「椎名さん、帆波さん、櫛田さんと来れば次は私ですよね!?」
『君はifで単独回をしたからお預けだ』
「そんな!?」
ってことで坂柳さん回ではないです。
貴重な体験を続けている豪華客船での夏休みの生活も、あと1日を残して終わりとなる。
残された期間を目一杯楽しんでいる生徒たちの財布は過去に例を見ないほどに緩みっぱなしとなったが、それも生徒会企画の宝探しゲームのおかげで補填された生徒もいる。
オレは5万ポイント、参加料の1万ポイントを差し引いても4万ポイントの利潤が生まれた。
しかし、宝探しゲームでの報酬額の最高は100万ポイント。
運が絡むとはいえ、1万ポイント払って99万ポイント貰える人間はそれはかなりの徳を積んだ人間と言える。
そして、その人間が斉木と櫛田ということであるのならば、同学年から不満の声も上がらない。
2人は無駄遣いもしなければ、散財するようなこともないし、何より学年での活躍は目を見張るものがある。
ただ、斉木と並んで学年への貢献度が高いのは一之瀬ではないかという声もあったりした。
それに対して、斉木は『誤差じゃないのか?』と言っており、一之瀬も「桔梗ちゃんの方が私より顔も広いし、優しいし、可愛いし……」と違う方向に寄ってはいたが、櫛田は櫛田で校内での認知度や貢献度は高いという評価を得ている。
だが、その話でいくのなら個人的な事情でばかり動く高円寺と橋本ペアが50万ポイントというのは納得がいかなかったりもするが、これもまた運だ。
最初に徳がどうこう言ったが、結局は運でしかない。
斉木と高円寺には実力で運を掴むんだよと言われたが、佐藤とペアを組まずにオレも本気で取り組んでいれば運を掴めたのだろうか。
「まだ着替えてんのか綾小路?」
そう考えていると背中に須藤の声がかかった。
「もうみんな先に行っちまったぞ」
来た時は数人ほどいたはずの更衣室にはオレと須藤のみとなっており、その須藤も「早くしろよー」と更衣室の扉を開けて出て行ってしまう。
この豪華客船には無料で誰もが利用できる大型のプール施設があるが、プライベートポイントを支払うことで貸切で楽しむことができるプールがある。
その名の通りプライベートプールと呼ばれる施設はオレも4日目に啓誠と明人、波瑠加と愛理の4人と使用した。
60分2万ポイントと安くは無い利用料だが、親密な友達とだけで過ごせる時間というのはお金以上の価値があるらしい。
利用できる人数は一度に最大40人と多く、1クラスで貸し切ることが出来れば1人頭500ポイントで利用できるようになっている。
このプライベートプールは思いのほか生徒たちに人気であり、開放されている朝の8時から夜の8時まで、ほぼほぼ予約で埋まってしまっている。
大勢が詰めかける大型プールでは自由に泳いだり、プールバレーといった遊びは難しいが、プライベートプールなら何をするにも広々としているため迷惑をかけることなく楽しむことができる。
そんなプライベートプールを今回は3時間ぶち抜いて使用できるようにしており、そのため使用料は総額6万ポイントとなっている。
だが、オレは1ポイントも払っていない。
「着替えに手間取ってたな、綾小路」
「すみません、考え事をしていました」
水着に着替え終えて扉を開けた先には今回、オレも含めた数十名のプール使用料を払ってくれた南雲会長がいた。
「考え事? まぁいいが、約束は忘れるなよ?」
約束というのは、今回のプライベートプールの使用料を払わなくていい代わりにオレは南雲会長と水泳のタイムを競い合うというものだ。
どちらが勝っても何かあるわけでもないし、別にオレとしては構わないが。
「いいですけど、あの2人ほど楽しませられないと思いますよ」
そう言って、オレはストレッチをしている高円寺とビーチパラソルの下でかき氷を食べている斉木を見た。
「というか、あの2人をよく呼べましたね」
「俺の人徳……と言いたいが、お前みたいに買収したみたいなもんだ」
高円寺は斉木をエサに、斉木はあのかき氷や今日あいつが食べるスイーツ全て南雲会長のプライベートポイントから出すことになっているようだ。
プライベートプールでの飲み物やスイーツの価格は無料プールよりも倍近い値段だというのによくやる。
「まぁ、斉木にはもう1つ条件を出して納得してもらったがな」
「条件?」
「気にするな、お前には大して関係ない」
「水泳では手を抜くなよ」と南雲会長は2人の方へと歩いていく。
それと入れ替わるようにして須藤が不安そうな顔をしてやってくる。
「な、なぁ、これ俺も来てよかったのか?」
「メンバーは確かにアレだが、知り合いの方が多いだろ?」
「そうだけどよ……」
そう言う須藤の目線の先にはビーチチェアで寛ぎ始めている龍園や神崎、柴田と言葉を交わしている橋本の姿が見える。
経緯はよく分からないが今回のプライベートプールには斉木の知り合いが多く呼ばれているようだった。
オレたちもまた斉木を釣る餌になっているということかと思えば、3年生からは南雲と朝比奈、鬼龍院もいるが……あの3人も斉木の知り合いだったな。
「堀北も来るみたいだったから、一応声をかけたんだが、迷惑だったか?」
「そんな事ねぇよ。むしろマジで感謝だわ」
女子の参加メンバーは男子よりも多い。
斉木と恵が知り合いと呼べる間柄では無いため呼べなかったが、このメンツの中では来れたとしてもオレとはあまり接触出来なかっただろう。
オレはかき氷を食べる斉木の方へと歩くと、女子の方の更衣室の扉が開いた。
最初にでてきたのは現Aクラスの網倉と小橋で、後ろには白波の姿もある。
小橋はオレと須藤に気づくと白い歯を見せて笑う。
「およ、綾小路くんに須藤くんだ。出迎えご苦労さま」
「そんなつもりはねぇけど……」
たまたま居てしまったために、オレたちが前のめりで待っていたと思われるのはあまり宜しくないな。
そう思ってオレと須藤は素早く斉木の方へと近づく。
「斉木、プールに入る前からかき氷なんて身体が冷えないのか?」
『入る前だからこそ食えるとも言えないか?』
「え? あ、おう、そう、なのか?」
どうだろうなとオレは須藤の問いに対する答えを考える。
「楠雄、かき氷もいいが、しっかりとストレッチはしておきたまえよ。レッドヘアボーイと綾小路ボーイもねぇ」
すると、ストレッチを終えて薄く汗を浮かべた高円寺がそう声をかけてきて、オレと須藤はいささか驚いた。
「高円寺がまともなことを……」
「私は常に当たり前のことを言っているんだがねぇ」
前髪を掻き上げて、自慢するように言った高円寺に対して、オレと須藤は今度こそ困惑して言葉が出てこなかった。
「なになに〜、楽しい話〜?」
そこに朝比奈先輩が話に入ってくきた。
「いえっ、そういうんじゃないっすけど」
歳上かつボディバランスは堀北以上の朝比奈先輩のカラダを見て、テンパる須藤に、龍園が茶化すように言う。
「ククッ、なんだ須藤、童貞丸出しの反応は」
「うるせぇぞ、龍園! てめぇだって童貞だろうが!」
「あ? 何を根拠にそんなこと言ってやがるんだお前は」
相変わらず仲悪いなこいつらはと見ていると龍園の方に斉木から制裁が入った。
かき氷のシロップの入った容器を龍園の口に向けて噴き出すと、龍園はブルーハワイ味をモロに口に入れられる。
「てめっ! 斉木、何しやがる!」
『よく喋るな、クソ野郎』
「あぁ!? ンだとスイーツ野郎が! プール入れや!」
『表じゃないのか』
標的が須藤から斉木に移ったことで、間に挟まれていたオレには特に危害が加わることは無くなった。
朝比奈先輩は何が面白いのか斉木と龍園の言い合いを見守っており、見慣れているのであろう高円寺と橋本は「またやってるねぇ」「あぁ」と合流して2人の様子を見ていた。
2人以外にも斉木と龍園の言い合いを見たことがあるだろう神崎と柴田に尋ねる。
「またなのか?」
「そうだな……龍園も高円寺ほどでは無いが自己中心的な行動や言動が多かったからな」
「その度に楠雄が小言言ったり、どあほうって挑発したりさ、悟空とベジータみたいなもんだから、巻き込まれないように遠目にいれば問題ないぜ」
「その場合は桜木と流川なんじゃ……」
柴田の例えもだが、ツッコんだ橋本の例えも分からない。
だが、触らぬ神に祟りなしということだろうか。
そんな神に触れようと南雲が仲裁に入る。
「おいお前らこれから遊ぶって時に何熱くなってんだ」
『そうだそうだ。かき氷でも食べてクールダウンした方がいいんじゃないか?』
「言わせておけば……!」
南雲の背中に回って言う斉木に、とうとう龍園の堪忍袋の緒が切れて立ち上がった時だった。
「ごめんごめん、待たせちゃったかな?」
「何の騒ぎ? 更衣室まで聞こえていたけれど」
そう言って出てきたのはバンドゥビキニと呼ばれるタイプの白い水着を着た一之瀬と黒いレースアップ水着を着た堀北だった。
その後ろからもぞろぞろと今回のプライベートプールに声をかけられた女子たちが出てくる。
赤の三角ビキニとしたはスカートタイプのやや攻めた格好をしている坂柳は櫛田に連れられていた。
櫛田の方はフリルのついたバンドゥビキニだ。
「すみません楠雄くん、私の水着を着替えさせていただくのに時間がかかってしまって」
「まぁ他のみんなも時間かかってたし仕方ないよ」
「男の方は皆さん早いんですね」
ひよりも櫛田の後ろから出てきて、ひよりらしい水色のフリルビキニを着ていた。
「斉木はもう寛いでいるのか。マイペースな男だな」
そうサングラスをかけて呟いた鬼龍院先輩は本当に水着なのかというほどに布面積が小さい水着を着ていた。
ホルターネックと呼ばれるものだったと思うが、程よく肉の付いた鬼龍院先輩が着ると破壊力は凄まじい。
愛理や波瑠加の大胆な水着を見ていなければ即死だったかもしれないと大袈裟に言ってみる。
ただ誰も彼もがプライベートプールでなければ、男女問わずに多くの視線を集めたのは間違いないだろう。
現に高円寺や斉木以外の男子は誰かしらの水着姿を見てしまっていた。
そんな男たちの視線や気持ちなどは露知らず、女子たちは普通に話し始めていた。
「姫野ちゃんも来たらよかったのにね」
「昨日も結構遊んだし、疲れちゃったんじゃない?」
「そんなことより……斉木くーん」
網倉と白波が話していると、龍園が黙ったことでスイーツタイムに戻っていた斉木に小橋が声をかける。
「どうどう? 誰の水着が1番可愛い?」
『何故僕に振る』
「この中じゃ1番邪な目で見なさそうだからかな!」
それだと斉木以外は邪な目で見ているみたいな言い方に聞こえるんだが。
見ていない、見ていないぞ。
ひよりって意外とあるんだなとか、一之瀬の破壊力えげつないなとか。
「綾小路くん、さっきから椎名さんと一之瀬さんの間を視線が行き交っているけど何を見ているの?」
「俺は堀北しか見えないぜ……」
いけないいけないと視線を他所にやっても、朝比奈先輩がいて、更に他所にやっても櫛田と坂柳が……うん、坂柳を見ていれば安心と思ったが何か犯罪臭がするな。
告白じみた言葉が無視されている須藤を憐れみつつ、オレは斉木の答えが出るのを待つ。
他の女子や男子も邪な目を持たないという斉木の答えは気になるのか、全員が目線を向けていた。
『水中抵抗のことを考えれば朝比奈さんや網倉さんのがいいんじゃないか?』
スクール水着と同じようなスポーティーな水着を着た朝比奈先輩と網倉の水着を見てそう言った斉木はかき氷を食べ終えると逃げるように水中へと避難した。
「逃げるなァァァァ!」
「うぉ、怖いよ千尋ちゃん」
帆波ちゃんは逃げなかったと斉木を責める白波が網倉に回収されて離れていく。
白波って大人しい感じだと思っていたんだが、違ったのか?
「逃げたな」
「逃げたねぇ」
「瞬きめちゃくちゃしてたけどなんだったんだろうな」
「斉木なりに評価しようとしてたんじゃないか?」
龍園と高円寺が揶揄うように笑い、答えを出すまでに瞬きをしながら女子たちを見ていた斉木に疑問を持った橋本が神崎に尋ねるも明瞭な答えは出ない。
オレも含めて逃げたとみんなは言うが、同じ男としてあの状況下に置かれたらオレでもああすると思う。
「うーん、楠雄くんはスク水というものの方が好みなんでしょうか?」
「どうなんだろうね。でも、斉木くんって服装とか見た目にあんまり興味無さそうだし、その人に似合ってればなんでもいいんじゃないかな」
「なるほど聞き方の問題だったのか」
坂柳と櫛田の会話を聞きながら小橋が何か閃いているようだったが、オレは聞かなかったことにした。
色々と煩悩を払うためにも、ああやって泳ぎに逃げるのは正解だと思っていたが、斉木は泳いでおらずただ水面にぷかぷかと浮かんでいるだけだった。
「とりあえず私達も準備体操してプールに入りましょうか。斉木くんのようにクラゲごっこするにしてもやることはやっておかないと」
「あれクラゲなんだ」
「違うんですか?」
「えっ? わ、分かんないけど……」
どうなんだろうと悩むひよりと一之瀬に柴田が「トランクスに海に落とされたベジータじゃね?」とまた訳の分からないことを言っていた。
下着にベジータというやつが海に落とされる絵面が想像できない。
「おい、斉木、ちゃんと勝負しろよ。高円寺と綾小路もな」
南雲がそう言うと高円寺は「仕方ないねぇ」とプールに入って競走前に軽く泳ぎ始める。
オレもそれを見て、やるだけやるかと準備体操に入る。
その後ろでは龍園が誰が勝つかプライベートポイントを賭けようぜと橋本や坂柳たちに話を持ちかけていた。
メンバーが違うだけでやることも会話の内容も変わるというのは面白いものだ。
クラゲなのかベジータなのかは知らないが、ぷかぷかと浮かぶ斉木のところに櫛田や一之瀬、ひより、さらには鬼龍院が集まり何やら話しているのが見える。
それを見ながら堀北が呟いた。
「彼はすごいのね。本人にその気はなさそうだけど、色んな人を惹きつける。高円寺くんや龍園くんみたいなはぐれ者でもそう」
「……お前もそうなりたいのか?」
「まさか。羨ましいとは思わないわ」
話している間にも柴田と神崎も加わって何をするかという話をしていた。
ただ、身体的疾患のせいでプールに入れない坂柳は斉木の座っていたビーチパラソルでプールの中で遊んだり話したりしている斉木たちを見ていることしか出来ない。
それを見かねてか斉木が南雲からビーチボールを受け取ると、坂柳の方へと放り投げた。
「えっと……」
『そこからなら打ち返したり投げたり出来ないか?』
「っ……! はいっ!」
身体に負担のかからない程度にあそび始めた坂柳たちを見ながら、堀北は肩をすくめる。
「これからも誰かのためにあれる斉木であってくれ……か」
「なんだそれ?」
「体育祭の時に兄さんが言っていたらしいわ。あれを見るとそうね、彼の根源は誰かのために行動することなのでしょうね」
坂柳も含めてトスなどでビーチボールを繋いで遊ぶ斉木たち。
何故か斉木だけトスせずに小指や頭突きなどで返している。
それを見ながら堀北は微笑をたたえた。
「自分のためだけにAクラスを目指していた私とはそもそものスタートラインが違ったという事ね」
堀北はそう言うと準備体操を終えてプールへと入りに行った。
混ぜてとは言わずに高円寺のように端のレーンで泳ぎ始めるのは彼女らしいと言える。
それを見て櫛田と一之瀬が口を開いた。
「女子の部もやってみよっか」
「そうだね。せっかくだし」
「やはり競走か。私も参加しよう」
鬼龍院先輩も加わるようで、朝比奈先輩や白波といった運動に自信の無い生徒は見学にするようだが、授業などでは見られない競走というのは盛り上がるだろう。
男子も高円寺たちとは別にやってみようという話になっていた。
出来ればオレもあちらがいいが、そうもいかないのだろう。
3時間もあるプライベートプールの時間だが、この前以上に時間の流れは早そうだとオレもまたプールに入った。
1年生も入れるか悩んだけど、南雲に「それは多いだろ」って言われそうだからやめたよん
姫野以外にも葛城とか誘ったけど理由はそれぞれだけど断ったやつはいる。
南雲は南雲も知ってるやつと言ったけど、くーちゃんを参加させるためにくーちゃんと親しいやつ呼びまくって、スイーツも使って釣った
くーちゃん的にはそこまでするなら仕方なくという感じ
メンツは綾小路、一之瀬、橋本が中心になって声掛けた。
鬼龍院と朝比奈は南雲が声かけた。
桐山はくーちゃんからアイツいるなら行かないと言われたので除外、というか南雲も呼ぶ気はなかった
スイーツ以外の条件というのは桐山のやってる監視をやめさせることで、一之瀬や櫛田、坂柳といったくーちゃんのウィークポイントになるかもしれない生徒への監視もやめさせている。
女性陣の水着は公式イラストとかを参考に
坂柳さんは身体疾患で水着ないやろと思ってたら、あとからリボンの着いた袖付きの水着を発掘したけど差し替えるほどの時間がなく捏造
一応これで4.5巻は終わりかな
多分
他の人の予約とか清掃とかあって延長出来ないだけで、連続で使うのはいいのかなーってなって3時間ぶち抜きにした
南雲ならやる。
競走のあとはプールバレーとかやったり、レンタルで浮き輪借りて坂柳もプールに入って遊んだり、フロートボードとか水鉄砲とかも借りて、写真も撮ったりと青春してた模様。
砂浜ならスイカ割りとか龍園埋めたりとかできたのにね。
ではまた次回
誰が勝つか
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南雲
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綾小路
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高円寺
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須藤
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斉木