恵「清隆は、歪んでいる!」
清隆「そうしたのは斉木だ!斉木という存在だ!だからオレは恵に振られる! 恋愛などどうでもいい!己の意志で!!」
って感じの話の続きです(かなり違う)
冬休みは休めるとは限らない
2学期も終わり、冬休みがやって来た。
その日はなんと12月24日。
世間的にはクリスマスイブとしてイルミネーションやらクリスマスツリーやらで盛り上がる日になっている。
しかし、僕は独善的で利己的でエゴイストで人を猿程度にしか思っていないからな。
クリスマスを一緒に誰かと過ごすことはない。
「斉木、どうしてオレは恵に振られたんだろうか」
そう、昨日破局仕立てホヤホヤの綾小路が来なければな。
僕の知らない間に別れていたから何があったのかはよく知らなかったため、ホワイトルーム生の最高傑作と評されている記憶力を頼りに昨日の会話を再現してもらったが……え? 僕が悪いのか、これ?
軽井沢さんが嫉妬を向ける対象はまさかの僕。
正確には女体化していた時の僕だが。
仕掛け人として初めから意図した展開に導けていたのなら、朝イチに僕の部屋に訪れてここまで綾小路も動揺はしなかっただろう。
天沢といい、八神といい、想定外に弱いのはホワイトルーム生の特徴なのかもしれない。
初めは「フッ、ホワイトルームの最高傑作の腕の見せどころだな……」と余裕がある態度だったのに、段々と思った以上に弱っていったから仕方なく家にいれてやったが、こんなにしょんぼりしている綾小路を見たらホワイトルームの人間が見たら卒倒するんじゃないだろうか。
後輩たちも最高傑作と認める男が同級生の女子からホモ疑惑をかけられて萎えてるとは思うまい。
「オレは……お前のことが好きなんだろうか……?」
知るかよそんなのと言いたいが好感度メーターは久しぶりに見たら100をぶち抜いてるな。
なんなんだこの学校の生徒たちは。
この数値に従えば本来ならば好きと言えるのだが、一之瀬さん、坂柳さんたちに比べればまだまだという数値だ。
男子で100超えの時点でそこそこおかしいんだがな。
堀北兄や高円寺、橋本ですら普通に超えているから麻痺してきていたが、異常値であることに変わりはない。
好感度を戦闘力に置き換えたとしたら、母さんがスーパーベジットくらいの数値で、一之瀬さんたちがセル編序盤のトランクスくらいで、綾小路はそれよりもまだ遥かに下であるためサイヤ人編のピッコロくらいだろうか。
うん、例えてみたが時系列がごちゃごちゃしてて分かりずらいな。
一応、綾小路の好感度は僕からすればまだ地味すぎるということだ。
これ以上上げられて斉木楠雄√に進まれても困るため、なるべく梯子は外していくことにする。
『それを決めるのは僕じゃないからな』
「……そうか」
こいつがショックを受けているのは想定外のタイミングで軽井沢さんに振られたことと、感情の起伏が顕われるタイミングが僕といる時と言われたからだ。
本来なら今日は軽井沢さんとケヤキモールでお互いのプレゼントを選び合って、さらには僕へのプレゼントも選ぶつもりだったのだと言う。
そのことを口にしてから軽井沢さんの機嫌は悪くなったらしいが。
しかし、外は生憎の雨模様であり、明日の天気も終日雨予報が出ているため、傘をさしての外出をしなければならない。
僕ならよっぽどの理由がなければ断る。
それに加えて軽井沢さんは今、インフルエンザに悩まされており、特別試験への勉強のため睡眠時間を削っていたり、綾小路と僕のことで悩んでいたがために免疫力が落ちていたようだ。
治してやることはできるが1日身体を戻すだけでインフルエンザの発症を遅らせることにしかならないため、今回は悪いが静観させてもらっている。
(あれ……? なんで冷えピタとポカリ……? もしかして清……綾小路くん……なわけないか。インフルエンザのこと言ってないし……麻耶ちゃん、かな……)
とりあえずは迷惑料ということで実家にあったものをドアの前に置かせてもらったが、気味悪がって受け取らないということはなく、しっかりと手に取ってくれたようだ。
軽井沢さんがインフルエンザになっているということは恋人として同じ部屋にいたりしたこいつも発症する可能性はあるが、今のところその兆候は見られない。
寮には他にもインフルエンザに罹っており、冬休みの初日を高熱で過ごす生徒が多くなっているが、流行病ということであれば仕方の無いことだ。
元カノがインフルエンザに苛まれている中、その元カレといえば哲学的なことを考えていた。
「人を好きになるというのはなんなんだろうな」
それは僕も時折考えるが、好きというのは結局主観でしかないからな。
好きだから助けるとか、好きだから話しかけるというような感情は僕にはない。
ただし、好きの形は人それぞれだ。
一之瀬さんの向けてくる圧倒的な好意や、佐倉さんの向けてくるような敬意と恩義を混同した好意もあれば、葛城を信頼し信用する戸塚のようなLoveではないLIKEの好意もある。
「好きじゃなくてもできたんだよな……キス」
それも絶対軽井沢さんの前では言うなよ。
綾小路は必要ならばゴキブリとでもキスできそうだ。
僕には死んでも無理だが。
ロクな友達がいないくせに先に彼女を作るから、好きについて悩むことになるんだ。
『好きだからキスができるものじゃないのか』
「いや、そうでもない。斉木は違うのか?」
『したことがないからわからん』
「そうなのか? (意外だな。てっきり一之瀬か櫛田の誰かにされてるもんだと)」
僕からすることはないと分かっているなら特にツッコむことはしない。
母さんにされたことはあれど、親からされるくらいなら普通だろう。今もしていたらびっくりではあるが中学生になってからはされていない。
ということで、これまでの人生で自分からしたことや親以外の異性からされたことはない。
もちろん、同性もな。
されることはあっても、することはないと思いたいな。
加減がわからないし、する意味もわからない。
あんなのただの菌の交換会なんだろ。
僕には有用な菌しかいないが、あちらからはバイ菌を渡されるのは確定だ。
それも僕の体内に入ればすぐに死滅させてやるが。
だから、キスされても不快感はないが、やはりする理由が分からないのでする意味が無いな。
「ハグや手を繋ぐは?」
それもされたことはあれど、こちらからはないな。
されたことがあるのは櫛田さんと一之瀬さんだったか。
握り返すというか包み込むようにということはしたことはあるが、恋人繋ぎなどはうっかり潰してしまいそうになったら悲惨なことになる。
僕が恋愛に積極的になれないのはテレパシーで相手の心が読めることや透視で異性の身体を見慣れてすぎているということ以外にもシンプルなパワーがあるせいというのもある。
手を繋いでいる時にゴキブリが飛んできたら繋いでいる手をバラバラにしてしまうかもしれないし、ハグしている時に蛾が飛んできたら肋や肋骨だけではなく内蔵まで潰してしまうかもしれない。
綾小路にはそんなパワーがなくてよかったな。
(ということはアレの経験もないのか……)
あるわけないだろ。
そもそも男子高校生のうちからというのも統計学上はあまり多くない。
それに学生のうちにうっかりということにもなりかねない。
そんなことになれば親子2代揃って義理の父親に蛇蝎のごとく嫌われる家系になってしまう。
僕への質問ばかりされて綾小路に居座られるのも困るため、綾小路の悩みを解決すべく僕は問いかけた。
『好きじゃなくてもできるなら、須藤とか高円寺とかともできるのか?』
「(相手が極論すぎるが……)まぁ必要に迫られたら……?」
疑問形ではあるができるのか。
おっかないなホワイトルーム生。
『じゃあ堀北さんや椎名さんあたりは?』
この2人は綾小路の中でも好感度の高い異性であり、軽井沢さんには申し訳なくて言えないが恋人以上に好感度が高い。
好感度関係なくできるというのであれば綾小路の恋のABCのハードルは無いにも等しい。
「その2人か…………(できなくは無いが堀北はそこに至るまでが面倒くさそうだし、ひよりは…………)なるほどな、オレは好意を抱いている相手ほどこういうのは躊躇するかもしれない」
軽井沢さんには絶対に聞かせられないことを言っているが、一旦は置いておこう。
『じゃあ、僕とは?』
「斉木か……(堀北とひよりに比べれば……いけなくはないか。やりたくは無いが)」
こっちもやりたくない。
何が楽しくて同級生の男子と恋のABCができるか考えなくちゃいけないんだ。
「だが、栗子とは躊躇する」
じゃあお前が好きなのは栗子じゃないか。
あれは僕であって僕ではない。
期間限定イベントでしか出てこないキャラだから忘れてしまった方がいい。
「そうなのか……(来年も文化祭……いやオレの誕生日とかに……)」
理想を抱いて溺死しろ。
そんな未来は起こらない。
今年の文化祭は綾小路を警戒させるための月城が仕組んだ例外的な行事だ。
成功こそしたが、実力主義を掲げる高校がお祭りに予算や時間を割くとも思えない。
誕生日とはいえ、わざわざ2時間もかけて変身する気もないしな。
綾小路の夢は夢のまま終わることになる。
悩みもある程度解決したため、綾小路は帰り支度を始める。
玄関で靴を履いている際、今更気をつけようもないがインフルエンザが流行っていることを伝えてやる。
「(クラスのグループチャットでも言っていたな)そうらしいな。わかった。悪かったな、朝から押しかけて(とりあえずプレゼントを買うのはやめておくか。斉木もそういうのいいからと言っていたし。サプライズが失敗している以上は仕方ないな)」
全くだ。
軽井沢さんの依存体質から脱却させるついでに付き合っていた偽の恋人、つまりはニセコイの関係を終えたことは僕個人としては喜ばしい。
このまま軽井沢さんが本気で綾小路を好きになり、依存したままでは目もあてられなかったからな。
そういう意味では今回の別れは軽井沢さんにとって大きな成長の役割を果たしたと言える。
ボロ雑巾のように捨てられたのが綾小路なのは意外ではあったが、これも初めは恋愛を学ぶためという打算のある理由で付き合ったことが災いした、いわゆる因果応報ということなのかもしれないな。
話すことは話して、僕のことは恋愛対象ではないという結論に至ってくれて何よりだ。
予定の来客も帰ってこれでゆっくりできると思った矢先に、渡辺から連絡が来る。
「悪い、斉木。今、大丈夫か?」
大丈夫じゃなかったら電話には出ないな。
綾小路の相手をしていて渡辺からのテレパシーは拾っていても聞けなかったから用件が分からないな。
「その、さ……お前がこの前仕入れてくれた情報のことなんだけどさ」
一応、渡辺のモチベーションにも繋がると思って網倉さんには中学時代からの想い人がいるが、その彼のことは忘れて心機一転しようとしているということは伝えていた。
そうと分かれば新しい好きな人候補に滑り込みたいと張り切ってきていた渡辺だが、僕の言ったことに何か問題でも生じたのだろうか。
「その、網倉がスポーツジムに通ってるって聞いてさ……俺も来年の体育祭を見据えてってことで、その入ろうかと思うんだけど……」
気は早いと思うが別にいいんじゃないだろうか。
それに去年……じゃなくて今年の年明けには混合合宿でマラソンとかもあったし。
もしかしたらあるかもしれないと、体力作りのためにという理由でも通るかもしれない。
「たしかに、そっちの方が信憑性あるな……(さすが機転思考力A+だな)」
これでスポーツジムに入会しても特に怪しまれることはないだろう。
渡辺が網倉さんのことが好きと知っているのは僕と綾小路くらいだしな。
「……ちなみに斉木って今日なにか予定があったりするか? (一之瀬とデートとかだったり……)」
特にないな。
クリスマスは家族と過ごすのが斉木家のしきたりなんだ。
僕の夜は誰にも邪魔させない。
ということで、夕方までは読書やドラマを観ることに使うと告げると渡辺の声のトーンが上がる。
「そうか、夜は空いてないんだな……てことは、今は空いている……ってことだな!」
なんだその環境大臣……いや今は防衛大臣か。
今のままではいけないから今のままではいけないとか、過去のニュースは古いねみたいな当たり前だろみたいなことを言われた気がする。
「斉木、俺と一緒にジムに体験入会してくれないか」
断る。
僕がジムだと?
僕が行くジムは後にも先にもポケモンジムだけだ。
そろそろビックウェーブと風が来るんでな。
というか、僕がスポーツジムに行く理由が全くないのだ。
筋肉をつけて素のフィジカルが上がってしまうと制御装置でもどうにもならなくなる可能性がある。
「(やっぱり断られたか!)そこをなんとか! お願いします! 斉木様! (俺1人で網倉とスポーツジムで何話せばいいんだよ〜!!)」
ハムストリングスとか上腕二頭筋とかの話でもしてればいいだろ。
それに僕も網倉さんと2人きりで話したことはあんまりないから、特に話す話題もないな。
強いて言うなら網倉さんは一之瀬さんの話をよくしてくるが。
「一之瀬の?」
例えば、帆波ちゃんとどんな話をしているのかだの、この前何食べに行ってたのみたいな事を聞かれる。
おそらくは一之瀬さんが断片的にしか話していないから足りないピースを僕で埋めようとしているのだろう。
「そういや、一之瀬と言えばだけどなんかあったのか? 一之瀬が演説? 所信表明の時に嫌いにならないとか、尊敬してるみたいなのを言われたって言ってたの、あれ小橋とかが斉木が言ったんじゃないかって言ってたけど……」
根も葉もないことだな。
そういうことにしておかないと面倒だからな。
ただ、一之瀬さんの前で否定すると「あれは嘘だったの……?」とメンタルブレイクするかもしれないから濁す程度がちょうどいい。
本人の前では認めざるを得ないため一之瀬さんの前ではそういう話にならないように立ち振る舞う必要はあるが、この冬休みの間は気にすることでもないか。
『仕方ないな。今回だけだぞ』
「えっ? マジ!? やったぁー! (なんかよくわからんけど勝った!)」
やることも無いし、少しくらい付き合ってやるか。
ジムには興味は無いがジム内のプールやどんな器具を置いているのかというのは見ておきたい気持ちはあったからな。
それにチョコ味のプロテインなどがどんな味かもみておきたい。
「じゃ、10時30分にケヤキモールのジム前で!」
渡辺の言葉にわかったと言葉を返して、電話を切る。
予定外の外出が入ったが仕方ない。
ゲルマニウムリングをつけての穏やかな休日とはならなさそうだ。
洗濯と掃除を念力で済ませていきながら、ドラマを聴きつつ椅子に座って本を読んで時間を潰すことにしよう。
お姫様抱っこの経験は多い男、斉木楠雄
お姫様抱っこ▶︎坂柳 ひより 一之瀬
ハグ▶︎櫛田 坂柳(どちらも一方的)
手繋ぎ▶︎一之瀬 坂柳
添い寝(同衾)▶︎一之瀬
髪梳き▶︎坂柳
綾小路くんの方がハグ、キス、手繋ぎ、セッ!(やめないか!)添い寝というか同衾してるから進んでるね。
スポーツジム回はないと言ったが、それは前巻の話です。
僕は嘘をついていない。
今のところのクラスの現状(元Aから順番)
A▶︎坂柳、葛城リーダーで安定。Aクラス再浮上を目指してはいるが、葛城が一之瀬会長の政策に乗っかるため別にAクラスじゃなくとも夢を叶えられるように体制づくり。鬼頭のように外見で弾かれるという危惧のある生徒も実力で黙らせる戦法でいく。そのため坂柳と葛城がみんなの進路をヒアリングしてそれに向けた勉強や対策を進めていく感じ。
クラス内の雰囲気は悪くなく、特別試験の点数ルールで負けたものは仕方ないと前向き。
B▶︎メンタル最高潮リーダー爆誕してるのとリーダーと切り札の恋愛イベでクラス内も最高潮。くーちゃんと白波くらいじゃないですかね、低いの。
神崎、柴田、姫野もスペック上がっている。
リーダーと切り札抜きにしても、高円寺と綾小路みたいな規格外が出てこなければそこそこやれる。団結力なら全クラス1位。
欠点は担任とクラスメイトの3分の1がカプ厨。
C▶︎こっそり急成長中のクラス。主に龍園が搦手使えなくなって正攻法でやるしかなくなったせい。これは搦手使わなければ絶対に邪魔しないとくーちゃんの言質取ったから。1年の時の体育祭ら辺で言ってた通り、堀北倒して坂柳倒したらくーちゃんと戦う予定。個人なら勝てないが、クラス戦なら勝てると今までやらなかったクラスメイト育成をやってる。
時任や反龍園派の態度が軟化してるのは他クラスから悪印象を受けるのをやらなくなったのと、体育祭以降結果が出てるから。
D▶︎やっと団結したクラス。遅い。Aクラスまでは遠い。対楠雄じゃないと高円寺が機能しないのはいつも通り。機能しても高円寺に対しては人間の出していい範囲の全力でくーちゃんが応える約束をしてるので高円寺は勝てない。綾小路がクラスに協力的で、ヘアピンメガネのおかげで一部の生徒の能力とメンタル上がってるから原作よりも強め……一部は。
他クラスから見たくーちゃん(ちょいちょい個人を特定できそうなワードはありますが、〇〇が言ってるんですか?的な質問はなしね)
A▶︎葛城さんを救ってくれた恩人。2000万ポイント返したらきっちり戦う(2学期ラストは手を抜いた訳では無いが)。坂柳さんの飼い主。白石の耳と精神を破壊する男。白石派の敵。
B▶︎ヘタレ。さっさと結婚しろ。一之瀬からの逆プロポーズ保留とかホモなのか? 頼れる親友。横顔がすごくかっこいい。やれやれでUNICORNがかかる。なんだかんだで優しい人。なんで告白OKしなかったの? 帆波ちゃんからの告白だよ? なんで???
C▶︎理不尽の権化かと思えばスイーツで釣れる。チョロい。聞き分けはいいし、地雷を踏まなければ平気、踏んだら兵器。龍園さんと仲良いすよね。椎名とも仲良いでしょ。
D▶︎大量に塩を送ってくる人。櫛田さんの好きな人。高円寺と綾小路を相手にしてケロッとしてる人。実力と人の心がある人。女装でクラスの男子の性癖を破壊した男。清隆の好きな人。とってもいい人。女たらし。
こんなもんかな。
では次回。