ようこそ超能力者のいる教室へ -2年生編-   作:オールF

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初おっふ出ます。


拍手喝Ψ!二人三脚!

 楠雄くんが高円寺くんや綾小路くん、南雲会長たちと戦ったバスケシュート対決は楠雄くんが全てのシュートを決めて1位に終わった。

 体育館はその場に居た2年生を中心に大歓声に包まれる。

 私ももちろん拍手をしていた。

 楠雄くんは疲れた様子はなく、何事もなく終わったことに安堵するように胸を撫で下ろしていた。

 そんな楠雄くんに高円寺くんや綾小路くんが声をかけていた。

 会話の内容は分からないけど、楠雄くんが出場する個人種目はこのバスケシュート対決が最後で、これからは誰かと組んでの種目になる。

 次は私と二人三脚で、その後は休憩を挟んで桔梗ちゃんとテニス、あとは男子でバレーボールをして最後は大縄跳びになっている。

『僕は5種目しか出ない』って言ってたけど、結局10種目出ることになっていて、なんだか楠雄くんらしいと思えてしまう。

 二人三脚は楠雄くんにとっては7競技目で、既に最低参加数となる5種の競技を完了させている。

 6種目以降も出場するのは運動神経や体力に自信のある生徒がほとんどだけど、その例に当てはめるなら楠雄くんも出場する選手の枠に入る。

 けど、本人にその気はあまり無さそうで私のわがままで出場してもらったことを申し訳なく思う。

 

「じゃあ帆波ちゃん、斉木くんと二人三脚頑張ってね」

「次も応援に行くから」

 

 麻子ちゃんと夢ちゃんが、私たちの方に向かってくる楠雄くんを指差しながら応援してくれた。

 私はお礼を伝え、手を振ってくれる2人に振り返すと既にすぐ近くまで来ていた楠雄くんと目が合った。

 

「次は二人三脚だね。楠雄くん」

『そうだな』

「えっと……」

 

 あれおかしいな……去年はどんな感じで……あ、そっか去年は楠雄くんを異性として意識はしてなかったんだった。

 それに男女二人三脚は推薦競技で、私が一緒に出て欲しいって頼んだっけ。

 あの時はクラスのために、勝利のためにって考えていたけど今は違う。

 

『行かないのか?』

「え、あ、うん! そうだね!」

 

 体育館から出て、運動靴に履き替えると再びグラウンドに向かう。

 二人三脚の時間まではまだあるけど、練習しておいた方がいいかなと楠雄くんに尋ねてみる。

 

『別にいいんじゃないか?』

 

 練習は体育祭の日までにそれなりにしていたし、楠雄くんの言う通り大丈夫だとは思う。

 それに去年は息ぴったりというか、楠雄くんが私に合わせてくれたおかげで2位に終わることができた。

 でも、今年は1位を獲りたい。

 その思いはくーちゃ……じゃなかった楠雄くんにも伝えてある。

 楠雄くんの……お母さんだよね。

 すっごく若く見えるけど……くーちゃん、くーちゃんって呼んでてそれが耳に残っちゃった。

 呼んだら怒りはしないだろうけど、返事はしてくれないだろうなと思いつつ、二人三脚の呼び出しがかかるまで待つ。

 

「あら、くーちゃん! 今度は二人三脚なの!?」

「あの天上天下唯我独尊の楠雄が!?」

 

 すると、楠雄くんの応援に楠雄くんのお母さんとお父さんが観覧席までやって来ていた。

 後ろにはお兄さんもいるけど……先生達って審判とかの仕事があるんじゃなかったっけ。

 そう見ているとお兄さんはにこりと微笑んでくる。

 それに気づいたお父さんが私に声をかけてきた。

 

「どうもパパです! 楠雄がお世話になってます!!」

「えっ!? あっ、えっと……」

「ママです〜まぁすっごく可愛い子! 髪も綺麗〜くーちゃんと仲良くしてくれてありがとうー!!」

「あぅ、その……」

 

 か、可愛いってそんなこと……。

 

「はっ、初めまして……楠雄くんのクラスメイトの、一之瀬帆波、です……楠雄くんには私の方がお世話に……」

「くぅ!?」

「くっ!?」

 

 く? あれ? 私何か変なこと言ったかな……? 

 

「楠雄くん!?」

「もしかして2人って!? 付き合ってたり!?」

 

 えっ? あっ!? 

 

「いやっ、あの、私はその、ただのっ、く、クラスメイトでっ!」

「えぇ〜? ホントに〜? 下の名前で呼んでるのに〜? どうなんだよ楠雄〜?」

「そうなの〜? 下の名前で言ってるからてっきり〜ごめんなさいねママたち早とちりしちゃって」

 

 お父さんが楠雄くんの脇腹をえいえいと小突いて、お母さんの方は私に申し訳なさそうに手を合わせてくる。

 私はそれに「大丈夫です……」と小さな声で言うとお兄さんが笑う。

 

「そうだよ2人とも。楠雄が誰かと付き合うわけないでしょ。2人って全然釣り合ってないしまるで月とスッポンだし! あはは!」

 

 悪意なんて一切無さそうな笑顔でそう言ってきたお兄さんは、言ってから「ごめんね気を悪くさせて」と謝ってくる。

 

「気にしないでください。その、本当のことですし」

「……あれ?」

「楠雄くんの方が優しくて人気者で、頭も良くて運動もできてやれやれって言いながらも助けてくれて……ほんと、私なんてすっぽんなんていいものでもなくて……」

 

 楠雄くんが月だとしたら私はすっぽんなんてものじゃなくて、なんだろ……釣り合いが取れてないってことだから……電話の*くらい……? 

 

「空助こっち来なさい」

「おっふ……」

 

 私がそう考えている間にお兄さんは目の前からいなくなっていて、お母さんに連れられてどこかへ行っていた。

 それを楠雄くんとお父さんは手を合わせて見ていた。

 

「えっと、お兄さんどうしたの?」

『行ってしまったな。円環の理に導かれて』

「あいつ楠雄至上主義だからなぁ……母さんマジギレだったぞあれ」

『終わったな……所詮クズはクズなのだ』

「お前はなんでちょっと嬉しそうなんだよ」

 

 円環の理? マジギレ? 

 よく分からないけど……。

 

『まぁとりあえず気にするな。母さんが怒らなければ僕が怒っていたところだしな』

「え?」

「空助はルックスとかそういうのに興味ないから一之瀬さんの見た目なら、月とすっぽんって言えば月の方だと思ってくれると思ったんじゃないか? ほら、楠雄なんて見るからにすっぽんだからな……いやお前マジでどうやって仲良くなったんだこの子と?」

『一之瀬さんは誰とでも仲良いぞ』

「やっぱり? お前だけにこんな可愛い子が特別に下の名前呼びとかするわけないと思ったんだよな」

 

 してますごめんなさい……。

 恥ずかしくて死にそう……。

 というか、お父さんもお母さんも可愛いって言ってくれるけどそんなことないし……。

 私、可愛いのかな……? 

 

「男女二人三脚に参加する選手はお集まりください」

「おっ、時間みたいだな。じゃあ父さんたちは観客席にいるから」

『一生そこにいろ』

「わ、悪かったよ話しかけて! でもさっきのは空助が悪いだろ!」

 

 楠雄くんって家族と話す時はあんな感じなんだ。

 でも、お父さんもお母さんも優しくて良い人そう。

 なんだかお母さんのこと思い出しちゃった。

 

「じゃあ一之瀬さんも頑張ってね! そうだ、この後昼休みだよね? あとでさおいでよ! お弁当も作ってきたし! 母さんが」

「え? あ、はい、ご迷惑でなければ……」

「はははっ! 迷惑なんて言わないよ! じゃ、楠雄も一之瀬さんの足引っ張らないようにな!」

 

 そう言って去っていった楠雄くんのお父さんを見送りつつ、『やれやれ』とため息をつく楠雄くんを見る。

 

『悪かったな嫌な思いさせて』

「えっ? 別になんともないっていうか、お昼ご飯誘って貰えたし嬉しいけど」

 

 私がそう言うと、楠雄くんは驚いたように私を見ると背中を向ける。

 

『ならいい』

 

 そのまま待機場所から歩いて係員の人から足を結ぶ用の紐を受け取ってくると、それを手渡してくる。

 

『今回は去年よりも少しキツくしておこう。転んじゃいけないからな』

「うん、そうだね」

 

 楠雄くんも去年の二人三脚のことは覚えていてくれているみたいで、スタートダッシュで私が転けそうになったこと、前の2年生たちが転けたのを2人で飛び越えたことを話しながら紐を結ぶ。

 

「これくらいでいい?」

『ああ』

 

 ついていた膝を上げて立ち上がると、足に伝わる圧迫感の強さを確かめる。

 これなら開始から転けるなんてことは無さそう。

 周りを見てみると私たちのグループには目立ったライバルはいなさそう……そう思っていると綾小路くんと堀北さんの姿が見えた。

 

「あの2人って……」

『空いていた枠に飛び入り参加してきたみたいだな』

「そうなんだ」

 

 堀北さんは去年は須藤くんと組んでいたけど、今年は綾小路くんと出場するんだ。

 綾小路くん、軽井沢さんと付き合っているはずだけど、相手は気にしてない、のかな? 

 クラスの勝利のためって言われたら納得できそうではあるけど。

 そういえば、あのペアって1年末の特別試験で私と神崎くんが組んで負けたペアか。

 綾小路くんも堀北さんも運動神経高いし、息も合ってる。

 でも、大丈夫。

 神崎くんには悪いけど、楠雄くんとなら私はどんな相手にも負ける気がしない。

 それは楠雄くんが凄いからっていうのもあるんだけど、楠雄くんとなら私はいつも以上に力が発揮出来る気がするから。

 

「強敵だね」

『負けそうか?』

「ううん、勝つよ。やるからには絶対」

 

 それに午前中に2年Dクラスとの得点差を少しでも縮めておきたいし。

 今年も勝ってみんなでご飯食べて次の文化祭も明るく挑みたい。

 

「じゃあ、行こっか」

 

 私がそう言って歩き出すと楠雄くんも私が出した足とは逆の足を出してくれる。

 スタートラインに立って、私は楠雄くんの腰に手を回そうとすると、楠雄くんが聞いてくる。

 

『腰と肩だったらどっちの方が走りやすい?』

「えっ? うーん、どうだろ……」

 

 練習ではずっと腰だったし……けど、他のペアは肩に手を置いている。

 でも、体格の違う男の子と女の子じゃあまり良くはなさそうだ。

 

「えっと、腰でいいよ。私も腰持つね」

『じゃあそうしよう』

 

 お互いに腰に手を回すと、お互いの視線が交錯する。

 当たり前のことだけど、二人三脚でこうして足を結んで、腰に腕を回し合うとなると、なんというか……すごく近い。

 深呼吸をして楠雄くんの方に寄る。

 

「くーちゃん! 帆波ちゃーん! 頑張ってー!」

「2人とも頑張れ〜! ほら、空助、お前も応援するんだって、口塞がれてるようじゃ無理か。応援はね、口を開けてしないと」

 

 来賓向けの観客席の方を見ると楠雄くんが種目に出る時は必ずいるような気がする黒服の人達の横に楠雄くんの両親がいた。

 お母さんは元気に手を振ってきて、お父さんの方は何故か口をテープで塞がれたお兄さんに何か言っているようだった。

 生徒の観客席には夢ちゃんや麻子ちゃん、なぜか血涙を流している千尋ちゃん、柴田くんや神崎くん、浜口くんも応援に来てくれていた。

 

『あいつら暇なのか?』

「ははっ、まぁこれが午前最後の競技だし仕方ないよ」

 

 楠雄くんのつぶやきに笑って答えると、スタート合図の人が「位置について」と口を開く。

 それを聞いて私と楠雄くんはグッと構えた。

 そして、スタートの合図と共に前に走り出す。

 私の最高速度に合わせて楠雄くんが足を出してくれるため、私たちはスピードを落とすことなく最初のコーナーに入る。

 

「はええええ!」

「相変わらず相性いいね〜」

 

 柴田くんや夢ちゃんの前を走り抜けて直線に入る。

 

「一之瀬先輩! 斉木先輩がんばって!」

「高育最強ペアいっけー!!」

 

 交流会や無人島試験を通して仲良くなった1年生たちも私たちを応援してくれている。

 隣に並んで走っている綾小路くんと堀北さんたちと共に再びコーナーに入る。

 そこからはお互いにペース配分を考えずに走る。

 そのまま私たちと綾小路くんたちと横並びのままゴールテープを切った。

 判定はゴール前に置かれていたカメラを使うため、少し待つように伝えられる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……あなた達、速いわね……」

「堀北さんだって……2人とも練習してないんでしょ? すごいよ」

「綾小路くんが、合わせてくれると言ったから、私は出せるスピードを出しただけよ……」

 

 綾小路くんもすごいなぁ。

 楠雄くんと競い合ってるみたいだし、こんなに運動ができる人だとは思わなかった。

 その綾小路くんは肩で息をする私たちとは違って少し汗をかいたくらいで楠雄くんと話しているようだった。

 少しして、審判の人が出てくると判定の結果を報告してくれる。

 結果は僅差で私たちが勝利していて、観客席からは盛大な拍手が響き渡る。

 

「やった! やったよ楠雄くん!」

 

 私は、思わず楠雄くんに抱きついてしまう。

 

「わぁっ!? 帆波ちゃん大胆! 両親の目の前で……」

「う、うぐぐ、そこは私の場所……ッ!」

「愛は人を狂わせるんだねぇ……」

 

 麻子ちゃんたちの声が聞こえて、我に返り、急いで体を離す。

 

「ご、ごめんね楠雄くん……つい……」

『大丈夫だ』

 

 周りからの視線や楠雄くんへの申し訳なさを感じて俯いていると綾小路くんと堀北さんが話しかけてくる。

 

「ビデオを見せてもらったが明らかに一之瀬の勝ちだった」

「その言い方はやめなさい。私が原因みたいな言い方は」

「違うのか?」

「あなたも斉木くんのお兄さんみたいになりたいのかしら?」

 

 どういうことかよく分からないけど、堀北さんに凄まれた綾小路くんはお口をチャックのように閉めるジェスチャーをする。

 

「次は負けないわよ、斉木くん。テニスでも勝負するわ」

『須藤たちも出ているのにいいのか?』

「構わないわ。あなたや、櫛田さんに負けっぱなしじゃ体育祭に勝っても嬉しくないもの」

 

 堀北さんはそう言うと綾小路くんを連れてこの場から立ち去る。

 何があって私たちが勝ちになったのか気になるから私たちもビデオを見に行こうかと声をかけようとして、後ろから「お疲れ様」と声をかけられて振り向く。

 すると千尋ちゃんや柴田くん、夢ちゃんと麻子ちゃんが迎えてくれた。

 他にも神崎くんや浜口くん、姫野ちゃんや紗代ちゃんたちも労ってくれる。

 

「おつかれ〜、ナイスランだったよ2人とも」

「はぁ……羨ましい。斉木くんが羨ましい……」

「千尋ちゃん、嫉妬心出しすぎじゃない? それにしても息ピッタリだったよねー」

 

 麻子ちゃんが茶化すように言うと、千尋ちゃんはムッと頬を膨らませた。

 そんな千尋ちゃんを見て苦笑する私だけど、確かに自分でも驚くほど調子が良かったと思う。それはきっと。

 

「楠雄くんのおかげだよ。私だけじゃあの2人には勝てなかったし」

 

 素直に感謝を伝えると、彼は表情を変えずに小さく首を傾げただけだった。いつも通りの反応だけれど、その肩越しに見える観客席から大きな拍手が起きる。

 見れば楠雄くんのご両親が全力で手を振っていた。

 

「……なんか、今日は特に盛り上がってるね」

「うん。楠雄くんが出るたびにあんな感じだからね。さっきのバスケもすごかったし」

 

 楠雄くんの両親を見ていてなんとなくわかった気がするな。

 あんな優しくて明るい2人に育てられたら優しくてかっこいい人に育っちゃったのが。

 楠雄くんと結婚したらあの2人が義理だけど私のお父さんとお母さんになるんだよね……。

 

「どうしたの帆波ちゃん顔赤いけど」

「うぇっ!? そ、そうかな! ははは! 嬉しくて、なんかこう、ね!」

「うわド下手くそな誤魔化し方。斉木くんに似ちゃった?」

『えっ』

 

 僕ってこんなのか? と神崎くんや柴田くんに尋ねる楠雄くんに2人は頷く。

 

「たまにだがな」

「一之瀬ほど酷くはねぇから心配すんな」

 

 ひ、酷いんだ私……。

 まぁいいか。

 とりあえずこれで午前中の種目は終わったし、昼ごはんを食べて午後も頑張ろう! 

 

 

 

 

 ……えっ? 私ほんとに楠雄くんのお母さんたちとご飯食べていいのかな? 

 




くーちゃん視点以外も書こうとしたらいつも通り一之瀬さん視点になった

なお空助は体育祭中発言権が没収されてます

一之瀬ペアが勝てたのは一之瀬と堀北のある部分の差です
堀北が伊吹に対して言ったやつですね

てことでまた次回
昼休みとそのままテニスかな
次回は10月になるかもしれない
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