あの後、ユウカにこってり絞られたランは私に現在の実力を見せる為、ミレニアムのコースで走っていた。
"ラン、記録が十分に取れたからピットインして"
『OK』
ピットインしてフォーミュラマシンから降りたランに記録を伝える。
"今回の最高記録は1分49秒だね"
「はあ⁉︎1分49秒⁉︎おかしいよ!コースに対して遅すぎる!」
ランは記録に納得できないのか、その場で地団駄を踏む。
「これじゃあキヴォトスグランプリ優勝も夢のまた夢だよ!」
"じゃあマシンを改良するしかないね…このマシンはこの部活で作られたの?"
「ううん、エンジニア部に作ってもらった」
"じゃあ、エンジニア部に行ってみようか"
そうして私とランはエンジニア部の部室へと向かった。
エンジニア部の部室に入るとウタハが出迎えてくれた。
「やあ、先生。フォーミュラ部のチーフとしてミレニアムに来ていたという話は聞いているよ…それと思う様に記録が出ないようだね?」
"やあ、ウタハ。そうなんだ…ランの技量ならもっと早く走れると思うのだけど…"
「なあ、ウタハ。これ本当にF1様か?明らかにスピードがF2並だぞ」
「そんな訳無いだろう…この『MS-33』は、我々エンジニア部とミレニアムの技術を結集して作ったんだ」
"そうなんだ"
コトリがいつの間にかフォーミュラマシンをエンジニア部の部室に運び込んでいた。
「説明しましょう!このフォーミュラマシン『MS-33』はキヴォトスグランプリの過酷なレースを勝ち抜く為に様々なギミックが搭載されてます!」
「じゃあこの赤いレバーは何かな?」
ランはそう言ってコックピット内の赤いレバーを指さす。
「それはですね、レース中に食事がしたくなった時に横のノズルからタバスコをかけることができます!」
"…レース中は食事をする暇は無いし、コックピット内に持ち込めないと思うよ"
「む、不評だな。では、走行中の快適性を追求する為に搭載した『高音質Bluetoothスピーカー』もあるぞ、レース中に壮大なオーケストラが聞けるぞ」
"…マシンの走る風切り音で聞こえないと思うけど…"
先程から各種機能を聞いてワナワナと震えていたランが、コックピット内の赤いボタンを指さす。
「…ねえ、これ押したらどうなるの?」
「はい!自爆ボタンです。自爆はロマンですから!」
「そうさ!自爆はロマンだ!」
"あ、あはは…"
「………」
暫く無言で震えて居たランが遂に限界を迎えたのか地面に寝転がりながら駄々っ子の様に暴れ始める。
「もう!全部外して!タバスコなんて使わないし、レース中に音楽も聞かないから!それと自爆機能なんてレース中に私が巻き込まれるじゃん!」
そうして暴れるランを宥めるのに、かなりの時間を要したのだった。
エンジニア部主導でマシンの余計なパーツを全て外し、ランの要望通り「ダウンフォースの最適化」「カウルの軽量化」「パワーユニットの出力強化」を行ったマシンで再びテスト走行をした。
テストコースに飛び出したマシンは先程とは次元の違う、路面に吸い付くような超高速コーナリングを披露した。
「信じられないな……あんなにたくさん付けたロマンパーツをすべて外すなんて…本当にこれで速くなるのかい、先生?」
"うん、マシンのデータをモニターに表示するね"
そこには1分29秒という圧倒的な記録が映されていた。
「ひぇぇ⁉︎凄いスピードです。マシンがもうあんな遠くに…」
「なるほど………ギミックで誤魔化すのではない。ウイングの角度を1mm単位で調整し、ダウンフォースだけで車体を地面に抑えているのか…」
"それだけじゃない…徹底的に軽量化されて本来の空気抵抗の少なさが凄く生きている"
『せんせ!バランスが完璧だよ!』
"良かったよ、それじゃあピットインして"
テストを終え、ヘルメットを脱いだランは、額の汗を拭いながら眩しい笑顔を私に向けていた。
ライバルキャラとかどうしよう