照橋さん未満なのは間違いないけど、俺はあいつの可愛さに気づいてる……的な感じの可愛さなのか綾波とか長門的な平成ヒロインの可愛さなのか
こんなことを書いておいてこの回に栗子は出てきません
着々と進んでいく文化祭の準備の中で、僕は南雲に体育館に呼び出されていた。
どのクラスがどこの場所に出店するか、どんな出し物をくるのかは表向き当日までは不明なのだが、僕には校内にいる時はテレパシーで全て筒抜けであるため、どのクラスがどこの場所に出店してどんな出し物をするのかは把握済なのだ。
よかった客側になるような文化祭じゃなくて。
普通の文化祭なら事前にパンフレットだの、ビラなどを作るから分かるものなので気にしなくて済んだのだ。
売上を競い合うという高育の文化祭の性質上、秘匿しておいた方が当日のインパクトに繋がるため手の内を明かすメリットはない。
しかし、そんなことはお構いなしと言わんばかりに南雲率いる3年Aクラスは体育館という大きなスペースを早々に借り切ってお化け屋敷と迷路を融合させた出し物をするようだ。
クラスの総意としてやりたいことをさせるという、クラスポイントを競って稼ぐ必要のない南雲クラスならではの考えの下でしか出来ない出し物と言えるだろう。
文化祭の出し物は当日まで隠しておかなければならないという制約はなく、生徒同士によるプレオープンをしても良いとされており、南雲は昨日から希望する生徒たちに実際に迷路お化け屋敷を体験させて意見を募っていた。
本番までに来賓たちへ向けてクオリティの高い出し物を見せようというプロ意識のようなものだろう。
それにぶっつけ本番でミスが出るということも避けられるし、デメリットは大して多くない。
僕は体験するつもりはなかったが、南雲からプレミアムプリンをやるから是非意見を聞かせてくれと招待されてしまって体育館に来ていた。
「体育館って電気消すだけでも結構怖いよね……」
一之瀬さんと一緒に。
余計な気遣いというやつをされて、一之瀬さん以外のクラスメイトや同級生は呼ばれておらず、僕と一之瀬さんだけが2年生で招待を受けていた。
(斉木にその気はないらしいが、一之瀬は間違いなく斉木に惚れている。お化け屋敷による吊り橋効果で少しでも斉木の気を一之瀬に向かせてやるぜ)
南雲はどの立場なんだよ。
初日ということもあって、Aクラスの面々は思うように進行できていなかったがそこは南雲が的確に指示を出してタイムスケジュールを徹底管理して列が進み始める。
「凄いよね生徒会長。堂々と公開しちゃうなんて(しかも私たちに意見を聞かせて欲しいだなんて……まさか楠雄くんとお化け屋敷に来れると思ってなかったな)」
一之瀬さんは南雲のお節介には気づいていないらしく、純粋にお化け屋敷迷路を楽しみにしているようだった。
列が進んでいくと入口前で名前と学年クラスを記入してルール説明を受ける。
説明とは言っても最低限のまなーのようなもので、携帯の使用の禁止、大声での雑談禁止、無意味に中に留まらないこと、制作物に手で触れたりしないことなどが書かれている。
これは読めない子供もいるだろうし録音テープか携帯で録画したのを流してもいいんじゃないだろうか。
説明を読み終えて、僕と一之瀬さんはお化け屋敷への1歩を踏み出した。
壁に囲まれたお化け屋敷は当然のように狭く視界が悪いのだが、3秒もすれば壁の向こう側で準備しているお化け役や仕掛け役の姿などが見えてしまう。
飾り付けられた装飾品でお化け屋敷特有の陰鬱で不安にさせる雰囲気を出しているようだが、どれも百円均一などで売られているもので抑えられるコストは抑えている。
肝心の脅かす部分の大半は人間の手で行われており、少し歩けばろくろ首、落ち武者、天井からこんにゃくと仕掛けは用意されているが全て透視やテレパシーで分かってしまうため僕はお化け屋敷を楽しめたことがない。
「わっ!? び、びっくりした……」
一之瀬さんの方は3年Aクラスが引き出したいリアクションを取るも隣にいる僕は終始真顔である。
落ち武者役の男子生徒からは(少しはビビれよ。つか隣の子可愛いなおい!)と心の中で毒付かれてしまう。
一之瀬さんが取り分けビビりということは無いが、やはり掴むものがあれば掴んでしまうものなのか僕の制服の裾を摘みながら進路を歩いていく。
最後の曲がり角からは朝比奈さんが出てくるが特に驚くことはない。
むしろ仏頂面の僕が出てきて驚かれてしまう。
「わぁっ! ってぎゃぁぁ!?」
「わぁぁっっ!? って、な、なずな先輩っ!?」
飛び出してきた幽霊を見て悲鳴をあげて僕に抱きついてくる一之瀬さんだったが、幽霊の叫び声が知り合いのものとわかると安堵の表情を浮かべる。
「なんだ斉木くんたちかぁ。びっくりした」
「こっちもびっくりしちゃいました。結構本格的なんですね」
「でしょでしょ? 血糊とか初めて使ったよ〜」
無意味に留まらされてしまっているし、抱きつかれたままなのだが、僕は帰ってもいいのだろうか。
「で? デートか? デートなの? うりうり」
「えっ!? いや、その、これは……文化祭の参考に……」
僕が目の前にいるというのに歳下をいじり始めた朝比奈さんに呆れつつ、否定するために手を離して離れたのを好機と見て僕は一之瀬さんを置いて先に出た。
出口はすぐそこだし、合流するのは簡単だからな。
と、僕がその場から離れると朝比奈さんは声を潜めた。
「で、ぶっちゃけどうなの? なんか桔梗は告白したって聞いたけど」
「うぇええ!? 桔梗ちゃんのは告白というか宣誓みたいな感じで、特に変わった様子は……」
「そうなんだ。じゃあ斉木くんはまだフリーなんだ」
「フリーというかフリーダムというか……異性にも同性にも興味無さそうっていうか、強いて言うならスイーツとかの方が……」
想いだけでも力だけでもダメだからな。
どちらにも興味は無いし、その気になれば性転換も簡単にできてしまうから性別に囚われることはないな。
男女問わずどっちの身体も筋肉も骨格も見飽きているし。
「じゃあ私や楓花ちゃんが立候補しても無駄そうだね〜」
「えぇっ!? なずな先輩も楠雄くんが……?」
「そりゃ興味はあるよ。少し話しただけだけど愉快で楽しいし」
そんなにピエロのような部分を見せた覚えは無いが朝比奈さんにはそう思われているらしい。
「あ、やば! 次のお客さん来ちゃう! じゃ、帆波頑張ってね!」
「え、あ、はい、ありがとう、ございます……? (なんでそんなに応援? されるんだろ……)」
首を傾げて出てきた一之瀬さんは出てくると待っていた僕に謝ってくるが気にしなくていいと手を振る。
「未完成って言ってたけど結構本格的だったね。あ、ごめんね、中で結構掴んだりして」
それも気にしなくていいと僕が言うと、僕たちの会話でいることに気付いたのか南雲がやってくる。
「ちゃんと来たのか。てっきり来ないもんだと思ってたぜ」
来なかったらうるさそうだったからな。
お化け屋敷迷路はどうだったかと尋ねてくるが完成途中であったせいもあり迷路の要素としては薄く、単純なお化け屋敷という感想が主だった。
迷路にすると後が詰まることも考えられるし、子供は喜びそうだが大人ウケは微妙そうというのが率直な感想だった。
その他、入口の説明の部分も含めて気になったところを指摘してやると南雲は携帯でメモを取るが何故か笑っている。
「ふっ、いや、お前みたいに俺に遠慮なく言ってくるやつはいないからな。参考にさせてもらうぜ」
(南雲会長嬉しそう)
「一之瀬も何かあれば遠慮なく言ってくれ。せっかくやるんだ。いい出し物にしたいしな」
「はい。じゃあ、えーっと」
一之瀬さんも南雲へと出し物に関する意見を言っていると南雲とは別クラスではあるが同じ学年である鬼龍院さんが声をかけてきた。
「やぁ斉木。一之瀬とデートかな? (デートだったら私は枕を濡らす)」
涙腺弱すぎだろ。
恋愛に奥手というかどういうアプローチをしたらいいか分からないということもあって、鬼龍院さんは僕にあまり接触してこない。
しかし、こうして見かけることがあれば積極的に声はかけてくる。
質問に対して首を横に振ると「そうか」と安堵しつつ、南雲と一之瀬さんの様子を見る。
「ここ最近の南雲は憑き物が落ちたかのようだな」
今まではそうではなかったと鬼龍院さんは南雲の方を見ながら言う。
「しかし学年に意識が向かなくなった分有象無象が騒がしくなっているが……斉木の方は問題ないか?」
南雲が1位を目指すのではなく、クラス内の意見を優先しての出し物にしたことに対する反感を持っているクラスメイトがいるのはテレパシーで把握しているし、鬼龍院さんの言う有象無象と呼ばれるBクラス以下の3年生たちの動きも知っている。
南雲が油断している間にAクラスの座をと思っているようだが、僕へと意識を向けていたこともあってか油断や驕りのようなものはなくなっている。
今回の文化祭での方針もクラスを楽しませるという建前で自身に楯突いてくる反乱分子を確定させることも目的としているようだしな。
「A以外にも競わせて1位を取ったクラスの中から1人拾い上げると言っているが、クラスポイント獲得を放棄している動きからはとてもそうは思えないがな」
3年生はAクラスへの執着が些か強いように思えるが、それだけAクラスにならないと夢や理想を実現できない者ばかりなのだろうか。
考えていることなどは透けて見えるが、そういう根の部分はしっかり話してみないとわからないため、僕は学年どころかクラスの人間のそういう部分にも疎そうではあるが参考にはなるかもしれないと鬼龍院さんに尋ねてみる。
すると、彼女は目を丸くしたかと思えばプッと噴き出した。
「ふっ、ははは! たしかにな! あーそうだ、そうなんだよ……Aクラスで卒業することが全てじゃない。南雲がクラスを独走させてしまったが故にそう思わせてしまったという考え方もできるが、概ねは君の考えている通りだ」
ひとしきり笑ったかと思えば冷静に意見を述べてくると凛々しく映るらしい彼女の顔を向けてくる。
「南雲が大人しくなった分、他がうるさくなってしまったがいずれは自分たちの行動が無駄と気付いて各々の身の丈に合った未来へと進むことになるだろうが……(期末や学年末の特別試験で逆転の芽が残されているとなると最後まで足掻くやつはいるだろうな)」
存外、南雲や周囲には興味がないという風に見えていたが見るところはしっかり見ているらしい。
そして、それは南雲も同じであり、僕と鬼龍院さんが並んで話しているのを見て心の中で呟く。
(鬼龍院のやつ斉木にちょっかいをかけてやがるな……そろそろ解放してやるか。アイツらも文化祭の準備があるだろうしな)
南雲は一之瀬さんとこちらに近付いてくると、その足音に鬼龍院さんも気付いて微笑を浮かべる。
「2人きりの時間はここまでのようだな。また機会があれば話そう。そちらから誘ってくれても構わない。むしろ推奨だ」
じゃあなと手を上げてクールに去っていく鬼龍院さんを見送ると南雲から「何話してたんだ?」と尋ねられる。
それに僕は南雲が丸くなったという話をしていたと端的に伝えてやる。
「俺が? (そんなつもりは無いがもしそうだとしたらお前のせいだって言うべきか? いや、言って調子に乗られでもしたら面倒だ)鬼龍院もジョークが言えるようになったか」
僕には考えていることが筒抜けとは知らずに南雲は誤魔化すと、僕たちに礼を言ってくる。
「わざわざ時間を取らせたな。2人とも良い意見だった。参考にさせてもらう。また文化祭前日までに完成させて招待するから見に来てくれ」
「それなら会長も前日のプレオープンに招待しますから是非来てください」
「そりゃいい。楽しみにしてるぜ」
どうやら学年やクラス問わずに文化祭の1日前にリハーサルも兼ねて生徒会主催でプレオープンの日を設けるようだ。
文化祭でも勝負をしようという気がない南雲は今回の文化祭は本気で楽しみ、楽しませる方向に舵取りしているらしい。
OAAや体育祭の完全実力主義化とクラス移動チケットの導入堀北元会長とは違った思想や思考をしつつも学校をより良くしようという気持ち自体は持っている。
堀北元会長のような歴代最高の生徒会長にはなれずとも、生徒会長で唯一学校のシステムを変えたという実績を持つ生徒会長にはなれるだろう。
「斉木、それに一之瀬も。1つ聞いてもいいか(仮にお前らと勝負するためにクラスメイトや学年の誰かを利用したり、人質に取るような真似をされたら、どうするか。俺や高円寺、そして綾小路ならという答えは出ているが)」
僕らが背を向けると南雲はそう言って口を開く。
そして、その質問の内容は既に分かっているがもう1人問われた一之瀬さんは当然分からない。
変なことじゃなければと一之瀬さんが言うと、南雲は苦笑した。
「ちょっと変ではあるが、あくまで仮定の話だ」
南雲は先程心に思い浮かべていた問いを僕たちに投げかけてくる。
その質問の真意は見えないが、一之瀬さんは迷わず即答した。
「相手が誰だろうと私のせいで誰かが被害を受けるなら、私は戦うことを選ぶと思います」
「……お前にはどうしようもない相手でもか?」
「それが戦わない理由にはならないと思います。友達や同級生が私のせいでピンチになるなら、私が何とかしなきゃいけませんよね。勝負を受けたらその子が助かるなら私はどんな相手でも戦います」
曇りのない真っ直ぐな瞳でそう言い切った一之瀬さんに、南雲は「じゃあ」と質問を付け足す。
「相手が斉木でもか?」
「(斉木くんが誰かを危機に晒してまで私と勝負がしたいだなんてそんなことありえないと思うけど)はい。楠雄くんでもそれは変わりません。でも、彼ならそんなことしないともわかっているので」
「……だろうな」
一之瀬さんとの問答が終わった南雲は僕へと視線を向ける。
「俺は全知全能の神じゃない。なずなだろうとクラスメイトだろうと、全員を365日24時間守り通せるわけじゃないが、生徒会長として学年のリーダーとしての力を持つ俺なら相応の手間と代償は払うことになるが、誰かを退学にさせることは出来る」
その上でもし南雲が勝負をしなければ誰かを退学にすると言えば僕がどうするか。
『答えなくても、もうわかるだろ』
僕はそれだけ言うと止めていた足を体育館の出口へと向ける。
一之瀬さんもまた南雲に小さく頭を下げてから僕の後ろへと続き、次第に横並びになる。
遠ざかる僕たちの背中を見ながら南雲は眩しいものを見るように目を細めていた。
(ああ、分かってるよ。そんなことすれば勝負受ける受けないの前に俺が潰されるってことはな)
南雲は思っていた通りの答えが返ってきたことに肩を竦めると3年Aクラスの面々たちの方へと歩き出して僕と一之瀬さんの指摘したことを共有しに向かって行った。
7巻も消失事項多くて笑う
長谷部の離反▶︎佐倉が退学してないためなし。ただし佐倉の急激な成績アップで幸村が疑念を抱き綾小路グループは結局解散。佐倉、長谷部ペア、長谷部、三宅ペアというほぼ原作と変わらない形に。
堀北クラスの出し物が露見▶︎体育祭で堀北と龍園が組んでいないため、未実現。ただし龍園は2年生による上位独占を狙って各リーダーに話を持ちかけてたりはする
神崎と姫野が手を組む▶︎一之瀬クラスがガタガタじゃないため未実現というか、くーちゃん親衛隊みたいな感じにはなってるのである意味では実現してる。
南雲会長へのラブレター▶︎そんなことはそもそもなかったんだよ。
櫛田が練習に出ない▶︎過去がバレてないのと秘密暴露してないため普通にやってる。ただし篠原とはギクシャクしてる(ように見えてるが櫛田は眼中にない)
こんなもんですかね
南雲がかなり更生してますが、強さ故の孤独が偽物で裸の王様とわかったため身の程を弁えた感じです。
くーちゃんに勝つためにというよりは挑み続けた果てにたどり着いた自分がどんなものになるか知りたい……みたいなGTベジータみたいな感じです。
くーちゃんへの好感度は104。
歴代最高の生徒会長「まだまだだな」(好感度258)
偉業を残す生徒会長「えっ?なんでそんな高いんすか(俺も卒業するまでにああなるのか……?)」
鬼龍院さんは話しかけれるのに遊んだりご飯食べたりはまだ無理らしい。
くーちゃんから誘ってくれる分にはくーちゃんにプランニングとか任せられるから安心できるので誘って欲しい。
積極的かなと思えば、原作では偶然会ってみたいなのが多くて意外と受け身っぽかったので。
くーちゃんへの好感度は87くらい。
あと鬼龍院が南雲の理解者みたいになってるけど原作でもそんな感じなので(後輩に構うなとか忠告したり)
お互いに出会い方とか思いは違っても共通の面白い後輩が持てたことで原作より関係は軟化してます
次回で椎名さんとの話か一気に飛んで文化祭前日の話をやって、文化祭やって7巻はおしまいです
椎名さんの話は文化祭前日とくっつけるかも
ではでは