ようこそ超能力者のいる教室へ -2年生編-   作:オールF

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結構巻きで行くと思います


体育Ψ、再び

 10月になり、夏の日差しが完全に鳴りを潜め、秋を感じさせる穏やかな日光と気温になった頃に体育祭はつつがなく開催されることになった。

 グラウンドに集められた全校生徒の中に混じって僕は開会式に参加する。

 生徒会役員のみ、教員たちと同じ場所から観覧するのだがやることは変わらない。

 去年も確か同じだったはずだ。

 生徒代表として生徒会長の南雲が開会の挨拶をしているのも、去年は堀北元会長がしていたのだから当然のことだ。

 去年との違いを挙げるのであれば外部から招かれた来賓がいるという点だろう。

 文化祭に向けた予行演習として、この学校の設立に関わった政界の関係者が参列している。

 政界の関係者といえど、テレビで見たことがあるような者はいないが、硬い表情を浮かべスーツに身を包んでこの開会式を見守っていた。

 参列者には綾小路の父親の使いである黒服の姿は見えるが、今のところは綾小路や他のホワイトルーム生に接触するつもりはないらしい。

 それに今回の目的は綾小路の成長具合の確認と、綾小路が認めるライバルの存在を確認しに来たようだ。

 そして、学校の設立には関わっておらず、政界の関係者でもない一般家庭の夫婦がいるのは何故なのだろうか。

 

「ママいいよ〜そうそう! 視線ちょうだい! そうそう! もっと誘惑するような表情で……そう!」

 

 誰だあの場違い夫婦を呼んだのは。

 はい、身内です。

 

「いやぁ〜呼んでいいのって政界の関係者と学校設立に関わった人だけなんて知らなくてさ、声掛けちゃった。てへっ」

 

 そう愚兄に聞かされたのが今日の朝、両親が学校にいるテレパシーを聞き取り、すぐさまあいつのところに詰め寄った時、つまりは約1時間前のことだ。

 

(なんだあの夫婦……カップルか?)

(女の人は若いように見えるけど、男の人は老けて見えるな)

(うるせぇカップルだな。人が選手宣誓とかしてるのに)

 

 まぁ父さんの方が歳上ではあるが、周りからはそう見えるらしい。

 南雲も気になるのか鬱陶しそうに視線を送り、それに気づいた関係者が2人へと近づく。

 

「すみませんプライバシー保護の観点からカメラの撮影などは……」

「えっ!? そうなんですか!? 弱ったな〜せっかく息子の晴れ姿を……って電池切れた」

「え〜ウソ〜?」

 

 いやもう帰れよ。

 何しに来たんだ。

 いるとわかった時は仮病でも超能力でもなんでも使って休もうとしたのに、空助に告げ口をされて、テレパシーで説得されたからな。

 

「ダメよ! ちゃんと出なきゃ!」

「そうだ! お前の活躍を撮るためにビデオカメラだって買ったんだ!」

 

 あんまりにもうるさすぎて渋々出てやっているというのに完全に見ておらず、母のプロモーションビデオを撮影するのに必死でそのビデオカメラの電池を切れさせる始末。

 とりあえず今日の目標はアレと僕が親子関係であるというのが露見しないようにすることだ。

 一応、口止めはしてあるし、天然な母さんだけなら心配だが、父さんもいるのなら僕が超能力者であることやそれにまつわる過去のやらかしなどを漏らすこともないだろう。

 最悪の場合は聞いたやつら一人一人の体育祭の記憶を消して自主退学になることを伝えると、2人はブンブンと首を縦に振っていたし、おそらくは大丈夫なはずだ。

 

「おーい! 楠雄ー! 応援してるぞー! 頑張れー!」

「くーちゃん頑張ってねー!」

 

 はい、言った傍からバラしましたよと。

 

(楠雄……? 楠雄って……)

(あれが楠雄くんのお父さんと……お姉さんかな……?)

(くーちゃん……可愛いあだ名ですね。私も呼んでみましょうか)

 

 母を殺すなと思ったが、父親が次男の体育祭に来て姉のプロモーションビデオを撮影する異常者にされている方が問題かもしれない。

 いや、夫婦とは言え妻のプロモーションビデオを撮っているのも問題か。

 めでたく全校生徒からアレが僕の両親あるいは身内と認知されたところで南雲の挨拶が終わる。

 

(斉木の両親……? 父親と姉貴か? 一応挨拶しておいた方がいいか?)

 

 なんでお前がするんだよ。

 誰もしなくていい。

 強いて言うなら、星之宮先生と坂柳理事長くらいだろ。

 全員がうちの両親に気を取られ、普通に良かった南雲の挨拶は誰の記憶にも残らず、先生たちへとバトンは移って体育祭の注意事項などが改めて通達される。

 観覧席や休憩エリアとは関係のない場所での雑談や、休息やサボりは発見次第参加資格を剥奪され、持ち点も無くなってしまうくらいだろうか。

 そして開会時刻を迎えると、生徒たちは一斉に散り散りとなる。

 ルールを守る限り、事前にエントリーしておいた競技に参加するのも良いし、2点必要になるが対戦相手を見て不利と判断したら急遽棄権して別の競技に出ることも認められている。

 出場する競技がまだの生徒は観覧席や指定エリアでの待機が命じられ、本来なら僕はそこに足を運ぶはずなのだが、僕が参加する学年混合男女別200m走は開会式が終わってから10分後に始まる。

 特に僕は第1レースであるため、待機場所に行かなければならない。

 まだ始まったばかりなのに最悪な気分の中、そんな僕の気持ちなど露知らずに楽しそうに南雲と高円寺、さらに少し遅れて綾小路も寄ってきた。

 

「お前と違って随分と愉快な家族なんだな」

「楠雄のfamilyに会えるとは予想外だねぇ」

「お前くーちゃんって呼ばれてるのか」

 

 やれやれ、これだから家族と知り合いを会わせたくないんだ。

 あの両親から出てきて育てられたのがコレと言われたら驚くのは無理もないかもしれないが、僕がこうなったのは超能力者であるが故なのであの両親の気質などはあまり関係ないのだ。

 むしろ、僕が父さんや母さんのテンションで過ごしていたらなんか気持ち悪いだろ。

 そう考えていると綾小路が僕を見ながら呟く。

 

「……お前家族の前で小さい女子をお姫様抱っこしたり、学年一の美女と二人三脚で走ったり、学年一の人気者女子とダブルス組んでる姿を見せるんだな」

 

 やめやめろ。

 考えないようにしてたことを列挙するな。

 幸いにしてカメラは電池切れで記録には残らないみたいだが、やはりあの2人に見られるのは恥ずかしさよりもあとでイジられる面倒くささが勝つ。

 一応は特殊競技は後半の方だし、僕は一度体育館に移動するため、その際に両親を撒ける可能性は高い。

 空助も仕事があるため、あの2人を僕のところに誘導してくるということは出来ない。

 そうなれば、あとは如何に早く競技を終わらせるか。

 それにかかっている。

 4人で固まって第1種目の待機場所に行くと、僕と高円寺、南雲を見た他の第1レースの参加者2人の顔が一気に青くなる。

 

(終わった……)

(なんで俺はこんなところに来てしまったんだ……)

 

 おそらくは早期に予約してこのグループに放り込まれたか、予約していなかったら前日のランダム抽選で放り込まれた男子なのだろうが、参加するだけでも得点は手に入るのだし悪いことばかりでは無いだろう。

 君たちは両親の前で恥を晒したり、これから先イジられるネタを提供することもないのだから。

 

「今日は最初からクライマックスでいきたまえよ、楠雄」

 

 去年は後から調子が出てきたということにしたのか、思われたのかはさておき。

 僕の身体能力は学年どころか学校中に周知されている。

 特に2、3年生は僕の200m走とリレーの過程と結果を見ているため、ここで変に手を抜いては高円寺たちも騒がしくなる。

 そのため、僕は去年龍園を置いてけぼりにしたスピードで3人を置き去りにした。

 

「く、クソ……! (速すぎるだろ……!)」

「うぅむ……まだまだ発展途上であることは認めるがここまでとはねぇ……」

(普通のフォームだし、クラウチングスタートもオレや高円寺の方が姿勢も走り出しも良かった。それなのに素のスペックで完全に負けてこの差か……)

 

 高円寺が綾小路と競り、2位になり、綾小路は3位、南雲は1.2秒遅れて4位という結果になった。

 

(すごいなあの4人……全員日本代表選手のタイムより速いんじゃないのか……? 特に1位の子は世界レベルなんじゃ……)

 

 世界どころか宇宙規模かもしれない。

 宇宙人と競争したことがないから分からないが。

 とは言え、走るのは力の調節が楽だから高円寺と綾小路の全速力より少し早い程度に収めることで大目立ちを防いだが、問題はここからだな。

 2競技目は綱引き。

 団体戦の綱引きもあるが、南雲の指定してきたのは多人数で行うものではなく、1対1の個人戦。

 トーナメント方式で20秒以内に自分の方に印がついたところまで縄を引き寄せたら勝ちの簡単なルールだ。

 

「では、楠雄。決勝で会おう」

 

 トーナメント表は発表されていないし、高円寺と当たるのが最後とは限らない。

 この種目には高円寺だけでなく、力自慢が多く出場する。

 これも男女別ではあるが学年混合種目だ。

 よって、顔見知りも何人かいるが、宝泉は僕を見るなり威嚇してくるし、宇都宮もかなり警戒している様子だった。

 同学年の参加者だと便乗して参加してきた綾小路と須藤の姿が見える。

 総当りではないため、彼ら全員と綱を引き合う可能性は低い。

 そう思って見上げたトーナメント表では1回戦は宇都宮になっていた。

 

「……負ける気はありません」

 

 じゃあ負けないでくれよと思いつつ、僕は軽く会釈をして競技に入る。

 係員に呼ばれて縄の前に立つと、係員が説明を始める。

 

「この縄は特殊繊維を縫合しているためゴリラの握力でも耐えられる特殊仕様となっております」

 

 普段ならいらないだろ縄にその剛性と言うところだが、こと体育祭においては助かる仕様だ。

 去年の縄がちぎれた反省を活かしているらしい。

 

「では、互いに縄を持って」

 

 言われて、僕と宇都宮は縄を掴んだ。

 それと共に審判の教師が手を挙げると僕は少し力を込める。

 

「始め」

 

 開始の合図と共に綱を手前に引くと、引っ張り合うことなく綱を僕の方に引き寄せてしまい、縄に付いていた紐が一瞬で自分の陣地に入ってきた。

 

「しょ、勝者……斉木楠雄……」

(ば、馬鹿な……!?)

 

 その宣告に宇都宮は信じられないと言いたげに呆然と立ち尽くしており、僕は気まずくなり、すぐさまその場をあとにする。

 フライング判定になったり、宇都宮からやり直しだと言われることもなく、僕は2回戦に進んだ。

 ちなみに次の対戦相手は2年Bクラスの鬼頭。

 坂柳さんのクラスでは運動神経に優れ、腕力にも自信があるという生徒だ。

 しかし、坂柳さんたちは確か僕の出場する種目は避けると思っていたが。

 

「この競技への参加は俺自身の意思だ。坂柳や橋本、葛城が認めるお前の力を見せて欲しい」

 

 手加減はするなと暗に伝えてくる鬼頭に僕は頷きを返し、一蹴した。

 透視で見たところ上腕二頭筋は鍛えられているが前腕筋群と腰の入りがイマイチだったな。

 透視で見たということは避けて、そう伝えてやると「(哀れみからのアドバイス……ではないな。純粋なものと見える……)俺はまだ高みを目指せるというわけか……」と呟いて去っていく。

 それを近くで聞いていた須藤が尋ねてきた。

 

「なんだ斉木、トレーナーに興味とかあんのか?」

 

 別にないが、最近まで真似事はしていたからな。

 流石に女性陣4人のトレーニング内容を考えるのは骨が折れた。

 1念写で1分だから4分もかかってしまうからな。

 僕がドパガキとやらなら2人目で飽きていることだろう。

 とりあえずは4人とも目標とするところまでは引き上げてやったが、結果に結びつくかは彼女たち次第だ。

 来年は断ろうと思いつつ3回戦の須藤も倒して、準決勝へと駒を進める。

 須藤も腰が入ってなかったな。

 入っていたとしても結果は変わらないが、あいつの筋肉量と体幹なら綾小路や高円寺にもいずれは追いつけるだろう。

 

「マジかよ!」

 

 今は2人に劣っていると告げられても須藤は落ち込むことなく、「ありがとな! 次の種目は負けねぇぜ!」と休憩エリアへと歩いていく。

 そして、迎えた準決勝だが、桐山配下の3年生であり、目立った選手と当たらずにここまで勝ち上がってきた強運の持ち主だった。

 しかし、残念ながら運だけでは僕の超能力は破ることはできない。

 

「クソ……っ! (馬鹿力め……!)」

 

 名も知らぬ3年生を倒して、やっとやってきた決勝戦に勝ち上がってきたのは。

 

「悪かったな。高円寺じゃなくて」

 

 僅かに汗を滲ませながら、僕にそう告げてくるのは高円寺を下して、決勝戦の相手になった綾小路だった。

 

「どちらが来ても構わなかったって顔だな」

『わかるのか?』

「なんとなくな」

 

 言って、綾小路は自分たちを見つめる黒服と……僕の両親たちを見やる。

 

「くーちゃん! 頑張ってー! あと1勝よ!」

「頑張れー楠雄〜! しっかり録画しておくからな! ……心のHDDに……」

 

 来賓客も競技の邪魔にならないのであれば自由に動いていいらしく、両親は僕の競技についてきていた。

 綱引きが始まって直ぐに坂柳理事長が挨拶に来て、当たり障りない挨拶をしていた以外は今のところは特に何も起きていない。

 坂柳理事長もわざわざ空助の行いや、僕が坂柳さんに貢がせていたことを話すことはせずに大人らしい言葉で母さんと話していた。

 父さんは(結構老けてるなぁ〜)と失礼なことを考えていたため、軽く抓っておいたが。

 

「姉貴もいたんだな」

『あれは母さんだ』

「……は? (冗談だよな?)」

 

 僕は滅多に冗談は言わないし、空助と僕の姉ならどんな人間が生まれていたのだろうかと考えつつ、係員が決勝戦を始めましょうと声をかけてくる。

 縄を手に取り、互いに準備が出来たところで係員が号令をかける。

 

「はじめっ!」

「ふぅ……! っ……!」

 

 綾小路は少しばかり額に汗を流しながら、歯を食いしばって僕の方を見ている。

 ホワイトルームで培った技術と経験、そして成長した肉体を合わせて僕に全てをぶつけてくる。

 

(無人島試験が終わってから恵との時間も作りつつ、あの頃とおなじ……いやあの頃以上に身体を鍛え直した。今回斉木が出場する種目の知識や技術も叩き込んできた)

 

 どこを見ているのか分からないと言われている瞳を僕に向けながら、綾小路は縄を引いてくる。

 その力と姿勢は高円寺を下してきたと納得できるものだった。

 今の綾小路なら空助と綱引きをしてもいい勝負が出来るかもしれないと思いつつ、僕は軽く縄を引く。

 

「……っ! (嘘だろ……?)」

 

 驚愕する綾小路を気にも留めず、僕は1度で綱をこちら側に引き寄せてみせた。

 

「勝者……斉木楠雄!!」

 

 審判の宣言を受け、綾小路は一瞬の硬直の後、鼻で笑った。

 僕はそれを気にせず、縄から手を離して去ろうとするが、そんな僕の背中を綾小路は見逃すことはなく、声をかけてきた。

 

「なぁ斉木」

 

 僕が振り返ると、綾小路は少しばかり笑みを浮かべているが、汗は流れたまま、僕へと歩み寄ってきて右手を突き出してくる。

 

「また今度リベンジさせてくれ」

 

 そう言ってくる綾小路に僕は『やれやれ』と、来年ならなと軽く右手を差し出してやる。

 (いいのか……!)と綾小路はその手を掴み、握り返してくる。

 

「きゃ〜! くーちゃんが握手してるわ! パパ! 写真は!?」

「うーん、ダメだぁ……ケータイもママの写真でいっぱいでこれ以上は保存できないよぉ〜」

「えぇ〜!? (もう……せっかくくーちゃんがデレてるのに!)」

 

 デレてにゃい。

 全くまだ始まったばかりだと言うのに、最初からあのテンションか。

 大縄跳びとか見たら保健室に運ばれていくんじゃないだろうか。

 結構経ったように感じるが時間としては1時間も経っておらず、まだ2競技しか終わっていない。

 残り8種目。

 高円寺が追加で指定してきた競技ではあるが、始まるまでに10分ほどあるため少し休むことにしよう。

 

 

 





他のメンバーの様子は随時
ちなみに綱引きは南雲が申し込んだ種目ですが、南雲は2回戦で綾小路に負けてます。宝泉も綾小路に1回戦負け。
綾小路は今回一切手加減なし(演技含めて)

くーちゃんの両親を見て、自己紹介しなきゃと女性陣は思いつつ、まずは競技に集中ということで自制してます
まぁ外部の観覧席に生徒はいけないというルールがあるからなんですが、あちらから来てる場合はどうなるんでしょうね

高円寺は決勝で会おうって言っておいて負けたので悔しさ半分、綾小路も強いとわかってややご満悦

空助は真面目にしているのかと思いきや自分の時はAI搭載のロボットに審判とかさせてます。
テクノロジーの公開ではありますが、政府関係者なら知ってるくらいの技術しか使ってないので特に注目などはされず

くーちゃんの出る種目が男子のみが多いうちは男子の登場多めになりますが、その都度女子もやると思われる(やるか?)

てことでまた次回
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