ようこそ超能力者のいる教室へ -2年生編-   作:オールF

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説明回なので長いと思えばいつも通りくらい


6巻 体育祭
新たなる戦いの幕開け


 満場一致特別試験が終わってから3日が経った月曜日。

 教室にやって来ると僕に向けられる視線は好奇のものばかりだった。

 金曜日の特別試験で僕がこのクラスには100ポイントで切り捨てていい人間はいないと言って以降、クラスメイトの僕を見る目は変わりつつある。

 嫌われたり、無視されるよりはいいかもしれないが、やはりどこか居心地が悪い。

 17年生きてきた中で感じたことの無い視線というのが大きいが、今まで挨拶をしてこなかったやつらがこぞって挨拶してきたり、手を振ってくるというのは変な感覚だ。

 

「おはよう斉木」

 

 そんな中、渡辺が元気よく声をかけて来た。

 それに僕はぺこりと会釈すると渡辺は苦笑する。

 夏休みの豪華客船で同じ部屋で寝泊まりした仲ではあるが、あまり深く話し込んだりはしなかった。

 しかし、渡辺の中での斉木楠雄という人間はクールながらもどこか情熱のある男という何それ何条何太郎さん? という評価をされていた。

 

「特別試験も終わったし、次はいよいよ体育祭だな」

『そうだな』

 

 下駄箱からここに来るまでに職員室の近くを通ったが、ミーティング中の教師たちのテレパシーでホームルーム中に体育祭の説明をすることがわかっている。

 満場一致特別試験が何事もなく終わったことから、クラスの雰囲気は明るい。

 得られるプライベートポイントは減ってしまったが一之瀬さんにプロテクトポイントが付与されたこともあり、2年Aクラスはより強固な守りになったと感じている生徒も多い。

 そんな良い状態で体育祭を迎えられることを渡辺は喜んでいるのか白い歯を見せる。

 

「去年はすげーって見てるだけだったけどさ、今年は俺も……いや去年も頑張りはしたんだけど、一之瀬や斉木だけじゃないんだぞってとこを見せてやるから、応援しててくれよ」

 

 そう言って肩を軽く拳で殴ってくるのはヤンキー的な感じがするが、こいつも柴田と同じく少年漫画が好きな人間だから何かの影響を受けてのものだろう。

 張り切ってケガしないようにだけ気をつけてくれれば僕は構わないので、適当に流しておく。

 始業のチャイムが鳴ると共に星之宮先生がやって来る。

 いつものように軽い挨拶をしてから、体育祭の詳細や特殊ルールとやらの説明に入る。

 その前に柴田が口を開いた。

 

「特殊ルール……? なんすか場外に出たら負け的な」

 

 どこの天下一な武道会だそれは。

 

「南雲生徒会長が掲げていたこの学校の新しいあり方、完全な実力主義ってやつを実現するための案を採用した体育祭になるみたいねー(まぁ南雲くん的には目標にしてた堀北くんが卒業しちゃったけど、下の代に斉木くんとか高円寺くんみたいな強いのが出てきてくれてラッキーだったりするのかな?)」

 

 個人の実力を重視した案を強く組み込んだという体育祭は、運動能力が乏しい生徒にとっては厳しい戦いになるのは避けられない。

 実際、このクラスは総合力はあるがやはり運動が苦手という生徒もいる。

 

「不安になる子はいるだろうけど、心配しないで。今回の体育祭では個人の実力不足で退学になったり、個人だけが損害を被るってことはないようになってるから。勉強も運動もって、誰しもが完璧に文武両道を体現できるわけじゃないからね」

 

 不安の表情を見せた浜口や白波さんといった運動が苦手な生徒に向けて星之宮先生は優しく言う。

 

(あとはモニターにも出てるし、わざわざ読み上げなくてもいいでしょ)

 

 星之宮先生が心の中で言うように、教卓の前にある大型のモニターには体育祭の趣旨である【様々な種目からなる、全学年参加型のスポーツの祭典】という文言が表示されている。

 開催時刻は午前9時から午後4時まで、正午から午後1時までの1時間は休憩時間とするというのは去年と同じではある。

 生徒たちは自由に選択した種目に参加し持ち点を獲得、総合得点をクラス単位で競う。

 持ち点というのはルールに記載されており、生徒1人につき持ち点5がスタート時に与えられる。

 体育祭に参加する生徒は異なる競技5種目の参加が必要で、各種目への参加賞として持ち点は1が与えられ、さらに入賞者には種目内容に応じて追加で持ち点が与えられる。

 必須である5種目を終えての6種目以降は持ち点1を支払う度に参加可能ではあるが、参加賞の1点は入手できない仕組みになっている。

 参加出来る種目は1人につき最大10種目までで、参加競技数が5種目未満で体育祭を終了した場合、獲得した持ち点は全て没収されることになる。

 エントリー済みの競技にやむを得ない理由を除いての不参加や棄権は2点を失う こととなり、参加する競技を終えた生徒は定められた幾つかの指定エリアで応援することができるなどの基本的なルールにあたる文言が一気にモニターに表示された。  

 

(な、長い……!)

(要するに5種目は出ないとダメで、それ以降の5種目は自由意志って感じか)

(総合得点っていうのはクラス内のってことだよね……入賞しなくても5種目に出ていれば最初の持ち点5と合わせて10点。このクラスは40人だから最低でも400点は取れるね)

 

 箇条書きにしてある分、分かりやすくはあるが去年の体育祭とは大きく異なるのは一目瞭然だった。

 一之瀬さんの考えるように怪我や病気なく参加し、競技を終えることができれば運動が苦手な生徒でも10点は獲得出来る。

 あくまで理論値ではあるが、このクラスの生徒は意欲的であるし実現不可能という話ではない。

 大体の生徒が概要とルールを一読したと判断したところで、星之宮先生が口を開く。

 

「これが本年度の体育祭、その概要と大まかなルールになります。学校のみんなが1つの競技を見守る一般的な体育祭とは違って、同時刻に学校の色んな場所で並行して競技を行っていくことになるよ」

(うーん、悟空とベジータが戦ってる間に、別の場所でバビディと界王神が戦ってるって感じか?)

 

 柴田が頭の中でざっくりとした当日のイメージを浮かべるも、体育祭の風景としてはかなり殺伐としている。

 

「競技に参加して上位入賞を目指すことは最優先事項になるんだけど、綿密なスケジュールを立てる必要もあるから気を付けてね」

 

 総合優勝や最優秀選手を目指すのであれば、10種目の競技に出場するのは必定。

 そうする生徒にとっては忙しい体育祭になるな。

 

「競技には大きく分けて2種類あって、まずは基本競技と呼ばれるもの」

 

 基本競技は1人で参加可能な競技のことを指し、基本競技は全て固定報酬で1位には5点、2位には3点、3位には1点、そして参加賞の1点が与えられることになる。

 もう1つは特殊競技と呼ばれる団体戦。2人以上で参加可能となる競技のようだ。

 団体戦の方が報酬が高く設定されていて、参加したチーム全員に等しく点数が与えられる。

 

「団体戦は報酬が魅力的な反面、連携とか適宜なコミュニケーションが求められたり、拘束時間が長くなるなどの欠点もあるよ。報酬が固定の個人戦と違って、団体戦の報酬は競技によって異なるから別途確認しておいてね」  

 

 蓋を開けてみれば簡単なルールではあるが、最高得点を狙うことを考えると団体戦への出場も必要になってくる。

 1人につき参加できる競技が10種目までというのは須藤や柴田といった体力自慢がフル稼働して出場可能な全種目に出場することを防ぐためだろう。

 

「持ち点を支払って6種目以降に参加していくかは個人とクラスの自由だけど、それは置いておいてクラス別の順位報酬について発表します」

 

 体育祭終了時のクラスの総合得点、これで学年別の順位が決定し、1位には150クラスポイント、2位は50、3位はポイントはなく、4位に至ってはマイナス150ポイントもされてしまう。

 去年は優勝しても自分の属している組が負ければ相殺されていたが、今回はそれがないのだろうか。

 あったとしても150ポイントというのは大きな数値だ。

 文化祭でのクラスポイントの変動が穏やかであることも起因しているのかもしれない。

 

「以上がクラス別の報酬で、ここからは個人戦に対する報酬だよ」

 

 モニターが切り替わると個人戦報酬が表示される。

 1位は200万プライベートポイント、もしくはクラス移動チケット(限定的)。

 2位は100万プライベートポイントで、3位にも50万プライベートポイントが与えられる。

 個人戦報酬も去年とは異なり学年、男女別になっているようで各学年男女1人ずつとなれば最大6人の生徒が200万プライベートポイントかクラス移動チケットを手に入れられるということか。

 クラス移動チケットというのは口にしてみればその名の通りだと僕は思うのだが、何人かの生徒はやはりその存在が気になるらしく、浜口がみんなを代表する意図はないのだろうが真っ先に口を開いた。

 

「クラス移動チケットって……もしかして」

「うーん、まぁこのクラスには必要ないかもなんだけど、Bクラス以下の生徒なら恩恵はあるかもね」

 

 この学校での勝者は、Aクラスで卒業できた生徒のみとされており、体育祭という1年を通して最も身体能力を求められる試験で、学年ナンバー1の成績を収めたならクラスを移動する権利を保有するに相応しいと判断されるのかもしれない。

 それなら普通に2000万プライベートポイントが欲しいものだが、200万プライベートポイントとクラス移動チケットが対等の扱いを受けているのも気になる。

 本来クラスを移動するのに必要なプライベートポイントは2000万プライベートポイントのはずだ。

 桁が1つ足りないぞ。

 教えはどうなっているんだ教えは。

 

「限定的というのは、移動しても期間が経ったらまた戻らなきゃいけないとかですか?」

「それはないだろ」

「(そうなのか!?)そ、そうだよな……普通に考えたらわかることだぜ渡辺」

 

 渡辺の質問に先生よりも先に神崎が切り捨てると、渡辺と同じ考えだったにも関わらず柴田が即座に裏切った。

 そんな柴田に渡辺が不満そうに「じゃあなんなんだよ」と尋ねるも柴田は沈黙を保ったまま動かなくなる。

 それを見かねてか一之瀬さんが言う。

 

「うーん、使用期間じゃないかな? 例えば体育祭が終わってから1週間とか。いつでも使えるってなると、3年生の3学期まで持ちっぱなしにできるし」

「おー、流石一之瀬さん。ほとんど正解だよ。権利を行使できるのは2学期の間だけで3学期が始まるまでに使わないとただのゴミ屑になっちゃうよ」

 

 期間を絞っているのは一之瀬さんの言うように卒業間近まで保有できるのであればAクラス確定チケットになってしまうし、200万プライベートポイントと対等にするには期限を設けるのが適切と判断したのだろう。

 今のクラスから他クラスに移動しても、最終的に元のクラスがAクラスで卒業してしまったとなれば、Aクラスでの卒業を逃した上に自身のクラスを裏切ったことも合わさって卒業後も心に傷を残すことになる。

 それに1年半以上慣れ親しんだ自分のクラスを離れるというのは簡単な事でもない。

 しかしこれは僕たち2年生の立場の話であり、学年が違えば使う意味もわかってくるだろう。

 

「男女別それぞれ学年1位になった子にはどちらかを選んでもらうことになるよ(まぁAクラスから下のクラスに移動するのはBクラスとの差がよっぽど狭いとかじゃないとありえないけど)」

 

 星之宮先生の言うように、Aクラスにいる生徒がクラスを移動するメリットはあまり大きくない。

 だが、3年生になる頃にはAクラスではいられないと判断したり、下のクラスを自力で引っ張りあげたい、4クラスの差を埋めるために実力者が抜けて混沌を呼び込むといった目的があればAクラスでも下のクラスへと移動する可能性はある。

 

「報酬の話も終わったし、競技について詳しい話を進めていくね。競技は体育祭前から事前に公開されるものと、体育祭当日にならないと公開されないものの2種類があるよ」

 

 モニターに表示されているのは事前に公開されるものの一例であり、100メートル走や障害物競走など基本的な競技に加え、PK、バスケシュート対決、テニスシングルスあるいは男女混合ダブルスといった普通の体育祭ではやることが無いであろう競技も確認出来る。

 

「人数や開催時刻が設定されているから、必ずしも自分の望む競技全てに参加できるとは限らないよ。タイムスケジュールに合わない予定を無理やり組んじゃって、参加時刻に間に合わずに棄権扱いになって持ち点を失うリスクもあるからよーく考えて出場予定に組み込むかを考えてね」

 

 身体能力だけじゃなくて脳みそも使う必要があるみたいだな。

 誰がどの種目に参加できるかの運、あるいは読み切る力も求められる。

 

(だが、もしこのままの状態で体育祭が開催されれば生徒たちはパニックにならないか? 当日、一挙に生徒が特定の種目に押しかけることになれば競技どころじゃなくなるだろう)

 

 神崎の疑問は最もだが、それくらいは学校も把握しているだろう。

 

「公開されている種目への参加は、今日の夜10時から専用アプリにて予約ができるようになるよ。全学年早い者勝ち、競走は既に始まっているのだ〜」

 

 星之宮先生の謎のテンションはさておき、参加予約は体育祭本番の1週間前までキャンセルできるようだが、回数制限があり3回までしかキャンセルできない。

 最後の予約締切は本番2日前までとなり、それまでに上限の5種目を登録していない場合は自動的に空いているところに割り振られるようだ。

 モニターにはアプリの画面と思われるスケジュール表が表示され、試しに100メートル走に参加しようとすると画面が切り替わる。

 

【100メートル走▶︎学年別、男女別による最大7人参加型の種目。全4レース。任意のレースへの予約登録が可能。また空席がある場合当日の参加も可能。参加者は自分の競技開始5分前に到着し、参加登録を済ませること。競技終了後は待機不要。第1レース予定開始時刻・午前10時15分】  

 

(100メートル走に参加出来るのは男女合わせると最大で56人で、仮に何レース目に参加するとしても、競技は10時15分からだから、必ず5分前までには先生か試験担当の人のところに到着している必要があるのかぁ)

(競技終了後に待機不要の説明から見るに、第1レースに参加できれば自分のレースが終わって直ぐに次の競技へと移動が開始できるわけか)

 

 一之瀬さんと神崎が分析している間にも星之宮先生の説明は続き、サッカーなどの特殊な種目に関しては在学中に1度でも部活動として在籍の過去がある生徒は該当する種目には参加出来ないことが告げられる。

 柴田の場合はサッカー、安藤さんならバレーには出られないということか。

 部活動経験者にとって有利になってしまうのを防ぐための策だが、中学時代までは部活動をやっていたという生徒が少なからずいるこの学校ではあまり意味を成さないかもしれない。

 橋本も今はテニス部だが以前はサッカーをやっていたと言っていたし、その辺で有利不利は生まれてくるだろうが、完全な平等が存在しない以上は仕方がない。

 

「これ、映画の座席予約みたいですね」

「おー、確かに似てるねー。でも、これ誰がどの種目、どの時間帯の枠を押さえたのかもリアルタイムで反映されちゃうんだよ〜」

 

 小橋さんのつぶやきに先生はまったりと答える。

 

「てことは、俺に恐れをなしてキャンセルするやつも出てくるかもってことか」

「かもねー。けど、キャンセルは3回までだから慎重にやらないとドツボに嵌るからね」

 

 体育祭が始まる前から心理戦をやらされる生徒もいるわけか。

 大変だな。

 

「(あと言っとくことは……)もし個人戦で同点の結果が出たら、プライベートポイントは等しく分割されて、クラス移動チケットはなくなるからね(これくらいかな? まぁあとで今回説明したことがタブレットに送られるし大丈夫でしょ)」

 

 星之宮先生が説明を終えて教室を離れると、教室内は慌ただしい空気に包まれる。

 運動自慢の柴田はもちろん、神崎もやる気のようで安藤さんと3人で一之瀬さんのところにやってくる。

 僕はその輪には入らないようにしつつ、携帯に届いた2通のメッセージにため息をつく。

 せっかく新しいものに交換してもらい、充電が減りにくくなったのはいいが、電池切れてて見てなかったという言い訳が出来なくなったのは心苦しいな。

 わざわざ昼休みを指定してきたのも一緒にご飯というわけでもあるまいし、どちらも用件は同じだろうから会う気はしない。

 

「楠雄くんどうしたの? 嫌そうな顔で携帯見て」

『いや、迷惑メールが来ていただけだ』

「迷惑メール……? (そんなのこの学校にいて来るのかな……? 来たことないけど……)」

 

 高円寺と南雲からのメールなんて迷惑なことがほとんどだろう。

 高円寺から借りたものは返したし、南雲に関しても今回は相手になる気はサラサラない。

 無人島試験で目立って稼いでしまった好感度と注目度を下げたいからな。

 それに今回の体育祭なら去年のように露骨に危害を加えるということをするやつもいないだろうし、僕は5種目だけ出てのんびり観戦させてもらうとしよう。

 




楠雄『今年の体育祭はのんびり過ごそうじゃないか』
高円寺・南雲「あーそーぼー」
綾小路「オレも後で言うぞ」

って感じでくーちゃんからすれば不穏の幕開けだったりする
ちなみにメールの文面は要約すると高円寺は「昼休み、一緒に食事でもどうだい?」で南雲は「昼休みに生徒会室に来い。用件は弁当を食いながら話させて貰う」って感じ。
くーちゃんはどっちも嫌だけど、殴り込まれるくらいならと仕方なく行くと思うが、2人同時相手は無理なので、奢る気の高円寺を放課後に回して、先に南雲に会いに行くと思われる。

あと原作見たらバレバレになるんですけど神崎とか一之瀬の言ってることや思ってることは綾小路とほとんど同じだったりする。
くーちゃんばっかり言わせるのもなーってなり、でも神崎と一之瀬が言うことって真っ当なことしか言わんしなーで、綾小路と似たようなもんになるかと諦めて結局こうなった。

てことでまた次回
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