取り出して、櫛田さんが二次元コードを読み込む。
それからしばらくして画面に簡単なイラストで描かれた宝箱とTAPの文字が出てくる。
「お、押すね……」
人差し指で画面に映る宝箱を押すと、宝箱が虹色に輝く。
箱の中から七色の光が迸ったかと思えば、0000と数字が現れていき、そして。
「あ!! え!? ……えぇっ!?」
携帯に映し出された数値を見て櫛田さんは僕の方を見てきた。
「さ、斉木くん、これって……」
『あぁ、櫛田さんの勝ちだ』
「それって私、真っ二つにされちゃうじゃん! いや、バレたらされるかも……」
流石にそんなことしてくるやついないだろ。
とはいえ、テレパシーを聞いていて知っていたからというのもあるが、100万ポイントの二次元コードを見つけることはできた。
「でも、どうしてわかったの? こんなところに貼ってあるなんて」
『僕が隠すなら、という視点に立って考えた時に、僕なら地図の端っこや、難易度の高い場所よりも、こういう船内では目に付いてもまず使わないし、手に取らない物のどこかに隠すと思ったからだ』
実際に隠しに来た真嶋先生もそういう考えだったからな。
灯台もと暗しというやつだ。
ただフェイントで電話機の下にも二次元コードを仕込んでいる。
最初の生徒がここを読み込めば、あとの生徒は受話器を取ってまで探そうとは思わないだろう。
「なるほどね、確かにこんなところに貼ってあるなんて思わなかったよ」
ここからなら、宝探しで二次元コードを読み込んだあとの報告義務もすぐに終えられる。
スタート地点である集会所に戻ると受付で待つ堀北さんのところへ向かう。
すると櫛田さんと僕の顔を見て驚いたように目を見開く。
「……驚いた。あなた達がペアだったのね」
「そんなに驚くことかな?」
「2人とも異性とペアを組むようには思えなかったから……それで獲得した宝箱の報告よね?」
僕が頷くと、櫛田さんは携帯の画面を見せる。
すると、堀北さんはまたもや目を見開いた。
(どちらが見つけたのかは知らないけれど……斉木くんは金運にでも愛されているのかしら……いえ、これまでの成果は彼の実力だけれど……宝探しは運要素が強いのに……もしくは櫛田さんの日頃の行いなのかしら……)
残念ながら僕の実力だ。
黄金律にも種類があるのさ。
「堀北さん、大丈夫? (まぁ1時間足らずで最高額見つけだされたらそりゃビビるよね)」
「え、えぇ……ごめんなさい。これで手続きは完了よ。お疲れ様」
そんな報告を受けて、僕と櫛田さんは会場をあとにしようとする。
その前に櫛田さんが尋ねた。
「あ、堀北さん。50万ポイントを獲得したのって誰かいたりするの?」
「いえ、いないわ。そもそも50万ポイントの報告が」
「ふぅむ、ならば私たちが第1号というわけだねぇ」
堀北さんがまだ喋っている最中に、割り込んできた聞き覚えしかない話し方と声に僕たちは一斉に振り向く。
「高円寺くんに、橋本くん(意外な組み合わせ……でもないのかしら。橋本くんな林間学校でもグループだったし)あなた達が50万ポイントを?」
「あぁ、高円寺が見つけてくれてな」
高円寺はお目当てのみーちゃんとは組めず、代わりに橋本と組んだようだ。
ただ林間学校で同じグループになったからとはいえ、男の橋本を誘うとは意外だな。
「ふふっ、楠雄と組めなかった哀れな者同士仲良くしてあげただけさ。この前ラーメンとやらも連れて行ってくれたからねぇ」
「連れて行ったっつうか……お前と龍園が勝手に来ただけのような……」
「気にしなくていいともバットボーイ。また楠雄とランチでもディナーでもする時は気軽に声をかけてくれたまえ」
堀北さんへの報告を済ませた高円寺はすぐさま部屋を出ようとして、ふと立ち止まった。
「そういえば楠雄、ランチはもう済ませたかい?」
まだだと首を振ると、高円寺はニヤリと笑った。
「では今回の報酬もあることだし、そうだねぇ……チーズケーキの美味しいカフェがある。そこでパーティータイムといこうじゃないか」
(高円寺くんがゲーム自体に参加するのも誰かと組むのも意外も意外なのに、祝勝会まで……!?)
堀北さんは非常に驚いているが、僕や橋本は見慣れている光景だ。
「えー、私も斉木くん誘おうと思ってたんだけどな」
「ならば櫛田ガールも来たまえ。バットボーイもたまには私から声をかけてあげよう」
「お、おう……すっげぇ上からだけど……まぁいいか」
「私も全然OKだよ」
僕の意思は?
「ん? 楠雄は来ないのかね?」
『やはりチーズケーキか。僕も同行しよう』
チーズケーキのあるところ、世界は、宇宙は、僕を待っている。
そうと決まれば善は急げだ。
「ちょっと斉木く〜ん、チーズケーキは逃げないからそんな早歩きしなくてもいいって〜(ほんっと、スイーツのことになるとガキなんだから)」
「今日は櫛田もいるからむさ苦しくなくて済みそうだな」
「私と楠雄がいてむさ苦しいことがあったかな? ないだろう?」
「はいはい……っと」
チーズケーキは初速がトップスピードだ。
他の生徒が押し寄せる前に食べなければならない。
その後ランチも兼ねて食べたチーズケーキはなかなかに悪くなかった。
意図していなかったが100万ポイントも手に入ったしな。
これでしばらくはポイントにも困ることはなさそうだ。
堀北さん(変なの……あの組み合わせ……)
野生のヤザン・ゲーブル「お前その仲間に入れてやろうってんだよ!」
まぁ入ることはない。
八神くんはバチコリ謝罪しており「金輪際、櫛田先輩には生徒会案件で関わるようなことがない限りは近づきません!」と言ってます。
理由は天沢が櫛田にちょっかいかけたらフルボッコにされたこともあって「こ、殺される……!?」と思ったから。
今まで関わってたのに急に話さないのはおかしいので、八神が告白して振られて気まずくなったことにしていいかと櫛田に言われると「あ、はい!それで!」と了承している。
天沢はくーちゃんと関わろうとしてるけど、八神はトラウマすぎて関わりたくない感じ。
会場で目が合うくらいなら膝が震えるくらいで済む。
櫛田さんが意外と攻めた発言多いのは告白済みなのと、くーちゃんと噂になるのは別にいいから
ただ噂の鎮火はめんどくさかったりもするが、くーちゃんと噂になるのは悪い気はしてない
噂の相手が池とかならブチギレてる
ホントはこの後原作で言うチエちゃんの愚痴に付き合う真嶋、サエちゃんの話だったんだけど今のチエちゃん仕事に対する不満しかないから特に書くことないな……ってなった。
無人島試験でのくーちゃんの活躍や船上での一之瀬とのデート聞いたりして上機嫌なのと生徒に飲みすぎなこと指摘されてるからお酒はちょっと控えてる。
3人で飲みはしたし、次の試験についても触れられた。
星之宮「ま、うちのクラスは心配ナッシングだから。クラスポイントにも余裕があるし、私の時みたいな結末にはならないわ。一之瀬さんがそうはさせないから」
真嶋「星之宮……お前、大人になったな……」
星之宮「前から大人です〜」
茶柱「……私のクラスがAクラスになっても気にしない、のか?」
星之宮「やれるもんならやってみてよって言いたいところだけど、私はクラスのみんなが一生懸命やった結果がAでもBでも、あの子たちが笑って卒業できたらそれでいいかなぁ。私はサエちゃんのクラスがどうこうより一之瀬さんと斉木くんがどうなるかの方が興味あるし!」
真嶋「お前、生徒を肴に……」
茶柱(余裕から来るものなのか、本気でそう思っているのかは分からないが……私だけ置いていかれたのは間違いないようだ……。私は……私は……)
あと1話か2話くらいで4.5巻は終わりなはず
5巻は……書くことあるんか?ってくらいフラグへし折ったからそんなにないかもしれない
まぁまた次回
4.5巻書き終わったら少し投稿空けるかもです(自分でも引いてるけどペースが早すぎる)